2000年にビデオ作品として発売されて以降、その理不尽とも言える呪いの恐怖が話題になり、今やハリウッド版でリメイクされるほどの人気作品となった「呪怨」シリーズ。
映画版は一度終わりを迎えましたが、2020年7月3日にNetflixオリジナルシリーズとして、全6話のドラマシリーズ『呪怨 呪いの家』が配信されました。
新たに生まれ変わった『呪怨 呪いの家』の、作品の魅力をご紹介します。
『呪怨 呪いの家』の作品情報
【配信】
2020年(日本ドラマ)
【監督】
三宅唱
【脚本】
高橋洋、一瀬隆重
【キャスト】
荒川良々、黒島結菜、里々佳、長村航希、井之脇海、柄本時生、仙道敦子、倉科カナ
【作品概要】
2000年にビデオ作品として発売されて以降、根強い人気を誇る「呪怨」シリーズ。
長年、シリーズに携わってきた、高橋洋と一瀬隆重が共同で脚本を担当し、Netflixオリジナルシリーズとして、新たな「呪怨」シリーズが始動しました。
監督は、2018年の映画『きみの鳥はうたえる』の三宅唱。
主演は、舞台や映画、ドラマなどで、癖のある役を数々演じて来た荒川良々。
黒島結菜や倉科カナ、柄本時生などの実力派が、新たな「呪怨」の世界を創り出しています。
『呪怨 呪いの家』シーズン1のあらすじ
1988年
心霊研究家として活動をしている小田島は、テレビ番組で共演したタレントの本庄はるかから「自宅で変な足音がする」と相談を受けます。
小田島は、その足音を録音するようにアドバイスをしますが、実際に足音を録音したテープには、不気味なうめき声が入っていました。
はるかは、うめき声を不気味に感じ、恋人の深沢の家に引っ越していましたが、今度は深沢に異変が起きるようになりました。
小田島は深沢に接触し話を聞くと、深沢には霊感があり、数日前に呪いの家に立ち入った事を聞きます。
小田島は、深沢にその家の場所を聞きますが、深沢から「あの家に関わらない方が良い」と言われ、場所を聞き出す事ができません。
帰宅した深沢は、家の中で謎の足音がしたり、入った覚えの無い部屋の扉が開いているなど、怪現象に遭遇します。
そして、扉の開いた部屋に入った深沢は、不気味な白い女を目撃します。
母親の都合で転校してきた女子校生、河合聖美。
ある日、友人の芳恵と真衣に誘われ、近所で「猫屋敷」と呼ばれている廃墟へ行く事になります。
しかし、そこには雄大という他校の男子生徒も同行し、「猫屋敷」の中に入った聖美は、芳恵と真衣に押さえつけられ、雄大に襲われてしまいます。
その一部始終を芳恵に写真に撮影され「バラしたら、この写真をばらまく」と脅された聖美は、家の中にいた猫を抱きかかえ、押入れの中に入り泣き始めます。
ですが、押入れの屋根裏から、不気味な白い女が顔を覗かせており、聖美は叫び声をあげます。
叫び声を聞いた雄大が、聖美の所へ駆けつけると、聖美は人が変わったような様子で雄大を誘惑します。
芳恵は、廃墟の中で真衣が行方不明になった事を雄大に伝えますが、聖美に誘惑された雄大は、芳恵の事を無視して廃墟を出ます。
聖美は芳恵に勝ち誇った顔を見せて、雄大と一緒に帰宅します。
はるかは、深沢の実家へ挨拶に行く夢を見ますが、それは深沢の魂が無言ではるかを見つめているという、不思議な内容でした。
テレビ局の楽屋で目覚めたはるかに、事務所から電話が入ります。
それは、深沢が亡くなったという事を知らせる電話でした。
深沢の葬式に参列したはるかは、小田島と再会し、小田島から呪いの家の話を聞かされますが、はるかには覚えがありません。
はるかと小田島は、葬儀場に残っていた深沢の母親に会います。
母親は「この子は私に似て、霊感が強かった」と話し、深沢の亡骸をはるかと小田島に見せます。
棺桶の中の深沢は、恐ろしい表情を浮かべて亡くなっていました。
雄大と付き合い始めた聖美は、雄大をそそのかし、自分の担任教師と関係を持っていた、母親を殺害させます。
聖美は、そのまま雄大と一緒に、駆け落ちをするのでした。
『呪怨 呪いの家』感想と評価
世界的に高い人気を誇るJホラー「呪怨」シリーズ、初のドラマ作品として制作された『呪怨 呪いの家』。
映画『呪怨』のモデルになった事件を描いた本作は、「呪怨」シリーズの前日譚とも呼べる内容となっており、シリーズを象徴するキャラクターである、伽椰子も俊雄も登場しません。
ですが「呪怨」シリーズではお馴染みの、「呪いの家」は登場し、この家に足を踏み入れてしまった人達が、次々に呪われてしまうという、「呪怨」シリーズの軸となる部分は、しっかりと引き継がれています。
「呪怨」シリーズは、次々と呪いが伝播する、エスカレートしていく恐怖が見どころの1つでした。
ただ、エスカレートし過ぎて、逆に笑えてしまう時もあったのですが、『呪怨 呪いの家』では実話調になっており、静かな恐怖が特徴となっています。
主要キャラクターの心霊研究家である小田島を、荒川良々が必要以上に感情を表に出さない、リアルな演技で表現しており、作品全体に漂う「実話調の恐怖」を引っ張っています。
誰かが実際に遭遇した恐怖体験を聞いているような感じで、作風としては、2015年のホラー映画『残穢-住んではいけない部屋-』に近い印象です。
また『呪怨 呪いの家』では、「呪いの家」に足を踏み入れた人々が遭遇する「呪いによる恐怖」の他に、家庭内暴力や育児放棄など、社会問題とも言える「人間の恐怖」も描いています。
全6話のうち、1話から4話は「人間の恐怖」が主軸になり、5話と6話が「呪いによる恐怖」がメインになる構成です。
特に「人間の恐怖」が最高潮となる第4話は、1988年に、名古屋で実際に起きた事件を彷彿させており、残酷描写も容赦なしの内容で、全6話の中でもスプラッターホラーに近い、かなり衝撃の強いエピソードです。
5話と6話では「呪いの家」で起きた事件の核心に迫っており、「呪怨」シリーズの、これまでのテイストに近い内容となっています。
ただ、全6話でも明かされていない秘密が残っています。
・「呪いの家」に潜む女の謎
・赤ん坊の秘密
・小田島が生き残っている理由
・最後に出て来た、シャツとブリーフ姿の男の正体
・連れ去られた、はるかのその後
また、伽椰子と俊雄のモデルになったと思われる、聖美と俊樹の、その後の運命などが不明となっており、今後のシリーズで明かされていくのでしょうか?
ドラマシリーズとして新たに生まれ変わった『呪怨 呪いの家』、この後の展開に目が離せません。
まとめ
2000年に発売されたビデオ作品『呪怨』は、オリジナルビデオ作品でありながら、「凄く怖いホラーがある」と、口コミで話題になった作品です。
ビデオ作品『呪怨』は、出演者が無名の役者ばかりで、フィクションと分かっていても、妙なリアルさがあり「シリーズの中で一番怖い」とも言われています。
『呪怨 呪いの家』は、主要キャラクターに荒川良々や黒島結菜、倉科カナなどの実力派が揃っていますが、その他の登場人物は、オーディションで選ばれた無名の役者となっており、本作はビデオ作品『呪怨』への原点回帰とも呼べる作品です。
特に、第6話で出てくるシャツとブリーフ姿の男が、演じている役者も誰だか分からないので、正体不明の不気味さがあり、最後の笑顔がめちゃくちゃ怖いです。
「呪怨」シリーズでお馴染みの、伽椰子と俊雄は、今や貞子と戦うなどキャラクターとしての強さが前面に出てしまっているので、この2人を出さず「正体不明の恐怖」に振り切ったのも、ビデオ作品『呪怨』を初めて見た時の「何を見せられているか分からない、理解できない恐怖」に近いものを感じました。
原点回帰しながらも、新たな恐怖に挑む『呪怨 呪いの家』は、シリーズのファンならもちろん楽しめますが、「呪怨」シリーズ未体験の方でも、分かりやすい内容となっているので、是非おススメしたい作品です。