モダニズム華やかなりし時代、2人の天才建築家の惹かれながらも相克する関係を、美しき映像で綴る極上の物語。
映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』は、10月14日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開されます。
今回はあらすじ、キャスト一覧、ル・コルビュジエの経歴をご紹介します。
CONTENTS
1.映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』の作品情報
【公開】
2017年(ベルギー・アイルランド映画)
【原題】
The Price of Desire
【脚本・監督】
メアリー・マクガキアン
【キャスト】
オーラ・ブラディ、ヴァンサン・ペレーズ、フランチェスコ・シャンナ、アラニス・モリセット、ドミニク・ピノン、アドリアーナ・L・ランドール
【作品概要】
近代建築の巨匠ル・コルビュジエと家具デザイナーで建築家のアイリーン・グレイという、2人の建築家に隠されたドラマを、実際の建築や家具などをふんだんに映画美術に取り入れて、天才たちの愛憎を描き出しています。
アイリーン役にドラマ『MISTRESS ミストレス』のオーラ・ブラディ、コルビュジエ役を『インドシナ』のヴァンサン・ペレーズ、当時の歌手として知られるマリサ・ダミア役をアラニス・モリセット。
2.映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』の見どころは
モダニズム華やかなりし時代。2人の天才建築家の惹かれながらも相克する関係を美しき映像で綴る極上のドラマ。
2016年に上野の国立西洋美術館が世界文化遺産登録されたことで多くの人が知ることとなった近代建築の巨匠ル・コルビュジエ。
彼には生涯で唯一、その才能を羨んだと言われる女性がいました。彼女の名はアイリーン・グレイ。
2009年にクリスティーズで行われた『イヴ・サンローラン&ピエール・ベルジェ・コレクション 世紀のオークション』において、史上最高額(約28億円)で落札された椅子を手掛けたことでも知られるアイルランド出身のデザイナーで建築家です。
南仏の海辺に立つ彼女の別荘<E.1027>はモダニズム建築史上に残る傑作とされるが、そこは長くル・コルビュジエの作とされ、アイリーンの存在は歴史の影に覆い隠されてきました。
そこには光り輝く才能を発揮する彼女に対する、ル・コルビュジエの密やかな嫉妬と欲望が絡まりあう、知られざる愛憎のドラマがありました。
時代を超え、後世に影響を与え続ける2人のアーティストの人生を、実際の建築や家具などを美術として用いながら、眩しい映像美でつづった『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』。
アイリーン・グレイをBBCの人気ドラマ『MISTRESS <ミストレス>』のオーラ・ブラディ、ル・コルビュジエを『インドシナ』のヴァンサン・ペレーズ、グレイの 恋人の一人で、当時フランスで名を馳せた歌手のダミアをアラニス・モリセットが演じています。
3.映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』のあらすじ
長らく建築史から覆い隠されてきた“壁画事件”。幻の邸宅が辿った数奇な運命とは。
1920年代、のちの近代建築の巨匠ル・コルビュジエは、すでに新進気鋭の家具デザイナーとして活躍していたアイリーン・グレイと出会います。
彼女は恋人である建築家兼評論家のジャン・バドヴィッチとコンビを組みながら、建築デビュー作である海辺のヴィラ<E.1027>を手掛けていました。
陽光煌く南フランスのカップ・マルタンに完成したその家は、ル・コルビュジエが建築家として提唱し続けてきた「近代建築の5原則」を具現化したモダニズムの記念碑。
最初のうちは絶賛していたル・コルビュジエですが、完成度の高いアイリーンの作品に、やがて、賞賛の思いは次第に強い嫉妬へと変わっていきます…。
4.映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』のキャスト一覧
オーラ・ブラディ(アイリーン・グレイ役)
1961年にアイルランドに生まれ、25歳でパリに移り、フィリップ・ゴーリエの演劇学校で演技を学び、さらにフランス語を習得。
オーラは舞台で女優としてのキャリアをスタート。アイルランドとイギリスを中心にステージで活躍。
その後、アメリカにも活動の幅を広げていきます。
『FRINGE/フリンジ』(2010-12)、BBCテレビシリーズ『MISTRESS <ミストレス>」(2009-10)、『刑事ヴァランダー 白夜の戦慄』(2009)、「刑事ジョー パリ犯罪捜査班」(2013)など多数のテレビドラマで親しまれます。
映画では1999年の作品『A Love Divided(原題)』、2000年の『愛のエチュード』で知られています。
1999年のモンテカルロ映画&テレビ祭では映画『A Love Divided(原題)』で最優秀主演女優賞を受賞。
参考映像:映画『A Love Divided(原題)』
アイルランド・アカデミー賞では、『Sinbad』『MISTRESS<ミストレス>』『Proof』『Servants』などで助演女優賞を5度受賞しています。
アイリーン・グレイ役オーディションの34人目の俳優であったオーラは、キャスティングの初期からメアリー・マクガキアン監督の目に留まってお気に入りだったそうです。
ヴァンサン・ペレーズ(ル・コルビュジエ役)
1964年にスイスに生まれ、18歳でパリに渡り、フランス国立高等演劇学校 (コンセルヴァトワール)で演技を学びます。
1986年に『夜の天使』で映画デビュー。カトリーヌ・ドヌーヴと共演した1992年の『インドシナ』で大成功を収め、フランス語圏を代表する美男俳優として一躍有名になります。
参考映像『インドシナ』(1992)
その後、『王妃マルゴ』(1994)、自身初の主役を務めたアメリカ映画となった『THE CROW/ザ・クロウ』(1996)、『愛する者よ、列車に乗れ』(1998)、夭折の歌手アリーヤの遺作となった『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイヤ』(2002)、『花咲ける騎士道』(2003)など数々の話題作に出演。
ヨーロッパ映画からハリウッド大作まで様々なフィールドで活躍。
そのほか『デュカリオン』(2004)、『ポンパドール夫人』(2006)、『Law & Order: Paris(原題)』(2007-08)といったテレビ映画やテレビシリーズにも多く出演しています。
2015年にはピープル誌で、世界で最も美しい男50人の一人に選ばれます。
『愛と復讐の騎士』と『愛する者よ、列車に乗れ』でセザール賞の助演男優賞に、さらに『シラノ・ド・ベルジュラック』で有望男優賞にノミネートされています。
脚本家、監督としても輝かしいキャリアを重ねており、『天使の肌』(2002)、『秘密 THE SECRET』(2007)と監督作を発表。
2017年に『ヒトラーへの285枚の葉書』(2016)にて来日しています。
フランチェスコ・シャンナ(ジャン・バドヴィッチ役)
参考映像:『シチリア!シチリア!』(2009)
1982年にイタリアに生まれ、2002年に映画デビュー。
2009年にジュゼッペ・トルナトーレ監督の『シチリア!シチリア!』で主演を務めると世界的に大ヒットを果たします。
2010年のアカデミー賞外国語映画賞部門のイタリア代表作品となり、さらにゴールデングローブ賞にもノミネートを果たしました。
そのほかの出演作に、映画では『Come Il Vento (原題)』(2013)、『Itaker – Ietato Agli Italiani(原題)』(2012)、『The Entrepreneur(原題)』(2011)、『Angel of Evil(原題)』(2010)などに出演。
テレビシリーズでは『La Luna e Il Lago(原題)』(2006)、『CORLEONE コルレオーネ』(2007)、『ジョルダーニ家の人々』(2010)などに出演します。
アラニス・モリセット(マリサ・ダミア役)
1974年にカナダ・オタワに生まれる。世界的な名声を誇るシンガーソングライター。
アメリカの大人気テレビシリーズ『セックス・アンド・ザ・シティ』(2000)、『ラリーのミッドライフ★クライシス』(2002)、『NIP/TUCK マイアミ整形外科医』(2006)、「Weeds ~ママの秘密」(2009-10)、「Up All Night(原題)」(2012)などに出演しています。
さらに『The Vagina Monologues』(1999)や『The Exonerated』(2004)、『An Oak Tree』(2012)といった本格的な舞台にも出演。
2006年に『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』でゴールデングローブ賞の主題歌賞にノミネートされました。
これまでにグラミー賞を7回、ジュノー賞(カナダのグラミー賞)を12回受賞し、グラミー賞のノミネートは12回に及びます。
ドミニク・ピノン(フェルナン・レジェ役)
1955年にフランスに生まれる。『アメリ』(2001)、『デリカテッセン』(1991)、『ロスト・チルドレン』(1995)、『ミック マック』(2009)、『天才スピヴェット』(2013)などジャン=ピエール・ジュネ監督作品に出演。
そのほか『ディーバ』(1981)、『聖なる酔っぱらいの伝説』(1988)、『エイリアン4』(1997)、テレビシリーズ『アウトランダー』(2016)と 幅広い作品に出演しています。
アドリアーナ・L・ランドール(シャルロット・ペリアン役)
今作『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』が女優としての長編デビュー作。
リー・ストラスバーグ劇場研究所やニューヨーク・ファンデーション・フォー・アーツ、ロンドン・アカデミー・オブ・ミュージック・アンド・ドラマティック・アートで演技を学びます。
プロデューサーとしても活動し、これまでに『Tulip Fever(原題)』(2014)、『WISH I WAS HERE/僕らのいる場所』(2014)、『あの日の声を探して』(2014)、『トリプル9 裏切りのコード』などに参加しています。
5.建築家ル・コルビュジエのプロフィール
ル・コルビュジエ (1887年10月6日〜1965年8月27日)
1887年にスイスのラ・ショー=ド=フォンに生まれ、本名はシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ。
時計の文字盤職人の父とピアノ教師の母の間に生まれ育ち、幼い頃は自身も時計職人を目指していましたが、美術学校在学時に建築への関心を育みます。
1920年代から建築家として本格的に活動をはじめると、機能主義を貫いた「近代建築の5原則」を掲げます。
1965年に<E.1027>を臨むカップ・マルタンで海水浴中に心臓発作で死去するまで、世界各地に建築史に刻まれる建築を数多く残します。
代表的な作品に「サヴォア邸」「ユニテ・ダビダシオン」「ロンシャンの礼拝堂」などがあります。
2016年には7カ国の17作品が世界遺産に登録され、そのひとつに日本の「西洋国立美術館」も含まれています。
今なお、世界各国から絶大な人気を誇る不動の巨匠建築家。
日本で鑑賞できるル・コルビュジエ作品
国立西洋美術館
フランス政府が日本を含む7か国と共同で推薦していた「ル・コルビュジエの建築作品(7か国 17作品)」の1作品として、「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」という名称で、ほかの16作品とともに一括して、2016年に文化遺産に登録。
日本で唯一、ル・コルビュジエが設計した建造物であり、その特徴が良く表れています。インドの「サンスカル・ケンドラ美術館」と「チャンディガール美術館」とともに、「無限に成長する美術館」というコンセプトのもとに作られています。
東急シアターオーブ「ル・コルビュジェの緞帳」
旧東急文化会館(1956年~2003年)の映画館「渋谷パンテオン」に掛けられていた大緞帳はル・コルビュジェの原画をもとに建築家・坂倉準三が 設計。
当時のサイズは、縦9メートル50センチ、横22メートル80センチ。現在、5分の1サイズに縮小したものが、「東急シアター オーブ」(渋谷ヒカリエ11階)センターホワイエに設置されています。
6.建築家アイリーン・グレイのプロフィール
アイリーン・グレイ(1878年8月9日〜1976年10月31日)
1878年、アイルランドのブラウンズウッドに生まれ、ロンドン、パリで美術を学びます。
1910年代初頭から様々な工房でデザイナーとして活動。当初はアール・デコ調であった作風は徐々に変化していきます。
1919年に帽子デザイナーのシュザンヌ・タルボットの依頼で、パリのアパルトマンのトータル・インテリアを手がけた際には、モダンデザインの先駆けとなる作品が多く含まれていました。
それ以降インテリア・デザイナーとして高い注目を集めると、1922年に自身の店<ジャン・デゼール>をオープン。
1926年から<E.1027>の建築に取り掛かり、1919年に完成させます。
1950年頃から視力が悪化してしまい事実上の引退、1976年に死去。
飛行機好きとしても知られる活動的な女性で、生涯に渡り自らのスタイルを貫き続けた気高く勇敢な女性であった。
まとめ
今作『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』の脚本・演出を務めたメアリー・マクガキアン監督。
彼女の作品は、2011年にドナルド・サザーランドやラリー・マレン・Jr 出演の『マン・オン・ザ・トレイン』や、同年には唯一のコメディ作品『トラブル・イン・カンヌ』にて、オーハイ映画祭にて最優秀劇映画賞を獲得しています。
メアリー・マクガキアン監督は、世界的に知られる2人の天才建築家の隠された実話をどのように描くのか。
また、世界から愛される建築家ル・コルビュジエとはどのような人物なのか。
そして、女性として活躍することが難しい時代を生き抜き、天才ぶりを発揮したアイリーンはコルビュジエにとって、どのような存在だったのか。
映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』は、10月14日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開されます。
ぜひ、お見逃しなく!