実話でもある『事故物件 恐い間取り』がついに解禁
殺人や自殺など、何かしらの死亡事故が起きた、いわくつきの部屋を現わす言葉「事故物件」。
この事故物件に住み、自身の体験を書籍にしている「事故物件住みます芸人」である、松原タニシの原作を、中田秀夫が映像化したホラー映画『事故物件 恐い間取り』。
主人公に次々と襲い掛かる、事故物件の恐怖と、夢を追いかける若者の青春物語を融合させた、エンターテイメント・ホラーとも呼べる、本作の魅力をご紹介します。
映画『事故物件 恐い間取り』は、2020年8月28日(金)より全国公開中です。
映画『事故物件 恐い間取り』の作品情報
【公開】
2020年公開(日本映画)
【原作】
松原タニシ
【監督】
中田秀夫
【脚本】
ブラジリィー・アン・山田
【キャスト】
亀梨和也、奈緒、瀬戸康史、江口のりこ、MEGUMI、真魚、瀧川英次、木下ほうか、加藤諒、坂口涼太郎、中田クルミ、団長安田、クロちゃん、バービー、宇野祥平、高田純次、小手伸也、有野晋哉、濱口優
【作品概要】
2012年よりテレビ番組の企画で、事故物件に住み始めた「事故物件住みます芸人」として活動する、松原タニシの原作を、Jホラーの金字塔『リング』の監督、中田秀夫が映像化。
売れない芸人が、事故物件に住んだ事で起きる恐怖を描いた映画『事故物件 恐い間取り』。主人公の山野ヤマメを、アイドルグループ「KAT-TUN」のメンバーとして活動しながら、映画『ジョーカー・ゲーム』(2015)、映画『PとJK』などで主演を務め、俳優としても活躍している亀梨和也。
山野ヤマメのファンで、霊感を持つ梓を、映画『僕の好きな女の子』(2019)や『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(2020)など、話題作に出演している奈緒。山野ヤマメの相方、中井を瀬戸康史が演じるなど、個性派のキャストが脇を固めています。
映画『事故物件 恐い間取り』のあらすじとネタバレ
お笑いコンビ「ジョナサンズ」として活動している、山野ヤマメ。
山野は、相方の中井とコンビで活動していますが、10年やっても売れない為、中井に解散を突き付けられます。
傷心のまま、帰宅しようとした山野に、ライブを見ていた小坂梓が話しかけます。
「ネタが面白かった」と絶賛する梓に、山野は「もう使わない」と、コントで使ったビニール傘を渡します。
「ジョナサンズ」は解散するにあたり、お世話になったテレビ関係者へ挨拶回りをする為、テレビ局を訪れていました。
テレビ番組プロデューサーの松尾にも挨拶に行った際、中井が新たに放送作家として活動を開始する事を知った松尾は、視聴率が低迷している自身の番組の企画案を出させます。
ですが、中井の提案は使えない企画ばかりで、がっかりした松尾は、その場を退席しようとします。何とか松尾を引き留めたい中井が提案したのは、同期の芸人から聞いた事故物件の話です。
ある事故物件に住んだ芸人が、精神に異常をきたし、最後は芸人を辞めて実家に帰ってしまったという話なのですが、それを聞いた松尾は、ピンで仕事も無い山野に、事故物件に住んで、その様子を撮影させるという企画を考えます。
最初は戸惑っていた山野ですが、松尾が事故物件を見つけて来たので、仕方なく事故物件に住む事になります。
映画『事故物件 恐い間取り』の感想と評価
実話をもとに、事故物件の恐怖を描いた映画『事故物件 恐い間取り』。
本作はお笑い芸人の松原タニシが、自らの経験を執筆した書籍を原作にしています。
作中で、山野が事故物件に住むキッカケになったのが、テレビ番組の企画でしたが、松原タニシも最初は、テレビ番組『北野誠のおまえら行くな。』の企画で事故物件に住み始め、現在は10軒目の事故物件に住んでいるようです。
実話をもとにしているので、特に前半は過剰な演出などは無く、どちらかと言うと霊現象に遭遇した人の、再現ドラマを見ている感覚になります。
1~3件目の事故物件に住んだ際のエピソードなど、霊現象に巻き込まれますが、その幽霊と対峙する事はありません。
その物件が、事故物件となった理由を突き止めると、また次の事故物件に移るという流れです。
ですが、『女優霊』や「リング」シリーズで、Jホラーブームを巻き起こした中田秀夫監督の恐怖演出は見事で、特に1件目の事故物件に出現する赤い女は、日常の中に突然出現する「怪異」として、かなり不気味に描かれています。
一見すると、事故物件にまつわるオムニバスドラマを見ているように感じますが、この物語を1つの線に結ぶ存在が、後半で出現する黒装束の男です。
作品の前半から、その影は見せますが、事故物件4件目で遂に山野達は、この黒装束の男と対峙する事になります。
黒装束の男の正体は不明なままですが、自殺があった事故物件に住むと、次の入居者も自殺をし「連れて行かれた」と表現される事があります。
生者を連れて行く、この黒装束の男は、死神に近い存在と言えるでしょう。
黒装束の男との対決の中で、重要な役割を果たすのが、山野達がコントで使っていた傘です。
死神にコントの傘で対抗する展開に、納得がいかない人もいるかもしれませんが、作中で山野は、自身がお笑い芸人になった理由を「人は笑えば寿命が延びる、だからたくさん笑わせたい」と語っています。
つまり、人の命を持って行く存在に、山野が信じた、お笑いの力で対抗するという、とても希望の持てる展開となっています。
本作はホラー作品ではあるのですが、クロちゃんやバービーなど、テレビでお馴染みのお笑いタレントも多数登場し、全体的に明るい雰囲気の作品となっています。
映画『事故物件 恐い間取り』は、事故物件の恐怖と共に、成功する為に夢を追う山野と中井、スタイリストの世界で奮闘する梓の姿を通し、若者の精神的な成長も描いており、怖いだけじゃないエンターテイメント・ホラーとも呼べる作品です。
「ホラーが苦手」と言う人も、楽しめるバランスになっていますよ。
まとめ
事故物件の恐怖を描いた、映画『事故物件 恐い間取り』ですが、本作は人間の持つ恐ろしさにも触れています。
「事故物件住みます芸人」として話題になった山野は、次第に霊現象をネタとして見るようになります。
また、不動産屋の横水は、事故物件は一度でも人が住めば、事故物件として告知する義務が無くなる為、山野に次々と事故物件を紹介していきます。
普通なら、嫌がって避けようとする事故物件を、自分の仕事の為に利用している、この2人は実際に考えると、かなり異常と言えるでしょう。
視聴率の為に、山野に危険な事故物件に住む事を勧めた、テレビプロデューサーの松尾も同じです。
しかしラストシーンで、面白半分で事故物件に足を踏み入れた人達の末路を描き「興味半分で事故物件に住むな」という、警告のようなメッセージが込められています。
本作のエンドロールで、実際の事故物件の写真が映し出され、映画に登場する事故物件は、かなり実際の部屋に近づけている事が分かります。
明るい作風のエンターテイメント・ホラーとも呼べる本作ですが、これが実話をもとにしている事を、最後にあらためて思い出し、何とも言えない寒気を感じました。
この辺りのバランスも、中田秀夫監督の技術が光っています。