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映画『ヘアスプレー』あらすじネタバレと感想。名曲とミュージカルの踊りに込められた深いメッセージ

  • Writer :
  • 咲田真菜

ジョン・トラボルタが女装でミュージカルに出演。

『ヘアスプレー』は、アダム・シャンクマンが監督、レスリー・ディクソンが脚本を手掛け、ちょっと太めの女子高生・トレーシーが、優しい両親と仲間たちに支えられて、明るく前向きに夢を叶えていく姿を描いています。

ジョン・トラボルタ、クリストファー・ウォーケンら豪華キャストで映画化されたミュージカルです。

映画『ヘアスプレー』の作品情報

TM & (C) MMVII New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.

【日本公開】
2007年(アメリカ映画)

【監督】
アダム・シャンクマン

【脚本】
レスリー・ディクソン

【キャスト】
ジョン・トラボルタ、ニッキー・ブロンスキー、アマンダ・バインズ、クリストファー・ウォーケン、ザック・エフロン、イライジャ・ケリー、クイーン・ラティファ、ミシェル・ファイファー、ブリタニー・スノウ、ジェームズ・マースデン、アリソン・ジャネイ、テイラー・パークス、ジェリー・スティラー

【作品概要】
ジョン・ウォーターズ監督が1988年に発表した青春映画『ヘアスプレー』は、2002年にブロードウェイでミュージカル化され、トニー賞8部門を受賞。

そのミュージカルをジョン・トラボルタ、クリストファー・ウォーケンら豪華キャストで映画化、ジョン・トラボルタが女装で30年ぶりにミュージカル映画に出演したことも話題になりました。

ぽっちゃり女子高生・トレーシーが人気者になっていく姿を描いたサクセス・コメディです。

映画『ヘアスプレー』のあらすじとネタバレ

TM & (C) MMVII New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.

60年代のアメリカ・ボルチモア。優しい父・ウィルバー(クリストファー・ウォーケン)と母・エドナ(ジョン・トラボルタ)と幸せに暮らしている16歳の高校生トレーシー(ニッキー・ブロンスキー)は、ダンスもファッションもセンス抜群だけれど、体型はかなり太めの女の子。

学校の勉強にはあまり興味はなく、ボルチモアで人気のテレビ番組「コーニー・コリンズ・ショー」に出演する夢を持っています。ある日番組レギュラーメンバーのオーディションが開催されると知り、喜び勇んで挑戦するのですが…。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ヘアスプレー』ネタバレ・結末の記載がございます。『ヘアスプレー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

「コーニー・コリンズ・ショー」を仕切っているのは、元ミス・ボルチモアで、スリムなベルマ(ミシェル・ファイファー)。「チビでおデブはお呼びじゃない」と言われ、あえなく不合格にされてしまいます。

がっかりしながら学校へ向かったトレーシーは、遅刻した罰で居残りを命じられ、泣きっ面に蜂。ところが、居残り部屋では、日頃一緒に授業を受けることがない黒人の生徒たちが楽しそうにダンスをしていました。

「居残りを食らっても音楽があれば最高さ」というシーウィード(イライジャ・ケリー)と意気投合し、彼らが踊っているダンス「ペイトンプレイス」を教えてもらい一緒に踊るトレーシー。

その様子を見ていた「コーニー・コリンズ・ショー」に出演しているリンク(ザック・エフロン)が、番組のホップ・パーティーに出演してみないかと持ち掛け、リンクに憧れているトレーシーは舞い上がります。

ホップ・パーティーでは、参加者が楽しく踊っているのですが、白人と黒人のエリアがしっかりと分けられています。そんな中トレーシーはシーウィードに教えてもらった「ペイトンプレイス」を一緒に踊ろうと誘います。

それはできないから君が踊れよとシーウィードに促されたトレーシーは、みんなの前で「ペイトンプレイス」を披露し会場は大盛り上がりに。これをきっかけにトレーシーは、「コーニー・コリンズ・ショー」に出演することになるのです。

すっかり人気者になったトレーシーは、大きめサイズの服で有名な「ミスター・ピンキー」のイメージガールに選ばれるなど、好調な毎日を送ります。また親友のペニー(アマンダ・バインズ)やリンクも居残り部屋でダンスを楽しむようになり、シーウィードら黒人生徒たちとの壁が少しずつ取り払われていきます。

しかし、近く行われる「ミス・ヘアスプレーコンテスト」で優勝を狙う娘のアンバー(ブリタニー・スノウ)の人気を奪われると焦ったベルマは、番組のホスト・コーニー(ジェームズ・マースデン)にトレーシーを出演させることや番組で黒人のダンスを踊ることに猛抗議します。しかしコーニーは、「それが時代の流れなんだ。素直に受け入れよう」とベルマをたしなめます。

それにも関わらず、「コーニー・コリンズ・ショー」で定期的に行われていたブラックデー(黒人が出演できる日)が突然なくなり、それを知ったトレーシーは憤ります。そしてブラックデーのホステスを務めていたシーウィードの母・モーターマウス・メイベル(クイーン・ラティファ)に「みんなで抗議デモをしよう!」と提案します。

メイベルは「番組に出られなくなるわよ」と忠告するものの、「シーウィードたちと踊ることができればいい」と言うトレーシーの強い意志に打たれ、デモを決意します。

デモの当日、トレーシーを心配して連れ戻そうとした母・エドナですが、そのまま一緒にデモに参加することに。しかし警官たちが立ちはだかり、彼らの態度に腹が立ったトレーシーは、持っていたボードで警官の頭を叩いてしまいます。「逮捕するぞ」と言う警官たちからエドナはトレーシーを守り、逃がします。

一方で、トレーシーに誘われながらも「リスクが重い」とデモへの参加を拒否したリンクは後悔の念にさいなまれ、トレーシーの自宅を訪れます。そんなリンクをエドナは温かく迎えます。

その頃トレーシーはペニーの自宅に隠れていましたが、ペニーの母に見つかり、追い出され、シーウィードたちのもとへ向かいます。そして翌日に控えた「ミス・ヘアスプレーコンテスト」へ出場できるよう、エドナに協力を頼みます。

そして迎えた「ミス・ヘアスプレーコンテスト」では、ウィルバー、エドナ、そしてシーウィードたちの協力のもと、トレーシーは無事に参加して、圧巻のダンスを魅せます。盛り上がったステージでは、トレーシーとリンクが踊り抱き合い、リンクがエスコートすることで、シーウィードの妹アイネスが飛び入り参加。すると視聴者の人気投票はみるみるアイネスに集まります。

シーウィードとペニーも一緒に踊り、もはや白人と黒人を遮る壁はありませんでした。そしてミス・ヘアスプレーにはアイネスが選ばれます。ベルマの不正も公の場で暴かれ、番組ホストのコーニーは「この番組は永遠に差別を排除します」と宣言するのでした。

映画『ヘアスプレー』の感想と評価

TM & (C) MMVII New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.

捨て曲なし!名曲の数々とミュージカルの王道「歌って踊る」をとことん楽しめる作品

『ヘアスプレー』の魅力は、音楽とダンスシーンがこれでもかというほど盛り込まれているところです。いずれの曲もすぐに耳に馴染んでしまう名曲ばかり。

まずは物語の冒頭でトレーシーがキュートに歌う「グッド・モーニング・ボルチモア」で、一気にヘアスプレーの世界に引き込まれ、シーウィードたちがトレーシーを自宅へ招く場面で流れる「ラン・アンド・テル・ザット」で圧巻のダンスシーンを堪能することができます。

そして切ないシーンでも美しい音楽が彩ります。トレーシーたちが抗議デモに向かう場面で流れる「アイ・ノウ・ホエア・アイヴ・ビーン」は、差別の歴史に苦しんできた人々の心からの叫びを、メイベルが力強い歌唱でソウルフルに歌い上げ、リンクとトレーシー、シーウィードとペニーが互いを想い合って歌う「ウィズアウト・ラヴ」はポップなメロディーに乗せて、「愛がない人生は味気ない」とそれぞれの切ない気持ちを歌います。

そして極めつけは、ラストのミス・ヘアスプレーコンテストのシーンで流れる「ユー・キャント・ストップ・ザ・ビート」です。トレーシーとリンク、シーウィードの妹アイネス、シーウィードとペニー、エドナ、メイベルらが大集合。

アップテンポな曲に乗って魅せるステージは、観ている側も踊りだしたくなるほど。新しい時代の到来は止められない、まさに「ユー・キャント・ストップ・ザ・ビート」を地でいく場面で、物語のラストを飾る名シーンといえるでしょう。

明るいトレーシーを支える心優しい人々

TM & (C) MMVII New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.

トレーシーは、明るく前向きでとても魅力的な少女です。ダンスとおしゃれが大好きだけれど、差別に真向から立ち向かう骨太な一面も。そんな彼女を優しく支える家族や仲間たちもこの物語の大きな見どころです。

親友のペニーはトレーシーの破天荒なところに驚きつつも、常に優しく見守ります。警察に捕まりそうになったトレーシーをかくまおうとするほど、二人の友情は固いものです。

そしてなんといってもトレーシーを支えているのは、心優しい両親です。「おデブやチビ、黒人、自分と違う人たちを排除したいのよ…」と嘆くトレーシーに「正しいと思うことがあれば、古い人間は気にするな」と声をかける父・ウィルバーの優しさは心に染みます。

トレーシーと母・エドナは、親子というよりも親友のような間柄のようにも見えます。太っているために1951年からずっと引きこもり生活を送っているエドナは、母としてトレーシーを思いやっているのですが、トレーシーもそんなエドナに対して「時代は変わっているの。外に出ようよ」と励まします。二人の温かい関係が垣間見えるシーンは作品のいたるところで感じられます。

明るい音楽とともに描き切ったアメリカが抱える社会問題と差別

TM & (C) MMVII New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.

明るくポップな「グッド・モーニング・ボルチモア」の曲とともに始まる本作ですが、「ボルチモア、大学で黒人学生を受け入れ拒否」という新聞の見出しを大写しにして物語がスタートします。

この作品は、黒人や太っている人、小さい人など「自分と少し違う人」への差別問題を真向から取り上げ、楽しく歌うトレーシーとともに、当時のアメリカが抱えていたさまざまな社会問題が映像として描かれています。

音楽とダンスを楽しむだけではない、深いメッセージが込められた作品なのです。

まとめ

TM & (C) MMVII New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.

本作はジョン・トラボルタが30年ぶりに女装でミュージカル出演することが大きな話題となりました。トレーシーを演じるニッキー・ブロンスキーらのダンスシーンだけでなく、期待を裏切らないトラボルタが披露するダンスの見せ場にも注目です。

また、クリストファー・ウォーケンとの夫婦役も素晴らしく、親子愛だけでなく夫婦愛も随所に感じることができる作品です。

差別することの愚かしさ、人を思いやる気持ちの大切さをさまざまな角度で魅せてくれるのが『ヘアスプレー』なのです。

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