ハリネズミが実行する「一人はみんなのために、みんなは一人のために」の教訓
映画『ラッテと魔法の水の石』は、好奇心旺盛で頑固なハリネズミのラッテと臆病だけど正義感の強いティムが、森の仲間のために水を取り戻すための友情物語です。
もし、大切なものを自分勝手に欲張って独り占めしたら……。助け合わなければならない時にも仲間外れにされたり、意地を張って強がって暮らすモノもいます。
もし、水を取り戻す「秘密」があったらどうでしょう? 信じますかそれとも迷信だと諦めますか? 信じる気持ちと勇気・友情が森の危機を救うとしたら……。勇敢なハリネズミと臆病なリスの活躍に注目です。
映画『ラッテと魔法の水の石』の作品情報
【配信】
2020年(Netflix独占配信)
【監督】
ミミ・メイナード、レジーナ・ウェルカー、ニーナ・ヴェルス
【原題】
LATTE & THE MAGIC WATERSTONE
【原作】
作者セバスティアン・リーベック
『ハリネズミのラッテのぼうけん(Latte Igelkott och Vattenstenen)』
【キャスト】
アシュリー・ボーナンシン、カーター・ヘイスティングス、レスリー・L・ミラー、バイロン・マーク・ニューサム
【作品概要】
フィンランドの作家セバスティアン・リーベックが書いた児童書の『ハリネズミのラッテのぼうけん』をミミ・メイナード、レジーナ・ウェルカー、ニーナ・ヴェルスの3人の監督によってアニメ化されました。
本作は2019年にドイツで開催される、子供や青少年向けの映画祭「シュリンゲル国際映画祭」で初上映され、2020年7月からNetflixにて配信が開始しました。
映画『ラッテと魔法の水の石』のあらすじとネタバレ
ある森に、自分をプリンセスと信じてやまない「ラッテ」という1匹のハリネズミがいました。彼女の朝の日課は植物の葉に付いた朝露を集めることです。
森の住人達は深刻な水不足に悩んでいました。今にも枯れてしまいそうな小川から水滴を集めて、森の仲間達と分け合いながら暮らしていたのです。何とかしなければ森の動物達の命にかかわってきます。
ラッテは切り株の根元の穴倉に独りぼっちで暮らしていて、切り株の近くの木にはリスのチュムが両親と妹と一緒に暮らしていました。
チュムがクルミをラッテの家の前に落としてしまった時に、ラッテの集めた水を見つけます。チュムは集めた水はみんなで分け合うべきだと、ラッテの水を水瓶に持って行こうとします。
ラッテは森では仲間外れにされていて、水を分けてもらっていないため、チュムの言ったことに納得しません。
チュムが水の入ったカタツムリの殻を持って逃げると、ラッテは取り戻そうと追いかけます。そして、事件が起こりました。
崖の上から水瓶に水を入れようとするチュムをラッテは阻止しようとしてとびかかります。勢いでチュムは水瓶の中に落ちてしまい、その衝撃でカボチャの水瓶が壊れてしまうのです。
水瓶に貯めてあった水も全て台無しです。そこに子ウサギとウリボウが通りかかり、壊れたカボチャを見つけてしまいます。チュムとラッテは慌てて隠れたのでみつかっていません。
子ウサギとウリボウは大人達のいる集会場でこの事件を報告しました。ラッテとチュムはその様子を見ています。
チュムが「正直に話そう」とラッテにいいますが、「どうして? あなたも知っているけど、いつも何かあると私のせいにされる!」
パパから『正直であるように』と言いつけられているチュムは、大人達に告白しようとしますが、ラッテは自分が何とかするからと止めます。しかし、結局そこにいる森の住民たちの知れるところとなりました。
ラッテの言う通りはじめみんなはラッテのせいだと言います。ラッテは諦めたように何か言おうとしましたが、正直なチュムは自分のせいだと告白しました。
いずれは無くなってしまう水をどうしたら良いか思案しているところに、老いたカラスのコープがやってきて言います。
「はるか昔、魔法の水がホワイトマウンテンの頂上に現れ、石が大地に触れて水源が爆発し豊かな水をもたらした。」と。
しかし、その魔法の水の石を欲ばりなクマの王様バントゥールが盗み出し、クマの森で独占してしまったというのです。
コープはその魔法の水の石を取り返しホワイトマウンテンに戻せば、再び森に水が戻ると話します。
森の動物たちはコープを嘘つき呼ばわりし話を信じようとしませんが、コープは「勇気ある者がクマの森に行き、みんなの水を取り戻すのだ!」というのです。
それを聞いたラッテは「私は勇気あるプリンセスよ! 私が取り戻しに行くわ」そう言うと、チュムやチュムの父親が止めるのも聞かずにクマの森を目指して出発しました。
映画『ラッテと魔法の水の石』の感想と評価
『ラッテと魔法の水の石』は登場する小動物の生態の特徴をよくとらえています。
ウサギやイノシシ、リスは小単位の群れで暮しますが、ハリネズミは物語の通り群れは作らず、単独で行動するのを好む動物なのです。
繁殖期以外はオスとメスは一緒にいることはありません。多頭になるとストレスを強く感じてしまうのです。なのでラッテが他のハリネズミから毛嫌いされるのも理にかなっていたのです。
ただし、児童書なので最後は仲間と一緒に仲良く暮らす。そういう種族を越えた信頼関係や繋がりの大切さを伝えていると感じます。
まとめ
一部の自分勝手な考えで大勢が困難に陥ってしまう。それを人間の歴史の中では繰り返されてきています。
本作は仲間や隣人を大切に思う気持ちが平和で幸せに繋がることを教えています。そして、もし困難なことがおきても協力し合い、勇気を持って挑戦すれば乗り越えられることを子供達に伝えているのです。
情報過多でどれが本当で何が嘘なのか見分けのつかない現代において、子供も大人も情報に振り回され本質を見抜けなくなっています。
この映画は親の言いつけを守ることや先人たちの知恵を信じ考えることも重要だと気づかさせてくれます。
親の気持ちと子供の目線で観ることで、鑑賞後は親子で考えを語り合える良い映画だといえるでしょう。