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松尾スズキ映画『108 海馬五郎の復讐と冒険』あらすじネタバレと感想。演劇と映画の面白さから突き抜けた艶笑譚

  • Writer :
  • 村松健太郎

劇団「大人計画」の主宰・松尾スズキが映画監督4作目。

2018年に創立30周年を迎えた劇団「大人計画」。主宰の松尾スズキが監督・脚本にして、満を持して放つ主演も務めます。

妻に裏切られた脚本家の復讐劇をR18+指定 指定の描写満載で描くオリジナル作品。

主人公の海馬を松尾スズキが演じ、妻の綾子を中山美穂が務めるほか、岩井秀人、秋山菜津子、坂井真紀が集結しました。

映画『108 イチマルハチ海馬五郎の復讐と冒険』の作品情報


(C)2019「108 海馬五郎の復讐と冒険」製作委員会

【公開】
2019年(日本映画)
R18+指定

【脚本・監督】
松尾スズキ

【キャスト】
松尾スズキ、中山美穂、大東俊介、堀田真由、酒井若菜、坂井真紀、秋山菜津子

【主題歌】
星野源『夜のボート』

【作品概要】
劇団「大人計画」主宰の松尾スズキが、監督・脚本に加えて主演も兼ねた監督4作目となる映画。

共演に中山美穂、大東俊介、堀田真由、酒井若菜、坂井真紀、秋山菜津子を迎えました。

主題歌『夜のボート』を星野源が担当しています。

映画『108 イチマルハチ海馬五郎の復讐と冒険』のあらすじとネタバレ


(C)2019「108 海馬五郎の復讐と冒険」製作委員会

脚本家として成功を収めている海馬五郎。自身の映画がミュージカルになるので、オーディションの審査員を務めます。

若手女優の美月から、妻で元女優の綾子のSNSを見せらて驚愕します。

そこには「いま、自分は若いコンテンポラリーダンサーに恋をしている」という若いコンテンポラリーダンサー“ドクタースネーク”への恋心が綴られていました。

ショックを受けた五郎は離婚を考えるのですが、現在の資産の半分を財産分与で綾子に支払わなければいけないという事情を聞かされます。

これではわりに合わないと考えた五郎は意図的に散財し、女性を抱いていこうと考えます。

目標の人数は108人。綾子の投稿にされた“いいね”の数でした。

綾子はスネークとのことを突き付けられると家を出てしまいます。のちにメッセージでスネークのツアーを追いかけながら、今後のことを考えるという連絡が来ます。

その後、綾子のSNSにスネークと寄り添う姿がアップされていきます。

散財のために呼んだ高級風俗嬢のあずさと、そのあずさから紹介されたホストの聖矢に手配を依頼して、人知の及ぶ数限りない形で男女の関係を持ち続け、散財を続けます。

それでもなかなか財産は減らず、最終的に自分がその場にいればカウントに入れるといい拡大解釈を取り入れ50人以上の男女が入り乱れる大乱交を繰り広げます。

その様子を捉えた動画を見せられた綾子は、意を決してあることを五郎に語ります。

以下、『108イチマルハチ海馬五郎の復讐と冒険』ネタバレ・結末の記載がございます。『108イチマルハチ海馬五郎の復讐と冒険』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
綾子、そして妹のマリによって知らされた真実。

それは綾子の写真は“ドクタースネーク”と恋人風写真が撮れるアプリを利用したものでした。

ぱっと見て、頭に血が上ってしまった五郎は気が付きませんでしたが、綾子の写真は実は不自然な合成写真でした。

しかし、五郎は聖矢に連れられて、売春島と呼ばれる秘島に向かう船上にいました。

どうしようもない状態に複雑な表情を抱えたまま、ただただ船に揺られる五郎でした。

映画『108 イチマルハチ海馬五郎の復讐と冒険』の感想と評価


(C)2019「108 海馬五郎の復讐と冒険」製作委員会

同じR18+指定の映画でいうと、2019年には『火口のふたり』がありましたが、監督・脚本が荒井晴彦ということもあって、社会風刺というか、独特のメッセージが含まれていました。

一方で、こちらの『108』は、もっと突き抜けた艶笑譚です。

ボカシもたっぷりで、下ネタを通り越して、なんだかすごいことになっていく映画です。

全編にわたって苦笑いがテンポよく続きます。

正直、ここまでは演劇のスタイルと映画のスタイルの差別化と確立化に迷走している部分があった松尾スズキですが、今回はちょっとどうしたんだろうというぐらい、別格に面白いです。

ある意味、自分を主役に据えたことで間接的に描くことから解放されたのがいいのかもしれません。

まぁ、この役を誰に演じてくれとオファーできるのかという気にもなりますが。

飲みの席でアイデアを聞き、ゲラゲラと笑いながら応じたという中山美穂の快演も面白く、また様々な世代の助演女優たちも短い出番ですが、強烈なインパクトを残してくれます。

若手注目株の堀田真由の出だしと、後半で全く違うキャラクターになるのもなかなか見事です。

まとめ


(C)2019「108 海馬五郎の復讐と冒険」製作委員会

劇作家が映画監督に挑むというパターンは数多くありますが、必ずしも成功している人ばかりではありません。

世界のニナガワこと蜷川幸雄も何本も映画を撮っていますが、総じてそこまで高い評価を受けませんでした。

最近で言えば三谷幸喜、宮藤官九郎、三浦大輔などの名前が挙がります。

松尾スズキもその一人です。ただ、映画はどうだったかというと脚本を担当した『東京タワー』はともかくとして、松尾スズキの作風がどうも映画のテンポや枠組みになじまない印象を持ちました。

三谷幸喜にしても2015年の『ギャラクシー街道』などは、頭をひねりたくなる作品でしたが、2019年の『記憶にございません!』は見違えるような映画作品に仕上がっていて素直に楽しめる作品となっていました。

本作の『108』の松尾スズキも何か映画監督として覚醒したようなデキでした。

映画と演劇は似て非なるもので、かなりの部分を観客の創造力にゆだねる演劇に対して、映画はかなりの部分を説明します。

もちろん説明過多になると映画のバランスが崩れますし、敢えて説明しない映画もありますが、映像の情報量の扱い方がかなりうまくなったなというのが率直な感想です。

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