連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile113
連日雨が続き、梅雨の気配が消えないまま8月に入ろうとしている異様な空気の2020年の夏。
新型コロナウイルスの騒動もあり、様々なイベントが開催を断念してきましたが「夏のホラー秘宝まつり」は今年も開催。
今回は「第7回 夏のホラー秘宝まつり 2020」で公開予定の韓国製ホラー映画最新作『ワーニング その映画を観るな』(2020)の魅力をたっぷりとご紹介させていただきます。
【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら
CONTENTS
映画『ワーニング その映画を観るな』の作品情報
【原題】
Warning: Do Not Play
【公開】
2020年(韓国映画)
【監督】
キム・ジンウォン
【キャスト】
ソ・イェジ、チン・ソンギュ、キム・ボラ
『ワーニング その映画を観るな』のあらすじ
才能を認められた新人ホラー映画監督のミジョン(ソ・イェジ)は、納得の出来る新作の脚本を仕上げることが出来ず、プロデューサーや製作会社から見放される寸前まで追い込まれていました。
締め切りを2週間後に伸ばしてもらったミジョンは新作のネタを仕入れるために奔走するなかで、上映会の最中に鑑賞客が死亡したとされるアマチュア映画の存在を聞き…。
「観たら死ぬ?」アマチュア映画を巡る恐怖の物語
拷問の様子を全編を通し被害者目線で描いた異色のホラー映画『The Butcher』(2006)で映画監督としてデビューしたキム・ジンウォンが製作した最新作『ワーニング その映画を観るな』(2020)。
本作では新作映画企画の提出リミットが迫る中、新人監督ミジョンが誘われるかのように、死者を出したとされる「呪いの映画」の存在とその在処を調査していく様子が描かれています。
「呪い」による「恐怖シーン」を敢えて序盤に登場させない本作は、「呪い」を追い「呪い」に魅せられ「呪い」の起源を知る、と言う丁寧な主人公の足取りを描写することで終盤の恐怖を増長させていました。
「呪い」の映像を描いた類似映画との比較
「観たら死ぬ」と言うワードは簡潔にして映画好きには恐ろしすぎるうたい文句ですが、このワードは2020年2月にも注目された記憶に新しいものでもあります。
2020年2月に日本で公開されたカナダ映画『アントラム 史上最も呪われた映画』(2020)は、そのあまりの刺激性に日本では試写会が中止になったと言うエピソードを引っ提げ日本に上陸したことでホラー映画業界で一躍話題となりました。
一見すると『アントラム 史上最も呪われた映画』と『ワーニング その映画を観るな』は同じ題材の映画のように思えますが、両作の持つ「ホラー映画」としての方向性は全く異なっています。
『アントラム 史上最も呪われた映画』では、作中に登場する「死を誘発する映画」が実在するかのように描かれ、作中に「インタビュー」や「解説」を含めた「フェイクドキュメンタリー」の様相を呈しています。
一方で『ワーニング その映画を観るな』ではあくまでも1つの物語を動かすアイテムとして「呪いの映画」が登場し、「実在するかも」と言うリアルな恐怖を描く『アントラム 史上最も呪われた映画』とでは「恐怖の種類」が違い、リアリティを重視しなくて良い分全力投球の恐怖を見せてくれます。
真に恐ろしいのは呪いか人か
本作では「呪いの映画」が引き起こす圧倒的な恐怖を描くと共に、その映画に「魅せられてしまった」人間たちの狂気の行動も描いています。
哲学者ニーチェによる有名な格言「深淵を覗く時 深淵もまたあなたを覗いている」を想起させるような「好奇心」と「理性」の物語を主軸とした『ワーニング その映画を観るな』。
もし、現実に観たら死ぬと言う「呪いの映画」が存在した場合、果たしてあなたはその映画に興味を示さずにいられるか。
本作はもちろんフィクションであれど、現実にならないとは言えない人間だれしもが持つ「罪」を描いています。
「第7回 夏のホラー秘宝まつり 2020」の注目作品
「第7回 夏のホラー秘宝まつり 2020」では今回ご紹介させていただいた『ワーニング その映画を観るな』以外にも話題作が大量上映予定。
江戸川乱歩の短編小説「双生児」を現代リメイクした最新作『メビウスの悪女 赤い部屋』(2020)が上映されるだけでなく、ゾンビ映画でありながら殺人逃亡劇として展開される『悪魔の墓場』(1975)やホラー映画の傑作『血ぬられた墓標』(1960)などをリバイバル上映予定。
外出が怖いシーズンが続く今年の夏ですが充分な対策を講じた上で、イタリアンホラーに特化した2020年の「ホラー秘宝まつり」をぜひ劇場で楽しんでください。
まとめ
「観たら死ぬ」映画を求め狂気に染まり始めるミジョンと、死をまき散らす「呪いの映画」の謎と恐怖を丁寧な手法で描いた『ワーニング その映画を観るな』。
「その映画を観るな」と題されていますが、ぜひ劇場でご覧になって欲しい本作は8月21日(金)より、東京のキネカ大森を始め全国3劇場で順次ロードショー。
主演女優ソ・イェジの儚げでいて芯の強さも感じることの出来る演技にも注目して欲しい大注目の作品です。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile114では、イギリスの公共放送「Channel4」での最後の「ブラック・ミラー」シリーズであるスペシャルドラマ版『ブラック・ミラー ホワイト・クリスマス』(2014)をネタバレあらすじを交えご紹介させていただきます。
8月5日(水)の掲載をお楽しみに!