Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

コメディ映画

Entry 2020/04/06
Update

チャップリン映画『街の灯』ネタバレ感想とラストまでのあらすじ。結末の娘の名言を研究家の大野裕之は如何に評したか

  • Writer :
  • 松平光冬

恋する娘のために奮闘する放浪紳士を描いたチャップリン映画の代表作

“喜劇王”チャールズ・チャップリン監督・主演の、1931年製作の映画『街の灯』

目の見えない花売り少女のために奮闘する男を描いた感動作を、ネタバレ有でレビューします。

映画『街の灯』の作品情報

【日本公開】
1934年(アメリカ映画)

【原題】
City Lights

【製作・監督・脚本】
チャールズ・チャップリン

【撮影】
ローランド・トザロー

【キャスト】
チャールズ・チャップリン、ヴァージニア・チェリル、フローレンス・リー、ハリー・マイヤーズ、アラン・ガルシア、ヘンリー・バーグマン、ハンク・マン

【作品概要】
“喜劇王”チャールズ・チャップリンが監督・主演を務めた、1931年製作のコメディ映画。チャップリン扮する浮浪者が、偶然知り合った盲目の花売り娘を救うべく奮闘する様を描きます。アメリカでは大ヒットを記録し、日本でも歌舞伎演目『蝙蝠の安さん』として翻案されるなど高く評価。

イギリスBBCが2015年に発表した「史上最高のアメリカ映画100本(The 100 Greatest American Films)」では、18位に選出(17位は同じチャップリン製作の『黄金狂時代』)されています。

映画『街の灯』のあらすじとネタバレ

参考:『街の灯』の1シーン

街の銅像除幕式で騒ぎを起こした一人の浮浪者は、町で花を売っている盲目の女性と出会います。

浮浪者は彼女に一目惚れするも、その娘からは、大富豪だと勘違いされてしまいます。

その夜、浮浪者は偶然にも、入水自殺を図ろうとする大富豪を助けます。

泥酔した富豪は、彼を命の恩人だとして共にダンスホールへ繰り出し、一晩中遊び回ります。

しかし、一晩明けて素面に戻った富豪は、前夜のことを覚えておらず、執事に言って彼を家から出してしまうのでした。

浮浪者は街の清掃員になり、稼いだ金を花売り娘のために使うことに。

娘の家を訪れては、紳士のように振舞って彼女を援助します。

しかし、娘とその祖母が、家賃滞納により部屋の立ち退きを迫られており、さらに彼女が床に臥せてしまったことを知ってしまいます。

娘のために働き続けようとする浮浪者でしたが、遅刻してしまったことで仕事をクビに。

どうする術もなく街を歩いていた浮浪者に、男が八百長ボクシングへの出場を持ちかけます。

大金が入ると聞いて試合に出ることにした浮浪者でしたが、予定が変わり対戦相手が腕っぷしの強いボクサーになってしまいます。

浮浪者は、あの手この手を使って勝とうとしますが、あえなくノックアウトされるのでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『街の灯』のネタバレ・結末の記載がございます。本作をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

その夜、再び街をさまよっていた浮浪者の前に、あの酔っ払いの大富豪が姿を現します。

邸宅に招かれた浮浪者が娘の事情を話すと、富豪は家賃と目の手術代として1,000ドルを渡してくれます。

ところが、室内には強盗が潜んでいました。

彼らに背後から頭を強打され気を失った富豪を見て、警察を呼ぶ浮浪者。

警官が到着するも強盗は逃げてしまい、執事から仲間だと疑われた浮浪者は、富豪の知人であることを訴えます。

しかし、意識を取り戻した富豪から出た言葉は、「この男は誰だ?」でした。

逮捕されようとする寸前で浮浪者は逃走し、その足で娘の家を訪れ、1,000ドルを渡してその場を立ち去ります。

その後、浮浪者は、張りこんでいた警察に捕まってしまうのでした。

それから月日が流れ、出所した浮浪者が街をさまよいます。

道端に落ちていた花を拾おうとしたところを、街の子どもたちに弄られる浮浪者。

その様子を笑って見ていたのは、立派な生花店を構えるあの娘でした。

娘の姿を見つけ、思わず笑みを浮かべる浮浪者。

自分に一目惚れしたと思った娘は、彼にお金と一輪の花を恵もうとします。

慌ててその場を離れようとする浮浪者に近づき、手を握った娘。

一瞬の間を置いて、娘が言います。「あなたでしたの?」

浮浪者が言います。「見えるようになったんだね、目が」

「ええ、見えるようになりました」、そう答えて微笑む娘に、浮浪者は笑顔を返すのでした――。

映画『街の灯』の感想と評価

製作期間3年をかけた力作

参考:『街の灯』の浮浪者と花売り娘の出会いシーン

スタンリー・キューブリックやアンドレイ・タルコフスキー、ウディ・アレンといった錚々たる監督たちも、チャップリン映画のベストに挙げている本作『街の灯』。

大富豪の紳士と間違われたホームレスの浮浪者が、一目惚れした盲目の花売り娘のために奮闘するという、数あるチャップリン映画の中でも、ユーモアとペーソスが絶妙に織り交ぜられた作品といえます。

製作においても、チャップリンのフィルモグラフィ上、最も長い3年という期間をかけており、浮浪者と花売り娘が出会う序盤の3分間のシーンだけで、1年以上かけて撮影されています(もっともそれだけ要したのは、チャップリンと娘役のヴァージニア・チェリルの不和が原因とも)。

ラストシーンの解釈

参考:『街の灯』のラストシーン

浮浪者と娘の再会という感動的なラストで締めくくられる本作。

ですが、この2人については、映画ファンの間では長らく議論の的となっています。

浮浪者の笑顔からは、正体を知られてしまったことへの戸惑いが感じられ、かたや娘の笑顔からは、恩人が大富豪ではなかったというショックを感じる――そう指摘する批評家は少なくありません。

見方によっては、残酷なラストとも捉えられます。

映画評論家の水野晴郎も、解説を務めた番組『水曜ロードショー』内で、「2人は結ばれずに、男は放浪の旅に出ていくのではないか」と語っています。

一方で、チャップリン研究の第一人者とされる大野裕之は、「娘の『見えるようになりました』という言葉は、物理的な視力ではなく“心”の目が回復したことを意味する」と考察します。

もちろん解釈は、観た人の判断に委ねられますし、どう捉えても、それが回答になるのです。

まとめ

参考:『街の灯』の1シーン

アニメ映画『WALLE/ウォーリー』(2008)で、あらすじのプロットを引用されるなど、今もなお形を変えて愛される本作『街の灯』。

冒頭での除幕式や、二面性が激しすぎる富豪とのやり取り、爆笑必至のボクシング試合、そしてラストの娘との再会など、印象的なシーンが満載となっています。


関連記事

コメディ映画

映画『ブラインドスポッティング』あらすじネタバレと感想。アメリカに住む異なる人種が抱える葛藤と直面する差別

映画『ブラインドスポッティング』は2019年8月30日よりロードショー公開 黒人男性射殺事件で揺れたカリフォルニア州オークランドを舞台にした映画『ブラインドスポッティング』。 小学生から一緒に育ってき …

コメディ映画

映画『オレの獲物はビンラディン』あらすじと感想。実話をコメディに

マジか⁉︎ ニコラス・ケイジの挑んだ仰天、驚愕の実話はコメディになった! 神の啓示を受け「ビンラディン捕獲」の作戦に独りで挑み、全米を騒がせた愛国オヤジの奇妙キテレツな行動と狂気は、まさに若者ならでは …

コメディ映画

【ネタバレ感想】映画『バイス』内容解説と考察。真相の内幕をブラックコメディで描く

映画『バイス』は2019年4月5日(金)ロードショー。 秘密裏にアメリカ史上最大の権力を握った副大統領ディック・チェイニーの恐るべき実話を映画化! 笑えるけれど笑えない、恐ろしい権力の暴走を描いたブラ …

コメディ映画

三谷幸喜映画『記憶にございません!』あらすじネタバレと感想。キャストの演技力が光る【記憶喪失の総理大臣】

映画『記憶にございません!』は2019年9月13日(金)より全国ロードショー公開! 脚本家・演出家・映画監督として、数多くの笑いあり涙ありのコメディ作品を手がけてきた三谷幸喜。 彼の通算8作目となる長 …

コメディ映画

映画『だれもが愛しいチャンピオン』感想とレビュー評価。ラストの展開に描かれた障がい者から教わる健常者の可能性

映画『だれもが愛しいチャンピオン』は2019年12月27日(金)よりロードショー! プロバスケットボールチームのコーチを務めた男が、ひょんなことから知的障がい者のバスケットボールチームを預かることに! …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学