信じぬくんだ。たとえ、ひとりになっても。
未来は信じ続けた夢でできている。
お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣が、2016年に発行し、発行部数55万部を超えるベストセラーとなった絵本『えんとつ町のプペル』が、アニメ映画化となりました。
絵本制作にあたっては、クラウドファンディングで資金を募り、絵本界では異例となる、イラスト、着色、デザインを分業化し、総勢33人のクリエイターにより、4年の歳月をかけて丁寧に作りあげられた『えんとつ町のプペル』。
今回の映像化により、絵本のキャラクターたちに命が吹き込まれ、生き生きとスクリーンの中を動き回ります。
「えんとつ町」は、夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる、現代社会の風刺。夢を信じ続けた先の未来を、あなたも見てみませんか?アニメ映画『えんとつ町のプペル』を紹介します。
映画『えんとつ町のプペル』の作品情報
【日本公開】
2020年(日本)
【原作・脚本・製作総指揮】
西野亮廣
【監督】
廣田裕介
【キャスト】
窪田正孝、芦田愛菜、立川志の輔、小池栄子、藤森慎吾、野間口徹、伊藤沙莉、宮根誠司、大平祥生、飯尾和樹、山内圭哉、國村隼
【作品概要】
原作者のキングコング西野亮廣が自ら製作総指揮・脚本を手掛け、絵本では描き切れなかった「えんとつ町」の本当の物語を鮮明に映像化したアニメ映画『えんとつ町のプペル』。
監督は、伊藤計劃原作「ハーモニー」のCGI監督をはじめ演出も手掛ける廣田裕介監督。アニメーション制作は『怪獣の子供』『鉄コン筋クリート』とクオリティの高さが評判のSTUDIO4℃が務めます。
声優陣には、ゴミ人間プペル・窪田正孝、ルビッチ・芦田愛菜、そのほか小池栄子、立川志の輔、藤森慎吾、宮根誠司など、俳優からお笑いタレントまで幅広い層の芸能人が集結となりました。
劇中歌にはHYDE、ロザリーナが主題歌を務めるほか、秋山黄色、粉ミルク、ALONEと気鋭アーティストたちが楽曲を提供。物語の主要なシーンを盛り上げる素晴らしい曲ばかりです。
映画『えんとつ町のプペル』のあらすじとネタバレ
えんとつだらけの町「えんとつ町」は、朝から晩までもっくもく。空はいつも黒い煙に覆われています。町の人たちは、その黒い煙の先に星空があることも知りません。
しかし、この町に住む、えんとつ掃除屋の男の子・ルビッチだけは、星の存在を信じていました。
今日はハロウィン。お化けに仮装した子供たちが、楽しそうに歌いながら踊っています。町がにぎわう中、黒い煙に覆われた空の上から、赤く光る塊が落ちてきました。
ドクンドクン!強い鼓動を発する赤い塊はまるで心臓のようです。物凄い勢いでゴミ山に落ちた塊は、竜巻を巻き上げゴミを纏っていきます。
現れたのは、頭はオンボロ傘、口はバケツ、壊れた望遠鏡の目、体全体がゴミで出来た「ゴミ人間」でした。プハーッと、口から吐き出されるガスは、とても臭そうです。
ゴミ人間は、ハロウィンの仮装に交じり町に溶け込んだようでしたが、次々仮面を脱いでいく子供たちに、その存在が知られてしまいます。「きゃー、ゴミ人間、くさいー」。
町の治安を守る異端審問官が、ゴミ人間を追いかけます。ゴミ箱の中に隠れるゴミ人間。そのままゴミ収集車に回収されてしまいました。
「助けてくださーい」。車の荷台のゴミの中から、その声を聞いたルビッチは「おいおいおい、人が埋もれている、ヤバイヤバイ」と、運転手に伝えようと頑張ります。
車を追いかけるうちに、なぜかゴミ収集車の荷台に落ちてしまうルビッチ。声の主を引っ張り出してみると、見たこともないゴミ人間でした。
ゴミ収集車が、ゴウゴウと燃え盛るゴミ焼却炉に到着します。「なんで僕までー!」ルビッチとゴミ人間の脱出劇が始まります。
火の中に落とされそうになるのを必死で走り、トロッコに飛び乗りジェットコースターさながら駆け抜けます。
絶妙なコンビネーションでどうにか切り抜けたルビッチとゴミ人間。帰る場所がないと言うゴミ人間に「じゃあ、僕と友達になって!」とルビッチは家に誘います。
ルビッチはハロウィンの夜、母親に友達と遊ぶと嘘を付いて、えんとつ掃除の仕事に出ていました。友達がいないことを病気がちな母親に心配させないためです。
「トモダチって何ですか?」分からないゴミ人間に、ルビッチは答えます。「隣にいてくれる人だよ」。「隣にいるだけでいいんですね。頑張ります、友達」。
名前がないゴミ人間に、ルビッチは「ハロウィン・プペル」と名付け、臭い体を洗ってあげました。
「わたし、トモダチ得意かもしれません」。ルビッチとプペルはいつも一緒です。えんとつのてっぺんに座り、ルビッチはプペルに誰にも言ったことがない自分の夢を語ります。
それは、あの黒い煙の向こうには星があると信じていることです。ルビッチは、父親のブルーノからこの世界の上には、青い空や星があることを聞いていました。
そのことを紙芝居にして子供たちに伝えていた父親ブルーノは、最後まで嘘つき呼ばわりされ、ある日海に落ちて亡くなったのでした。
外の世界には、母親の病気を治す薬もあるかもしれない。諦めず信じろ。ひとりになっても、上を見続けるんだ。父親の言葉を信じ続けるルビッチ。
プペルは、そんなルビッチのことを悪く言う子供たちに絡まれ、思わず星を信じていることを言ってしまいます。たちまち危険人物として異端審問官が動き出しました。
異端審問官は母親の元に押しかけ、ルビッチ達を世話してくれた、えんとつ掃除屋のボス・ダンも何者かによって命を狙われます。
「なんで秘密を話したんだよ」。プペルを怒るルビッチ。「洗っても洗っても臭くなる。ゴミ人間がいるとみんな不幸になるんだ。なんで現れたんだよ」。
トボトボとゴミ山に向かうプペル。プペルは、ルビッチが落とした父親からもらったというブレスレットを、毎日探し続けていました。
映画『えんとつ町のプペル』の感想と評価
お笑い界の異端児・西野亮廣がついに革命の狼煙をあげました。お笑い芸人としてアンチの声を受けながら、コツコツと夢をあきらめず挑戦し続けた男が、現代社会にメッセージを放ちます。
絵本製作時から映画化を視野に入れ描いていたという『えんとつ町のプペル』。絵本の1ページ1ページがアニメーションにより動き出します。
絵の緻密さ色彩の美しさはそのまま、設定開発にとことんこだわり、えんとつ町の町並みやエネルギー構造までを再構築し、魅力的なキャラクターを立体的に映像化。
アニメーションにしたことで、動きが楽しめるシーンがふんだんに盛り込まれました。例えば、ゴミ人間プペルと男の子ルビッチの出逢いのシーン。
ゴミ収集所での大脱出は映画化ならではの動き重視のシーンとなりました。トロッコに乗ってジェットコースターのように走り抜ける展開は、懐かしいゲームの世界を彷彿させます。
また、キャラクターに声が吹き込まれたことで、テンポの良い掛け合いやコミカルな展開が楽しめます。
プペル(声:芦田愛菜)とルビッチ(声:窪田正孝)は絵本より饒舌で、まるで漫才を聞いているかのよう。映画オリジナルのキャラクター、鉱山泥棒のスコップ(声:藤森慎吾)は、おしゃべりキャラでストーリーを盛り上げます。
映画『えんとつ町のプペル』は、絵本で描き切れなかった「えんとつ町」の奥深い世界を描いていますが、なかでもルビッチの父親ブルーノの物語は新たな感動を生みました。
ブルーノの夢を信じあきらめない父の姿こそが、息子のルビッチに影響を与えていたこと。最後までルビッチの側で、温かく見守り続けた親子の絆が明らかになります。
そのほか、絵本には描かれなかった部分として「友達」「仲間」というキーワードが浮かび上がります。
ルビッチはプペルに「友達になって」とお願いします。友達とは隣にいること。そして、プペルは最高の友達になります。周りに流されず相手を信じること。やはり信じる力が必要なのです。
そして、映画ではルビッチを応援してくれる大人たちも登場します。プペルの正体を知りながら仕事を与えてくれる、えんとつ掃除屋ボスのダン。頼れる姉貴分ドロシー。計画に協力してくれる鉱山泥棒スコップ。
最初はいじめっ子だった子供たち、アントニオ、レベッカ、デニスも、最後はルビッチとプペルを助けます。
可笑しなことを言うとバカにされていたルビッチは、信じ続けて行動することで気付くと、ひとりではありませんでした。仲間の存在がルビッチをさらに強くしました。
さらに、絵本と映画化の違いはラストシーンにもありました。絵本では、ルビッチとプペルだけが船で空へ上がり星空を見つけるというエンディングを迎えますが、映画では無煙爆弾で黒煙を吹き飛ばし、町の人たちにも星空を見せてあげます。
これにより、世界が変わるのです。えんとつ町を支配していたレター15世は、外の世界を250年も隠してきた、えんとつの煙を止めることを指示します。外の世界へと誰もが旅立てる新しい未来がやってきました。
これは、現代日本社会の風刺ともいえるストーリーとなっています。夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる。身をもって経験してきた西野亮廣と、最後まで信じて夢をあきらめなかったルビッチの姿が重なります。
まとめ
原作者の西野亮廣が自ら製作総指揮・脚本を手掛けアニメ化した映画『えんとつ町のプペル』を紹介しました。
ひとりぼっちになっても自分の夢を信じ、動くことを止めなかったルビッチ。その力は周りを変え仲間を呼び、その先には明るい未来が待っていました。
この物語は、ひとりひとりの物語でもあります。自分には無理だ。現実をみなければ。周りに合わせよう。自分に言い訳をし、夢をあきらめてきた大人たちにこそ見て欲しい作品です。
今こそ、自分の中に湧き上がる声に耳を傾けよう。下ばかり見ていても何も見つからない。上をみなければ。