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映画『バットマン ビギンズ』感想レビューとネタバレ結末も。バットマンの“始まり”に隠された謎とその物語に迫る

  • Writer :
  • 薬師寺源次郎

『バットマンビギンズ』で新たなバットマン伝説が誕生する。

アメコミ界のレジェンド級ヒーロー「バットマン」の始まりを描いた映画『バットマンビギンズ』クリストファー・ノーランが監督を手掛けています。

クリスチャン・ベールが主人公のブルース・ウェインを務め、敵役にリーアム・ニーソンを起用。日本から渡辺謙が参加したことも話題になりました。

荒廃した故郷ゴッサムシティを救うべく、大富豪の青年ブルース・ウェインがバットマンとなるまでの物語、そして迎える危機に立ち向かう姿が描かれています。

バットマン誕生に隠されたブルースの「恐怖」と「葛藤」を描いた映画『バットマン ビギンズ』をご紹介します!

映画『バットマン ビギンズ』作品情報


(C)2005 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

【公開】
2005年(アメリカ映画)

【原題】
Batman Begins

【監督】
クリストファー・ノーラン

【キャスト】
クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、リーアム・ニーソン、ケイティ・ホームズ、ゲイリー・オールドマン、キリアン・マーフィ。トム・ウィルキンソン、ルトガー・ハウアー、渡辺謙、マーク・ブーン・ジュニア、ライナス・ローチ、モーガン・フリーマン、ラリー・ホールデン、ジェラルド・マーフィ、コリン・マクファーレン、サラ・スチュワート、ガス・ルイス、リチャード・ブレイク、ラデ・シェルベッジア、エマ・ロックハート、クリスティーン・アダムス、キャサリン・ポーター、ジョン・ノーラン

【作品概要】
いわずと知れたアメコミ界のレジェンド級ヒーロー「バットマン」の始まりを描いた本作は、『メメント』(2000)『インソムニア』(2002)などで知られる鬼才、クリストファー・ノーランが監督、脚本を手掛けています。

出演は『リベリオン』(2002)などのクリスチャン・ベールが主人公のブルース・ウェインを務め、敵役にリーアム・ニーソンを起用、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマンら実力派俳優が脇を固めます。また、日本から渡辺謙が参加したことも話題となりました。

映画『バットマン ビギンズ』のあらすじとネタバレ

(C)2005 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベイル)は、子供の頃、ゴッサムシティに建つ自宅の庭の古い井戸に落ち、そこで蝙蝠の群れに襲われた夢を見て目を覚まします。

中央アジアのとある国の刑務所に収監されたいるブルースは、その日受刑者に難癖を着けられ、6人の男達に襲われますが返り討ちにします。しかし、看守に独房へと押し込まれてしまいました。

ブルースの前にデュカード(リーアム・ニーソン)と名乗る男が突如現れます。驚くブルースにヘンリーはブルースが翌日、釈放されることを告げます。

デュカードはブルースが心の奥に「恐怖」を抱えている事を言い当て、それを克服したかったら、ヒマラヤの山腹にある屋敷を訪れるように言います。

翌日、デュカードの言う通り釈放されたブルースはヒマラヤを目指し、屋敷に到着。そこでデュカードと再会し、「影の同盟」に参加するように薦められます。

影の同盟は歴史の裏で国家や権力者の不正を人知れず正してきた集団で、そこで恐怖を克服する術を学ぶことができると言うデュカードに導かれ、盟主ラーズ・アル・グール(渡辺謙)に引き合わされます。

影の同盟に参加する事を決意したブルースはデュカードの下で日々、厳しい訓練に明け暮れます。訓練の中でブルースは自身の「恐怖」の根幹となる出来事をデュカードの話します。

幼いブルースが古い井戸に落下した後、父トーマス(ライナス・ローチ)に救出されます。幸い怪我は無かったブルースですが、その後、両親と訪れたオペラハウスで蝙蝠の姿をした役者を目にし、井戸で蝙蝠に襲われたことを思い出します。

家に帰りたいと言うブルースの願いを聞き入れ、ウェイン一家はオペラハウスを後にします。帰路に着く一家の前に、浮浪者が現れて拳銃を突きつけ、財布を渡すように言いました。

トーマスは素直に従いますが、気が動転した浮浪者は両親を射殺。両親を失い、失意のブルースは警察署で保護されます。

そこで、一人の警察官ゴードン(ゲイリー・オールドマン)に勇気付けられました。その後、ブルースはウェイン家の執事アルフレッド(マイケル・ケイン)に育てられます。

やがて大学生になったブルースは、両親を殺した犯人がゴッサムを牛耳るマフィアであるファルコーニ(トム・ウィルキンソン)に不利な証言をすることと引き換えに仮釈放を求める公聴会に出席します。

犯人の仮釈放に納得できないブルースは法廷を出てきた犯人を殺害しようと、コートに拳銃を隠し近づきますが、ファルコーニの息がかかった者により、先に犯人を殺害されてしまいます。

ブルースの幼馴染で検事見習いとして法廷にいたレイチェル(ケイティ・ホームズ)はショックを受けている様子のブルースをその場から連れ出します。

ブルースはレイチェルに自身が復讐のため犯人を殺害しようとしていたことを打ち明けます。レイチェルはブルースに失望し、自暴自棄になったブルースはファルコーニが食事をしている店に乗り込みます。

ブルースはファルコーニを恐れない人間もいる事を伝えますが、ファルコーニの部下に痛めつけられ、店をたたき出されました。

その後ブルースは、結局何もできなかった無力な自分に嘆き、逃げるようにゴッサムを飛び出し、諸国を放浪。その間に窃盗に手を染めます。しかし完全に犯罪者にはなれず、父親が残した会社「ウェイン産業」の荷物しか盗めませんでした。

訓練をつんだブルースは最終試験を受けます。人の心に作用し、「恐怖」の幻覚を見せる薬を吸い込み、姿を隠すデュカードと対決します。

飛び交う蝙蝠、父親の死の幻覚を見ながらも気配を殺し、デュカードを欺き、背後をとることができたブルースは試験に合格します。

その後、ラーズの前に連れて来られたブルースは最後の試練として、罪人の処刑をするよう命じられます。また、警察も司法も腐敗したゴッサムを破壊する計画を伝えられます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『バットマン ビギンズ』ネタバレ・結末の記載がございます。『バットマン ビギンズ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2005 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

反発したブルースはその計画を阻止するため、抵抗し、屋敷を燃やします。

その中でラーズは死亡。デュカードも意識を失ったものの、ブルースは彼を燃え落ちる屋敷から助け出し、近くの村に預けるとゴッサムに帰郷することにします。

ブルースがゴッサムを離れていた7年間で腐敗はさらに進行していました。

検事補になったレイチェルはその日、ファルコーニの殺し屋を刑務所に入れるべく法廷に立ちますが、精神疾患を理由に訴えは棄却されます。

その診断を下した精神科医クレイン(キリアン・マーフィー)はこれまでもファルコーニの手下を精神疾患と診断しており、ファルコーニの手がまわっている事は明らかでした。それでも、ファルコーニを訴えようとするレイチェルに検事長のフィンチ(ラリー・ホールデン)は警告します。

その頃、屋敷に戻ったブルースは迷い込んだ蝙蝠を目にします。どこかに蝙蝠の巣があると考えたブルースはかつて落下した古井戸の奥に洞窟を見つけます。

時を同じく、クレインはファルコーニに会っていました。

レイチェルに怪しまれている事を理由にし、ファルコーニに手を貸すのをやめようとするクレイン。ファルコーニは提供している薬物の供給を止めると脅しますが、クレインは逆に自分の「雇い主」がそんな事を許さないといいます。

ファルコーニはクレインに引き続き協力させるため、レイチェルの殺害を計画。次の日、ブルースはウェイン産業の社長代行アール(ルトガー・ハウアー)に面会します。

ブルースはアールにウェイン産業を知りたいと伝え、手始めに応用科学部の見学を希望します。

応用科学部を部長のフォックス(モーガン・フリーマン)に案内されるブルースは、紹介されるボツとなった開発品の中から、銃型のワイヤー射出装置や高性能プロテクトアーマーが目に留まり、会社から持ち出します。

屋敷に帰ったブルースは持ち帰った装備品を黒く塗り、蝙蝠をかたどったマスクをデザインし、地下洞窟の改造を始めます。

その夜、巡査部長に昇進していたゴードンは自分のオフィスで何者かの待ち伏せに遭います。

待ち受けていた男は暗闇に潜み、ゴードンに毎週、薬物を港で受け入れているファルコーニが警察に捕まらないのか訊ねます。

当局を買収しているためと答えるゴードンは買収された判事の弱みを握り、ファルコーニを起訴する勇気ある検事がいればと答えます。闇に潜む男……ブルースはレイチェルこそ勇気ある判事だと答え、ゴードンのオフィスを後にします。

追ってくる警官から逃げる際、警察署から隣のビルに飛び移り、難を逃れますがブルースは効率のよい移動手段の必要性を感じます。

翌日、フォックスの下を訪れたブルースは空を飛ぶ手段が無いか訊ねます。フォックスは電流を通すと硬質に変化する布を見せます。その布を気に入ったブルースは倉庫の片隅にあったとある車両に目を止めます。

「タンブラー」と呼ばれる特殊装甲車に試乗し、これも気に入り持ち帰ろうとするブルースはフォックスに車両を黒く塗るように依頼します。

数日後、夜の港でファルコーニは薬物の荷揚げをしていました。しかし、作業中の手下が次々と消えるという不可思議な現象が起きます。

異変を察し、様子を見に来たファルコーニは手下が黒いマントを纏い、蝙蝠を模したマスクをかぶった男に次々と倒されていくのを目撃します。

すぐさま逃げ出すファルコーニですが、瞬く間に男に捕まってしまいます。何者か訊ねるファルコーニに男は「バットマンだ」と答えます。

バットマンことブルースはファルコーニを気絶させ、どこかへ連れ去って行きます。その頃、帰宅途中のレイチェルは彼女を殺害しようとするファルコーニの手下数人に襲われます。

しかし、何もしないまま逃げ出す手下達にいぶかしむレイチェルは背後に立つ人影に気づき、驚きます。その人影の主……バットマンは汚職判事の「弱み」である愛人と写った写真をレイチェルに渡して消え去ります。

港での騒ぎを聞きつけやってきたゴードンは、ファルコーニの手下達と、サーチライトへ磔にされたファルコーニを発見します。空に照らされたサーチライトの光はファルコーニの影でさながら蝙蝠を描いているようでした。

翌朝、警察は素性も目的も分からないバットマンを警戒し、検事局はレイチェルを中心にファルコーニ起訴の準備を始めます。

ウェイン産業ではアールが部下からある報告を受けます。

ゴッサムに向かっていたウェイン産業の貨物船が何者かに襲われ、試作中の兵器であるマイクロ波放射器が奪われてしまったのです。マイクロ波放射器は水源にマイクロ波を照射、水を気化させるものでした。

ブルースは世間がバットマンを認知し始めた事で、謎の多い人物として知られている自分に懐疑の目を向けられないため、豪遊する大富豪を演じることにします。

出かけた先でブルースはレイチェルと出会います。ブルースの堕落ぶりに失意の目を向けるレイチェルに、ブルースは思わず「これは本当の僕じゃない」と口にしますが、レイチェルは「本性は行動にでるもの」と言い立ち去ってしまいます。

クレインは収監されたファルコー二に面会します。ファルコーニは精神疾患を理由に釈放する手筈を整えるよう、クレインに言います。さもなくば、ファルコーニがクレインへある薬物を供給したこと、その薬物をクレインが患者に使用している事を警察にばらすと嘯きます。

クレインはおもむろに鞄からぼろ布のようなマスクを取り出して被ると、ファルコーニに霧状の薬を嗅がせるます。

すると、ファルコーニにはマスク姿のクレインが迫り来る悪鬼のように見え悲鳴をあげて発狂し、うわ言の様に「スケアクロウ(かかし)」と呟く様になりました。

ゴードンの前に再びバットマンが現れます。ファルコーニが仕入れた薬物のうち、半分しか港に無かったことを告げるバットマンにゴードンはファルコーニと内通していた警官フラス(マーク・ブーン・ジュニア)なら残りの薬物の行き先を知っているかもしれないと答えます。

フラスを尋問したバットマンは、薬物がゴッサムシティに隣接するナローズ島に送られた事を知ります。

フィンチはファルコーニ起訴に向け、港を訪れます。ファルコー二が仕入れた荷物のコンテナの中に申告されていないものを見つけたフィンチは中を確認します。そこには奪われたマイクロ波放射器があり、フィンチはファルコーニの息がかかった税関に殺害されてしまいます。

(C)2005 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

ナローズ島を訪れたバットマンは薬物の足取りを追い、とある部屋にやってきました。しかし、薬物を偽装するための痕跡は見つけましたが、薬物自体は見つかりませんでした。

そこへ手下を伴ったクレインがやって来ます。クレインはその部屋を焼き払うように指示、手下はガソリンを部屋中に撒く始めます。

手下を排除し、クレインに迫るバットマン。しかし、クレインは薬物をバットマンへ吹きかけます。幻覚に苦しむバットマンはクレインにガソリンを浴びせられ、燃やされてしまいます。

何とか逃げ延びたバットマンはアルフレッドに助けを求めます。目覚めたブルースは2日間眠っていたことをアルフレッドに聞かされます。

また、ひょっこり現れたフォックスに驚くブルースに、アルフレッドはフォックスに助力を頼んだことを明かします。解毒剤を生成に成功したことを話すフォックスにブルースは解毒剤を大量生産するように頼みます。

その日はブルースの誕生日であり、誕生日パーティーに出席できないレイチェルが、プレゼントを持ってやってきます。そして彼女から、フィンチが行方不明であること、クレインがファルコーニを自身の病院、ナローズ島のアーカム病院へと移送したことを聞きます。

すぐさま向かうレイチェルを追うため、ブルースは地下へ向かいます。その頃、フォックスのもとをアールが訪れました。マイクロ波放射器についてあれこれ聞いてくるアールにフォックスは何事か訪ねますが、アールは答えず、フォックスに解雇を言い渡し立ち去ります。

アーカム病院へやってきたレイチェルは、クレインにファルコーニの精神鑑定のやり直しを求めます。

クレインはレイチェルに見せたいものがあるといい、地下へ誘います。そこではクレインの手下達が水道管に何かの薬物を流し込んでいました。

危険を感じたレイチェルはすぐさま逃げ出しますが、クレインに捕まり、薬物を嗅がされます。レイチェルを始末しようとするクレインたちの前にバットマンが現れます。

クレインは手下を次々と倒していくバットマンの背後に忍び寄り、薬物を嗅がせようとします。しかし、バットマンはクレインをひねり上げ、マスクを剥ぎ取ると、逆に薬物を嗅がせます。

バットマンはクレインに雇い主を聞き出そうします。クレインは「ラーズ・アル・グール」と答えますが、バットマンは薬物によるうわ言だと思い、尋問を続けます。

しかし、アーカム病院は警察に包囲されてしまいます。バットマンはレイチェルを連れ、地下室を出ます。

その頃、病院の外に到着したゴードンは一人、病院に侵入。バットマンはゴードンと合流し、クレインは薬物を水道管に流していた事を伝え、レイチェルを病院の外に連れ出すよう頼みます。

バットマンは呼び寄せた蝙蝠の群れに紛れ病院を脱出、再びゴードンと合流しレイチェルをタンブラー改め、バットモービルに乗せると、屋敷へ向かいます。

警察の追跡を振り切り、屋敷に辿り着いたバットマンはフォックスの解毒剤をレイチェルに投与します。

水道管を調べさせていたゴードンは薬物が数週間前から流されており、ゴッサム中に行き渡っていること知り、それにもかかわらず市民に何の影響も出ていないことをいぶかしみます。

目が覚めたレイチェルはバットマンから解毒剤を二本、渡されます。1本はゴードンへ、もう1本をサンプルにして大量生産するように言われたレイチェルは再び意識を失います。

マスクを脱ぎ、屋敷に向かうブルースはアルフレッドにレイチェルを送り届けるように頼み、自身の誕生日パーティーに向かいます。

ブルースは、パーティーに来ていたフォックスにクレインが薬物を水道管に流していたことを話します。薬物がクレインが用いる幻覚剤だと察知したフォックスは気化しないと効果は無いと話しながら、アールからマイクロ波放射器について尋ねられたことを思い出します。

フォックスはマイクロ波放射器の存在を知るがため、アールに解雇を言い渡されたのではと感じ、その事をブルースに伝えます。

またマイクロ波放射器を利用し、ゴッサムの水道管を流れる薬物入りの水を気化させれば、市民が暴徒と化すとフォックスに聞かされ、ブルースは急ぎ解毒剤の量産を依頼します。

その後、パーティーに興じるブルースに招待客の一人が、紹介したい人物がいると言い、ある人物を連れて来ます。

「ラーズ・アル・グール」と紹介された人物はブルースが知るラーズとはまったくの別人でした。ラーズでは無いと口にするブルースの前にデュカードが現れます。

ブルースはディカードこそ真のラーズ・アル・グ-ルであると確信します。ラーズはゴッサムを破壊しようとする自身の計画において、最大の障害であるバットマン=ブルースを排除しにやってきていました。

ラーズは計画の全貌をブルースに伝えます。ブルースは招待客に被害を及ぼさないよう、わざと暴言を吐き、客たちを罵倒し、屋敷から離れさせます。

残ったラーズとその部下は屋敷に火を放ち、抵抗するブルースを気絶させると立ち去ります。燃え盛る屋敷に取り残されたブルースはアルフレッドにより助けられます。

ラーズを止めるためにバットマンとなったブルースは、バットモービルに乗り、ナローズ島へ向かいます。また、自分のベットで目を覚ましたレイチェルも解毒剤をもってゴードンのもとへ向かうべく、ナローズ島へ向かいます。

しかし、島内はラーズ達が放ったアーカム病院に収監された精神疾患とされた犯罪者たちが暴徒と化していました。

ゴッサム市警の警官隊が投入され鎮圧に向かいますが、ラーズ達はマイクロ波放射器を起動。破裂する水道管から気化したガスを吸った人々は幻覚に惑わされ、暴徒・警官・市民に関係なく暴れ始めます。

ゴードンと対面したレイチェルは解毒剤を渡し、島から脱出しようとします。しかしレイチェルは暴徒に囲まれ、窮地に陥ります。

そこにバットマンが助けに現れます。レイチェルの無事を確かめると立ち去ろうとするバットマンにレイチェルは正体を尋ねます。「本心は行動に現れる」と口にし去っていくバットマンの正体がブルースであることにレイチェルは気づきます。

解毒剤を打ち、必死に抵抗するゴードンの前に現れたバットマンは、黒幕ラーズからマイクロ波放射器でゴッサム中の水道水を気化させ、全市民を暴徒化させることが目的であると聞かされます。

ウェイン産業の本社ビルであるウェインタワーはすべての水道管の起点となっているため、ラーズはモノレールを使ってマイクロ波放射器を運搬しようとしているのではと二人は考えます。

バットマンはゴードンにバットモービルを託し、自身はモノレールへ向かいました。モノレールに到着したバットマンは、まさにマイクロ波放射器を乗せて走り出そうとしている車両に飛び乗ります。

ラーズの部下を排除し、一人残ったラーズと死闘を繰り広げるバットマンですが、屋敷で負った傷もあり、徐々に劣勢に立たされます。

バットマンの抵抗空しく、モノレールはウェインタワーに到着しようとしていました。勝利を目前にほくそ笑むラーズは「お前に私は倒せない」と高らかに宣言します。

「お前を倒すのが目的じゃない」と言うバットマンにいぶかしむラーズは、モノレールの線路が途切れていることに気が付きます。バットモービルで先回りしたゴードンが線路を破壊していたのです。

あっけにとられるラーズのスキを突き、バットマンは車両から脱出。車両は線路から脱線し、マイクロ波放射器はラーズもろとも爆発。ゴッサムの危機は去りました。

翌日、全焼した屋敷をかたずけるブルースとアルフレッドの前にレイチェルが現れます。

バットマンの正体がブルースだと知ったレイチェルは、これまで秘めていた想いをブルースに打ち明けると共に、バットマンとしての使命を果たすまで待つことを伝えます。

その夜、バットマンはゴードンに呼び出されます。警部補に昇進したゴードンはバットマンに、ゴッサムにとって新たな脅威になりえる犯罪者が現れた事を伝えます。

その犯罪者は派手な演出で警察を欺きながら凶悪な犯罪を実行し、犯罪現場には必ず自身のサインを残すと話すゴードンは、バットマンにそのサインを見せます。

それは「ジョーカー」が描かれたトランプの絵札でした。バットマンとゴードンはゴッサムシティに新たな危機が近づいていることを感じていました。

映画『バットマン ビギンズ』の感想と評価

(C)2005 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

DCコミックスにおいて「スーパーマン」と双璧を成すヒーローである「バットマン」は、これまで幾度と無く映画化されてきました。その歴史の中でも、本作『バットマン ビギンズ』から始まる『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』の「ダークナイト トリロジー」と呼ばれるシリーズは、過去のバットマン映画は元より、数々のヒーロー映画の中でも高い評価を得ることとなります。

本作の制作にあたり起用されたクリストファー・ノーラン監督は徹底したリアル志向で撮影において、VFX等の最新技術を極力使用しないことで知られています。そんなノーラン監督は、本作でもその手腕を大いに奮っています。

例えば劇中、迫力のカーチェイスを見せたバットモービルですが、車両も含め、CGはほとんど使用されておらず、様々な工夫を駆使し、車両が跳躍する場面を表現しています。この演出は「ヒーロー映画だからこそリアリティを」という本作でのノーラン監督のポリシーが、よく現れているのでしょう。そんな本作が第78回アカデミー賞において撮影賞にノミネートされたのは当然なのかもしれません。

また、過去の「バットマン」作品と一線を画すのが、『バットマン ビギンズ』の重厚なストーリではないでしょうか。

『バットマン ビギンズ』というタイトルから察せられるように、主人公・ブルースがいかにしてバットマンになったのかが描かれていますが、本作では過去のシリーズ以上にブルースの心情にスポットを当てています。

特に、ブルースにとってもバットマンにとっても重要な要素となる「恐怖」について深く描かれています。

物語の冒頭、幼少期に古井戸で蝙蝠の群れに襲われたことによる「恐怖」は子供なら誰しも感じることではありますが、その後、両親を目の前で殺害されたことによりブルースの中で蝙蝠=恐怖の象徴に変化していく過程が表現されています。

またその反面、助けに来た父親、トーマスに助けられる場面では「希望」を感じさせていました。ブルースが蝙蝠に対して単に恐怖ではなく希望のイメージを持っているが故、自身のシンボルとして蝙蝠を選んだことも匂わせています。

このように「バットマンの始まり」を鮮明に描くことで、これまでにない人の心の「強さ」と「弱さ」を内包した新たなバットマン像が描き出されました。

まとめ

(C)2005 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

1939年、アメリカで「バットマン」は誕生しました。当時のアメリカは世界恐慌からの復興を果たしますが、それはアメリカが第二次世界大戦へ突入し、それに伴う戦争特需によるものでした。世界恐慌の傷と、先行きの見えない世界情勢に対する不安を抱える社会で「バットマン」は人々の共感を得て行きました。

「バットマン」が共感を得た理由の一つに、登場するヴィランの存在があります。

バットマンに登場するヴィラン達は、単純な「善悪」で規定することができず、かつ人間が持つ「闇」を強く表現されたキャラクターが多く登場します。例えば本作のヴィランであるラーズ・アル・グールの目的は、世の中をより良くする為、ゴッサムを破壊する事でした。

手段はともかく、その目的は単純に「善悪」で判断できるものではありません。作中におけるバットマンもまた、司法によるゴッサムの是正を諦め、「恐怖」により犯罪を無くそうとしている為、純然たる「善」の存在とはいえません。しかし、現実の人々はそんな「善悪」のバランスがもたらすジレンマを抱えながら生きている為、「バットマン」は共感を得てきたのではないでしょうか。

いつの時代も、いい知れぬ社会の「闇」と人々の「ジレンマ」に対峙し続ける「バットマン」だからこそ、永きに渡って人々に愛されているといえます。


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