映画『最初で最後のキス』は、2018年6月2日(土)より新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次ロードショー。
思春期の「期待と不安」。それは“膨らむ夢と絶望”であると、あらためて見せつける高校生の3人組。
彼らは運命的に出会い、友情と恋を育み、そして大切な絆や未来を無知ゆえに“ある運命”へと導いてしまう…。
イタリアでのスマッシュヒットはもとより、フランスやポルトガル、シアトルなどの映画祭で各賞を受賞!
とりわけ、各国の観客賞を複数獲得した映画『最初で最後のキス』とは?
CONTENTS
映画『最初で最後のキス』の作品情報
【公開】
2018年(イタリア映画)
【原題】
Un bacio
【原案・脚本・監督】
イバン・コトロネーオ
【キャスト】
リマウ・グリッロ・リッツベルガー、バレンティーナ・ロマーニ、レオナルド・パッザッリ、トマ・トラバッチ、ジョルジョ・マルケージ、シモネッタ・ソルダー、デニス・ファゾーロ、リサ・ガランティーニ、アレッサンドロ・スペルドゥーティ
【作品概要】
アメリカで実際に起きた殺人事件を基に執筆した小説を映画化。恋と友情というかけがえのない絆、そして無知ゆえの若い残酷さを描く青春映画。
原作、脚本、監督は『ミラノ、愛に生きる』の脚本家イバン・コトロネーオが勤め、イタリア・ゴールデングローブ賞2016最優秀脚本賞受賞、ゴールデンCIAK賞 2016脚本賞にノミネート。
リマウ・グリッロ・リッツベルガーのプロフィール
リマウ・グリッロ・リッツベルガーは、1997年4月15日にオーストリアのウィーンに生まれ、現在はローマ大学哲学科に在学。
リマウはインドネシア人の父親とオーストリア人の母親を持つハーフで、3歳のときにイタリアのトリエステに移住しました。
その後、演劇のワークショップに通っていた経験があり、本作『最初で最後のキス』がスクリーンデビューとなります。
リマウ・グリッロ・リッツベルガーは演じたロレンツォ役について、このように語っています。
「ロレンツォは、16歳で自分のやりたいことをちゃんと理解しています。僕はロレンツォの力強さと真っ直ぐさに恋してしまったのです。16歳なのに既にしっかりしているこの少年について疑問でいっぱいでした」
リマウはロレンツォという少年の役柄に、「疑問がいっぱい」であると述べています。
映画初出演である彼にとって、真摯に役柄と向き合ったことの表れなのでしょう。
また、本作のテーマに流れる異なる者への共感ということにも向き合ったのでしょう。
リマウは自分にとって重要な映画になった述べてもおり、そのことは本作を観るあなたの胸にも、きっと“青春”として、何か言葉にならないモノが残るかもしれませんよ。
映画『最初で最後のキス』のあらすじ
16歳の孤児ロレンツォは、自分を気に入ってくれた里親夫婦に引き取られ、トリノの施設から北イタリアのウーディネへやってき来ます。
ロレンツォのために用意された部屋にパソコンまで用意し、彼の両親となった里親に温かく迎え入れられました。
翌朝、ロレンツォは母親の車で送迎された新しい高校に入学。
母親が帰ると上着を脱ぎ棄て、お気に入りショッキングイエローのメガネをかけ、派手なファッションで堂々と校舎に入って行きます。
さっそく「変な格好!」とクラスメイトの3人組の女子に揶揄されますが、「あんたのセーター、おばさん臭いくわよ!」と切り替えします。
ロレンツォの座ることになった自分の席の隣には、女子ブルーが座っていました。
ブルーは愛想が悪く、ぶっきら棒でしたが、転校生ロレンツォが揶揄されながらも全く動じないことに思わず吹き出します。
2人はすぐに意気投合。帰り道にロレンツォは「ゲイなんだ」と伝えますが、ブルーは「ゲイの知り合い初めてよ」と普通に受け入れ友達になります。
ブルーには年上の彼氏がいて、その彼の友達と4Pをしたと噂され、彼女は学校でイジメを受けていました。
一方でロレンツォは、クラスで誰とも口をきかないアントニオという男子が気になりはじめます。
アントニオはバスケ部に所属していて、チームの得点源として活躍する存在でした。
しかし、チームメイトは、「頭が弱い」「トロい」と馬鹿にされていました。
そんなアントニオは、ブルーに密かに惹かに想いを寄せているが、話しかけることもできません。
しかし、アントニオはただ黙って、ブルーはヤリマンと書かれた学校にある落書きを独り黙々を消していました。
ロレンツォとブルー、そしてアントニオは互いを認め合う存在として交流を深めていくが…。
映画『最初で最後のキス』の感想と評価
実際の事件を基に映画化
本作『最初で最後のキス』の原作、脚本、監督は、イタリア・ナポリ出身のイバン・コトロネーオ。
2008年にアメリカで実際に起きた「ラリー・キング殺人事件」の記事を読んだことをきっかけに、執筆した小説『UN BACIO』が原作です。
イバン監督の書籍が多くの学校の授業で扱われたことで、監督自身がたくさんの学生たちと出会い話をする機会を得たそうです。
そのような中で生徒たちは、自らの経験を語り合い、そこでイバン監督は思春期に特有のテーマを早急に映画化するべきだと強く感じたようです。
「ラリー・キング殺人事件」とは、2008年2月にラリー・キングが、14歳の同級生ブランドン・マキーナリーに拳銃で撃たれた死亡事件で、マルタ・カニンガム監督の『バレンタイン・ロード』というドキュメンタリー映画にもなっています。
この作品が魅力的なのは、実際に起こった出来事を扱いながらも、イタリアらしい明るさとコミカルを忘れずに作品にふんだんに盛り込み仕上げた点です。
そこが女子♀1×男子♂2の恋と友情をビタースイートの展開の拍車を、思わぬ展開に導くことに成功しています。
誰にもある“痛い青春”とはなんだ⁈
学校という場所は、小さな社会そのもの。しかし、そこは閉ざされた閉塞感のある空間でもあります。
だからこそ普遍的なイジメや差別が頻繁に起きるのは、日本のみならず古今東西、またイタリアでも変わらないようです。
しかも今の時代は、ネットのSNSなどの登場によって、さらに深刻で過酷な状況へと子どもたちを追いやっているのも同じなのかもしれません。
日本においても、まるで“かつての隣り組”のように、“互いが異物と成らないように監視する社会”なのかもしれません。
“嫌われない”、“人と違わない”と他人の目線を気にしながら、生きてしまうのがリアルさは、本作で描かれたイタリアにも同じように感じます。
そこで、せっかく異なる価値観を持った友人を得て、輝き始めた男女3人の青春は思わぬ展開と事態を引き起こします。
イタリア映画らしい楽しい表現も相まった幕開けから一転、取り返しのつかない事件を引き起こしてしまうのは、あまりに危うい感性や心の揺れがある10代特有の思春期の衝動だともいえるのではないでしょうか。
思春期の恋や性への目覚めに対する期待は正しく青春そのもの。
しかし、若く無知ゆえに受ける傷や戸惑い、暴力や自棄に走る衝動もまた、青春の表裏なのでしょう。
社会や大人になって慣れきった世代こそ、本作に描かれた楽しさや痛さを、もう一度見る価値があるような気がしました。
本作のストーリー展開の中心にあるモチーフは、「LGBTの問題」です。
イタリアでは2006年から10年までに、LGBTの308人が何らかの事件に巻き込まれているそうで、それだけでなく37人が亡くなり、194人が重傷を負ったとい言います。
入学したばかりの帰り道に、ロレンツォは「ゲイなんだ」とブルー伝えますが、彼女は「ゲイの知り合い初めてよ」と普通に受け入れます。
弱者が弱者に寛容的な場面で痛みを知るもの同士の何気無い素敵やりとり。しかし、それ以上に傷を負い過ぎた弱者の闇を持ったアントニオは…。
アニメ的な表現描写やコミカルなVPのような場面もあって、まるで映画を観ているあなたは、ロレンツォ、ブルー、アントニオと一緒の“4番目の友人”となって、青春の真っ只中にいる錯覚を覚えるかもしれません。
そこで起きた、実際に起きた事件の出来事をどう感じるか、あなたは先ず、1人自問自答して欲しい作品です。
まとめ
本作『最初で最後のキス』の劇中で、主人公ロレンツォは「イタリア人の15人に1人はゲイだ」と、ブルーに笑顔であっけらかんと告げます。
さて、あなたはこの作品をどう感じるでしょう。あなたの周囲にどのような友人や仲間がいますか。
それとも本作に出てくるように、あなたは独りきりでしょうか。
小品ながらイタリアでスマッシュヒットを飛ばした青春映画『最初で最後のキス』は、2018年6月2日(土)より新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次ロードショー。
ぜひ、“青春そのものような青春映画”をお見逃しなく!