ホラー映画『レディ・オア・ノット(原題:Ready or Not)』の怖さと魅力
『レディ・オア・ノット(原題:Ready or Not)』は、富豪一族ル・ドマス家に嫁いだ美しい花嫁・グレースの生存を懸けたサバイバルを描くブラック・コメディです。
『V/H/S シンドローム』(2013)や『サウスバウンド』(2016)等を手掛けた映画製作グループ、ラジオ・サイレンスが制作しました。
主人公グレースを演じるのは、『ザ・ベビーシッター』(2017)のオーストラリア人俳優・モデルのサマラ・ウィーヴィング。
CONTENTS
映画『レディ・オア・ノット』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Ready or Not
【監督】
マット・ベティネッリ=オルピン、タイラー・ジレット
【キャスト】
サマラ・ウーヴィング、アダム・ブロディ、ヘンリー・ツェ―二―、アンディ・マクダウェル、マーク・オブライエン、エリス・レヴェスク、ニッキー・ガダニー、ジョン・ラルストン
【作品概要】
共同監督を務めたマット・ベティネッリ=オルピンとタイラー・ジレットは、本作の脚本を5年前に読み、大ファンになったと答えます。まだ映画化されていなかった3年前に製作者との会合で監督業を獲得。
脚本を書いたのは、13才から親友同士のガイ・ビューシックとR・クリストファー・マーフィー。2人はテレビドラマでキャリアを積み、ビューシックは、『ザ・コントロール』(2016)の共同執筆者にも名前を連ねています。
映画『レディ・オア・ノット』のあらすじとネタバレ
グレースは、御曹司アレックス・ル・ドマスとの結婚式を迎えます。式に参列したル・ドマス家の人々は表向き笑顔を絶やしませんが、グレースを好奇の目で観察。
式後、親密な時間を過ごそうとするグレースとアレックス。しかし、部屋の中にアレックスの伯母・ヘレンがいつの間にか座っており、皆待っていると告げアレックスを急かします。
要領を得ないグレースに、真夜中に家族全員で行う遊びに加われば、公式に家族として受け入れられるとアレックスは説明。
由緒ある家族に認めて貰いたいグレースは、取りあえずやってみることに。遅れて来たアレックスの妹・エミリーは、感じよくグレースに接します。一方、兄・ダニエルは、お酒をぐい飲み。
アレックスの父親・トニーは、家族全員でゲームをした後、グレースが晴れて家族の一員になると、代々ル・ドマ家に伝わる習慣を改めて説明。
箱の中からカードを引き抜くよう促されたグレースは、吐き出された1枚を手にします。引いたカードはかくれんぼ。
緊張する一同をよそに、グレースは、「本気でかくれんぼなんかしないわよね~」と1人面白がります。
トニーは、屋敷のどこに隠れても良いと真剣な顔。どうせ自分が負けると笑顔のグレースに、トニーは、明け方まで隠れ果せたらグレースの勝ちだと話します。
ウエディングドレスを引きずりながら、グレースは2階へ。一方、ル・ドマス家の人々は、おのおの武器を手にします。
ソファに座ったままうな垂れるアレックスに、母親のベッキーは参加しなくても良いと声を掛けます。
暫く隠れていたグレースは場所を移動するため廊下を歩いていると、アレックスが側に来てグレースを引っ張ります。
そこへ、グレースだと勘違いしたエイミーがメイドを射殺。衝撃の光景に、グレースは必死に口を押えて叫ぶのを堪えます。
集まった家族は、人違いに素っ気居ない態度。「あー死んじゃった。これで良いんじゃない?」「駄目よ!花嫁じゃなきゃ!」そんな会話を耳にしながら隠れているグレース。
更に、ベッキーがグレースに見られないよう、メイドの遺体を片付けようと冷静に提案します。
事情を説明して欲しいと興奮するグレースに、アレックスはハイヒールを脱がせてスニーカーを履かせます。
ショックを受けて呆然とするグレースを、アレックスは、かくれんぼは唯一最悪のカードで、グレースを殺さなければ家族に災いが起きると早口で説明。
アレックスは、家族の意向に従う振りをしてグレースを助けようと計画していたとを言います。
グレースが辞めたいとつぶやくと、同じように習慣を無視した親族が死亡し、投げ出せばグレースも命を落とすとアレックスは説得します。
グレースは、知っていながら自分を異常な事態に巻き込んだアレックスに怒り爆発。
アレックスは、かくれんぼのカードが出る確率は低いと高を括っていたことを認め、自分にとってグレースは人生の全てであり、正直に話せば結婚してくれなかったからだと答えます。
監視カメラ室で家族の動きを見ながらグレースを誘導すると言い、アレックスはグレースにともかく歩くよう急がせます。
グレースは、動きやすくする為、ウエディングドレスの裾を短く切り裂きます。
しかし、廊下の角を曲がった所で、メイドの遺体を運ぶアレックス、トニー、そしてヘレンに遭遇。背後から追いついたエイミーがグレースに発砲。
しかし、弾は逸れて他のメイドに命中。グレースは逃げ出し1室へ隠れますが、そこへダニエルが入って来ます。
お酒を飲み始めるダニエルは、命乞いをするグレースに、10秒間の猶予を与えるので逃げろと告げます。
10秒数えた後、ダニエルは、グレースが書斎に居ると大声で叫びます。そこへ駆けつけたダニエルの妻・チャリティは、グレースを捕まえ損ねたのかと夫を非難。
焦って銃を置き忘れたエイミーに、夫のフィンチが自分のボウガンを手渡します。しかし、エイミーは、またしても手元が狂い違うメイドを弓矢で殺してしまいます。
「あ~あ。お気に入りのメイドだったのに」と残念がるフィンチ。
なかなかグレースを仕留められず次第に苛立ちが募るル・ドマス家。トニーは、夜明けまでにグレースを殺さなければ、家族全員が死ぬんだと全員に檄を飛ばします。
映画『レディ・オア・ノット』の感想と評価
サマラ・ウィーヴィングの演技力
結婚式当日、真夜中から夜明けまで数々の攻撃を交わしながらグレースの生き残りを懸けた奮闘を描く『レディ・オア・ナット』。全キャラクターがストレスを抱え罵倒しながら物語が進行し、最後は皆血だらけというエンディング。
劇中のルベールは、ル・ドマス家の先祖が取引して富を築いて貰った悪魔という設定です。
大金持ちのステータスを維持する為、先祖が交わした悪魔との約束をル・ドマス家も守らなければならず、失敗すれば自分達が死ぬという政治色及び宗教色ゼロのストーリーも分かりやすいプロット。
ル・ドマス家の人々が悪者に見えますが、何度もグレースを取り逃がしてしまう、人殺しに慣れていない様子が笑いを誘うブラック・コメディです。
そして、本作を最後まで楽しませる大きな要因は、主人公・グレースを演じたサマラ・ウィーヴィングの文字通り髪をふり乱した演技。
ブロンドのか弱いキャーキャー叫ぶだけの女性は演じたくなかったと明かすウィーヴィングは、強くて闘うグレースにしたいという意向を製作者と話し合ったことをインタビューで話しています。
衣装担当のエイヴリー・プルエス
また、本作に欠かせない影の大黒柱は、衣装です。もう1つの主人公と言えるほどウエディングドレスの変遷が印象的です。
衣装を担当したのは、テレビドラマ『ハンニバル』や『12モンキーズ』、そして映画『エブリシング』(2017)でもデザインを手がけたエイヴリー・プルエス。
ウィリアム王子との結婚式に着用したケンブリッジ侯爵夫人のウエディングドレスを参考に、グレースの衣装をデザインしたとプルエスは語っています。
5つのパーツに分けて縫製し最後にウエディングドレスとして繋ぐことで、グレースがサバイバルする課程で裂けやすくなるようデザインしたと説明。
また、エンディングで真っ赤に染まってしまうのは、映画『キャリー』(1977)の様にしようというプルエスのアイデアです。
まとめ
両親を知らずに育った主人公・グレースは、愛する御曹司・アレックスと結婚して玉の輿に乗る日を楽しみにしていました。
しかし、姻族が皆自分を殺そうとしていることを知った時、グレースのサバイバルが始まります。
スリラーの王道“追う者と追われる者”をコメディで描いた異色作品『レディ・オア・ノット (Ready or Not)』は、スリラー、ホラー、コメディの3要素を上手くブレンドした血しぶきが飛びまくるポップコーン映画です。