映画『ターコイズの空の下で』は、2021年2月26日(金)より、新宿ピカデリーほか全国順次公開。
ドイツで開催された第68回マンハイム・ハイデンベルク国際映画祭にて正式出品され、国際映画批評家連盟賞と才能賞をダブルで受賞した日本・モンゴル・フランス合作『ターコイズの空の下で』。
俳優出身のKENTAROが、劇場長編監督としてデビューを飾った作品で、キャストには日本人俳優の柳楽優弥と、モンゴル・アカデミー賞を3度受賞している俳優アムラ・バルジンヤムが共に主演を務めています。
言葉も価値観も異なる二人の青年が、モンゴルの自然や文化を背景に、人探しを通して成長する姿を描いたロード・ムービーです。
映画『ターコイズの空の下で』の作品情報
【公開】
2021年公開(日本・モンゴル・フランス合作映画)
【原題】
UNDER THE TURQUOISE SKY
【監督】
KENTARO
【キャスト】
柳楽優弥、アムラ・バルジンヤム、麿赤兒、ツェツゲ・ジャンバ、サラントゥーヤ・サンブ、サヘル・ローズ、諏訪太朗、西山潤、佐藤乃莉
【作品概要】
『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭にて、史上最年少で主演男優賞を受賞した、柳楽優弥が海外合作映画に初主演を果たした作品。
モンゴルを舞台に2人の男の旅路を描くロードムービーで、同じくダブル主演にで一緒に旅をする男には、モンゴルを代表する俳優アムラ・バルジンヤムが抜擢。モンゴルの壮大で美しい大自然をバックに描かれる人間ドラマに注目です。
第68回マンハイム・ハイデンベルク国際映画祭にて正式出品され、国際映画批評家連盟賞と才能賞。またポーランドの第28回エネルガ・カメリマージュやパリの第14回KINOTAYO現代日本映画祭などにも正式に出品。
映画『ターコイズの空の下で』のあらすじとネタバレ
ある日、体格のいい怪しい男がキョロキョロしながら歩いています。彼は馬小屋にいる馬を盗みます。アムラと言う名のモンゴル人の泥棒です。馬を操り颯爽と走り出し、馬小屋を後にします。
キングサイズのベッドには、若者と一緒に女性たちが寝ています。タケシと言う名の青年は、先ほど登場した大富豪で老人の孫です。
盗人は、まだ馬に乗って、長い一本道を猛進しています。彼の後ろから追いかけてくる二台のパトカー。
追ってくるパトカーを確認した馬泥棒のアムラは、尚も逃走を続けます。制止を促す警察官を無視し、依然として逃亡を続けます。
優雅なクラシックが流れる部屋には、たくさんの女性たちが集まっています。彼女たちは騒ぎながら、タケシを取り囲んで、楽しそうにしています。
頭を抱えて悩む老人。「恩は忘れられない」と話します。その社長は、出兵中だった1945年の収容所での出来事を回想します。
休みなく、黙々と働き続けた収容所時代。空だけが真っ青で、ターコイズ色だったと思い出していました。
ある女性が、今にも倒れそうになっている兵士に食べ物を差し出します。この記憶は、老人の若い頃の体験談です。
経営者の社長は孫であるタケシに電話をするように、秘書に頼みます。タケシはハンドルを握りながら、祖父からの電話を受け取ります。夕食に行こうと誘う祖父の言葉。 彼の誘いを断るタケシ。
また社長の回想が始まります。仲間の兵士と一緒に一心不乱に木を切っています。手を止めた目線の先には、前回食事を届けてくれた女性が、馬を連れて歩いています。
収容所にて、女性看護師が姿を現します。 傷の手当をするため、足に包帯を巻いています。兵士に食事を与え、看病している間に、彼らは恋仲になっていきます。
場面が変わり、また「三郎、お父さん」と社長が心の中で繰り返します。
警察署にて、馬を盗んだモンゴル人青年が、署長室に連れて来られます。「盗んだ馬をどうするつもりだったのか?」と社長は聞きます。
笑いながら「馬に乗って、モンゴルまで帰るつもりだったのか?」と再度聞きます。モンゴル人青年の度胸を褒める老人。
「この男を私に引き取らせて欲しい」と署長に申し出ますが、引き止められます。社長は「責任は持つ」と引き下がりません。
社長はモンゴル人青年を引き取る代わりに、自分の話を聞いて欲しいと言いました。
その悩みは孫のタケシについてです。親を亡くした彼を甘やかして育てたようです。何の目的もなく、毎日を過ごす孫が心配というのです。孫のタケシには生き甲斐を見つけたいと話します。
そこで、70年前にモンゴルで恋仲になった女性の間に出来た娘がいることを話します。何十年間ずっと、彼女のことを想い続けている言うのです。
「タケシを連れて、モンゴルへ言って欲しい。生き別れた娘を探して欲しい」と語りました。
映画『ターコイズの空の下で』の感想と評価
海外で俳優業をしながら、音楽、アート、ファッションなどでクリエイティブに活躍するKENTAROが、本作『ターコイズの空の下で』にて、本格的に監督としてデビューを果たしました。
ジェット・リー主演の『キス・オブ・ザ・ドラゴン』(2001)や、 ジャッキー・チェンとクリス・タッカーのバディ・ムービー『ラッシュ・アワー3』などで、出演経験を持つKENTAROが、第一作長編映画の題材に選んだのは、登場人物たちの心が再生していく過程を描いた人間ドラマです。
祖父が、運営する会社の収益で自堕落に日々を過ごしていた青年。ある時、その祖父からモンゴルで生き別れた娘を探す役割を与えられます。彼は、言葉が通じない国、見知らぬ土地、初対面の人々に囲まれて、唯一の肉親である祖父の娘を探すと言う壮大な旅を経験します。
KENTARO監督自身、第一回長編作品でありながら、物語の伏線も張りながら、しっかりとした回収で描いています。
例えば、劇中の冒頭で2回ほど挟まれる「サブロー、お父さん」と言う老人の声が、最後に大きく活かされています。高齢の男性の後悔と悔恨の念が、ストーリーのラストで回収され、観る側に感動を呼び起こすでしょう。
また、実力派俳優の柳楽優弥の演技力にも魅了されるでしょう。特にモンゴル人女性が出産する場面での演技にも注目です。言葉が通じない中、突然妊婦の陣痛が始まる時に、柳楽優弥が見せる「新しい命を思いやる表情」を目を留めて欲しいです。
さらに、『罪の余白』(2015)や『彼女は夢で踊る』(2020)の撮影を務めたアイバン・コバックの撮影も見事でした。
新しい命が誕生する瞬間を神秘的な空間として見せるため、ゲルの上から照明を当てるという気遣いは、『ゴーストマスター』(2019)や『滑走路』(2020)などで照明技師を務めた、中村晋平の美しい工夫があってこそでしょう。
そして、これらのことを大いに活かしたのは、日本ではあまり見ることができないモンゴルの民族衣装のデールや楽器の二胡、民族舞踊、遊牧民が暮らすゲルと言った、その土地ならではの暮らしや文化が貴重な映像として見れるのも、本作の魅力です。
まとめ
日本とモンゴルの合作映画『ターコイズの空の下で』は、自分とは一体何者なのか、どういう生き方をすれば良いのかと問いかけるような物語です。
モンゴルの草原で自身の過去と対峙し、人生を見つめ直そうとする主人公の姿に共感が高まります。
オリジナルの脚本の中に登場人物たちの心情を落とし込み、難しい題材に挑んだ監督としての手腕が、本作で発揮されています。
離ればなれになってしまった娘を探す旅は、主人公タケシの気持ちに変化を予想以上に引き起こします。
経営者としても、1人の青年としても、一段と逞しくなった姿を見れるようにもなります。
困難や苦悩に直面しながら、主人公の心が変化していく過程を描いた本作のテーマは、誰もが経験したことがあることではないでしょうか。
映画『ターコイズの空の下で』は、2021年2月26日(金)より、新宿ピカデリーほか全国順次公開