ストリッパーたちがウォール街の男たちから大金を奪った、奇想天外な実録ドラマ
ジェニファー・ロペスとコンスタンス・ウーがダブル主演する映画『ハスラーズ』が、2020年02月07日(金)より全国公開されます。
ストリッパーたちが、NYウォール街の裕福な男たちから大胆すぎる手口で大金を騙し取りまくったという驚きのクライムドラマを、ネタバレ有で内容解説いたします。
映画『ハスラーズ』の作品情報
【日本公開】
2020年(アメリカ映画)
【原題】
Hustlers
【監督・脚本】
ローリーン・スカファリア
【製作】
ジェシカ・エルバウム、エレイン・ゴールドスミス=トーマス、ジェニファー・ロペス、ベニー・メディナ、ウィル・フェレル、アダム・マッケイ
【キャスト】
コンスタンス・ウー、ジェニファー・ロペス、ジュリア・スタイルズ、キキ・パーマー、リリ・ラインハート、リゾ、カーディ・B、マーセデス・ルール、アッシャー、Gイージー
【作品概要】
リーマンショック後のニューヨークを舞台に、ストリップクラブで働く女性たちがウォール街の裕福なサラリーマンたちから大金を奪ったという事件を映画化。
歌手にして女優のジェニファー・ロペスと、『クレイジー・リッチ!』(2018)のコンスタンス・ウーのダブル主演となった本作は、アメリカで興行収入100億円突破の大ヒットとなりました。
その他のキャストとして、アメリカでブレイク中の人気女性ラッパーのカーディ・Bと、オリジナルの個性と存在感で高い人気を誇るシンガーでラッパーのリゾが、本作で映画女優デビューをはたしています。
監督、脚本、共同プロデューサーは、『エンド・オブ・ザ・ワールド』(2012)、『マダム・メドラー おせっかいは幸せの始まり』(2015)のローリーン・スカファリアです。
映画『ハスラーズ』のあらすじとネタバレ
2007年のアメリカ。
幼少の頃に母に捨てられ、祖母に育てられたドロシーは、彼女を養うために「デスティニー」名義でストリップクラブで働き始めますが、新人ゆえに客が付かず、思うように稼げない日々を送っていました。
2015年。
女性記者エリザベスの取材を受けていたデスティニーは、一人の女性について語り始めました。
ストリップクラブでくすぶっていたデスティニーは、ある日、クラブのトップダンサーとして活躍するラモーナと出会います。
ラモーナがポールダンスを披露するだけで札束が乱舞する光景に衝撃を受けたデスティニーは、彼女に大金を稼ぐ方法を聞きます。
自分を慕うデスティニーと意気投合したラモーナは、ダンサー仲間のダイヤモンドと共にポールダンスの見せ方や、男性客へストリップでの振る舞いを伝授。
「男から搾り取るのは股間じゃなく金」というラモーナの格言を実行し、またたく間に金を稼げるようになったデスティニーは、ラモーナとも公私ともに親しくなります。
デスティニーとラモーナは仲間のメルセデスやトレイシーたちと、幸せの絶頂期にいました。
2008年。
ニューヨークのウォール街をリーマン・ショックが襲います。
これによりクラブ通いする男性客が激減してしまい、デスティニーたちにもしわ寄せがくることに。
そんな中デスティニーは、クラブで知り合った男性との間に娘のリリーを授かったことでクラブを辞め、シングルマザーだったラモーナもアパレルショップの店員となり、2人は疎遠になるのでした。
2011年。
リリーの父親とケンカ別れし、シングルマザーとなったデスティニーは職探しをするも上手くいかず、仕方なく元いたストリップクラブに戻ることに。
以前よりもはるかに低い待遇にショックを受けるデスティニーでしたが、そこでラモーナと久々に再会。
ラモーナも生活費のためにショップ店員をやりつつストリップクラブの仕事に戻っていましたが、以前のように大金を稼げるポジションではなくなっていました。
「真面目に働いても生活が苦しいのに、経済危機を引き起こした張本人であるウォール街の男どもは、なぜ豊かな暮らしができるのか」と愚痴をこぼすラモーナは、ある計画を立てます。
それは、ウォール街の金融マンを捕まえてクラブに誘い、ドラッグを混ぜた酒で泥酔させ、意識があやふやな状態でクレジットカードを使わせ、その儲けをクラブ側と分けるという危険なものでした。
デスティニーは、収監中の恋人の弁護士費用を稼がなければならないメルセデス、親にクラブ勤務がバレて勘当されたアナベルらと共に、ラモーナの計画に乗ることに。
ラモーナの計画は見事に的中し、デスティニーたちは再び大金を稼ぐことに成功。
高級ブランド品をプレゼントしあったり、毎日パーティーを開くといった豪遊を楽しみます。
しかし、クラブ側が勝手に類似の計画を始めたことで、ラモーナたちはビジネスの場をホテルに変え、さらに人手が足りなくなったためにメンバーを補充することに。
デスティニーは、情報漏えいを防ぐために、前科持ちやドラッグ依存症を持つ女は加えるなとラモーナに言うも、彼女は、意気投合したドラッグ依存症のドーンもメンバーに加えます。
そんなある夜、デスティニーはメルセデスから電話を受けます。
メルセデスが相手していた男が酒とドラッグの影響で上階から飛び降りて気絶してしまったのです。
ラモーナと連絡が取れないデスティニーは、なんとか男を病院に連れていき事なきを得ますが、その間彼女が、ドラッグで逮捕されたドーンの身元引受をしていたと知り激怒。
それでもラモーナは、祖母が亡くなって気落ちするデスティニーの元に駆け付けるのでした。
映画『ハスラーズ』の感想と評価
格差社会や職業差別に抗う女たちのコン・ゲーム
本作『ハスラーズ』は、ウォール街で働く男たちから大金を奪った女性ストリッパーたちの実際の事件に基づく作品です。
彼女たちが事件を起こすそもそもの原因となったのが、アメリカの住宅ローン市場崩壊に端を発した、2008年のリーマン・ショック。
本作のプロデューサーであるアダム・マッケイは、監督・脚本を務めた『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015)では、リーマン・ショックの裏で暗躍した投資家やトレーダーを描きました。
だからというわけではありませんが、本作は『マネー・ショート』とコインの裏表な作品という見方もできます。
ただ、『マネー・ショート』では、浮かれまくる金融マンの冷笑を浴びながらも、トレーダーたちが頭脳を使って逆張りの投資を行うのに対し、本作では、経済危機を起こした当事者なのに裕福な暮らしを送る金融マンたちから、ストリッパーたちが頭脳と体を使って金をむしり取ります。
本作の冒頭で、ジャネット・ジャクソンの『コントロール』が流れます。
行為そのものは間違いなく犯罪ですが、彼女たちはこの曲で歌われているように、「誰のためでもなく自分の人生のため」に、危険なビジネスをするのです。
アメリカ社会に翻弄される女たちの絆
本作は企画立ち上げ当初、マーティン・スコセッシに監督オファーをしていました。
スコセッシといえば、裏稼業でのし上がろうとする男たちの友情と裏切りを描いた『グッドフェローズ』(1990)がありますが、本作はその女性版ともいえます。
前述の『コントロール』をはじめとする往年のヒットナンバーを挿入していく構成も、いかにもスコセッシ風です。
ジェニファー・ロペス演じるラモーナと、コンスタンス・ウー演じるデスティニーは、姉妹のようで親友でもある関係を築いていくも、次第にほころびが生じていきます。
しかしそれは、アメリカという資本社会に翻弄されたゆえのものであり、2人の関係が完全に崩壊しているわけではないことを暗示するラストが、感動を呼びます。
それでいて、ラモーナの「この国はストリップクラブみたいなもの」という言葉が、実にシニカルです。
まとめ
あらすじもさることながら、本作『ハスラーズ』ではジェニファー・ロペスを筆頭とするきらびやかで妖艶な女性キャストの姿にも注目です。
特にロペスは、役作りのためにストリップクラブを何度も訪れてダンサーたちの話を聞くかたわら、自宅にポールを設置してダンスの練習に励みました。
そのかいあって、彼女のポールダンスはまさに本格的な仕上がりとなっている上に、とても50歳とは思えないパーフェクトなボディを披露しています。
欲望にまみれた社会におけるシスターフッドを描いた注目作を、お見逃しなく。
映画『ハスラーズ』は、2020年2月7日(金)より全国ロードショー。