何度転んでも、イメージする、着地する瞬間を!
映画『STAND STORONG』が2020年7月24日(金)より、TOHOシネマズ池袋他にて全国公開されています。
映画『STAND STORONG』は、日本のスケートボーダーのリアルライフを描いた青春群像劇です。
実際のスケートボーダーである中田海斗がK役、佐川涼がRYO役、松本崇がCHEN役、日高大作レイがDAISAKU役を務め、溌剌とした演技を見せています。
映画『STAND STRONG』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【監督】
菊池久志
【キャスト】
中田海斗、佐川涼、松本崇、日高大作レイ、サイプレス上野
【作品概要】
日本のストリートを舞台に、スケートボーダーたちの光と影をリアルに描いた青春群像映画です。
オリジナル主題歌は、LIBRO、ポチョムキン(餓鬼レンジャー)、Bose(スチャダラパー)、CHOZEN LEE(FIRE BALL、THE BANG ATTACK)が映画のために書き下ろした“STAND STRONG feat. LIBRO, ポチョムキン, Bose & CHOZEN LEE”。
映画『STAND STRONG』あらすじとネタバレ
タコス屋で食事をしていたK、RYO、CHEN、DAISAKUの4人組は、「俺たちでスケーターチームをつくらねぇ?」と盛り上がります。
「THRASHERってあるじゃん」「俺らは世界をぶっ壊すCRASHERだ!」
そんなのりで誕生したスケーターチーム「CRASHER」は、SNSにアカウントを設け、動画を投稿しているうちに、スケーターファンから熱い支持を得るようになります。
スケートブランド「ELEMENT」から4人のうちの2人、KとRYOに声がかかり、2人は「ELEMENT」とプロ契約を結びました。
しかし喜びもつかの間、大事な大会を前に、Kは父親から暴力を振るわれ、脚を痛めます。
翌日、RYOが待ち合わせ場所に来ないKに電話を入れますが、Kは理由も言わず、「脚が痛いし、めんどくさいから行かない」と応えて電話を切ってしまいました。
RYOは仕方なくひとりで大会に出かけます。CHEN、DAISAKUは、大会を観に行き、大勢のファンと一緒に、RYOが見事、優勝をさらう姿を目撃しました。
純粋にスケートと向き合い、徐々にチャンスを掴んでいくRYOに対して、Kは荒れて、夜の街に繰り出すことが増えていきました。
ある日、RYOとCHEN、DAISAKUが集まっているところにふらりとKがやってきました。
CHENは、「CRASHER」のTシャツを見せ、「KはサイズはMだった?」と尋ねますが、KはそんなパクリのTをシャツなんて着られるかと悪態を突き出し、RYOはKに「帰れ!」と怒鳴りました。
その日もKは夜の街に出て酒に酔い、他のスケーターを侮辱して喧嘩が始まりました。その場面を撮った動画が拡散され、Kはファンからもそっぽを向かれてしまいます。
素行不良でせっかくついたスポンサーからも解雇されてしまい、暗黒面に落ちるK。RYOは、大きな大会を次々と制していきますが、Kのことが気がかりでなりません。
映画『STAND STRONG』の感想と評価
スケートボーダーを描いた作品といえば、1970年代初頭にL.A.のドッグタウンで生まれたスケートボードチーム「Z-BOYS」の活動を追ったドキュメンタリー映画『DOGTOWN & Z-BOYS』(2001/ステイシー・ペラルタ)や、そのフィクション版『ロード・オブ・ドッグタウン』(2005/キャサリン・ハードウィック)がすぐに思い出されます。
ガス・ヴァン・サント監督の内省的な映画『パラノイド・パーク』(2007)という作品もありましたし、最近ではニューヨークのガールズ・スケーターの日常を追った『スケート・キッチン』(2016/クリスタル・モーゼル)を思い出す方も多いでしょう。
しかし日本映画となるとどうでしょう。勿論、三宅唱の『Playback』(2012)のように、スケートボードが重要なシーンに登場する作品はありますが、スケートボードや、スケーターそのものをテーマとした劇映画となると、本作『STAND STRONG』が初の本格的作品になるのではないでしょうか。
映画は4人の少年が、スケートボードチームを結成するところから始まります。前半は、普段、彼らはどのような場所で滑り、どんなスポットに顔を出すのかという関東エリアのリアルなスケボーライフを味わう面白さがあります。スケーターが好む「つけ麺屋」まで出てきます。
また、インスタグラムを始めとするSNSが非常に重要な役割を果たしているのも、現代のスケーターライフの大きな特徴の一つでしょう。
『スケート・キッチン』でも、SNSが同じ女性のスケーター仲間を探す手立てになるなどなくてはならない存在として描かれていましたが、『STAND STRONG』では、少年たちはSNSで人気者になり、そこにはプロスケーターの視線も注がれていて、ついにはスポンサー契約へとつながっていきます。
しかし、仲間全員にスポンサーがつくわけではありません。そのあたりは実にシビアです。
また、父親に暴力を振るわれるという家庭環境と、本人のショートテンパーな性格などが重なり、Kという少年はせっかくのチャンスをふいにして、一人孤立していきます。ここでもSNSでけんかの動画を拡散されたことがKの転落を加速させます。
確かな仲間がいたはずなのに、いつの間にかこの世には自分しかいないのではないかと孤独感に苛まれるKの姿は、例えば、1960年代のイギリスのモッズ族の青春を描いた『さらば青春の光』(1979/フランク・ロッダム)のジミーを彷彿させるものがあるなんていうと少々褒めすぎでしょうか。
ただ、プロ契約されなかった残りの2人の葛藤などがもう少し描かれてもよかったのではという不満もあります。
しかし、本作は、スケーターの世界の厳しさに触れつつも、ドロドロした人間関係を描くのではなく、変わらない友情と果てしない夢こそを追求した作品といえるのではないのでしょうか。
どんなに環境が変わってもチーム「CRASHER」はずっと続いていくように見えます。青春の儚さよりも、永遠の友情を本作は描こうとしているのです。
失敗した仲間をすくい上げることのできる度量というのでしょうか。人間が手をさしのべ、手をつなぐ行為の美しさが、スクリーンに感動的に映し出されています。
あれほど苦悩したKがつけ麺屋に勤めている姿のあっけらかんとした明るさも本作の魅力の一つでしょう。
人間は何度でもやり直すことができるというメッセージであり、それは、転んでもまた立ち上がって何度でもトライするというスケートボードそのものの姿なのです。
まとめ
それにしても「CRASHER」のメンバーを演じた4人のスケーターたちの魅力的なことといったらどうでしょう!
『スケート・キッチン』も実際のスケーターが、演技していることに驚かされましたが、本作の4人も負けてはいません。
中田海斗はKそのものにしか見えない達者ぶりを発揮していますし、RYO役の佐川涼は、その名の通り、涼し気な爽やかさを身にまとい、ストイックな雰囲気を醸し出しています。
DAISAKU役の日高大作レイは、何をしていてもリズムに溢れていて茶目っ気があり、CHE役の松本崇は、4人の中で最も優れた演技をみせています。
何よりも彼らが見せてくれるスケートが素晴らしく、これが吹き替えだったりしたら興醒めだったでしょう。
いくら技術が進歩し、様々な「映画のマジック」が可能になってきたとしても、そこはやはり、本物の持つ輝きに勝るものはないからです。