映画『サニー/32』は撮影が行われた新潟地区は2018年2月9日(金)新潟・長岡先行公開され、続く2月17日(土)から全国公開されます。
『凶悪』のスタッフやキャストがふたたび集結した話題作で、演出は白石和彌監督、主要な出演に凶悪コンビのピエール瀧やリリー・フランキーも参戦!
また本作は犯罪史上、もっとも可愛い殺人犯サニー役を人気アイドルの北原里英が熱演しています。しかしそこに…。
CONTENTS
1.映画『サニー/32』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【監督】
白石和彌
【キャスト】
北原里英、ピエール瀧、門脇麦、リリー・フランキー、駿河太郎、音尾琢真、山崎銀之丞、カトウシンスケ、奥村佳恵、大津尋葵、加部亜門、松永拓野、蔵下穂波、蒼波純
【作品概要】
映画『凶悪』の白石和彌監督と脚本家の高橋泉がふたたびタッグを組み、かつて殺人犯の少女サニー32はネットで神格化され、それを信奉し続けた男たちに誘拐監禁された女性教師の運命を描いたオリジナル脚本のサスペンス映画。
秋元康がスーパーバイザーを務め、NGT48の北原里英は映画初主演を果たしました。またピエール瀧&リリー・フランキーは、白石作品『凶悪』に引き続き出演。
そのほか『二重生活』の門脇麦や『関ヶ原』の音尾琢真、また『湯を沸かすほどの熱い愛』の駿河太郎も共演しています。
2.白石和彌監督のプロフィール
参考映像:『孤狼の血』(2018年5月12日公開)
白石和彌は1974年生まれの北海道出身。1995年に中村幻児監督主催の映像塾に参加します。
その後は若松孝二監督に師事すると、フリー助監督として現場での経験を積みます。
若松孝二監督の1997年の『明日なき街角』、2004年の『完全なる飼育 赤い殺意』、2005年の『17歳の風景 少年は何を見たのか』などの演出部に参加しながら、助監督として行定勲監督や犬童一心監督などの現場もこなしていきます。
2010年になると、長編映画の初監督作品『ロストパラダイス・イン・トーキョー』を公開すると注目を集めるようになります。
2013年の『凶悪』は、2013年度新藤兼人賞金賞をはじめ、日本アカデミー賞優秀作品賞や脚本賞ほか各映画賞を獲得し、一躍脚光を浴びます。
また、2016年に公開した日本警察史上最大の不祥事と呼ばれた事件を描いた『日本で一番悪い奴ら』や、2017年の『彼女がその名を知らない鳥たち』など、評価は鰻登りな監督です。
白石監督の仕掛ける!北原里英と門脇麦も“凶悪”タッグ
本作『サニー/32』は、『凶悪』の白石和彌監督と脚本家の高橋泉がふたたびコンビを組んだことに、白石組ならではの“鬼畜ぶり”が好きなのあなたのは、大いに注目を集めるところでしょう。
そこは安心してください!
小田武役のリリー・フランキーは、脚本をはじめて読んだ印象を「もう、本当に、このひとたちは…。とあきれるくらい白石節、高橋節」と語っています。
しかしも今回は、秋元康がスーパーバイザーとして参加!
彼の方から白石監督に、NGT48の卒業を控えた北原里英を主人公の映画を制作してほしいと直訴を持ちかけたようです。
白石監督は映画初主演ながら熱演を見た北原里英というアイドルを使い、白石節の鬼畜さを純化させています。
北原里英が主人公を果たした『サニー/32』について、次のように作品の方向性を述べています。
「北原里英の秘めた破壊力がこの作品で解き放たれます。この作品は脚本の高橋泉氏と、いずれは取り掛からなければならない物語だと酒を飲む度に話し合ってきた念願の企画です。瀧さんとリリーさんのプロレス的タッグマッチにセメントをしかける北原里英と門脇麦という構図です。みんな狂っていて、悲しく恐ろしい。
閉鎖的な社会に生きる少年少女たちの行き場のない魂の慟哭。北原里英、飛べ! 飛んで救いに行け! この作品は純然たるアイドル映画です。そう簡単に卒業させません」
映画の鑑賞をされると、白石監督のプロレス的タッグマッチという例え話は、とても分かりやすい表現です!
また、「いずれは取り掛からなければならない物語」この言葉が示すように、本作が社会的にもインパクトがあった実話をモチーフにしていることが読み取れます。(これについては「5.感想と評価の章」で触れます)
演じる俳優たちは誰もがプロレスラーのようで、ピエール瀧とリリー・フランキーの『凶悪』タッグに、確かに挑む北原里英と門脇麦タッグ、ほかのキャストたちも次から次にデスマッチを繰り広げています。
本作の舞台となる設定やネット観戦者たちは、“疲弊した密室という四角いリング”にいる臨場感を感じられます。
白石監督と高橋脚本という凶悪コンビのクリエイターが仕掛けた“過激な生き残りデスマッチ”に注目しましょう!
4.映画『サニー/32』のあらすじ
教員の仕事や私生活でもパッとしない中学校教師の藤井赤理は、“心のどこかで危険な冒険”に憧れを持っていました。
盗聴や不法侵入されたストーカーに追われながら、それを楽しんでいたのです。
しかし、24歳の誕生日を迎えたその日、これまで自分を追い回していたストカーは警察に身柄を拘束されてしまいます。
その直後、今度は藤井赤理が何者かに拉致されてしまいます。
廃屋らしき場所で目を覚ました赤理は、2人組の柏原勲と小田武という男がそこにはいました。
小田はビデオカメラを持ち、拘束した赤理を必要なまで撮影し、柏原は「ずっと会いたかったよ、サニー…」と、彼女に親近感を持ちそう呼びます。
赤理をサニーと呼んでいる柏原は、新潟の雪深い山麓の廃屋へと連れ去り、彼女を監禁していました。
“サニー”とは、かつて世間を騒がせた、小学生による同級生殺害事件の犯人の通称です。
その事件とは、当時11歳であった小学生女児が同級生の命を、突然、カッターナイフで命を奪ったというものでした。
事件の発覚後にマスコミがメディア媒体に使用した被害者の写ったクラス写真から、加害者の女児の顔も割りだされてしまいます。
その犯行とのギャップのある、まだ幼くいたいけな女子児童ルックスから、“犯罪史上、最も可愛い殺人犯”と、たちまちネットを中心に神格化していき、狂信的な信者を生み出すことになります。
特に出回った写真の独特の決めポーズである、右手が3本指、左手は2本指でハンドサインが話題を集め、信者たちの間で「32(サニー)ポーズ」と名付けられます。
それから加害女児は“サニー”と呼ばれるようになりました。
奇しくも、サニーの起こした犯行から14年目の夜に、2人組みの柏原よ小田によって拉致監禁された赤理。
柏原も小田もカルト的なサニー信者で、2人は好みのドレスに着替えさられた赤理は、画像や動画をネット上の「サニーたんを愛する専門板www」にアップされてしまいます。
赤理は正気を失っていきながらも、柏原や小田の居ない隙を見計らい、必死に豪雪地帯の監禁部屋から脱出を試みます。
しかし、それは驚愕の序章の始まりにすぎませんでした…。
5.映画『サニー/32』の感想と評価
『サニー/32』は実話をモチーフにした野心作
『凶悪』でタッグを組んだ白石和彌監督と脚本家の高橋泉が、「いずれは取り掛からなければならない物語」として映画化の構想を話し合っていた本作『サニー/32』。
この作品で柏原勲役を演じたピエール瀧は、脚本を読んだ印象について、「相変わらずの白石組特有のぶっ飛んだ脚本なのです」としながら、その特徴について次のように述べています。
「今回の悪事は鬼畜ぶりがこれまでとは異質というか特異というか…。脚本を読んだ段階では仕上がりが想像できない不思議な話でした。様々な社会現象がちりばめられた本作をネタ探しで楽しむのも良いかと思います」
ピエールの語る「様々な社会現象がちりばめられた本作をネタ探し」とは、実話の出来事を着想を意味しています。
もちろん、あなたも既にお気付きとは思いますが、2004年6月に起きた「佐世保小6女児同級生殺害事件」を基にし、出来事をモチーフに映画制作の骨格をなしています。
これについて白石監督は脚本担当の高橋泉との対談で、長崎県佐世保の「NEVADA事件」から着想を得ていると明言しています。
仲の良かった同級生に犯行を及んだカッターナイフ、当時ネットに一早く上がっていた加害女児の赤い手の画像など、多くの類似点を作品から想起させられます。
また、ほかにもオウム真理教事件なども連想させますし、ネット社会が生み出していく人の闇もしっかりと描かれています。
モチーフとなった事件は、当時あまりにショッキングな出来事であったことから、文科省は「長崎県佐世保市女子児童殺害事件」として談話を出し、事件についてコメントした政治家の内閣府特命担当大臣や財務大臣も失言をするほどでした。
しかし、白石監督はクリエーターとして、あくまで事件はモチーフに留めて扱うように決めていました。
極限に追い詰められてこそ、真のアイドル映画⁈
脚本を担当した高橋泉は、「NEVADA事件」を忠実に再現してしまうと、“遊びのない映画”になってしまうことから、間口を広げることを意識したそうです。
その方法として、“高橋流のアイドル映画”を模索してみようようと心がけました。
一方で白石監督は話し合いに出た、“アイドル映画”の印象をこのように述べています。
「アイドル映画ってかつては、アイドルが極限まで追い詰められるほど涙なき魅力を引き出されていったんですよ。80年代の相米慎二監督の一連の作品なんかを見ると、特にそうで、現場で相米さんが「もう一回」と言ったら薬師丸ひろ子さんや斉藤由貴さんがそれこそ限りなく、何度でも演技を繰り返してきたわけです。「アイドルって過酷な撮影でもそこまで頑張れちゃうのか」と、インプットというか変な刷り込みをされちゃっただから今回も北原さんに全編、精神も肉体もギリギリまで酷使してもらっています」
確かにかつて“アイドル映画”という、はっきりとしたジャンルがあった昭和には、過酷な撮影に耐えた薬師丸ひろ子や斉藤由貴が、それまでには決して見せなかった表情をスクリーンに見せることを楽しみに劇場に出かけました。
言うまでもなく、そのことがあって現在の2人は演技派女優として活躍が出来るように、監督によって育てられていった事実があるでしょう。
本作では秋元康が「AKB48」「SKB48」「NGT48」を歴任した北原里英を、主演にする映画で「アイドルの枠を超え、女優としての器量を試してほしい」と企画を持ち込んだ経緯があります。
どのように北原里英が女優になったのか?
また極限に追い詰める“高橋&白石の仕掛け”に注目してください。
それは単純にアイドルらしからぬ過激な暴力描写などの演技をさせたわけではありません。
北原里英が真の演技をせざる負えない、最も過酷な選択を迫られる見せ場があります。
それこそが、“ネット上に現れた2人目のサニー”の存在です。
その役柄を果敢に演じた門脇麦が脚本を読んだ印象をこのように述べます。
「この脚本を面白い面白くないといった言葉でくくるのはナンセンスだと読み始め早々に感じました」
この役は彼女にしかできません。
北原里英と門脇麦がどのように相対するのか?刮目しましょう!
まとめ
本作『サニー/32』の映画としての豊かさは、白石和彌が気心の知れた脚本家の高橋泉とともに、“衝動で撮った作品”と言わしめた理屈抜きで楽しめるエンターテイメント性の高い作品の完成度です。
しかし、そこには社会的な背景にある問題を色濃く炙り出しているからこそ、濃縮度の“真のアイドル映画”となっています。
また、それを演じられるだけのキャストである、女優の素質を持ち熱演する北原里英というアイドルを中心に、ピエール瀧、リリー・フランキー、門脇麦などが揃っていて、見る者を決して飽きさせません。
北原里英はあなたにあなたにこんなメッセージを贈っています。
「この作品で新しい一歩を踏み出します!本当にたくさんの方に観て欲しいです。ぜひ白石監督の世界を楽しんでください!」
このように白石監督に憧れ、フェイバリット・ムービーが『凶悪』だという北原里英は、白石作品の核を見事に演じ果たしました。
さらにはそれだけでなく、新潟や長岡のロケーション撮影の場所もとても光っていました!
白石監督が師匠の若松孝二に着いて新潟を訪れて映画撮影の経験から、本作でキャメラに収められた撮影場所の選択は脚本がとてもよく活かされています。
脚本段階から候補地はあったとはいえ、白石組キャメラマンの灰原隆裕の映像も見どころと一言述べておきたいですね。
このようなスタッフやキャストが集結して、現代のリアルな空気感を取り入れ、実話をモチーフにしたセンセーショナルである作品。
だらこそ人間の本性を抉る映画『サニー/32』は、2018年2月9日(金)より新潟・長岡先行公開され、続く、2月17日(土)から全国公開されます。
ぜひ、お見逃しなく!