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Entry 2021/02/09
Update

Netflix映画『みんな死んだ』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。ダークコメディで若者たちの大晦日の悲劇を描く|Netflix映画おすすめ17

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第17回

大晦日の年越しパーティーを舞台に、参加した若者達が直面した悲劇を描いた、ポーランドのダークコメディ映画『みんな死んだ』。

パーティーに参加した若者達の、それぞれのドラマを、毒のある笑いを盛り込みながら、群像劇で展開していきます。

酒と薬でハイテンション状態になった若者達に、一体何が起きたのでしょうか? 物語を深掘りすると、ある哲学的なテーマが見えてきました。

ジュリア・ヴィエニアヴァ・ナルキェヴィッチ他、ポーランドの若手俳優が揃いました。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

映画『みんな死んだ』の作品情報

(c)Netflix

【公開】
2020年公開(ポーランド映画)

【原題】
Wszyscy moi przyjaciele nie zyja

【監督・脚本】
ヤン・ベルツル

【キャスト】
ジュリア・ヴィエニアヴァ・ナルキェヴィッチ、マテウシュ・ヴィエンツワヴェク、アダム・グラフ・トゥルチュク、モニカ・クジュフコフスカ、ニコデム・ロズビツキ

【作品概要】
大晦日の年越しパーティーに参加した若者達の、さまざまなトラブルが重なり、大惨事が巻き起こる様子を描いたダークコメディ。

Netflix映画『誰も眠らない森』(2020年)のジュリア・ヴィエニアヴァ・ナルキェヴィッチ他、ポーランドの若手俳優が集結しています。

映画『みんな死んだ』のあらすじとネタバレ

(c)Netflix

大晦日に若者が集まったパーティーで、参加者全員が死亡するという悲惨な事件が起きます。

事件を担当した刑事2人は、死亡の原因がそれぞれ違うことに疑問を抱きます。

ですが、この日が初現場となった新人刑事は、事件現場の悲惨さに気分が悪くなり、トイレで嘔吐します。

新人刑事は、自分が口を拭いた際に使用したトイレットペーパーに、何かの文字が書かれていたことに気付き、証拠品を消してしまったと、焦りを感じます。

ですがベテラン刑事は、そんな事は全く気にしていないようでした。

時は遡り、大晦日のパーティー当日。

ダニエルは恋人のアンジェリカを連れて、友人のマレクが開催したパーティーへ参加しました。

ですが、そこに呼んでもいないダニエルの姉が現れ、ダニエルは困惑します。

パーティーに参加した1人、アナスタシアは、恋人でラッパーのジョルダンが、自分にかまってくれないことに不満を感じていました。

アナスタシアは、パーティーのカメラマンを担当していたフィリップが、自分の写真ばかり撮影していたのに気付き、暇つぶしにフィリップを誘惑して、マレクの父親の書斎に連れて行きます。

パラヴェウは、20歳近く年上の女性グロリアとパーティーに参加していました。

パラヴェウは、グロリアに夢中ですが、グロリアはパラヴェウを子供扱いしており、1人でパーティーを楽しんでいます。

そんなグロリアに、女性に全く相手にされていない2人の男、ラファウとロバートが近付きます。

グロリアは遊び半分で、ラファウとロバートを2階の寝室に連れて行きます。

パーティー会場に大量のピザが届きます。

ピザを受け取ったマレクは、配達員に渡す現金が足りない事に気付き、先にピザだけ受け取って、配達員を外で待たせます。

一方、書斎ではフィリップがアナスタシアに言い寄っていました。

スピリチュアルにハマっているアナスタシアは「宇宙の真理」を語り、フィリップを拒否しようとします。

アナスタシアは、話を逸らすように、書斎でマレクの父親が収集している銃のコレクションを見つけ、一発外に向けて撃とうとします。

ですが、アナスタシアは銃の扱い方が分かりません。

フィリップは、アナスタシアに体を密着させながら、銃の扱い方を教えます。

すると、興奮したアナスタシアがフィリップにキスをしてきた為、フィリップは、そのままアナスタシアを押し倒します。

押し倒されたアナスタシアは銃を持ったままで、さらに銃の撃鉄が起こされた状態です。

アナスタシアは絶頂に達した瞬間、引き金を引いてしまい、銃が発砲されます。

書斎の外を歩いていたマレクに、アナスタシアが発砲した弾丸が当たり、マレクは死亡します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『みんな死んだ』ネタバレ・結末の記載がございます。『みんな死んだ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

突然の事に取り乱すアナスタシアとフィリップ。

アナスタシアは、マレクを殺してしまった事を通報しようとしますが、フィリップに止められます。

フィリップの発案で、寝室のクローゼットに、マレクの死体を隠しますが、そこにセクシーな美人姉妹と、モルモン教徒のジャックが入って来た為、アナスタシアとフィリップはベッドの下に隠れます。

結婚するまで、他の女性と関係を持ってはならない、モルモン教の教えを守ろうとするジャックを、姉妹は面白がり、ジャックにマジックマッシュルームを食べさせたうえに、ウォッカを大量に飲ませてベッドに押し倒します。

しかし、その衝撃でマレクの死体がクレーゼットから飛び出してしまい、耐えられなくなったアナスタシアは寝室から逃げ出します。

フィリップも逃げ出そうとしますが、お酒でハイテンションになっている姉妹に見つかります。

姉妹は、マレクの死体に気付くどころか、床に落ちていた拳銃を玩具のようにして、そのままフィリップをベッドに連れ込みます。

フィリップは、寝室から何とか逃げ出しますが、今度はダニエルの姉に、廊下に付着した血を見つけられてしまいます。

ダニエルの姉が大声を出しそうになった為、フィリップはダニエルの姉を書斎に連れ込みます。

フィリップは、ダニエルの姉が声を出さないように口を塞ぎますが、ダニエルの姉が突如発作を起こし、そのまま死亡してしまいます。

焦ったダニエルは、書斎の窓から外に逃げ出そうとします。

一方、外で待たされ続けているピザの配達員は、配達が立て込んでいる事と、アルツハイマーの母親が心配な為、屋敷に入りマレクを探します。

酒に酔ったジャックが嘔吐した為、寝室から逃げ出した姉妹と出会った配達員は、姉妹に教えてもらい、マレクがいる寝室に入ります。

配達員は、マレクが死んでいるのに気付きますが、マレクのポケットに現金が入っていた為、血が付着した現金を抜き取ります。

バスルームで現金の血を洗い流していた配達員でしたが、配達から戻らない事に怒った上司に、無線機でクビを言い渡され、さらに母親がアパートを火事にしてしまい、莫大な損害賠償が発生したという電話を受けた為、絶望してバスルームで首を吊ります。

配達員は、医療を勉強していた学生で、死ぬ直前にアルツハイマー治療に役立つ仮説を、トイレットペーパーに書き残していました。

ラファウとロバートを弄んだグロリアは、再びパーティー会場に戻りますが。消えたグロリアをずっと探していたパラヴェウに見つかり、口論となります。

グロリアは再び2階に行き、マジックマッシュルームとウォッカでおかしくなっているジャックを、部屋のベッドに押し倒します。

ダニエルは、パーティー会場でサプライズとして、アンジェリカに結婚を申し込みます。

ですが、アンジェリカはダニエルの申し出を拒否し、大勢の前でダニエルとの夜の行為が不満であると暴露します。

恥をかかされたダニエルは、屋敷の外に逃げ出し、アンジェリカも部屋の中に閉じこもります。

その直後、斧を持ったダニエルが戻って来て、部屋の扉を破壊し、アンジェリカを荒々しく抱き始めます。

屋敷の洗濯置き場に逃げ込んだアナスタシアは、血の付いた服の洗濯を始めます。

アナスタシアの行動を不審に感じたジョルダンは、アナスタシアからフィリップと関係を持ったことを聞き激怒します。

一方、グロリアに自分の気持ちを伝えようとしていたパラヴェウは、グロリアがジャックと浮気をしている現場を目撃し、ジャックを殴り倒し、グロリアに「歯が抜け落ちても君を愛している」と伝えます。

ですが、窓の外からその言葉を聞いていたフィリップが入って来て、パラヴェウを殴ります。

実は、フィリップはグロリアの息子で、自分と同じ年齢のパラヴェウが、母親であるグロリアと交際していたことにショックを受けていました。

さらに、フィリップがアナスタシアと関係を持ったと怒ったジョルダンが、部屋に入って来てフィリップを殴り始めた為、部屋の中は大混乱となります。

グロリアに弄ばれたことで、ロバートと険悪になったラファウは、寝室でマレクの死体を発見します。

実はラファウは同性愛者で、マレクと恋人関係にあり、それを隠す為、普段はお互いが興味の無いふりをしていたのです。

マレクの死にショックを受けたラファウは激怒し、犯人を探し出す為にパーティー会場でバットを振り回します。

そこに、銃を持った姉妹が現れた為、ラファウはマレクを殺したのは姉妹だと勘違いし、バットで妹を殴ります。

怒った姉は、銃を持ったままラファウに掴みかかりますが、ラファウは姉を背に乗せた状態でグルグルと回転します。

姉は回転した状態で、銃を何発も発砲した為、周囲の人達が次々と死んでいきます。

さらに、アナスタシアが動かした洗濯機が謎の水漏れを起こし、屋敷全体が水浸しになった為、倒れたテレビやクリスマスツリーが放電し、次々と参加者が感電死していきます。

揉み合いになったフィリップとパラヴェウ、ジョルダンとグロリアも、周囲が感電死する中、殴り合いを続け、そのまま死んでいきます。

生き残ったアナスタシアは、参加者が死んでいるパーティー会場の様子に愕然とし、落ちていた銃を拾います。

ですが、物音に驚き銃を発砲し、ダニエルとアンジェリカを撃ち殺してしまいます。

さらに、アナスタシアはバスルームで配達員の首吊り死体を見つけ、驚いて足を滑らせ、頭を強く打って死亡します。

時間軸は戻り、1月1日の屋敷内。

2人の刑事が、参加者の死の真相に辿り着ける訳もなく、半ば諦めた様子で、2人は屋敷を立ち去ります。

映画『みんな死んだ』感想と評価

(c)Netflix

大晦日の夜に開催された、若者が集まるパーティーで起きた、あまりにも酷い悲劇を描いた映画『みんな死んだ』。

本作の物語の軸は、タイトルにもある通り「何故、参加者全員が死んでしまったのか?」という部分ですが、サスペンスのような仕掛けなどがある訳でなく、ラストの20分ぐらいで、いきなり皆が死んでいきます。

薬やアルコールでハイテンションになった若者達が、本能の赴くままに行動した結果、参加者全員が銃で撃たれたり、感電死しながら倒れていく光景は、本当に酷いのですが、本作を楽しむには、常識のハードルを下げる必要があります。

常識のハードルを下げると言うのは、人が死ぬのは悲しいし、良くない事であるというのは前提として理解したうえで、あえてモラルを捨てて本作を楽しむという事です。

そうすれば、実は本作にはユニークなメッセージが込められており、かなり真面目に作られている事が分かります。
本作の魅力は、多彩な登場人物が織りなす群像劇であるという点です。

恋人に相手にされなくなり、スピリチュアルにハマってしまったアナスタシア。

アナスタシアの恋人で、普段はアナスタシアの事を気にもしてないのに、裏切られた時だけ激怒するラッパーのジョルダン。

母親ほどの年齢差があるグロリアを好きになったパラヴェウと、そのグロリアの息子で、パラヴェウとグロリアの関係が受け入れられないフィリップ。

清純そうに見えて、激しい性交を求めていたアンジェリカと、その期待に応える為に、極端に性格が変化したダニエルなど、登場人物は本当に個性的で、それぞれのキャラクターが、現実世界にいそうなリアリティを持っており、極端にぶっ飛んでいないという、必ず誰かに親近感を抱いてしまうような設定になっています。

そんな個性的な人達が、パーティー会場で出会い、交わってしまったことで、前半では語られていなかった、意外な関係性が続々と明らかになります。

そこから、参加者全員が死んでいく怒涛のクライマックスに持ち込む展開は、かなり捻りがきいていて面白かったですね。

では、映画『みんな死んだ』に込められたメッセージは何かと言うと、それは配達員が遺した文書から読み解けます。

ピザの配達員は、医学を勉強している学生で、アルツハイマーの母親を救う為、治療の為の仮説を立てており、その仮説をトイレットペーパーに残しました。

そのトイレットペーパーに残した仮説も、新人刑事がトイレに流してしまうので、本当に酷い話ですが、この仮説には「化学反応」の定義が記されています。

「全ての生物は原子で構成され、それぞれの原子は性質ごとに分類される」「原子は相互に反応して化学反応を起こす」という内容です。

つまり、本作に登場する個性的な人物達が原子とするならば、さまざまな性質が集まったパーティー会場で、最悪の化学反応を起こしてしまった為、みんな死んでしまったという事です。

では、違う出会いを方をしていれば、幸せになる未来もあったのでしょうか?

本作のラストでは、唐突にアンジェリカとダニエルの結婚式が始まります。

パーティー会場にいた参加者たちは、参列者となり、全員が純白の衣装に身を包み、アンジェリカとダニエルを祝福します。

この世界では、全員が成功し、全員が愛に溢れている事が分かります。

この世界が何なのかと言うと、作中でアナスタシアとフィリップの会話に登場する「並行世界」です。

「並行世界」とは、現実とは違う結果が起きた、もう1つの世界という事で、パラレルワールドとも呼びますね。

人と出会い知り合うという、普段当たり前のようにやっている事は、実は「化学反応」のようなもので、結果的に最悪の事態に繋がるかもしれませんが、人と人が通じ合うという事で、大きな「化学反応」が起き、人生そのものを変える可能性があるのです。

映画『みんな死んだ』は、後半は本当に酷い展開が続きますし、こちらの常識のハードルを下げる必要がありますが、語られているテーマは非常に哲学的と言う、かなり不思議な作品です。

まとめ

映画『みんな死んだ』は、毒の強い笑いが印象的なダークコメディです。

ですが、群像劇として、かなり練り込まれた作品で、メインとなる全ての登場人物が、最初と最後では、印象が大きく変わる辺り、本当に丁寧に作り込まれている事が分かります。

作品のテーマを語るのが、脇役だと思っていたピザの配達員ですからね。

哲学的なテーマも併せて、制作スタッフは、真面目に作品へ向き合ったという姿勢が伝わってきます。

いろいろと酷い事が起きる作品ですが、その酷さを受け入れれば、笑えてしまう内容ですので、是非常識のハードルを下げて楽しんでほしいです。

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