『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』は、2018年1月13日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー!
これまで日本でも『西遊記』は、実写版やテレビアニメで何度も映像化されてきました。
いよいよ、本家本元の中国が最先端の孫悟空をアニメで描きます。これまでには見たことのない“西遊記”をご紹介します。
CONTENTS
1.映画『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』の作品情報
【公開】
2018年(中国映画)
【監督】
田暁鵬
【日本語吹き替えキャスト】
咲野俊介、子安武人、羽村仁成、麦人、遠藤純一、園崎未恵
【作品概要】
「西遊記」を題材とした中国製の3DCGアニメーション映画。2015年に中国の国産アニメとして歴代1位の興行収入(日本円で約192億円)の大ヒットを樹立記。
全3部作の第1部「出会い」にあたり、以後、第2部「信仰」、第3部「取経の旅」を制作予定。
【日本語吹き替え監修】
宮崎吾朗
2.中国人アニメーション監督・田暁鵬のプロフィール
田暁鵬(ティエン・シャオポン Tian XiaoPeng)は1975年に北京で生まれたアニメーション監督。
18年間にわたり3Dアニメ制作の経験を持ちながら、これまでに監督の経験はありませんでしたが、長年の夢である『西遊記』の映画化を実現するために本作の製作を決意します。
資金難などもあって、苦難を乗り越え8年をかけて作品を完成させます。
苦労の末に公開にたどりついた本作『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』は、2015年に中国全土で大ヒットを果たし、田暁鵬監督はチャイニーズドリームを実現させました。
そのほかの作品は、CCTV 2006年の『春晩』(旧正月を祝う中国の国民的年越し番組)の予告編や、スパイダーマンのゲーム宣伝映像、イタリア・ポンペイ博物館の4Dアニメ作品などがあります。
大阪アジア芸術祭の審査員、北京電視局2011年アニメ『春晩』の総監督、インターネットゲーム「傭兵天下」のCG広告映像を担当するなど活躍の場を広げています。
3.映画『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』のあらすじ
斉天大聖(孫悟空)が、釈迦によって五行山の洞窟に封じ込められて500年。
長安には妖怪が現れるようになり、子どもたちを度々さらっていく事件が頻発していました。
師匠さまのもとで修行するリュウアーも、幼い頃に妖怪に襲われて両親を亡くしたひとりでした。
ある日、リュウアーは、妖怪に襲われた幼い赤ん坊を助けようと妖怪たちと奮闘の戦いに挑みながら、五行山に迷い込みます。
そのことがきっかけで、偶然にも孫悟空を眠りから目覚めさせてしまいます。
目覚めた悟空は妖怪たちをバタバタと倒しますが、そんな悟空の力は封印されたままで、本来のパワーを発揮できませんでした。
リュウアーにとって伝説のヒーローである悟空を目の前に「斉天大聖、体は鋼で、瞳はまっかっか!筋斗雲を呼んで乗れば、10万8千里もひとっ飛び!」と、大興奮します。
しかし、釈迦の命を受け、悟空を待ち構えていた山神の「今のお前は何のチカラもないただのサルだ」という言葉に、悟空は自信を失ってしまいます。
そんな悟空とリュウアーは、36変化の術を使う八戒と出会います。
八戒は500年前に悟空と戦い敗れ、下界に落とされ豚の姿にされてしまったのですが、成り行きで赤ん坊を長安に届けることになった3人。
だが、ある宿の亭主たちに化けていた妖怪たちにはめられて一戦を交えるも、妖怪に赤ん坊をさらわれてしまいます。
その妖怪の背後には、混沌という悪者ボスがいて、赤ん坊を生け贄に復活を目論んでいたのです。
赤ん坊たちを救うべく、敵の潜む山に向かったリュウアーと悟空たちだったが…。
はたして悟空は、かつてのパワーを取り戻し、真のヒーローになることができるのか⁈
4.映画『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』の感想と評価
いよいよ本家の東洋のヒーロー斉天大聖!
本作は“これまでと違う西遊記”を作りたいという思いに満ちた、中国スタッフの姿勢を感じるアニメーション映画です。
この作品を制作するにあたり立てられた構想は、唐僧と弟子の悟空たち4人がともに九世の輪廻を経験し、信仰を求めていく物語を現代に通じるようにする試みです。
そこで映画を見る際に欠かせない「成長」をストーリーの中心におくことで、今の観客であるあなたが原作「西遊記」の設定に疑問を抱えないように工夫がなされています。
見どころ1:誰もが抱く人物設定の疑問を解決した“新しい西遊記”
【西遊記に湧いてしまう素朴な疑問1:強い孫悟空は何故お供なの?】
孫悟空は空を飛び地に潜り、七十二般の変化術を身につけた神通力の持ち主であるにも関わらず、どうして虚弱な人間のお供になって伝説の経典を取りに行ったのか?
悟空は何者も恐れず天界すら騒がせた結果、500年にわたり山に封印されても動じない人物であるのに、どうして単なる「緊箍呪」によって服従させられたのか?
【西遊記に湧いてしまう素朴な疑問2:僧侶にリアリティがなくない?】
唐僧の如き年若い僧侶は、様々な感情や欲望を経験したことがなく、どうして急に悟りを開き大義のために身を捧げに行くのか?
このような悟空や僧侶に対して、誰もが抱いてしまう疑問を前に、登場人物の本当のリアルとは何かを、田暁鵬(ティエン・シャオポン)監督は考えたいとアニメーション制作をしたのです。
実は原作でにも「九世の輪廻転生」という点に対して言及はあるものの、具体的な話が展開されることはないそうです。
そこでシャオポン監督は本作を通じて、悟空たち4人の成長の過程をストーリーとして再現することだと至りました。
リュウアーはどんな若者になるのだろう?
本作を観たあなたは、子どものリュウアー(江流児)が、将来は唐僧になると薄々感じるはずです。
唐僧は転生を通してこの世の苦しみと取経の必要性を実感し、自らの信仰と歩む道を少しずつ確立していく、成長する一端を見抜けるように作られています。
また、悟空もそのようなリュウアーの強さに心を動かされ、自由を信仰する気持ちがリュウアーを信仰する気持ちに変わっていくことも、しっかり描いています。
これこそが、誰しもが抱いてしまう西遊記の人物設定の疑問の解決といえるでしょう。
また、その成長をする登場人物たちの姿とともに、手に汗握るアクション場面も豊富に盛り込まれていて、まるでテーマパークのアトラクションさながら。
劇場で本作を観たあなたの感情の緩急の付け方の激しさは、ちょっと他の映画と比べる物はないかもしれません。
シャオポン監督が、登場人物の設定のリアルさを解決したことで、アクションや妖怪が登場する場面などのストーリー展開も飽きることがない、“まったく新しい西遊記”を作り上げたのです。
見どころ2:映画『ショーシャンクの空に』をリスペクトしたシャオポン監督
参考映像:フランク・ダラボン監督の『ショーシャンクの空に』(1994)
田暁鵬(ティエン・シャオポン)監督は、映画「ショーシャンクの空に」のなかで、俳優モーガン・フリーマンが演じた老人を本作のイメージ作りに引用したようです。
老人が若い頃は荒くれ者であったが、40年間の服役を終えた後、塀の外の世界に恐れを感じるようになっていました。
この世界と相容れない存在になってしまっていたことをヒントに、孫悟空の抱く心境について再考したそうです。
それについてシャオポン監督は次のように述べています。
500年間も如来に封印された悟空は、きっと闘志を失い、世の移り変わりを経験した中年男のように夢を忘れ、もはやヒーローではなくなってしまっているはずである。彼の心の中に沈む美しいものや神通力は、何らかの外因によって呼び起こされる必要がある。
そのため、我々は孫悟空の闘志を奮起させるよう一人の子供を設定した。
この話では、唐僧はまだ「江流児(リュウアー)」という孤児である。小さい頃から「斉天大聖」の物語を聞いて育ち、悟空こそが彼の憧れの父親でありヒーローである。
そして、このような心中に愛慕の情を抱え、ヒーローと正義を固く信じる子供との出会いによって、悟空はかつての勇気を取り戻し、利己的な信仰を捨て、他人を救うことで昔の自分を取り戻し、ついに「スーパーヒーロー」へと成長することができた。
「成長」こそが「大聖帰来」のテーマなのである。
斉天大聖こと孫悟空に苦悩や哀しみはあるのか
本作『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』は、シャオポン監督が、映画『ショーシャンクの空に』を例に挙げたように、幾つもの映画を引用して作られたことを映画を観ると気がつくはずです。
しかし、それは中国特有の複製や盗作というモノでは決してありません。
この作品を観ながら、かつて子どもの頃に見て育ち楽しんできた、天才漫画家・手塚治虫の『ぼくの孫悟空』や、堺正章主演『西遊記』では、描けなかったこと“宝物のようなもの”が確実に描いています。
あゝ、この『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』を子どもの頃に観たかったなと素直に思いました。
大人も子どもも、そして親子でも楽しめる映画それが、この映画の素敵なところです。
きっと、シャオポン監督が「成長」をテーマに託したものは、あなたをはじめ、観るものすべての“成長”を祈っているのに違いありません。
ぜひ、観終わったら、それぞれの「西遊記」への思いと“成長”をテーマに、恋人や友人、親子でお話してみるのはいかがでしょう。
まとめ
本作の日本語吹き替え監修をしたのは、宮崎吾朗。声の出演に咲野俊介、子安武人、羽村仁成、麦人、遠藤純一、園崎未恵が参加しています。
中国北京の生まれの田暁鵬(ティエン・シャオポン)監督は、まさしく五行山から解き放たれた孫悟空のように、今後の活躍が期待される存在です。
また、新しい価値観を知り、「成長」するテーマこそ、今の中国そのものの勢いなのかも知れません。
アニメーション映画『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』は、2018年1月13日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー!
新たな西遊記を、ぜひ、お見逃しなく!