連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile114
梅雨が明け、本格的な夏の暑さが日本中を包み始めた8月。
こんな暑さの日は夏の情緒を感じる作品を鑑賞するのも良いですが、真冬の寒さを感じる作品も観たくなります。
今回はSFオムニバスドラマシリーズ「ブラックミラー」の初のスペシャルドラマ『ブラックミラー ホワイト・クリスマス』(2014)をネタバレ鑑賞を含めご紹介させていただきます。
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CONTENTS
ドラマ『ブラックミラー ホワイト・クリスマス』の作品情報
【日本公開】
2014年(イギリスドラマ)
【原題】
White Christmas
【監督】
カール・ティベッツ
【キャスト】
レイフ・スポール、ジョン・ハム、ウーナ・チャップリン、ナタリア・テナ、ジャネット・モンゴメリー
【作品概要】
「ブラックミラー」シリーズを手がける脚本家チャーリー・ブルッカーによる脚本を『ブラックミラー シーズン2 シロクマ』(2013)のカール・ティベッツが手がけたドラマスペシャル。
主演として『ベイビー・ドライバー』(2017)のジョン・ハムが出演し、共演に「ハリー・ポッター」シリーズでニンファドーラ・トンクスを演じたナタリア・テナが出演しました。
ドラマ『ブラックミラー ホワイト・クリスマス』のあらすじとネタバレ
クリスマスの朝、ジョーは雪原の中の一軒家で目を覚まします。
狭い部屋の中で恋人の写真をひと撫でしたジョーはいつもと違う雰囲気に気づきます。
リビングでは同居人のマットが「クリスマスだから」とジャガイモを茹でていました。
仕事の関係で周りに雪原しかない一軒家に閉じ込められている2人はジョーの会話嫌いの性質もあり数年間ろくに会話もしたことがありません。
クリスマスを理由にこの場所に閉じ込められた理由をマットはジョーに聞きますが、逆にジョーは同じ質問をマットに投げかけます。
かつてマットは他者の見ている映像と音声を共有するテクノロジーを使い、恋人のいない男性にリアルタイムでアドバイスする裏稼業を行っていました。
ある年のクリスマス、自分に自信のないハリーに雇われたマットは彼をある企業の開催するクリスマスパーティーに参加させます。
パーティー会場内でハリーは好みの女性である黒髪の女性ジェニファーを発見し、マットのアドバイス通り彼女にアプローチします。
自身以外にも多人数にハリーの目線を共有しているマットは、ジェニファーが普通の女性ではなく少し心を病んでいることに気づきます。
ハリーはマットの指示通りの発言を選したことで、ジェニファーと2人きりの空間を作り出すことに成功し、2人は急接近。
彼女は今の職場をやめたいと感じているようでハリーは彼女に同調し、思い切りのつかないことはやってから考えるべきだと断言。
ジェニファーがトイレに立っている隙にハリーはマットに接続を切りたいと話しますが、マットの仲間たちはジェニファーとのベットシーンを楽しみにしていることから言葉巧みにハリーに接続を続けさせます。
その会話を見ていたジェニファーはハリーを自宅の寝室へと誘い入れ、お酒を飲ませました。すると、ハリーは次第に吐血を始めます。
実はジェニファーは心を完全に病んでおり、やめたいと会話していたのは会社のことではなく人生のことでした。
ハリーとマットとの会話が、ジェニファーにはハリーが頭の中にいる「何か」に常に悩まされている同類の存在と見えており、ハリーと共に人生を終えるためにハリーに毒を飲ませていたのです。
ハリーの死を見届けると、ジェニファーは自分も毒をあおり自殺。その様子を見ていたマットは唖然とし、仲間に全てのデータの破棄を命じると自身も全てのデータを削除。
全ての証拠を隠滅しますがその様子を妻のクレアに見られたことで、今まで自分がしてきたことが全て露見し、その行為に嫌気の差したクレアはマットを「ブロック」します。
この時代は多くの人の目に「Z眼」と呼ばれるデバイスが組み込まれており、これによって写真や音楽など様々なアプリを利用でき、マットはZ眼を使いハリーの行動の監視などを行っていました。
クレアにZ眼でブロックされたことで、お互いに会話をすることが出来なくなりました。おまけに、ブロックされた人間を輪郭のみの「影」としか視認できなくなり、やがてマットはクレアと離婚します。
ここまでのことをジョーに話すマットは、次に自身の本業の話を始めます。マットの本業は他人の人格のコピーをプログラムとして作り出し、基となった人間の役立つように利用することでした。
マットはサービスを利用したグレタの例をあげ、自我のあるグレタのコピーに本人の意思に関係なく強制的に基のグレタに対して奉仕活動をさせていることをジョーに話すと、彼は自我のあるプログラムに物事を強制することを奴隷のような扱いであることを批難します。
ジョーのことを今までの話の相槌から善人だと話すマットはジョーの抱える闇を聞き出そうとします。マットのことを信用し始めたジョーはマットに少しずつ自身のことを話し始めます。
ジョーにはかつてベスという恋人がおり、彼女の父と上手くいっていませんでした。しかし、それでも2人の関係は良好で、ジョーは幸せな日々を過ごしていましたが、ある日ベスが明らかに不自然な態度を取り始めます。
ジョーはゴミを片付けるうちにベスが妊娠検査薬を使い陽性の反応が出ていることに気がつきました。
ジョーはベスの妊娠を喜び彼女に産むように言いますが、ベスが妊娠を望まず堕胎しようとしていることを聞くと彼女を口汚い言葉で罵ります。
ベスはジョーをブロックするとジョーの家を出たきり戻りませんでした。
数日、数ヶ月経ってもベスは戻らず、街で出会った際にもブロックを継続していることを知るジョーでしたが彼女が妊娠を継続し子供を産んだことを知ります。
ブロックは子供にも適用されるため、ジョーは彼女の子供も影でしか確認できませんでしたが、毎年クリスマスの日に遠くから見ることでベスとの子が女の子であることを知ります。
毎年クリスマスの日に遠くから娘の成長を見守るジョーでしたが、ある日ニュースでベスが鉄道事故で亡くなったことを知ります。
死亡するとブロックが解除され、バスの顔をニュースで久々に眺めたジョーはクリスマスの日、彼女の実家に行くことで娘の顔をようやく見れることを楽しみにもしていました。
ドラマ『ブラックミラー ホワイト・クリスマス』の感想と評価
2020年現在、シリーズ内でも唯一のスペシャルドラマである『ブラックミラー ホワイト・クリスマス』。
本作はイギリスの公共放送「チャンネル4」で放映された最後の「ブラックミラー」作品であり、本シリーズは映像配信サービス「Netflix」に制作と放映が移行します。
本作は小説や映画における「信頼できない語り手」による語りを中心に物語が展開し、また演出においても最初に過去を語り始めるマットが「信頼できない語り手」であることを隠そうとしません。
そのため鑑賞者はどのような「どんでん返し」が巻き起こるのかと警戒を怠りませんが、想像の斜め上を行く展開に誰もが驚愕するはずです。
物語の内容も「ブラックミラー」シリーズらしく技術の進歩と人間の起こす「過ち」を悪意全開に描いており、シリーズの題材である世の中を黒く写す鏡を体現していると言えるスペシャルドラマでした。
まとめ
本作は「どんでん返し」が高い評価を受けているだけでなく、物語を展開させる役を担ったレイフ・スポールとジョン・ハムの演技も絶賛されています。
作中には脚本家チャーリー・ブルッカーによって「ブラックミラー」シリーズのオマージュ要素が大量に散りばめられており、ここまでシリーズを鑑賞した方はそれらの要素を探してみるのもオススメです。
本作はNETFLIXにて配信中、世界的に高い評価を受ける本シリーズをぜひ一気見してみてください。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile115では、あのジョン・トラボルタが狂気のストーカーを演じた最新映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』(2020)の魅力をたっぷりとご紹介させていただきます。
8月12日(水)の掲載をお楽しみに!
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