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Entry 2020/11/10
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Netflix映画『マッドタウン』ネタバレあらすじと感想。近未来サバイバルスリラーをアナ・リリー・アミールポアー監督が描く|SF恐怖映画という名の観覧車128

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile128

技術の進化と文明の発展により「価値観」は大きく変化してきました。

同じ国であっても数十年違えば大きく価値観は変わり、現代ではまさにその価値観の多様性を認める時代となっています。

「ポスト・アポカリプス」な世界観を描きながらも「価値観」に焦点を当てている異質な映画『マッドタウン』。

今回はネタバレあらすじを含め、ご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『マッドタウン』の作品情報


Netflix映画『マッドタウン』

【原題】
The Bad Batch

【配信】
2017年(Netflix限定配信)

【監督】
アナ・リリー・アミールポアー

【キャスト】
スーキー・ウォーターハウス、ジェイソン・モモア、キアヌ・リーブス、ジム・キャリー、ジョヴァンニ・リビシ

【作品概要】
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのイライジャ・ウッドが製作総指揮を務めたことで話題となった『ザ・ヴァンパイア 〜残酷な牙を持つ少女〜』(2015)を手掛けたアナ・リリー・アミールポアーが製作したSF映画。

主演を務めたのは『あと1センチの恋』(2014)や『名探偵ピカチュウ』(2019)などの映画にも出演したスーキー・ウォーターハウス。

映画『マッドタウン』のあらすじとネタバレ


Netflix映画『マッドタウン』

近未来のアメリカでは、犯罪者や国に貢献のない人間を「バッドバッチ」と呼び、フェンスにより隔絶された砂漠に隔離していました。

バッドバッチと判定されたアーレンはフェンスの中に入れられ、果ての無い砂漠を放浪することになります。

右も左も分からないアーレンが歩いていると車に乗る2人の女性に捕まり、目が覚めると手足を鎖で繋がれ拘束されていました。

彼女たちは人肉を喰らう「カニバリスト」であり、アーレンの右腕と右足をノコギリで切断するとフライパンで焼き、食し始めます。

彼女たちの領内には似たような境遇の人間が何人もおり、大多数の人間が逃げるを諦めていました。

アーレンは自身が食肉であることを利用し、自身の排泄物を身体に塗ります。

汚物にまみれたアーレンを見たカニバリストの女性は彼女を洗うため、拘束を解きます。

拘束を解かれたアーレンは隠し持っていた鉄パイプで女性を殺害し、落ちていたスケートボードを使いカニバリストたちの支配下を出て砂漠へと脱出。

しかし、熱さと体力の低下から砂漠の真ん中で意識を途絶えようとしているアーレンをショッピングカートを押すハーミットが保護し、隔離区域内の聖域と呼ばれる町「コンフォート」へと彼女を連れていきました。

5ヶ月後、労働をすることで衣食住を保証されるコンフォートの町で露天の仕事をするアーレンは、義足を手に入れ歩行が可能になっていました。

ある日、失った腕に対する思いを抱えながら銃で武装をするアーレンはコンフォートの町から出て砂漠へと向かいます。

一方、カニバリストの集団「ブリッジ」に所属する筋肉質のマイアミマンは妻と娘を溺愛していましたが、「食肉」には同情をかけていませんでした。

そんな生活に嫌気が差しながらも、廃品の集まる区域に使えるものを探しに行くマイアミマンの妻と娘は、砂漠をうろついていたアーレンと出会います。

アーレンはマイアミマンの妻が、自身の右腕と右足を喰らったブリッジに所属する1人であることを覚えており、マイアミマンの妻もそのことに気づきます。

マイアミマンの妻は銃を突きつけるアーレンに命乞いをしますが、かつて自身が命乞いをしても無駄だったことを告げ、アーレンは彼女を射殺。

その後、マイアミマンの娘を放っておくことが出来なかったアーレンは少女をコンフォートへと連れ帰ることにします。

廃品を集めるハーミットはアーレンが少女を連れているところを目撃していました。

コンフォートについたアーレンは少女を自身の居住地であるキャンピングカーに招き入れ、露店で売っていたウサギを買い与え自身の言うことを聞くようにと釘を刺します。

一方、妻と娘の帰りが遅いことに不安を覚えたマイアミマンは、廃品回収地点で妻の射殺体を発見。

マイアミマンは廃品回収をしていたハーミットに娘の似顔絵を見せると、ハーミットは絵の上手いマイアミマンに自身の似顔絵を描かせることを条件に情報を教えると伝えます。

マイアミマンがハーミットの似顔絵を描くと、ハーミットは喜びマイアミマンに「コンフォートを探せ」と指示します。

そのころ、コンフォートでは、コンフォートを作った「ドリーム」と呼ばれる男主催のDJパーティが開かれていました。

コンフォート内ではドリームは英雄扱いを受けるほどに人気であり、会場を訪れたアーレンは会場内で配られていたドラッグを接種してしまいます。

ドラッグによって前後不覚となったアーレンは人込みを避けコンフォートの外の砂漠へと出てしまいます。

アーレンを見失ったマイアミマンの娘ははぐれてしまったウサギを追いかけるうちにドリームと出会います。

何人もの女性を侍らすドリームに気にいられたマイアミマンの娘はドリームに引き取られます。

翌日、薬の効果が切れたアーレンは砂漠の中で娘を探すマイアミマンに出会いました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『マッドタウン』のネタバレ・結末の記載がございます。『マッドタウン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

マイアミマンはコンフォートから遠く離れてしまったアーレンをコンフォートに送る代わりに、アーレンにコンフォートで娘を探すことを強制します。

似顔絵を見せられたアーレンは自身が連れ帰った少女のことだと気づきますがマイアミマンにそのことは隠していました。

見つけられなかったらアーレンを殺すと脅迫するマイアミマンでしたが、アーレンを「食肉」として連れ去ろうとする男を殺害したり砂塵からアーレンを守るなど心優しい様子も見せ始めます。

夜、砂漠で野宿するアーレンはマイアミマンがハバナからの不法滞在者であること理由に「バットバッチ」と判定され、隔離されたことを知ります。

マイアミマンの素性に同情するアーレンでしたが、人を喰らうブリッジの人間を嫌悪する彼女はマイアミマンからナイフを奪い殺害しようとします。

「自分のことしか考えていない」とマイアミマンに叱責されるアーレンでしたが、その時マイアミマンが突如やってきた男に撃たれてしまいます。

アーレンについてくるように言うその男はコンフォートの人間であり、アーレンがブリッジの人喰いに襲われていると判断しマイアミマンを撃ったことが分かります。

男によってコンフォートまで送られたアーレンはマイアミマンのことが気になり、野宿した地まで足を運びますがそこには彼の絵が描かれたノートのみが残されていました。

ノートの中には様々な自然の生き物と娘の絵が描かれており、そのノートを見たアーレンはマイアミマンの娘を探すことを決意します。

コンフォート内の人間に少女の似顔絵を見せて回るアーレンは、ハーレムを作り豪華な生活を過ごすドリームの妻たちの中にマイアミマンの娘を発見。

一方、目を覚ましたマイアミマンは撃たれていた自分をハーミットが助け世話をしてくれていたことに気づきます。

立てるほどに回復したマイアミマンを残しハーミットは去ろうとしますが、マイアミマンはハーミットに「どうすればいいのかわからない」と弱音を吐きます。

ハーミットはマイアミマンのナイフを取り上げると、マイアミマンの手に小さなスノードームを持たせその場を去っていきました。

アーレンはドリームの豪邸を訪問するとドリームから様々な話を聞きます。

ドリームはコンフォートの町のために全家庭のトイレに下水道を引き排泄物の匂いを除去し、畑を耕し野菜を育てる確かな統治者であることが分かります。

畑を耕し種を植えることで発展する(子供を作ることの比喩も混じっている)ことは、行った行為に必ず見返りがあるこれ以上ないことであると話すドリームに気にいられたアーレンは妻として部屋を用意されます。

しかし、アーレンは義足に銃を隠し持っており、ドリームの妻の1人を人質に取りマイアミマンの娘の解放を求めます。

ドリームはアーレンに失望しますが、要求通り少女をアーレンのもとに連れていくと少女に「うさぎを大事にしろ」と言い彼女とアーレンを解放します。

アーレンもコンフォートを出たところで人質を解放しました。

ドリームを崇拝するコンフォートの住人から二度と来るなと罵倒されたアーレンは、砂漠でマイアミマンと再会。

アーレンはマイアミマンは娘との再会を喜ぶ2人を見つめると、マイアミマンに自分も連れていってほしいと言います。

マイアミマンは「気が狂ったのか」とアーレンに言い、もう用済みだと彼女を突き放しますが、彼女はこの「何もない地」が好きだと言います。

豪華な暮らしに慣れたマイアミマンの娘がマイアミマンに「スパゲティが食べたい」とわがままを言うと困ったマイアミマンはウサギを連れていきます。

焼かれたウサギを泣きながら見つめる娘と共にマイアミマンとアーレンは微笑みながらウサギ肉を食べました。

映画『マッドタウン』の感想と評価


Netflix映画『マッドタウン』

社会から不必要とされた人間たちだけが住む砂漠に入れられた少女の物語を描いた映画『マッドタウン』。

主人公のアーレンが手足を人間に食べられると言う壮絶なシーンから始まる本作は一見、世紀末な世界観を描く「ポスト・アポカリプス」映画にありがちな作品にも思えます。

しかし、本作では食料もろくに見つからない砂漠で人を襲い人肉を食べる「カニバリスト」の価値観を否定も肯定もせず、ただそのことを受け入れる独特な雰囲気の漂う作品でした。

砂漠の中の唯一の整備された町「コンフォート」の王ドリームは、何もない荒野から現代社会に必須であるインフラを整えた「英雄」として町に君臨しています。

一方、カニバリストのマイアミマンは人肉を食す人間ではありますが、家族や関わった人には愛情を向ける優しさも持ち合わせています。

全員が生き残ることが難しい修羅の土地で産まれるそれぞれの価値観。

両方を目撃し体験するアーレンのように、時代によって変わる「価値観」についてを深く考えたくなるような作品でした。

まとめ

「英雄」と崇められるドリームを演じたキアヌ・リーヴスと、冷血だが優しさも持ち合わせるマイアミマンを演じた『アクアマン』(2019)でお馴染みのジェイソン・モモア。

さらにアメリカ随一のコメディ俳優ジム・キャリーも出演する本作は、それぞれの俳優が全く違う価値観を演技で見せており、物語に深みを増していました。

「ポスト・アポカリプス」と言う舞台設定で「価値観」の違いを描いた映画『マッドタウン』は映像配信サービス「Netflix」で独占配信中です。

世界観と俳優に興味を持った方はぜひご覧になってみてください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile129では、スティーヴン・キングとその息子ジョー・ヒルによる小説を実写化した映画『イン・ザ・トール・グラス -狂気の迷路-』(2019)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

11月18日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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