純愛に生きる危険な女、自称28歳のリカを、ドラマ版に続き高岡早紀が熱演
「第二回ホラーサスペンス大賞」を受賞した小説「リカ」シリーズを原作に、2019年に放送されたドラマ版の、その後の物語を描く映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』。
運命の人を探し求め、純愛に生き、邪魔する者は「死ねばいい!」と命を奪っていくリカ。
そのリカの逮捕に執念を燃やす刑事、奥山。
2人の危険な駆け引きを描いた、本作の見どころをご紹介します。
映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』の作品情報
【公開】
2021年公開(日本映画)
【原作】
五十嵐貴久
【監督】
松木創
【脚本】
三浦希紗
【キャスト】
高岡早紀、市原隼人、内田理央、水橋研二、岡田龍太郎、山本直寛、尾美としのり、マギー、佐々木希
【作品概要】
永遠の愛を求める、最恐の「純愛モンスター」リカと、リカを逮捕する事に執念を燃やす刑事、奥山の駆け引きを描いたサイコスリラー。
五十嵐貴久の小説「リカ」シリーズを原作に、SNSでも話題になった、ドラマ版の最終回から始まる物語になっています。
ドラマ版に続きリカを演じる高岡早紀が、その魔性ぶりを遺憾なく発揮しています。
リカを追い詰める刑事の奥山を、数多くの映画やドラマで活躍している市原隼人が演じる他、特撮ドラマ「仮面ライダードライブ」シリーズで注目された内田理央や、女優としても幅広く活躍している佐々木希が、刑事役として出演しています。
映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』のあらすじとネタバレ
山中に捨てられたスーツケースから、死体が発見されるという事件が起きます。
被害者は、映画プロデューサーの本間隆雄。
本間は、自称28歳の女性、雨宮リカにストーカーされていた過去があります。
雨宮リカは逮捕されたものの、逮捕時に足を撃たれた事で警察病院に入院しましたが、看護婦を殺害し逃走しました。
本間は戻って来たリカに拉致され、3年間行方不明になっていたのです。
本間が拉致された現場には、切断された本間の手と足、そして目と耳と舌が残されており、本間はその状態のまま、リカによって生かされていた事になります。
刑事の奥山次郎は、凶悪犯であるリカの逮捕に執念を燃やしていました。
リカの逮捕を目的にした捜査班が組まれ、奥山は婚約者でもある同僚の女性刑事、青木孝子と合同で捜査する事になります。
孝子は奥山と同じ捜査班になった事を意識しており、先輩刑事の梅本尚美にも茶化されます。
ですが、リカに関する情報が集まらず、捜査が難航し、他の事件も発生した為、捜査班も縮小されてしまいます。
孝子は別の事件の捜査の為に、奥山と離れる事になります。
捜査資料に目を通していた奥山は、リカと本間が出会い系サイトで知り合った事に着目し、自身も出会い系サイトに登録し、リカをおびき寄せる作戦を考えます。
ですが、危険が伴う為、上司の戸田からは却下されます。
それでも、リカを逮捕する為、奥山は独自に捜査を開始し、100以上の出会い系サイトに登録していきます。
そして、最後の1つになった出会い系サイトで「リカ 28歳 看護師」というプロフィールを発見します。
映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』感想と評価
自分の運命の人を捜し求め、純愛に生き、邪魔する人間は容赦しない「自称28歳」のリカの恐怖を描いた、映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』。
本作は、2019年に放送されたドラマの続きとなっていますが、映画版は独自の物語となっています。
ドラマ版で描かれた、リカのこれまでの凶行は、映画版の序盤、捜査会議の場面で全て説明される為、ドラマ版を未見でも楽しめます。
本作はサイコスリラーなのですが、前半と後半で大きく変わる作風が特徴的です。
まず前半では、市原隼人が演じる刑事の奥山が、出会い系サイトを利用して、リカをおびき寄せるまでがスリリングに描かれています。
リカは「運命の人」以外にはガードが高く、自分から電話をする際は必ず「非通知」で連絡してくる程の用心深さです。
その為、焦って連絡先を聞こうとすると、警戒されて失敗する可能性があります。
奥山は、まずはリカのメールアドレスを聞き出そうします。
その為に、リカの好みを探り、リカが好きな花束で気を引こうとする辺り、いつの間にか完全に、恋愛の駆け引きになっています。
次第に、奥山はリカの事しか考えないようになり、恋心にも似た感情を抱くようになります。
ですが、実際にリカに会った奥山は、刑事としての使命を思い出し、リカを逮捕しようとしますが反撃され、命を落とします。
そして、奥山の死後に突入する後半では、奥山の婚約者である孝子と、リカの直接対決が描かれています。
孝子はリカをおびき出し、仲間の刑事と共に、リカを包囲する事に成功します。
ですが、ここからはリカの「純愛モンスター」としての本領が発揮され、凄まじいスピードで包囲網をくぐりぬけ、人間離れした跳躍力で空を飛び、スパイダーマンのように工場の壁を登り始めます。
この辺りは悪ふざけに見えますが、そうではなく「運命の人」を想う、リカの純愛の力が表現されている訳です。
どっちにしても怖いですね。
しかし、リカは何故、ここまで愛を求めるのでしょうか?
作中でも触れていますが、リカは過去に親からの愛を受けずに育ちました。
そこは奥山も同じ境遇で、リカに親近感を覚えてしまう部分です。
リカの辛い過去を考えると、クライマックスで孝子に語る「人は何かに依存しないと生きていけない」という台詞は、妙に説得力がありますが、1人で生きてはいけないなら、大事にするべきは人との距離感ではないでしょうか?
映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』は、エンターテインメントに振り切った部分がある作品ですが「人との距離感が分からないまま育った人間」と言う視点で見ると、かなり身近な恐怖を感じます。
ラストで、孝子は奥山の人形と結婚生活を始め、壊れた一面を見せます。
ですが、孝子の壊れた部分が他人に向けられなければ問題はないと感じ、プライベートで言えない事の1つや2つ、誰もが持っているのではないでしょうか?
ただ、その壊れた部分が外に向けられ、境界線が曖昧になった時に、リカのようなモンスターが誕生するのです。
「リカのような人間に関わりたくない」と思いながらも「自分は、無意識にリカのようになっていないか?」と、他人との距離感を考えてしまう作品でした。
まとめ
映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』は、ドラマ版からリカを演じている、高岡早紀の存在感が凄い作品でもあります。
リカは、一見すると育ちの良い、上品な印象を受けますが、気に入らない事があると舌打ちをする、品の悪い部分も持ち合わせています。
さらに感情のないような、フワフワした話し方をするのですが、それだけでも「この人は、話が通じない」という恐怖を生み出しています。
ただ奥山への愛は本物で、奥山と出会い系サイトで交流を重ねるリカは、まるで少女のような純粋さを見せます。
それだけに、クライマックスで孝子に言い放つ、リカというキャラクターを象徴する台詞「死ねばいい!」が、凄まじいギャップとインパクトを生んでいます。
高岡早紀はインタビューで、本作を「ジェットコースターのように怖さ・面白さ・切なさがどんどん押し寄せるスピード感がこの作品の魅力」と語っていますが、間違いなく作品を引っ張っているのはリカの存在感と、それを成立させている高岡早紀の演技力です。
序盤は衝撃の強い、残酷な場面もありますが、物語が進むうちに笑いの要素も強めになるので、ドラマ版を知らないという方も、独特の作風を持つ映画版から、リカの世界に触れてみてはいかがでしょうか?