連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第28回
映画『ラブ&モンスターズ』は、『Five Fingers for Marseilles』(2017)で注目を集めたマイケル・マシューズ監督の2作目の長編作品です。
人類の化学兵器によって巨大化した生物が地球を支配する世界で、臆病な青年が賢い愛犬と共に、様々な危機を経験する生存アドベンチャー映画。
本作は、怪物によって荒廃した世界で、死んだとばかり思っていた恋人エイミーの生存を無線で知り、彼女を探して冒険に出る青年ジョエルの物語です。
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CONTENTS
映画『ラブ&モンスターズ』の作品情報
【日本配信】
2021年配信(アメリカ映画)
【原題】
Love and Monsters
【監督】
マイケル・マシューズ
【キャスト】
ディラン・オブライエン、マイケル・ルーカー、アリアナ・グリーンブラット、ジェシカ・ヘンウィック、セニー・プリティ、ダン・ユーイング、トレ・ヘイル、エレン・ホルマン、メラニー・ザネッティ、ジョエル・ピアース
【作品概要】
本作は、南アフリカ共和国出身のマイケル・マシューズ監督のハリウッドデビュー作。将来が期待されるスター、ディラン・オブライエンに出会える作品です。
脚本に、『アンダーウォーター』(2020)のブライアン・ダッフィールドと『ウソから始まる恋と仕事の成功術』(2009)のマシュー・ロビンソン。
「メイズ・ランナー」(2014)シリーズのディラン・オブライエンを主演に抜擢し、『アンダーウォーター』(2020)のジェシカ・ヘンウィック、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014)シリーズのマイケル・ルーカーが脇を固めます。
「ジュラシック・パーク」(1993)シリーズのような恐怖とスリルが味わえる本作は、現代的なCGで滅亡直前の世界を具現化し、華やかな特殊効果とユニークな想像力で作り上げた様々な怪物も披露します。
映画『ラブ&モンスターズ』のあらすじとネタバレ
7年前、アガサ616号と呼ばれる流星が地球に向かって飛んで来ました。各国はそれを破壊するために、ロケットを打ち上げて、衝突を防ぎます。
しかし残念なことに、それらの破片による化合物が地球上の生物に降り注いでしまい、昆虫やカニ、ナメクジ、ワニなどを巨大な怪物に変えてしまいました。また、それだけでなく、1年以内に世界人口の95%が亡くなりました。
ジョエルを含め生き残った人々は、それぞれの地域にある地下壕に避難して、集落ごとに生活をしていました。
ジョエルのいる地下壕では、全員がカップル同士の中、唯一独り身はジョエルのみ。
彼は、カップル達がベッドを共にする場面に遭遇する度に憂鬱になりますが、彼にとっての最大の強みは、怪物を倒す地雷を作ったり、食事作り、牛の乳搾りなど、生活に無くてはならない仕事をすることでした。
また、彼はこれまで自分が見た怪物を描き、その弱点などを記録することで、新世界での生き抜く施策を持っていました。
ある日、ジョエルは恋人エイミーと無線で連絡が繋がります。彼女は、他の生存者たちとジョエルのいる場所から180km離れた別の地下壕に住んでいました。
しかし突然無線が断ち切られました。ジョエルのいる地下壕にアリの怪物が侵入して来たのです。
ジョエルは自分も皆と同じように戦えることを説得しますが、安全な場所で待機するように説得をされ、おとなしくそれに従いました。
ですが、監視カメラを見るとアリの怪物が仲間を襲っているのが見えます。ジョエルはじっとしていられず、勇気を出して、武器となる弓を持ち出し、アリの怪物の元へ向かいました。
しかし、姿を現したアリの怪物に恐怖から身動き出来なくなったジョエル。幸いにも仲間たちの弓矢と刀によってアリの怪物は死に、ジョエルは九死に一生を得ました。
そんなジョエルには、怪物たちの攻撃が始まった日の恐怖の記憶が蘇ります。
ジョエルとエイミーは、車の中から町を見下ろす丘の上にいました。ジョエルはエイミーの絵を描きますが、それは彼女が不満を漏らす出来栄えで彼自身も認めていました。
すると、サイレン音が鳴り響きます。ミサイルが打ち上げられているのが見えましたので、彼らは自分の家族の元へ引き返しました。
そして現在に至ります。ジョエルは、エイミーに会いに行くことを決意。地上へ出ることは非常に危険であり、ジョエルひとりで戦うには戦闘能力不足なために、仲間たちは猛反対します。
それでも行くと強く決心したジョエルに、仲間たちは武器と地図を渡して応援することにを決めます。熱いハグをし合い、ジョエルは7年ぶりに地上へ出て、エイミー捜しに出発しました。
旅立ってまもなく、ジョエルはある家の中へ入ります。食材調達しようと冷蔵庫を開けますが、何に驚いたのか、ジョエルは裏庭まで逃げます。
すると、池の中からカエルの怪物が現れ、舌を伸ばしてジョエルを捕らえようとしました。何とかかわしたジョエルですが、そこへ一匹の犬が現れました。
カエルの怪物は、逃げようとするジョエルを舌で突き飛ばし、ジョエルを食べようとします。その時、犬がカエルの怪物の舌を噛み、キャンプカーへ逃げます。
ジョエルも犬を追ってキャンプカーに乗り込み、カエルの怪物から逃げ切りました。
そこで、扉に繋がれた紐を口で引っ張り、扉を閉める犬に感嘆するジョエル。そんな賢い犬は、ボーイと呼ばれているのをジョエルは知りました。
ボーイは、前の飼い主の赤いドレスを身に付けており、ジョエルがそれに触れると取られまいとします。口紅を見つけたジョエルは、エイミーへプレゼントしたくて、ボーイに貰う許可を得ました。
ボーイに自己紹介するジョエルは、その夜、ボーイと共にキャンプカーに泊まりました。
翌朝、ジョエルは再出発しようとしますが、ボーイも一緒に行きたがります。
ジョエルは同意して、ボーイの大切な赤いドレスを鞄に入れて、出発しました。道中でお腹が空いたジョエルは、苺を見つけて食べようとしますが、ボーイが食べないよう止めます。
そして歩いていると、ジョエルはミミズの怪物の巣穴に落ちてしまいました。巣穴であちこちからミミズの怪物に襲われそうになったジョエルは、2人の男性に助けられます。
彼らはクライドとミノー。1人かと尋ねるクライドに、ジョエルは「ボーイも一緒」と言いますが、ボーイの姿は見えません。
その時、物音がし、そちらに武器を向ける彼らを、ジョエルは咄嗟に止めました。そこにはボーイが隠れていたのです。可愛いボーイに、彼らも喜び歓迎してくれました。
2人は、ジョエルが持っている僅かな戦闘知識だけで、地上に出ていることを非難しますが、ジョエルとボーイを連れ、怪物が苦手とする厳冬期の山へ向かってくれました。
クライドとミノーは、旅の最中にジョエルに、怪物の倒し方などいくつかのことを教えます。山の頂上に到着して、ジョエルが弓の練習をするのに、上手く的中するのを手伝うミノー。
クライドとミノーは親子と思っていたジョエルですが、違っていました。クライドとミノーは同じ地下壕で生活していた生存者たちの一員で、怪物によってミノーは父親、クライドは息子をそれぞれ喪ったそうです。
そして、山の頂上から見下ろすと、ジョエルの匂いを伝って怪物が来ていたので、再び出発するジョエルたち。
その途中、ジョエルの背後からカタツムリの怪物が出てきました。ジョエルにシャツを脱がせたクライドは、他の怪物たちをジョエルたちから引き離すために、カタツムリの怪物の体にシャツを詰め込み、カタツムリの怪物が匂いを持ち去るようにします。
クライドは「悪い怪物が多い中、親切な怪物もいる。彼らの目を見れば分かる」と教えてくれます。
夜になると、洞窟らしき所で休みます。しかし、怪物たちがそこに辿り着く恐れもある為、長居はせず進んで行きました。
しばらくして、ジョエルはエイミーに会いに行くために、クライドとミノーに別れを告げることを決意します。
ジョエルに懐いていたミノーは悲しくなり、そんなミノーにジョエルは口紅を贈ります。
クライドはジョエルに励ましの言葉を残し、ミノーはボーイに別れの挨拶をします。そして、クライドとミノーを見送ったジョエルとボーイは、再び旅を続けました。
映画『ラブ&モンスターズ』の感想と評価
目を楽しませる様々な怪物
本作は観客の没入感を損なうことなく、冒険の旅のシークエンスが上手くまとめられて、とても面白い仕上がりのSFファンタジーとなっています。
映画の途中途中に出て来る怪物たちのCG技術が磨き抜かれ、とても新鮮でした。よく練られた物語と視覚的にも秀でたキャラクターの怪物が出た瞬間から、緊張感や興奮も高まります。
怖いよりも可愛い感じの怪物が出るため、家族で鑑賞することもお薦めな作品です。
キャスト陣の演技力
主役・ジョエルに扮したディラン・オブライエンは、喜怒哀楽の感情を上手く表現しながら、一生懸命に戦うジョエルの成長ぶりを、見事に演じ切っていました。
また、主人公に終末間近の世界で生き残る力と勇気を教えてくれる、道しるべのような存在のクライドとミノー。
悪役に扮することの多い俳優として知られているマイケル・ルーカーが、本作では心優しい師匠のようなクライドを演じていて、とても新鮮な印象を持つことでしょう。
何よりも、ジョエルとボーイのコンビネーションは、本当に素晴らしいものです。訓練され、ヒーローと呼ばれたボーイは、人間以上に賢い犬でした。
犬ではありますが、ボーイの演技力と愛嬌さに惹かれますので、要注目です。
成長ドラマとしてのストーリー
“自分を過小評価するな。果敢に外部世界を探検せよ。もちろん、多くの試練と苦難を経験するだろうが、旅程の中で良い仲間と先生に出会うことになるだろう。また、休憩場所では決して想像出来なかった神秘と歓喜を体験することが出来るだろう。目的地に望むことはないかも知れない。しかし、その旅程は私を成長させ、以前とは全く違う人にしてくれるだろう。”
この台詞が映画のテーマであり、ジョエルとボーイの旅の結末を見抜くためのメッセージになっています。
終末間近な世界に適応するにも、勇気がなく、戦い方も分からない怖がりな主人公が、エイミーに会いに行く旅で経験する出来事によって成長していく姿に重点をおいた作品です。
まとめ
臆病者の青年が恋人を捜しに、怪物がうろつく地上を180kmを旅をする物語は、とてもユーモアに溢れています。
ゾンビ、ウイルスのほか、様々な怪物によって終末期を迎える今までの映画に対して、本作は巨大化した生物が地上を支配するという点が、かつての B級なSF映画のようではありますが、今日となってはそれも斬新と言えるでしょう。
ロケットも怪物もわざとではないのに対し、最も人間を苦しめるのは、結局、人間の行いだという設定は、省いてはいけない基本テーマのため、物語に引き込まれます。
そして、素材と独特な世界観も素晴らしく、壮大なスケール、映像の描写、演出、ストーリー、全てに魅了されます。また、雄大で美しい大自然の映像も豊富に盛り込まれていますので、見る者を飽きさせることはありません。
そしてなんといっても、ボーイとの再会、クライドの穏かな存在感、電池が切れていくロボットなどの感動的場面も余韻を残してくれます。
愛する人を守ろうとする勇気、成長、そして感動が凝縮された映画です。
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