連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile082
2019年も残すところ1週間となり、まとめの時期が始まりました。
映画好きにとって1年の楽しみはやはり、今年観た映画をまとめることにあります。
そんなわけで今回はシネマダイバーとして、SF映画を深読みしてきたSFコラムニストらしく、2019年の「SF」映画で特に輝いていた作品をランキング形式で5作ご紹介していきます。
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CONTENTS
2019年のおすすめSF映画:5位『ハッピー・デス・デイ 2U』
【原題】
Happy Death Day 2U
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【監督】
クリストファー・B・ランドン
【キャスト】
ジェシカ・ローテ、イズラエル・ブルサード、フィー・ヴ、ルビー・モディーン、スラージ・シャルマ、サラ・ヤーキン、レイチェル・マシューズ
【作品概要】
「パラノーマル・アクティビティ」シリーズで脚本及び監督を務めるクリストファー・B・ランドンが製作した大人気スラッシャー映画の続編作品。『ラ・ラ・ランド』(2017)への出演で注目を集めているジェシカ・ローテが前作から引き続き主演を務めました。
映画『ハッピー・デス・デイ 2U』のあらすじ
量子反応炉の実験を進める大学生のライアン(フィー・ヴ)は突如物置に潜んでいた子供の仮面を被った男に殺害されます。
しかし、ライアンが目を覚ますと、自身が死んだはずのその日が朝から始まっていることに気が付き、友人であるカーター(イズラエル・ブルサード)に自身の境遇を説明。
ライアンの話しを聞き、カーターとそのガールフレンドのツリー(ジェシカ・ローテ)は死のループが再び始まったことに気が付きますが…。
映画『ハッピー・デス・デイ 2U』の感想と評価
ホラーにコメディ、そしてSF!ジャンルごちゃ混ぜエンターテイメント第2弾!
殺人鬼に襲撃され殺害される「ホラー」映画であるはずが、殺害されることで朝へと戻るループ要素の追加によって「コメディ」としても楽しめることで話題となり、アメリカで大ヒットとなった『ハッピー・デス・デイ』(2019)。
そして、前作のラストから物語の続く形式で製作された第2作『ハッピー・デス・デイ 2U』(2019)には、新たに「SF」要素がしっかりと加わり「エンターテイメント」映画としてさらなる飛躍を遂げました。
前作そのものだけでも犯人の正体を見極める「ミステリ」としての面白さを備えている見事な脚本ではあるのですが、そこには「なぜループが発生したのか」が抜け落ちており、犯人を撃退することでループを抜けた「ご都合的展開」には賛否がありました。
しかし、本作では「SF的解釈」をしっかりと説明することで本作独自の世界観をしっかりと作り上げ、時に自暴自棄になりながらも「運命」に抗っていく登場人物に時に涙し、時に楽しくなれる「エンターテイメント」としての道をより盤石としていました。
前作の登場人物を1人も無駄にしない脚本にも好感が持てる、観ていて「楽しい」と思える「SF」映画の異色作です。
2019年のおすすめSF映画:4位『アリータ:バトル・エンジェル』
【原題】
Alita: Battle Angel
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【監督】
ロバート・ロドリゲス
【キャスト】
ローサ・サラザール、クリストフ・ヴァルツ、キーアン・ジョンソン、マハーシャラ・アリ、ジェニファー・コネリー、エド・スクライン
【作品概要】
木城ゆきとによる漫画「銃夢」を『デスペラード』(1995)や『シン・シティ』(2005)などで知られるロバート・ロドリゲスがメガホンを取り製作したSF映画。脚本・製作にSF映画の巨匠ジェームズ・キャメロンが携わったことでも話題となりました。
映画『アリータ:バトル・エンジェル』のあらすじ
300年前の戦争の影響で、地球は空中都市ザレムとザレムから廃棄されたゴミに埋もれる地上のアイアンシティに二分されていました。
ある日、地上で暮らすサイバネ医師のイド(クリストフ・ヴァルツ)はゴミ山の中から女性型サイボーグの頭部を発見し持ち帰ります。
ボディを備え付け修復したその少女にアリータと名付けたイドはアリータを自身の娘のように可愛がりますが…。
映画『アリータ: バトル・エンジェル』の感想と評価
独特なビジュアルが作り出す違和感を好感に変えた意欲作
理想的な空中都市とゴチャゴチャとした廃材だらけの地上と言う格差社会を描いたディストピア的世界観と、圧巻のバトルシーンが人気の日本漫画「銃夢」。
2000年、壮大すぎる世界観の前に実写化は絶望的とされていた「銃夢」がハリウッドかつジェームズ・キャメロンが関わる形での製作と決まり、多くのファンが今か今かと情報を待ち続けていました。
しかし、2017年に公開された『アリータ: バトル・エンジェル』(2019)の予告編は、CGで描かれた主人公アリータの「目が大きすぎる」ビジュアルが多くの批判を生むことになり、賛否の議論は公開まで続くことになります。
そして2019年、アメリカおよび日本でほぼ同時期に公開された本作は、公開前までの批判が嘘のように収まっただけでなく、逆に熱狂的なファンを多く生み出すことになりました。
何よりも「目が大きすぎる」ビジュアルのアリータが作中で健気に、そしてダイナミックに動くことによりアリータに「人間的」な可愛らしさをより印象的に感じることが出来る不思議なビジュアルとなっており、逆境を逆手に取り成功を掴んでいました。
興行的に大ヒットとなった本作はファンが続編の製作を求める運動を開始したほどであり、今後の展開が期待されます。
2019年のおすすめSF映画:3位『プロメア』
【公開】
2019年(日本映画)
【監督】
今石洋之
【キャスト】
松山ケンイチ、早乙女太一、堺雅人、佐倉綾音、新谷真弓、古田新太、ケンドーコバヤシ
【作品概要】
過去に『天元突破グレンラガン』や『キルラキル』などのアニメーション作品で中島かずきとタッグを組み、大ヒット作を生み出してきた今石洋之が監督を務めた劇場版アニメ。松山ケンイチ、早乙女太一、堺雅人など大物俳優たちが物語の主軸となるキャラクターたちの声優を務めたことでも話題となりました。
映画『プロメア』のあらすじ
突如発火する新人種「バーニッシュ」の出現による「世界大炎上」によって人口の半数を失った世界。
高層ビルが立ち並ぶプロメポリスでは、炎上テロを引き起こすバーニッシュたちに立ち向かう人命救助組織「バーニングレスキュー」が発足します。
バーニングレスキューの新人ガロ(声:松山ケンイチ)は火災現場でテロ組織のリーダー、リオ(声:早乙女太一)と対峙することになりますが…。
映画『プロメア』の感想と評価
緻密な設定を好む人も映画に勢いを求める人も楽しめる!圧倒的熱量のSFアニメの怪作
「天元突破グレンラガン」や「キルラキル」など「熱さ」だけは誰にも負けないアニメを製作し続けてきた今石洋之監督と作家の中島かずきが手を組んだ作品の数々。
2019年に今石洋之監督と中島かずきが作り出し公開されたアニメ映画『プロメア』(2019)は、2人の得意とする「熱さ」もさることながら「SF」としての魅力も多分に含んでおり、SF映画好きにも大満足の作品となっていました。
「バーニッシュ」と呼ばれる発火する新人種がなぜ突如生み出されたのか、世界に何が起こっているのか、そして世界を救うために何をすれば良いのか。
SF古典映画の名作『地球最後の日』(1952年)へのアンチテーゼとも思える物語が展開し、待ち受けるのは「最大多数の最大幸福」への選択。
そんな重苦しいテーマでありながらも、重苦しい雰囲気は「熱量」で吹き飛ばすと言う意欲作であり怪作でもある本作。
何を言ってもネタバレになってしまうような驚天動地の物語となっている『プロメア』は、SF好きにこそオススメしたい作品です。
2019年のおすすめSF映画:2位『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
【原題】
Star Wars: The Rise Of Skywalker
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【監督】
J・J・エイブラムス
【キャスト】
デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、キャリー・フィッシャー、マーク・ハミル
【作品概要】
2015年に公開された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)から続く続三部作の完結作。前作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)のライアン・ジョンソンから変わり『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のJ・J・エイブラムスが監督を務めた。
映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のあらすじ
来るべき最終決戦に備え鍛錬を続けるレイ(デイジー・リドリー)には自身の中に存在する「暗黒面」に立ち向かえるのかと言う不安がありました。
一方、銀河の支配を目論むカイロ・レン(アダム・ドライバー)は自身の優位を揺るがしかねないある噂を聞き…。
映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の感想と評価
再び賛否両論の渦中となった大人気シリーズの完結編!
2017年に公開されたライアン・ジョンソンによる続3部作(シークエル・トリロジー)の2作目『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は批評家にこそ絶賛されたものの、今までのシリーズの根底を揺るがしかねない物語展開に数多くのファンが反発し世界的な騒動となりました。
そんな賛否両論で荒れ果てたシリーズの完結作となる本作は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でファンからも高評価を得たJ・J・エイブラムスが監督として帰還し、「どのように完結させるのか」が注目を集めていました。
自分自身、期待を多分に込めて鑑賞した本作は「スター・ウォーズファン」としての持論との衝突はあるものの、1作の「SF」映画として期待以上の作品となっていたと思えます。
スター・ウォーズシリーズに求められていた「冒険」の復活と、光と闇に揺れる登場人物の心情、そして大規模かつ壮大なCGで描かれる宇宙戦など、映画館で観るべき「SF」映画の代名詞としての実力を再び見せつけてくれる本作。
完結方法に再び賛否両論の渦中となっているものの、それを含めて「映画熱」を高めてくれることなしの作品です。
50年代のおすすめSF映画:1位『アベンジャーズ/エンドゲーム』
【原題】
Avengers: Endgame
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【監督】
アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
【キャスト】
ロバート・ダウニー・Jr、クリス・エヴァンス、マーク・ラファロ、クリス・ヘムズワース、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー
【作品概要】
2008年の『アイアンマン』(2008)の公開によって始まったMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のシリーズ22作目となる作品。監督を務めたのはシリーズ9作目の『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)で高い評価を得たルッソ兄弟。
映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』のあらすじ
インフィニティ・ストーンを集めたサノス(ジョシュ・ブローリン)による虐殺で宇宙の人口は半分にまで減らされました。
目の前でかけがえのない仲間を失ったことに憔悴しきったトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)はアベンジャーズの基地へと帰還。
一方、サノスの行方を突き止めたスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)はインフィニティ・ストーンを取り戻し、失った人々を蘇らせようとサノスを追いますが…。
映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』の感想と評価
シリーズ22作の重みが持つ最高の映画体験!
2008年より始まったMCUシリーズは「マーベルコミックス」に登場するヒーローを単体映画として丁寧に描き、およそ10年で18作もの作品数となりました。
そして2018年、シリーズの総決算として公開された19作目『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)はアベンジャーズの敗北で終わると言う衝撃的なラストを迎え、真の終結作への期待が限界まで高まっていました。
そんな状態で公開された21作目となる『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、過去作全てをしっかりと紡いだ終結作にして集結作としての要件を満たした作品として大人気となり、興行収入1位の座に君臨していた『アバター』(2009)を降すほどの大ヒットを記録します。
本作の魅力はやはり「22作の重み」に集約されており、出自も想いもバラバラだったヒーローたちの人生がどのように集結していくのか、そして映画史上稀にみるほどの「熱量」を持った最終決戦はシリーズを鑑賞していればいるほど感動すること間違いなし。
ヒーロー映画の面白味が詰まったMCUの1つの区切りとなる本作を是非とも鑑賞してみてください。
まとめ
映画には世界的な流行があり、大ヒットする映画の方向性は毎年違っていると言えます。
2019年は作品としての「ストレートな面白さ」が追及されたと感じれるほど『アベンジャーズ/エンドゲーム』や『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は力強く輝いていました。
主だった物語が語りつくされ、異色作が多くなりがちな「SF」映画と言うジャンルで、凝ったシナリオ展開で含みながらも「ストレートな面白さ」を映像に落とし込んだ作品を劇場で鑑賞できたことはこの上ない喜び。
2020年も映画好きにとって嬉しい1年になることを期待し、新年を迎えたいと思います。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile083では、新年を記念し2020年公開のSF・ホラー映画の注目作を先取りチェックしたいと思います。
記事の公開は2020年1月1日(水)!お楽しみに!
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