Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

アクション映画

Entry 2017/08/27
Update

映画『ベイビードライバー』あらすじと感想レビュー!ラスト結末も【エドガーライト監督おすすめ代表作】

  • Writer :
  • 馬渕一平

英国が生んだ稀代の天才監督・エドガー・ライトの『ベイビー・ドライバー』をご紹介します。

以下、あらすじや結末が含まれる記事となりますので、まずは『ベイビー・ドライバー』の作品情報をどうぞ!

1.映画『ベイビー・ドライバー』の作品情報


(C)2017 Sony Pictures Digital Productions Inc.All rights reserved.(C)2017 TRISTAR PICTURES,INC ALL RIGHTS RESERVED.

【公開】
2017年(イギリス・アメリカ映画)

【原題】
Baby Driver

【監督】
エドガー・ライト

【キャスト】
アンセル・エルゴート、リリー・ジェームズ、ケビン・スペイシー、ジェイミー・フォックス、ジョン・ハム、エイザ・ゴンザレス、ジョン・バーンサル、CJ・ジョーンズ、フリー、スカイ・フェレイラ、ラニー・ジューン、ビッグ・ボーイ、キラー・マイク、ポール・ウィリアムズ、ジョン・スペンサー、ウォルター・ヒル

【作品概要】
『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』など手掛けた作品はいずれも高い評価を受けるエドガー・ライト。

世界の注目を集める彼が満を持してハリウッドのメジャー作品に進出!

主人公ベイビーを演じるのは『ダイバージェント』シリーズで注目を集め、『きっと、星のせいじゃない。』で大ブレイクを果たした期待の若手アンセル・エルゴート。

ベイビーのロマンスの相手となるデボラを演じるのは実写版『シンデレラ』で主演を務めたリリー・ジェームス。

若い二人を囲むキャストには、ケヴィン・スペイシー、ジェイミー・フォックスなどアカデミー賞常連の実力派が集結。

さらに、本作は全編を通して描かれる音楽とアクションの奇跡の融合が実現!

激しいカーチェイスは言うまでもなく、日常のアクション全てがベイビーが聴いているiPodから流れる音楽とシンクロ。

未だかつて誰も体験したことのない映画がついに完成した。

2.映画『ベイビー・ドライバー』のあらすじとネタバレ


(C)2017 Sony Pictures Digital Productions Inc.All rights reserved.(C)2017 TRISTAR PICTURES,INC ALL RIGHTS RESERVED.

ベイビー(アンセル・エルゴート)。その天才的なドライビング・センスが買われ、組織の運転手として彼に課せられた仕事。

それは、銀行、現金輸送車を襲ったメンバーを確実に「逃がす」こと。

子供の頃の交通事故が原因で耳鳴りに悩まされ続けているベイビー。

しかし、音楽を聴くことで、耳鳴りがかき消され、そのドライビング・テクニックがさらに覚醒する。

そして誰も止めることができない、追いつくことすらできない、イカれたドライバーへと変貌する。

組織のボスで作戦担当のドク(ケヴィン・スペイシー)、すぐにブチ切れ銃をブッ放すバッツ(ジェイミー・フォックス)、凶暴すぎる夫婦、バディ(ジョン・ハム)とダーリン(エイザ・ゴンザレス)。

彼らとの仕事にスリルを覚え、才能を活かしてきたベイビー。

しかし、このクレイジーな環境から抜け出す決意をする。それは、恋人デボラ(リリー・ジェームズ)の存在を組織に嗅ぎつけられたからだ。

自ら決めた“最後の仕事”=“合衆国郵便局の襲撃”がベイビーと恋人と組織を道連れに暴走を始める。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ベイビー・ドライバー』結末の記載がございます。『ベイビー・ドライバー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
午前2時にデボラと待ち合わせをしていたベイビーはアジトをこっそり抜け出そうとしますが、バディとバッツに見つかってしまいました。

ベイビーが趣味でMIXテープを作るために持ち歩いていたテープレコーダーの存在が怪しまれ、ベイビーの家から全てのテープがアジトに持ってこられました。

その場でベイビーがテープを流します。しかし、そこから流れてくるのは本当にただのMIXテープの音源。

ドクは近くにあったデボラのテープを流しました。その曲によってダイナーにいたウェイトレスのデボラとベイビーが特別な関係であることが全員にバレてしまいました。

作戦当日、ベイビーは郵便局の裏口で皆が出てくるのを待っています。

そこに以前の下調べの際に親切にしてもらった職員の女性がやって来ました。

ベイビーは必死に首を振って、郵便局に入らない方がいいことをアピールします。

何か怪しんだ女性は、警備員と共にベイビーの車にやって来ました。

すると、ちょうどそこに裏口から3人が出てきて、バッツが警備員を撃ちました。

3人は車を発進しろとベイビーに迫りますが、人が目の前で撃たれて動揺したベイビーは動こうとしません。

すると、突然ベイビーが車を急発進させ、目の前の車に乗っていた棒にバッツが突き刺さり息絶えました。

車がダメになってしまったため、ベイビーとバディとダーリンは走って逃げ出します。

警官が追ってくる中、逃げ続ける3人。

ベイビーは車を盗みだし逃げようとしますが、バディとダーリンが乗った車に衝突してしまいました。

バディとダーリンは仕方なく警官との銃撃戦を始め、邪魔をしたベイビーのことも狙います。

その中でダーリンが蜂の巣にされてしまいました。

ベイビーは再び走りだし、お婆さんの車を盗んで逃げ出します。

ベイビーは里親のジョーがいる家に戻り、貯めていたお金を全て持ち、彼を運び出しました。

ベイビーはジョーを老人ホームに手紙と共に残し、別れを告げました。

そして、デボラの待つダイナーに向かいますがそこにはバディがいました。

ベイビーを恨むバディはデボラを殺そうとしますが、隙をついたベイビーが逆にバディのことを撃ちました。

そのままベイビーとデボラは、車を盗んで逃げ出します。

母の歌声が入ったカセットを取りに戻るためアジトに行くと、そこにはドクがいました。

デボラとやって来たベイビーに呆れたのか、ドクは二人を逃がす手伝いをしてくれます。

駐車場にバディがやって来て、ドクのことを車ではね飛ばしました。

ドクの車を借りて、バディの車と正面衝突。押し合いによってバディの車が地上に落下しました。

しかし、バディは車から降りて生きていました。

バディが油断したベイビーの耳の近くを撃ち、ベイビーは耳鳴りに苦しみます。

デボラがバディと格闘している間に銃を手にしたベイビーはバディを撃ち、彼は先程下に落ちた燃え盛る車の元へと落下していきました。

気絶していたベイビーが目を覚ますと、そこには隣で運転しているデボラの姿が。

母のテープを聴きながら束の間の休息が訪れました。

橋に差し掛かるとそこには武装警官の集団が。バックしようとすると後ろにも。

ベイビーはデボラの手を取り、運転を止めさせると、別れの口づけを交わしました。

車から降りたベイビーは無抵抗で警察に捕らえられました。

根は優しいベイビーの人柄を周りにいた人たちが証言してくれました。

懲役25年の罪ながら、執行猶予5年の判決が出ました。

ベイビーは5年間真面目に刑務を務め、出所したらデボラとドライヴすることを夢見ていました。

出所の日、そこには車と共にベイビーを出迎えるデボラの姿が。

ここから2人が夢見たドライヴが始まります。

3.監督のエドガー・ライトとは

本作を監督したエドガー・ライトにはサイモン・ペッグとニック・フロストというよく一緒に映画を撮っている仲間がいます。

長編デビュー作の『ショーン・オブ・ザ・デッド』は二人を主演に迎え、イギリスの田舎を舞台にしたゾンビ愛溢れる一本。

続く2作目の『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』も同じく二人を主演にイギリスの田舎を舞台にしたアメリカのポリスアクション愛溢れる一本。

その後も、ゲーム愛溢れる『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』やジョン・カーペンター監督作をはじめとする80年代SF愛溢れた『ワールズ・エンド! 酔っぱらいが世界を救う!』など、いずれもオリジナル作品を監督し続けています。

そのどれもが面白く、とにかく好きなものへの愛が溢れまくっています。

ちなみに同じようにサイモン・ペッグとニック・フロストが主演した『宇宙人ポール』はグレッグ・モットーラというまた別の才人が監督した作品です。

サイモン・ペッグは今や『ミッション・インポッシブル』や『スター・トレック』といった人気シリーズに出演する世界的なスターになりましたね。

そして、5作目としてMCUの一作『アントマン』を監督する予定でした。

というより脚本やストーリーボードなども作っていてかなり制作が進んでいる段階での降板でした。

オリジナル脚本にこだわるエドガー・ライトは、どうしても縛りが多い製作体制と意見が合わなかったそうです。

それでも『アントマン』の脚本にはエドガー・ライトの名前がクレジットされています。

そしてそういった縛りから離れ、昔からそのアイディアを温め続けてきたという本作『ベイビー・ドライバー』をついに完成させました。

4.映画『ベイビー・ドライバー』の感想と評価


(C)2017 Sony Pictures Digital Productions Inc.All rights reserved.(C)2017 TRISTAR PICTURES,INC ALL RIGHTS RESERVED.

音楽とアクションの融合というイメージはすでに昔からあったようで、2002年に監督したMV「Blue Song」は本作の冒頭そのままで、正にセルフオマージュと言えます(ニック・フロストもいる!)。

参考映像:エドガー・ライトが2002年に監督したMV「Blue Song」

そして、本作にも様々な作品に対する愛が溢れ出しています。音楽を効果的に使った監督と言えばマーティン・スコセッシやクエンティン・タランティーノといった名匠。

彼らの『グッドフェローズ』『レザボア・ドッグス』へのオマージュはもちろんのこと、ウォルター・ヒルの名作『ザ・ドライバー』からの影響も感じさせます(ウォルター・ヒルもカメオ出演!)。

そして、本作にはアメリカン・ニューシネマに対する現代版のアップデートが刻まれていると感じました。

アメリカン・ニューシネマは1960年代後半から1970年代に作られた作品群の総称で、その多くが若者を主人公とし、国や権力に対する反体制的なメッセージが込められています。

また、ラストにかなりの確率で主人公たちが命を落とすのもその特徴です。

1967年の『俺たちに明日はない』がその始まりと言われていて、数々の名作映画を生み出してきました。

そして、1976年の『ロッキー』や1977年の『スター・ウォーズ』の登場(いずれもアメリカ公開年)によって終焉を迎え、80年代のハリウッド映画は娯楽大作へとシフトしていくわけです。

個人的にはこのアメリカン・ニューシネマの作品群がいずれも好きで、本当に名作ばかりだと思っています。

当時はベトナム戦争の暗い影がアメリカを覆っており、得てしてそういった暗い時代にはカウンターカルチャーが盛り上がる傾向にあります。

ロックンロールやヒッピー、そしてアメリカン・ニューシネマ。

2017年現在もテロの増加やヘイトクライムをはじめとした差別主義。とにかくここ2,3年は日本も含め世界的に嫌なムードがずっと続いています。

そういった時代にこそ映画といった人々に寄りそう文化が必要だと私は思っています。

そんな時代に生み出された傑作『ベイビー・ドライバー』では、音楽がカーアクションだけでなく日常の動きにまでリンクする最高の映画体験を味わえます!

そして、そのアクションの中にベイビーが大人の男へと成長する物語が非常に巧みに落とし込まれています。

iPodやサングラスで過去のトラウマと現実から目を背け、ベイビーはきちんと向き合おうとしません。

しかし、愛する人と出逢い一緒に音楽を共有する楽しさを知り(コインランドリーのシーンの美しさたるや)、現実と対峙することを決意します。

ベイビーとデボラがあそこまで惹かれあってしまうのは同じ境遇だからです。親がいない、この街に残り続ける理由もない、嫌な現実を音楽によって救われている。

眼の不自由な老女と暮らしていた『デッドプール』も同じ境遇のヴァネッサに惹かれていました(デップーとベイビーは似てると思います)。

お互いでその存在を確かめ合う、そこにそれ以上の理由は必要ないんです。さらに例えを出すならニコラス・ウィンディング・レフンの『ドライヴ』もそうでした。

そしてその逃避行をバッツ(ジョー・ペシ的な何をするかわからない怖さで最高!)とバディ(ダーリンとの夫婦は完全にボニーとクライドですね)、二人の男が邪魔をするわけです。

ベイビーちゃん、そう簡単にはいかないぞと。

劇中のバッツのセリフにもありますが、暴力や金や犯罪や女といった快楽に絡め取られた男がこの二人。

嫌がりながらも、ベイビーがスリルを含んだ運転に興奮していたのは間違いのないことですので、この二人はベイビーの成れの果て的な役割も持ち合わせています。

ちなみにドクもおそらくベイビーのような立場にいた過去があり、その選択をしなかった姿です(だからこそあの急な助け船も感動的)。彼のあのミニカーコレクションはおそらくそういうことでしょう。

その二人を乗り越え(その乗り越え方のひねりも見事としか言いようがありません)、かつてのアメリカン・ニューシネマとは違ったエンディングに向かいます。

しかし、結末がどうしたってあのサム・ペキンパーの傑作『ゲッタウェイ』の始まりと繋がって見えてしまうのは考えすぎでしょうか。

まとめ


(C)2017 Sony Pictures Digital Productions Inc.All rights reserved.(C)2017 TRISTAR PICTURES,INC ALL RIGHTS RESERVED.

大ヒットを記録した本作には早くも続編の話が出ているようで、エドガー・ライトも乗り気のようです。

あの後、二人はどうなったのか非常に気になるところですが、、、

まずは、音楽、アクション、ラブストーリーが詰まった最高の一本をこの夏ぜひとも劇場の音響で楽しみましょう!

そうしたら、後はサウンドトラックを購入して、ベイビーと共に最高のドライヴへ繰り出すだけです。

関連記事

アクション映画

山下智久映画『サイバー・ミッション』あらすじとキャスト。ゼブラ役リディアン・ヴォーンのプロフィール紹介

サイバー戦国時代に生まれた新たなハッカー映画に、アジアを代表するスターが集結! 未曾有のサイバーテロを防ぐために選ばれたオタク系ホワイトハッカーとブラックハッカーとの戦いを描いたタイムリミットサイバー …

アクション映画

妖獣奇譚ニンジャVSシャーク|あらすじ感想と評価考察。サメ映画・忍者・邪教が合体!カオスな世界観で描く熱い人間ドラマ

巨大ザメと忍者の命懸けの死闘が始まる! 江戸時代を舞台に、忍者と邪教集団の死闘を描いたカオス・アクション映画『妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク』。 本作は2023年4月14日(金)よりヒューマントラスト …

アクション映画

映画『ファイアー・ブレイク』ネタバレあらすじと結末の感想評価。森林火災に挑むロシアの6人の消防隊員の活躍を描く!

森林火災から人々を守る消防隊員たちを描いたスペクタクル・アクション大作! アレクセイ・ヌージュニーが脚本・監督を務めた、2020年製作のロシアのスペクタクル・アクション映画『ファイアー・ブレイク 炎の …

アクション映画

映画『エンド・オブ・キングダム』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。続編はアクションシーンがパワーアップ

マイク・バニング再び。 今度の舞台はロンドン。 急逝した英国首相の葬儀に集まる各国首脳。 それは世界を巻き込む壮大な陰謀の始まりでした。 世界へ復讐を果たそうとするテロリストの陰謀により再び窮地に陥る …

アクション映画

『ダイ・ハード』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の評価解説。ブルース・ウィリス代表作おすすめ1番!不運な刑事マクレーンを演じた人気シリーズ

映画『ダイ・ハード』はブルース・ウィリスが災難に巻き込まれる刑事ジョン・マクレーンを演じた人気シリーズ第1弾。 監督は、『プレデター』(1987)や『レッド・オクトーバーを追え!』(1990)のジョン …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学