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Entry 2020/07/24
Update

Netflixオリジナルドラマ『呪怨 呪いの家』ネタバレ感想と考察評価。映画の原点回帰と新たなガチ恐に挑んだ内容を深掘り解説

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

2000年にビデオ作品として発売されて以降、その理不尽とも言える呪いの恐怖が話題になり、今やハリウッド版でリメイクされるほどの人気作品となった「呪怨」シリーズ。

映画版は一度終わりを迎えましたが、2020年7月3日にNetflixオリジナルシリーズとして、全6話のドラマシリーズ『呪怨 呪いの家』が配信されました。

新たに生まれ変わった『呪怨 呪いの家』の、作品の魅力をご紹介します。

『呪怨 呪いの家』の作品情報


『呪怨:呪いの家』

【配信】
2020年(日本ドラマ)

【監督】
三宅唱

【脚本】
高橋洋、一瀬隆重

【キャスト】
荒川良々、黒島結菜、里々佳、長村航希、井之脇海、柄本時生、仙道敦子、倉科カナ

【作品概要】
2000年にビデオ作品として発売されて以降、根強い人気を誇る「呪怨」シリーズ。

長年、シリーズに携わってきた、高橋洋と一瀬隆重が共同で脚本を担当し、Netflixオリジナルシリーズとして、新たな「呪怨」シリーズが始動しました。

監督は、2018年の映画『きみの鳥はうたえる』の三宅唱。

主演は、舞台や映画、ドラマなどで、癖のある役を数々演じて来た荒川良々。

黒島結菜や倉科カナ、柄本時生などの実力派が、新たな「呪怨」の世界を創り出しています。

『呪怨 呪いの家』シーズン1のあらすじ


『呪怨:呪いの家』

1988年

心霊研究家として活動をしている小田島は、テレビ番組で共演したタレントの本庄はるかから「自宅で変な足音がする」と相談を受けます。

小田島は、その足音を録音するようにアドバイスをしますが、実際に足音を録音したテープには、不気味なうめき声が入っていました。

はるかは、うめき声を不気味に感じ、恋人の深沢の家に引っ越していましたが、今度は深沢に異変が起きるようになりました。

小田島は深沢に接触し話を聞くと、深沢には霊感があり、数日前に呪いの家に立ち入った事を聞きます。

小田島は、深沢にその家の場所を聞きますが、深沢から「あの家に関わらない方が良い」と言われ、場所を聞き出す事ができません。

帰宅した深沢は、家の中で謎の足音がしたり、入った覚えの無い部屋の扉が開いているなど、怪現象に遭遇します。

そして、扉の開いた部屋に入った深沢は、不気味な白い女を目撃します。

母親の都合で転校してきた女子校生、河合聖美。

ある日、友人の芳恵と真衣に誘われ、近所で「猫屋敷」と呼ばれている廃墟へ行く事になります。

しかし、そこには雄大という他校の男子生徒も同行し、「猫屋敷」の中に入った聖美は、芳恵と真衣に押さえつけられ、雄大に襲われてしまいます。

その一部始終を芳恵に写真に撮影され「バラしたら、この写真をばらまく」と脅された聖美は、家の中にいた猫を抱きかかえ、押入れの中に入り泣き始めます。

ですが、押入れの屋根裏から、不気味な白い女が顔を覗かせており、聖美は叫び声をあげます。

叫び声を聞いた雄大が、聖美の所へ駆けつけると、聖美は人が変わったような様子で雄大を誘惑します。

芳恵は、廃墟の中で真衣が行方不明になった事を雄大に伝えますが、聖美に誘惑された雄大は、芳恵の事を無視して廃墟を出ます。

聖美は芳恵に勝ち誇った顔を見せて、雄大と一緒に帰宅します。

はるかは、深沢の実家へ挨拶に行く夢を見ますが、それは深沢の魂が無言ではるかを見つめているという、不思議な内容でした。

テレビ局の楽屋で目覚めたはるかに、事務所から電話が入ります。

それは、深沢が亡くなったという事を知らせる電話でした。

深沢の葬式に参列したはるかは、小田島と再会し、小田島から呪いの家の話を聞かされますが、はるかには覚えがありません。

はるかと小田島は、葬儀場に残っていた深沢の母親に会います。

母親は「この子は私に似て、霊感が強かった」と話し、深沢の亡骸をはるかと小田島に見せます。

棺桶の中の深沢は、恐ろしい表情を浮かべて亡くなっていました。

雄大と付き合い始めた聖美は、雄大をそそのかし、自分の担任教師と関係を持っていた、母親を殺害させます。

聖美は、そのまま雄大と一緒に、駆け落ちをするのでした。


『呪怨:呪いの家』

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『呪怨:呪いの家』ネタバレ・結末の記載がございます。『呪怨:呪いの家』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

1994年

雄大と駆け落ちした聖美は、俊樹という子供が産まれ、3人で暮らしていました。

しかし、雄大は仕事が上手くいかない事と、俊樹が自分に懐かない事に腹を立て、家庭内暴力が絶えません。

聖美は、殴られながらも不気味な笑みを浮かべています。

児童相談所に勤める有安君江は、俊樹が暴力を受けている可能性があると通報を受け、雄大達の自宅を訪ねます。

雄大と聖美は留守でしたが、そこには力無く倒れていた俊樹が残されており、君江は俊樹を病院に搬送させます。

俊樹を迎えに来た聖美に、君江は保護を申し出ますが、聖美は君江を無視して俊樹と一緒に帰宅します。

1995年

君江が恐れていた事が現実となります。

雄大の暴力が過剰になり、俊樹は脳に損傷を受け、寝たきりの状態となります。

病室で聖美と再会した君江は、聖美を責めますが、聖美は「これで自由になれる」と泣きじゃくり始めます。

呪いの家の場所を調べている小田島は、家の場所を知っている、ある人物と遭遇します。

連続幼女誘拐事件を起こし捕まっている「M」と名乗る容疑者は、小田島のファンで、小田島が呪いの家を探している事を知り、面会を希望していました。

Mと面会した小田島は「何故、怪現象を追いかけているのか?」と問いかけられます。

明確な答えを持っていなかった小田島ですが、自身の不幸な生い立ちを語ります。

小田島は、産まれた直後に母親が死亡し、その数年後に父親を亡くしていました。

そして、生き別れになった姉も死亡している事を話します。

Mは小田島の話を一通り聞いた後「呪いの家は、犯罪にも詳しくないと見つからない」と語り、呪いの家で起きた悲惨な事件について語り始めます。

呪いの家では、過去に監禁された女性が妊娠させられ、その後殺害されていました。

女性の死体は見つかりましたが、子供の死体は見つからなかったという、不気味な事件が発生していたのです。

一方、小田島から呪いの家の話を聞いていたはるかは、霊能力を持つ深沢の母親に霊視をしてもらい、呪いの家の場所を突き止めます。

しかし、そこには新たに引っ越してきた夫婦が住んでおり、はるかは家の2階の窓辺に立っている、不気味な白い女の姿を目撃します。

その後、呪いの家で新たに事件が発生します。

呪いの家に引っ越してきた夫婦の夫が不倫をしており、不倫相手の女性が夫に殺害され、夫はお腹の胎児を取り出し、呪いの家の庭に埋めるという、残酷な殺人事件です。

殺人事件の現場を訪れた小田島は、呪いの家を見た瞬間、幼い頃の記憶が蘇ります。

小田島は、呪いの家に5歳まで住んでいたのです。

小田島は、殺人事件の担当刑事、高坂に頼み、呪いの家の中を見せてもらう事にします。

高坂は小田島の話を全て信じた訳ではありませんでしたが、呪いの家に入った時に、高坂自身も不気味な感覚を覚えていました。

呪いの家に足を踏み入れた小田島は、聖美の幻覚を見ます。

小田島は、図書館で知り合った君江に、聖美の幻覚の話をします。

君江も、寝たきりのままとなった俊樹の件で、聖美を探していましたが、手がかりが掴めない状態でした。

小田島は、君江とはるかと共に、聖美の捜索を開始し、聖美のアパートを探し出します。

そこに、聖美の姿はありませんでしたが、雄大の死体が残されていました。

聖美はフラフラと街中を彷徨い、呪いの家に入ります。

高校時代に呪いの家で、不気味な白い女に遭遇した聖美は、俊樹を預けられ出産していました。

呪いの家に入った聖美は、行方不明になった芳恵と真衣の魂と共に、どこかへ行ってしまいます。

次の日、高坂に呼び出され呪いの家を再び訪れた小田島は、屋根裏の存在を知ります。

屋根裏に足を踏み入れた小田島は、自分が5歳の時に、屋根裏に足を踏み入れた姉が行方不明になった事、黒い不気味な女が、目の前に現れた事を思い出します。

1997年

呪いの家に、新たに諸角勇作と智子夫婦が引っ越してきます。

引っ越してきた当日に、諸角夫婦を小田島が訪れ、呪いの家で起きた悲惨な事件を話そうとしますが、激怒した勇作に追い返されます。

しかし、その夜、諸角夫婦は呪いの家で起きた、殺人事件の幻覚を見せられます。

諸角夫婦に依頼され、小田島は、はるかと深沢の母親と共に除霊を開始します。

深沢の母親が除霊を開始すると、自室ではるかと共に休んでいた智子に異変が起き、はるかは過去にその部屋で起きた、シャツとブリーフ姿の男が、監禁していた女性に刺殺される事件の幻覚を見せられます。

その後、病院に搬送された智子ですが、家に残った勇作は、小田島の目の前で蒸発するように消えます。

深沢の母親は、呪いの家の屋根裏に入り、霊との交信を始めます。

そこに現れたのは、ボロボロの衣服を身にまとった醜い女でした。

女は不気味な笑みを浮かべます。

数日後、小田島の事務所を高坂が訪ねます。

高坂は、小田島が出版した呪いの家に関してまとめた本に、犯人しか知りえない情報が書かれていた事を、不思議に思います。

小田島は「創作の部分が入っているが、あの家が自分に詳細を見せているのかもしれない」と語り「自分が生かされている理由は、あの家での出来事を語り継ぐ役割があるのかも」と高坂に伝えます。

君江は、病室で寝たきりになっている俊樹を見舞いますが、俊樹は「逃げて、逃げて」と呟きます。

一方、はるかは、醜い女と遭遇して様子がおかしくなった深沢の母親に命じられ、呪いの家の庭の、赤ん坊が埋められた場所を掘っていました。

掘った穴から、赤ん坊の泣き声がするカバンが出て来た為、はるかはカバンを開けますが、何も入っていません。

深沢の母親もいなくなり、はるかは一安心した様子を見せますが、背後からシャツとブリーフ姿の男が現れ、はるかを呪いの家の中に連れ去って行きます。

『呪怨 呪いの家』感想と評価


『呪怨:呪いの家』
世界的に高い人気を誇るJホラー「呪怨」シリーズ、初のドラマ作品として制作された『呪怨 呪いの家』。

映画『呪怨』のモデルになった事件を描いた本作は、「呪怨」シリーズの前日譚とも呼べる内容となっており、シリーズを象徴するキャラクターである、伽椰子も俊雄も登場しません。

ですが「呪怨」シリーズではお馴染みの、「呪いの家」は登場し、この家に足を踏み入れてしまった人達が、次々に呪われてしまうという、「呪怨」シリーズの軸となる部分は、しっかりと引き継がれています。

「呪怨」シリーズは、次々と呪いが伝播する、エスカレートしていく恐怖が見どころの1つでした。

ただ、エスカレートし過ぎて、逆に笑えてしまう時もあったのですが、『呪怨 呪いの家』では実話調になっており、静かな恐怖が特徴となっています。

主要キャラクターの心霊研究家である小田島を、荒川良々が必要以上に感情を表に出さない、リアルな演技で表現しており、作品全体に漂う「実話調の恐怖」を引っ張っています。

誰かが実際に遭遇した恐怖体験を聞いているような感じで、作風としては、2015年のホラー映画『残穢-住んではいけない部屋-』に近い印象です。

また『呪怨 呪いの家』では、「呪いの家」に足を踏み入れた人々が遭遇する「呪いによる恐怖」の他に、家庭内暴力や育児放棄など、社会問題とも言える「人間の恐怖」も描いています。

全6話のうち、1話から4話は「人間の恐怖」が主軸になり、5話と6話が「呪いによる恐怖」がメインになる構成です。

特に「人間の恐怖」が最高潮となる第4話は、1988年に、名古屋で実際に起きた事件を彷彿させており、残酷描写も容赦なしの内容で、全6話の中でもスプラッターホラーに近い、かなり衝撃の強いエピソードです。

5話と6話では「呪いの家」で起きた事件の核心に迫っており、「呪怨」シリーズの、これまでのテイストに近い内容となっています。

ただ、全6話でも明かされていない秘密が残っています。

「呪いの家」に潜む女の謎
赤ん坊の秘密
小田島が生き残っている理由
最後に出て来た、シャツとブリーフ姿の男の正体
連れ去られた、はるかのその後

また、伽椰子と俊雄のモデルになったと思われる、聖美と俊樹の、その後の運命などが不明となっており、今後のシリーズで明かされていくのでしょうか?

ドラマシリーズとして新たに生まれ変わった『呪怨 呪いの家』、この後の展開に目が離せません。

まとめ


『呪怨:呪いの家』
2000年に発売されたビデオ作品『呪怨』は、オリジナルビデオ作品でありながら、「凄く怖いホラーがある」と、口コミで話題になった作品です。

ビデオ作品『呪怨』は、出演者が無名の役者ばかりで、フィクションと分かっていても、妙なリアルさがあり「シリーズの中で一番怖い」とも言われています。

『呪怨 呪いの家』は、主要キャラクターに荒川良々や黒島結菜、倉科カナなどの実力派が揃っていますが、その他の登場人物は、オーディションで選ばれた無名の役者となっており、本作はビデオ作品『呪怨』への原点回帰とも呼べる作品です。

特に、第6話で出てくるシャツとブリーフ姿の男が、演じている役者も誰だか分からないので、正体不明の不気味さがあり、最後の笑顔がめちゃくちゃ怖いです。

「呪怨」シリーズでお馴染みの、伽椰子と俊雄は、今や貞子と戦うなどキャラクターとしての強さが前面に出てしまっているので、この2人を出さず「正体不明の恐怖」に振り切ったのも、ビデオ作品『呪怨』を初めて見た時の「何を見せられているか分からない、理解できない恐怖」に近いものを感じました。

原点回帰しながらも、新たな恐怖に挑む『呪怨 呪いの家』は、シリーズのファンならもちろん楽しめますが、「呪怨」シリーズ未体験の方でも、分かりやすい内容となっているので、是非おススメしたい作品です。

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