連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第44回
イリース・デュラン監督が手掛けた映画『エマの秘密に恋したら』が、2021年1月8日(金)新宿武蔵野館にて先行上映され、1月22日(金)からイオンシネマ他全国公開されます。
原作は、「レベッカのお買いもの日記」シリーズで人気の作家ソフィー・キンセラによるベストセラー小説。
搭乗した飛行機が乱気流に巻き込まれて墜落を覚悟した主人公エマが、遺言のように隣の席の男性に自分の秘密を打ち明けますが、その男性は会社のオーナーでした。最悪の出会いから始まる恋を描いたラブコメディです。
『カリフォルニア・ダウン』のアレクサンドラ・ダダリオがちょっとカッコ悪いけれどチャーミングな主人公を演じています。
映画『エマの秘密に恋したら』の作品情報
【日本公開】
2021年(アメリカ映画)
【原作】
ソフィー・キンセラ:『エマの秘密に恋したら…』
【脚本】
ピーター・ハッチングス
【監督】
イリース・デュラン
【キャスト】
アレクサンドラ・ダダリオ、タイラー・ホークリン、スニータ・マニ、デビッド・イーバート、キミコ・グレン、ラバーン・コックス
【作品概要】
映画『エマの秘密に恋したら』は、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストにランクインし、40か国語以上に翻訳されたソフィー・キンセラの小説『エマの秘密に恋したら…』をイリース・デュランが映画化したものです。
『バチェロレッテ -あの子が結婚するなんて!』(2012)の製作スタッフが、『カリフォルニア・ダウン』(2015)のアレクサンドラ・ダダリオを主役に迎え、爽快なユーモアで女性たちの共感を集める作品を作り上げました。
映画『エマの秘密に恋したら』のあらすじ
ニューヨークに支店を構えるオーガニック飲料の大企業で働くエマ。仕事ではなかなか能力を発揮できず、落ち込んでいたところに、昇進のチャンスが訪れます。
ところが、そのチャンスとなるべく出張先でクライアントとの会議に大失敗します。
傷心のまま搭乗した帰路の飛行機が乱気流に巻き込まれました。
“退屈な仕事にパッとしない恋人。私の人生、これで終わるなんて!”と、パニックと悔しさから自分を見失ったエマは、隣の席の見知らぬ男性に、誰にも言えない秘密をすべてぶちまけてしまいます。
気が付いたら飛行機は無事に着陸していました。
迎えに来た現在の恋人と帰路についたエマですが、次の日に何事もなかったかのように出社すると、オフィスはカリスマオーナーであるジャックの来社ということに沸いていました。
ところが、そのオーナーであるジャックこそが“飛行機の隣の席の男性”だったのです。
秘密を全部暴露したエマは、大慌てになるのですが……。
映画『エマの秘密に恋したら』の感想と評価
『エマの秘密に恋したら』の主人公エマはちょっとドジですが、奔放な明るい女性です。
恋人の趣味を自分では好きではないと思いながらも、自然な成り行きで好きなふりをしたりと、普通の女性が抱えているような悩みを持ち、本当の自分を隠しながら、毎日をおくっているようなところがありました。
飛行機が墜落すると思い、自分の人生はここまでと思って、胸の中にしまい込んでいた秘密を隣に座る見知らぬ男性に全部暴露したエマ。
話し終わって無事に飛行機も目的の空港に着陸し、やれやれと思った次の日、その秘密を打ち明けた男性が会社のオーナーとして再び目の前に現れました。
秘密を打ち明けた相手には、一番恥ずかしいところを知られたような気がするでしょう。
秘密を洗いざらい打ち明けてしまった人には、二度と会いたくないと思うのが普通でしょうから、会うはめになってしったエマはどんなに驚きあせったことでしょう。
秘密は、大なり小なり、人との信頼関係を左右させます。親しい間柄では、いいことも悪いことも全て話して欲しいと思うものでしょうか? それとも悪いことは秘密のままでいて欲しいものなのでしょうか?
様々な意見があるでしょうが、隠し事のないクリーンな関係が一番理想的です。ですが、全てを話していい相手がそうそう多くいるとは思えません。
全てを話していい相手かどうか、駆け引きなしでサイテーの選択と出会いをしてしまったエマですが、“秘密を知られた”という出来事は、エマを“素の自分”でいる強い女性に変えていきます。
エマの変化とエマが本物の恋を見つけるシンデレラストーリー。エマを演じるアレクサンドラ・ダダリオと、ジャックに扮するタイラー・ホークリン の息のあった演技も見ものです。
まとめ
人生の終わりだと思って、自分の秘密を隣に座る見知らぬ男性に話してしまい、のちにその男性が会社のオーナーと知ったエマ。
最悪の出会いから、自身の成長にもつながる物語が始まります。
喜怒哀楽がはっきりする顔立ちのアレクサンドラ・ダダリオは、たとえセリフがなかったとしてもエマの気持ちが明確に伝わる演技をしています。
自分の感情のままに笑い、泣き、怒るエマ。彼女はエレガントなレディではないけれども、自分に正直なチャーミングな女性と思えます。
“秘密を知られる”ということを弱点を握られると考えず、“ありのままの自分を知ってもらう”とプラス思考で考えたとき、新たなシンデレラストーリーが生まれてきます。
映画『エマの秘密に恋したら』は、全てをさらけ出し本音で人と向き合う大切さを、さりげなく教えてくれる作品でもあるのです。