映画『夏、至るころ』は2020年12月4日より公開。
2020年12月4日(金)より、渋谷ホワイト シネクイント、ユナイテッド・シネマキャナルシティ13ほかにて全国順次ロードショーしている映画『夏、至るころ』。
映画『夏、至るころ』は、映画『貞子』や『ルームロンダリング』の主演女優として知られる池田エライザの初監督作品です。
映画初主演の若手俳優である倉悠貴と、新人俳優の石内呂依が高校3年の夏休みに将来にまよう青年をみずみずしく演じ切りました。
また、祖父母役にリリー・フランキーや原日出子、教師役に高良健吾が脇を固めているのも注目です。
映画『夏、至るころ』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【監督・原案】
池田エライザ
【キャスト】
倉悠貴、石内呂依、さいとうなり、安部賢一、杉野希紀、リリー・フランキー、原日出子、高良健吾、大塚まさじ、後藤成貴
【作品概要】
「地域」「食」「高校生」をテーマにした青春映画制作プロジェクト「ぼくらのレシピ図鑑」シリーズ企画の一作品です。
監督を務めた池田エライザは、舞台となる福岡県田川市におとずれ地元の人々との座談会を通して本作の原案を構想しました。
田川市の町おこしの役目もあるので、地元の食事も堪能したそうで、本作の食卓のシーンにはその美味しそうな料理が登場します。
小学生のころから小説を書き、エッセイや短編小説を書きためてきたという池田にとって憧れだった監督デビューが念願叶った作品です。
主人公の翔役を務めたのは倉悠貴。ドラマ『トレース/科捜研の男』(2019)でデビューのち、メ~テレ『his ~恋するはずなんてなかった~』(2019)に出演しています。2021年公開予定の今泉力也監督の映画『街の上で』や、土井笑生監督の『衝動』では主演を務める新鋭俳優のひとりです。
親友の泰我役の石井呂依はオーディションで役を勝ち取った新人俳優です。ドラマ『左手一本のシュート』(2000)、『MIU404』
(2000)に出演しています。
映画『夏、至るころ』のあらすじ
舞台は福岡県の田川市。父母と祖父母、そして幼い弟と暮らす翔(倉悠貴)は、毎年地元の祭りで和太鼓を演奏していました。
高校3年の夏、和太鼓を一緒に続けてきた親友の泰我(石内呂依)が、受験に専念するために太鼓を辞めると言いだします。
いつもなにをするにも泰我と一緒だった翔は、どうしたらいいか分からなくなってしまいました。クラスでも自分のなりたいものについての話が持ち上がりますが、自分の進路ややりたいことについて見つからない翔。
そんなとき、祖父のおつかいで訪れたペットショップで不思議な女性、都(さいとうなり)に出会います。彼女は歌手の夢をあきらめて東京から帰ってきていました。
歌うことをやめようとする都と、公務員になるために受験に専念するという泰我と「自分のしあわせ」について話をするうちに、翔は少しづつ自分のこれからに向き合いはじめます。
映画『夏、至るころ』の感想と評価
将来に悩む青年たちの葛藤
自分のなりたいものや、やりたいことが分からないという悩みほど出口のないものはありません。
目的や夢があれば、そのために努力すべきことが見えてきますが進むべき道が見えないことほど漠然とした不安にさいなまれるものはないからです。
本作は、無限の選択肢や情報があふれている現代を生きる若者の、葛藤や成長を繊細に描いた作品でした。
主人公の翔は掴みどころのない少年で、親友の泰我からもなにを考えているか分からないと言われています。
そんな翔は自分にはない才能をもつ親友を羨ましく思えば思うほど自分が見えなくなっていきます。まわりと比べてもそこに自分の良さは隠れていないのに、それに気づくのはとても難しいことです。
そんな翔が笑顔を見せたのは、教師からあるものを受け取ったシーンでした。ここから彼は自分なりの答えに突き進んでいきます。
きっかけは些細なことでも、自分のやりたいことや幸せは自分のなかにしかないと気づいたのです。
だれの青春時代にも重なるというわけではありませんが、もやもやと自分のあり方について悩んだ経験のあるひとには重なる部分を感じることが出来るはずです。
俳優の演技をロケーションが引き立てる
主人公の翔を演じた倉悠貴と親友の泰我を演じた石内呂依のふたりの瑞々しい演技なしでは本作は語れません。
うつろな眼差しのなかにふいに見せる笑顔が輝く倉の演技は、翔のこれまで生きてきた人生や家族のあたたかさをも思わせるものでした。
実直で誠実な泰我を演じる石内呂依は、流れる汗まで爽やかで彼が主人公かと思う瞬間があるほど魅力的な存在感を放っていました。
このふたりの太鼓の共演はまさに青春の輝きそのもので、ほとばしる汗、力強い掛け声、太鼓にエネルギーを打ち込むそのシーンは必見です。
ふたりに影響をあたえる謎の女性、都の異質なキャラクターは映画の中に印象的な波紋を起こしたといえるでしょう。
彼女の周りだけ空気が違うような、さいとうなりの演技はつい目がいっていしまう不思議な魅力があります。
そして、舞台となった福岡の田川市の豊かな緑や昔ながらの商店街の雰囲気などが郷愁を漂わせ、俳優陣の演技を引き立てています。
学校のプールという青春時代の憧れのシチュエーションを赤色のワンピースとのコントラストで見せたシーンは美しく、印象深いです。
まとめ
リリー・フランキーと原日出子の祖父母夫婦は本作の安心感を底上げしていますが、教師役でほんの数分だけの高良健吾の登場シーンも本作のスパイスとなっています。
教師らしく諭すわけではなく、友達のような接し方で寄り添う姿がさりげなくも魅力的でした。
本作は、だれの青春時代にも重なるというわけではありませんが、もやもやと自分のあり方について悩んだ経験のあるひとには重なる部分を感じることが出来るはずです。
映画『夏、至るころ』は2020年12月4日より渋谷ホワイト シネクイント、ユナイテッド・シネマキャナルシティ13ほかにて公開、2021年1月29日(金)よりシネ・リーブル梅田、2月下旬よりアップリンク京都にて全国順次公開されます。