映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』は2021年6月11日(金)からTOHOシネマズシャンテほか、全国順次ロードショー
映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』は、デンマーク映画『サイレントハート』をハリウッドリメイクした作品です。
オスカー女優である、スーザン・サランドン、ケイト・ウィンスレットによる初共演が注目を集めていますが、サム・ニールやミア・ワシコウスカなど脇を豪華俳優陣が固めています。
母の安楽死を見送るために集まった家族たちが、彼女の決断を通して互いを見つめ直す物語となっています。
CONTENTS
映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』の作品情報
【公開】
2021年
【監督】
ロジャー・ミッチェル
【キャスト】
スーザン・サランドン、ケイト・ウィンスレット、ミア・ワシコウスカ、リンゼイ・ダンカン、サム・ニール、レイン・ウィルソン、ベックス・テイラー=クラウス、アンソン・ブーン
【作品情報】
監督は『ノッティングヒルの恋人』(1999)、『ウィークエンドはパリで』(2013)のロジャー・ミッチェルです。
ビレ・アウグスト監督によるデンマーク映画『サイレント・ハート』(2014)を、その脚本家クリスチャン・トープが自ら脚色しています。
病を患う母のリリー役は、カルトクラシックの名作『ロッキー・ホラー・ショー』(1975)で注目を集め、『テルマ&ルイーズ』(1991)、『ロレンツォのオイル/命の詩』(1992)などでアカデミー賞主演女優賞に輝いた名女優、スーザン・サランドンが務めています。
もう1人オスカー女優としては、スーザン・サランドンと初共演になるケイト・ウィンスレットが娘のジェイニファー役を務めています。『タイタニック』(1997)や『愛を読むひと』(2008)、『アンモナイトの目覚め』(2021)など数々の映画に出演している言わずと知れた演技派女優です。
もうひとりの娘アンナ役に、ミア・ワシコウスカがキャスティングされています。ティム・バートン監督の『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)にアリス役として抜擢されてから「ピアッシング』(2018)などに出演している注目の若手女優の一人です。
夫のポール役は、『ジュラシック・パーク』でお馴染みのサム・ニールが務め、円熟した演技を見せています。
また、家族以外の役柄として登場したクリスはベックス・テイラー=クラウスが務めています。自身のジェンダーをノンバイナリーだと公表し、LGBTQ+の団体などで活動をしています。Netflixの『ダンプリン』やTVシリーズの「THE KILLING」のシーズン3などに出演して注目を集めました。
映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』のあらすじ
病気を抱え、歩行が少しづつ難しくなり、手にも麻痺を感じるようになったリリー(スーザン・サランドン)は夫のポール(サム・ニール)と2人で暮らしていました。
医者である夫と話し合い、自ら安楽死をすることに決めたリリーは、2人の娘と親友のリズ(リンゼイ・ダンカン)を家へと呼び寄せます。
長女のジェニファー(ケイト・ウィンスレット)は夫のマイケル(レイン・ウィルソン)と息子のジョナサン(アンソン・ブーン)を連れています。
次女のアンナ(ミア・ワシコウスカ)は恋人のクリス(ベックス・テイラー=クラウス)を連れてやってきました。
マイペースで家族に心配をかけがちなアンナに対して、以前から不満を持っていたジェニファーは衝突し、アンナが連れてきた恋人に対しても暴言を吐いてしまいます。
思春期のジョナサンは両親に対して心を閉ざしていて、父子の関係も良好とは言えませんでした。
それぞれに葛藤がある中、リリーの安楽死の時は近づきます。そんな時、家族の思いもよらぬ秘密が明らかになり、ジェニファーとアンナは母の安楽死を止めようと動きはじめます。
映画『 ブラックバード 家族が家族であるうちに』感想と評価
人生の終わりを自分で決める強さ
本作は「死」がテーマですが、本質は「どう生きるか」ということを描いています。
病気によって自由を奪われるくらいなら、愛する者たちと幸せなときを過ごして人生の終わりを自分で決めたいというのは確かに正論です。
ですが、少し自分勝手な印象も受けます。残される人の悲しみはどうなるのか、と考えずにはいられません。
しかし、「どう生きるのか」というのは自分が決めるべきことで、誰のためでもなく自分の幸せを優先していいはずなのです。
「終活映画」と呼ばれる映画は昨今よく目にしますが、本作はとても凛としたリリーの強さが印象的な作品だと言えるでしょう。
自分の心の整理ができているリリーは、残される家族が自分の死後も前を向いて生きていってほしいという思いを込めて、全員で集まる場を準備したのでしょう。
夫のポールは彼女の決断を支持してはいるものの、隠れて悲痛な表情を浮かべていました。リリーの意思を決して否定せず受け入れたのは、深い愛があってのことなのだと伝わってきます。
ポールがひとりで悲しみに耐えるシーンや、ほかにももちろん涙を誘うシーンはありましたが、本作は「死」を避けられない悲劇ではなく、選択肢の中の人生の終着点として位置付けているように感じられます。
なので、絶望感ではなく穏やかな感動に包まれるのでしょう。
いつか来る両親との別れや、自分自身の最期についてもふと考えてしまうような映画となっています。
残される者たちの新たな人生のはじまり
リリーのもとに集まった家族たちのそれぞれの思いが揺れ動き、物語がラストに向かうにつれて次第に秘密が明らかになっていく様子が丁寧に描かれています。
夫婦のあり方、姉妹関係の修復、親と子どもの関係、そして未来への夢。97分の間になんとも奥深く、細やかに人間模様が描かれているところが見どころだと言えます。
特に、はじめからギスギスしていたジェニファーとアンナの関係が少しづつ露見していく部分からは、血が繋がっていても必ずしも上手くいくわけではない、というリアルな家族関係を感じさせます。
そして、家族以外の登場人物が大きな鍵を握っていると言えるでしょう。
まず、アンナが付き合ったり別れたりを繰り返していたクリスです。彼女は、自由奔放そうに見えてアンナのことをよく理解しています。
ジェニファーとアンナの関係を取り持つのに重要な役割を果たしていました。
そして、リリーの昔からの親友であるリズ。家族ではないリズがこの局面に家族の中にいるのは、はじめ違和感がありましたが、リリーと思い出を語るところから、昔から家族全員と仲が良かったことが伺えます。
回想シーンはありませんが、若いころの2人が旅行に行ってはしゃぐ姿が目に浮かぶような会話がありました。
リリー役のスーザン・サランドンは勿論のこと、リズ役のリンゼイ・ダンカンの味わい深い演技は見事です。
まとめ
安楽死という重いテーマながら、別れの悲しみだけではなく幸せとは何かと考えさせられる作品となっています。
悲しみの涙が溢れてきますが、映画を観終わるころには不思議と心が穏やかになることでしょう。
舞台となる家族が住む海辺の邸宅がとても洗練されたデザインなので、その部分も楽しんでみてはいいかがでしょうか。
『ブラックバード 家族が家族であるうちに』は2021年6月11日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開。