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ヨコハマ・フットボール映画祭2018にて上映!『You’ll never walk alone』あらすじと感想レビュー

  • Writer :
  • 西川ちょり

来たる2月11日(日)、12日(休・月)、8回目となる「ヨコハマ・フットボール映画祭2018」が開催されます!

会場は、1917年に建造された国の重要文化財である横浜開港記念会館。歴史ある会場にちなんで、サッカーにまつわる様々な「歴史」をテーマにした4作品と、ワールドカップや、パラリンピック関連作品3作品の合計7作品に加え、クロージング作品として植田朝日監督の『ジョホールバル1997』の上映が決定!


© YFFF

会期中にはサッカーを様々な角度から楽しむイベントも多数開催されます。

今回は上映作品の中から、2017年制作のドイツ映画『You’ll Never Walk Alone』をご紹介します。

1.映画『You’ll Never Walk Alone』の作品情報

【公開】
2018年(ドイツ映画)

【原題】
You’ll Never Walk Alone

【監督】
アンドレ・シェーファー

【作品概要】
リバプールFCや、ボルシア・ドルトムント、FC東京など世界各地のスタジアムで唄われるアンセム(応援歌)、「You’ll Never Walk Alone」のルーツを追うドキュメンタリー映画。人々は、この曲にどんな想いを託し、そして何を受け取ってきたのか? サポーターとチームを繋ぐ強力なパワーについての物語

2.映画『You’ll Never Walk Alone』のあらすじ


© FLORIANFILM 2017

「You’ll Never Walk Alone」

リバプールFCをはじめ、ボルシア・ドルトムント、セルティック、FC東京のアンセムとして親しまれるこの歌はどこから来たのでしょうか?

ドイツ人俳優で、ドルトムントのファンであるヨアエム・クロール(Joachim Krol)が、そのルーツを求めて、世界各地を歩きます。

時は1900年代のウィーン、ブダペストへと遡ります。

クロールはウィーン劇場で女優のMavie Hörbigerと久しぶりの再会を果たします。

彼女は、ハンガリー出身のユダヤ人作家、フェレンツ・モルナール(1878-1952)の戯曲『リリオム』(1909年初演)を演じたことがあります。

「『リリオム』は文化遺産のようなもの。いわば国宝ね。主人公のリリオムは遊園地の回転木馬の客引きで、ならずもので女を殴るひどい人間なの」

ブダペストでは、クロールはモルナールの孫で、作家のマチアス・サルコジ(Mátyás Sárközi)とカフェで語らいます。

モルナールはそのカフェで1909年『リリオム』を書きました。当時のブダベストは革新的な技術力を持ち、大勢の人が集まって活気があったといいます。

モルナール自身、妻を殴る人だったそうで、自分を正当化するために『リリオム』を書いたとサルコジは語っています。

ある時、モルナールは「なぜ女を殴ると思う?」と妻に問い、「愛情表現さ」と言ったとか。妻は即座に「とんでもない、地獄に落ちろ」と返したそうです。二人はまもなく離婚しました。

ブダペストでは『リリオム』は成功したとは言い難かったのですが、ウィーンに移り、大成功を遂げます。

ナチスの時代になると、彼はヨーロッパを去り、ニューヨークへ。1945年には『リリオム』のミュージカル化が検討されました。

モルナールは断固として反対しましたが、当時、お金がなく、金額を提示されるとすぐに受けたそうです。リチャード・ロジャース&ハマースタイン2世が音楽を担当。ここで、「You’ll Never Walk Alone」が生まれたのです。

1945年『回転木馬』(Carousel)のタイトルでブロードウエーにかかり、1954年には映画化されました。

奇しくも、ドルトムントも『リリオム』も1909年に生まれています。ドイツでは当時、サッカーは嫌われていました。サッカーはイギリス人が熱中するものとされ、ドイツでは体操が推奨されていました。

教会の牧師はサッカーを見下し、若者たちは反発。1909年、仲間が集まり、フットボールクラブを創設しました。

ドルトムントは20年前から「You’ll Never Walk Alone」を歌っています。

1960年代のリバプールは、音楽とサッカーに誰もがはまっていました。まるでお祭り騒ぎのようだったといいます。ビートルズとともに人気があったのが、ジェリー&ザ・ペースメーカーズです。

ジェリーことジェリー・マースデンは語ります。

ある日、彼はローレル&ハーディーの映画を観に行き、そこで『回転木馬』が同時上映されていました。少し退屈に思い、居眠りをしてしまったらしいのですが、「You’ll Never Walk Alone」を聞いて目が醒めました。

バンドのメンバーに曲を見つけた!と報告。

最初は皆、過去二作と雰囲気が違いすぎると反対しましたが、説得し、難色を示すレコード会社も説得。1963年10月に発売された同曲は瞬く間にヒットチャート1位に駆け上がりました。

リバプール、アンフィールドのスタジオ・アナウンサー、ジョージ・セフトンは語ります。

当時、スタジアムでは、チャートトップの曲を流しており、「You’ll Never Walk Alone」も流れました。ある日、コップというファンブロックが、それを歌い始めました。それから毎試合歌われるようになったのです。

「53年後、私もまだ歌っている」とジェリーは言います。「祈りのようだと言われる。毎晩、祈りを歌っている」。

リバプールの監督、クロップ・ユルゲンはこう言っています。「歌は人々を結びつける。国家でさえ」。

1989年のヒルズボロの悲劇と事故に対するその後の経緯、2005年のUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦、2016年ブンデスリーガ1部第26節ボルシア・ドルトムント対マインツ戦などが取り上げられ、「You’ll Never Walk Alone」がどのように歌われ、人々にどのような影響を与え、どのような感情をもたらしたのか、多くの人の証言と、過去の映像などで明らかにしていきます。

人々にとって、如何にこの歌が大切なものか、サッカーへの愛とアンセムへの想いが熱く語られています。

2.映画『You’ll Never Walk Alone』の感想


© FLORIANFILM 2017

1909年のブダペストで生まれたものが、ウィーン、ニューヨークへと渡り、そして今やサッカーを愛する人々のアンセムになっている。

何度も画面に登場するアンフィールドのスタジオ・アナウンサー、ジョージ・セフトンは「You’ll Never Walk Alone」について「2分38秒の不思議な力」と表現していますが、まさに不思議な軌跡(奇跡のような!)と言えるでしょう。

映画の案内役であるヨアエム・クロールが、ドイツ・ヘルネに住んでいた子供の頃、父親とウエストファリア ヘルネの試合を観に行ったときの話もとても心に響きました。人生の中にサッカーのあることの尊さがそこにはありました。

そんな彼が多くの人々と出逢い、「You’ll Never Walk Alone」について語り、考察する、そのユニークな映画の狙いや構成にまずわくわくしてしまいますが、そこに登場する人々のサッカー愛、アンセムへの強い熱い想いには、涙が出てくるほどの感動を覚えました。多くの名言が登場し、心揺さぶられます。

リバプールのアンフィールド、ドルトムントのツジグナル・イドゥナ・パルクの試合前の独特の雰囲気の映像も見ものです。

サッカーファンには必見の作品となっているとともに、映画ファンにも是非観ていただきたい傑作ドキュメンタリーです

3.まとめ

上記にあげた人々以外にも、ルベルト・ディッケル、ドイツのパンク・ロック・バンド、デイ・トーテン・ホーゼンのカンピーノ、ドイツの指揮者トーマス・ヘンゲルブロック等が登場し、それぞれのサッカー愛と「You’ll Never Walk Alone」について語っています。

人々を結びつける歌、連帯できる唯一の歌として、「You’ll Never Walk Alone」がいかに愛されてきたか、人々は何を想い、何を得たのか、是非スクリーンで確かめてみてください。

本作は、2月11日(日) 17:20~より上映されます。

また、「フットボール映画祭」は全国で開催されます。

2月4日に開催される「神戸フットボール映画祭」でも本作の上映はあります。

詳細は「ヨコハマ・フットボール映画祭 2018」公式ホームページでご確認ください!

*ヨコハマ・フットボール映画祭 2018公式:HP:http://2018.yfff.org

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