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Entry 2020/11/30
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大人の恋愛映画『パリのどこかで、あなたと』感想評価と解説レビュー。出会いと進展、そして距離感をフランソワ・シヴィルとアナ・ジラルドで魅せる|映画という星空を知るひとよ38

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第38回

リアルなパリの街並みを背景に、仕事や恋愛、人間関係にストレスを抱える男女の姿を描く『パリのどこかで、あなたと』が、2020年12月11日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテ ほか全国順次公開されます。

『おかえり、ブルゴーニュへ』を手掛けたセドリック・クラピッシュ監督が、同作で共演したアナ・ジラルドとフランソワ・シビルと再びタッグを組み、パリで暮らす不器用な男女の出会いを描いたフレンチ・ラブストーリーです。

心に痛みを抱える男女の孤独や不安は、いつか運命の出会いに繋がるのでしょうか。その成り行きが、切ないながらもどこかユーモラスに丁寧に描かれている作品です。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『パリのどこかで、あなたと』の作品情報

(C) 2019 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE – STUDIOCANAL – FRANCE 2 CINEMA

【日本公開】
2020年(フランス映画)

【原題】
Deux Moi

【英題】
Someone, Somewhere

【脚本】
セドリック・クラピッシュ、サンティアゴ・アミゴレーナ

【監督】
セドリック・クラピッシュ

【キャスト】
アナ・ジラルド、フランソワ・シヴィル、カミーユ・コッタン、フランソワ・ベルレアン、シモン・アブカリアン、アイ・アイダラ、レベッカ・マルデール、ピエール・ニネ、ジネディーヌ・スアレム、ヴィルジニー・ホック、ポール・アミ、マリー・ビュネル、パトリック・ダスンサオ、ギャランス・クラベル、ブリューヌ・ルノー、ルネ・ル・カルム

【作品情報】
『スパニッシュ・アパートメント』(2002)のセドリック・クラピッシュ監督が、パリを舞台に不器用な男女の出会いを描いたラブストーリー。隣り合うアパートメントで暮らしているのに互いに面識のない男女の姿を通して、仕事の不安やSNSの繋がりでは埋められない寂しさを描いています。

主演の2人は、セドリック・クラピッシュ監督の前作『おかえり、ブルゴーニュへ』(2017)でも共演したアナ・ジラルドとフランソワ・シビル。

映画『パリのどこかで、あなたと』のあらすじ

(C) 2019 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE – STUDIOCANAL – FRANCE 2 CINEMA

パリの街に住むメラニーは、がんの免疫治療の研究者として働いています。元恋人との恋愛を引きずりながらも仕事に追われる日々を過ごしていました。

一方、倉庫で働く内向的な性格のレミーは、同僚が解雇されるも自分だけ昇進することへの罪悪感とストレスを抱えています。

2人は隣り合うアパートメントでひとり暮らしをしているのですが、お互いの存在に気がついていません。

忙しい仕事のストレスからか、メラニーはいくら寝ても寝足りない過眠症に、レミーは眠れない不眠症に苦しむ日々が続き、2人はそれぞれセラピーに通い始めることにします。

そんな中で友人からマッチングアプリを勧められたメラニーは、出会った男性たちと一夜限りの関係を繰り返していましたが、過去の失恋で空いた心の穴を埋められずに思い悩んでいました。

かたや、元同僚への罪悪感を抱えながら孤独な日々を送るレミーは、職場で出会った女性をデートに誘いますが、うまく距離を縮めることができません。

都会の喧騒の中、同じように孤独を埋められない2人ですが、同じ時間帯に出勤し、同じ電車に乗り、同じ店で買い物をしているのに、道ですれ違うことはあっても、知り合うことはなく時だけが流れていきます。

映画『パリのどこかで、あなたと』の感想と評価

(C) 2019 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE – STUDIOCANAL – FRANCE 2 CINEMA

同じ町で、しかも隣同士のアパートに住む同年代のレミーとメラニーが主人公です。2人は何度もすれ違っているのに、お互いの存在に気がつきません。

仕事のストレス、恋愛の悩みなど、30歳という年齢が抱えるであろう大人の悩みに翻弄される2人の姿を、セドリック・クラピッシュ監督が温かく、ユーモラスに描き出しました。

SNSで知り合った男性と一夜を共にしても、心の空洞が埋められないメラニー。

リストラされた職場の仲間に対して罪悪感を持ちながら鬱屈した孤独な日々を過ごすレミー。

隣り合ったアパートのベランダから見える列車と町並み。日用品を買うマーケット。駅までのおしゃれな路。すべてが絵画のように美しいパリの街で、2人は面白いほどすれ違います。

すぐ隣にいるよく似た境遇の2人なのに、どうしてその存在に気がつかないの? とやきもきしますが、そこが監督の狙い処なのでしょう。

このようなことは誰もが経験することかもしれません。自分が気が付かないだけで、お隣にはとても気の合う良い人がいたりして……。人生がもたらす気まぐれないたずらもあるかも知れません。

特に大きな事件や出来事が起こるでもなく、淡々と進む時の流れのなかで、いつか出会う運命の人を待ちわびている孤独な2人を、いつしか応援したくなります。

メラニ―がSNSを利用して一夜のフレンドを求めているのを見て、インターネットやSNSを利用して、人と人との社会的な関係は生み出せるのか、という疑問もわいてきます。

寂しさに耐えかねてSNSに出会いを求めても、空虚な気持ちを埋められないメラニーからは、“都会の中の孤独”がひしひしと伝わってきました。

同じように、職場の仲間のことで悩みながらも誰にも打ち解けて話せないレミーもまた“都会の中の孤独”を味わっていると言えるでしょう。

それは、どう克服すればよいのでしょう。誰もが体験する身近な問題とも言えますが、本作においては、カウンセラーなどで心の成長を遂げたメラニ―とレミーが、“都会の中の孤独”を上手く乗り越えようとします。

現在社会はSNSの存在に慣れきってしまっています。便利なツールはなくてはならないものになっていますが、本当の意味の出会いは、すぐ身近にあるものなのかもしれません。

まとめ

(C) 2019 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE – STUDIOCANAL – FRANCE 2 CINEMA

映画『パリのどこかで、あなたと』は、現代フランス映画界を代表するセドリック・クラピッシュ監督が、パリを舞台に不器用に生きる2人の男女の成長と出会いを描いた作品です。

“都会に暮らす大人”たちが抱える悩みや寂しさを、30歳という人生の節目を迎えた男女を通して丁寧に描いています。

メラニーを演じるアナ・ジラルドとレミーに扮するフランソワ・シヴィルは、二度目の共演ということもあり、交わりそうで交わらない2人の距離感を上手く醸し出す息のあった演技を披露しています。

いつかきっと現れるであろう赤い糸で結ばれた運命の人を待つ気持ちは、大人になっても変わらないものなのでしょう。

ストレスからカウンセラーを受けるなど精神を病んでいる2人ですが、お互いの存在に気が付いて、恋人になって欲しいと願わずにいられません。

どこかユーモラスで、大人の童話ともいえる一面をもった本作のクライマックスをお楽しみに。

映画『パリのどこかで、あなたと』は、12月11日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテ ほか全国順次公開!

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

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