女子高生3人vs “23+1人”の攻防?!
M・ナイト・シャマラン史上最も衝撃的なラストが待ち受ける『スプリット』をご紹介します。
CONTENTS
映画『スプリット』の作品情報
【公開】
2017年(アメリカ)
【原題】
Split
【監督】
M・ナイト・シャマラン
【キャスト】
ジェームズ・マカヴォイ、アニャ・テイラー=ジョイ、ベティ・バックリー、ジェシカ・スーラ、ヘイリー・ルー・リチャードソン
【作品概要】
『シックス・センス』、『アンブレイカブル』でおなじみのM・ナイト・シャマラン監督が放つ衝撃のサイコ・スリラー。
前作『ヴィジット』に引き続き、『パラノーマル・アクティビティ』や『インシディアス』を手掛けたジェイソン・ブラムが製作を務め、主演には『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』のジェームズ・マカヴォイ、共演にアニャ・テイラー=ジョイやベティ・バックリー、ジェシカ・スーラ、ヘイリー・ルー・リチャードソンを迎えている。
映画『スプリット』のキャスト一覧
ケヴィン / ジェームズ・マカヴォイ
スコットランド出身のジェームズ・マカヴォイは、1995年に『The Near Room』で映画俳優としてデビューを果たします。
主にイギリス国内のテレビや舞台で活躍した後、世界的に知られるようになったのは2005年の『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』のタムナス役でしょう。
この年、英国アカデミー賞ライジング・スター賞を受賞するなど一躍脚光を浴びることになったジェームズ・マカヴォイ。
翌年にはケヴィン・マクドナルド監督の『ラストキング・オブ・スコットランド』で英国アカデミー助演男優賞にノミネート、さらには2007年の『つぐない』でゴールデングローブ賞や英国アカデミー主演男優賞にノミネートされるなど評価を高めます。
2008年の『ウォンテッド』でハリウッド進出を果たし、2011年にはマシュー・ヴォ―ン監督の『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』で主人公チャールズ・エグゼビア(プロフェッサーX)を演じ、以降の同シリーズにも出演し続け人気を博しました。
その後もダニー・ボイル監督の『トランス』(2013)で主演を務めるなど、その勢いはとどまるところを知りませんね!
そんなジェームズ・マカヴォイが本作『スプリット』で演じているのは、なんと23もの人格がある異常者ケヴィン。
ジェームズ・マカヴォイという俳優にこういった役どころのイメージがあまりないので、一体どのように様々な人格を演じ分けてくれるのか?!注目して見ていきたいですね!
ケイシー / アニャ・テイラー=ジョイ
1996年にアメリカで生まれて間もなくアルゼンチンに移り住むことになったアニャ・テイラー=ジョイ。
6歳の頃にはイギリス・ロンドンに渡ってからようやく英語をはなすようになったのだとか。(アルゼンチンはスペイン語圏)
女優としては2015年にBBCで放送されたファンタジードラマ『Atlantis』の数話に登場し、デビューを果たします。
同年のテレビ映画『バイキング・クエスト』にも出演した後、ロバート・エガース監督の『The Witch』に出演。
2015年にサンダンス映画祭で初上映されたこのホラー映画での高い演技力により、一躍脚光を浴びることに。
その後『モーガン プロトタイプ L-9』(2016)、『バリー』(2016)と出演を重ね、本作『スプリット』に至るという訳です。
そんなアニャ・テイラー=ジョイが演じているのは、ケヴィンに監禁されることになる女子高生の1人であるケイシー。
一体彼女をどのような運命が待ち受けているのか?!要注目です!
クレア / ヘイリー・ルー・リチャードソン
1995年アメリカ・アリゾナ州生まれのヘイリー・ルー・リチャードソンがハリウッドデビューを果たしたのは、16歳の頃の『ラスト・サバイバーズ』という作品のよう。
その後テレビドラマ『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』のシーズン16や、『ブロンズ!私の銅メダル人生』(2015)などに出演。
2017年には本作の他にも、ケリー・フレモン・クレイグ監督の『スウィート17モンスター』(2017年4月22日公開開始予定)で主人公の親友クリスタ役で出演しており、これからが期待される若手女優の一人ですね。
本作『スプリット』では、ケイシーのクラスメイトで共に監禁されることになるクレアを演じています。
なにやら最初に脱走を試みるのがクレアのようで…。この先、一体どんな顛末が彼女を襲うのかに乞うご期待です!
マルシア / ジェシカ・スーラ
1994年5月3日生まれで現在22歳のジェシカ・スーラは、イギリス・スウォンジー出身の若手女優さんです。
2011年に『Skins』というテレビドラマ作品で女優としてデビューを果たし、2013年にはドラマLove and Marriage』に出演。
2014年には『Honeytrap』という作品で映画デビューを飾り、本作『スプリット』が2本目の模様ですね。
残念ながらほぼ情報がないのでこの程度しかプロフィールのご紹介は出来ませんが、本作『スプリット』では3人の女子高生の1人マルシアを演じています。
監禁された後に3人がそれぞれどのような反応を見せるのか、それぞれの反応の違いといった点にも注目したいところですね!
フレッチャー / ベティ・バックリー
元々舞台で活躍していたベティ・バックリーが映画に初めて登場したのは、ブライアン・デ・パルマ監督の『キャリー』(1976)。
1988年にはロマン・ポランスキー監督の『フランティック』、翌年にはウディ・アレン監督の『私の中のもうひとりの私』(1989)などに出演しています。
M・ナイト・シャマラン作品には2008年の『ハプニング』にも出演していますが、今回彼女が演じるのは、心理学者であるフレッチャー博士。
どうやらケヴィンは彼女のカウンセリングを受けており、彼に何が起っているのかを把握している人物のようで、もしかしたら物語の鍵を握る人物となるやもしれません!
注目して見ていきたいと思います!
映画『スプリット』の監督紹介
映画『スプリット』の監督を務めるのはM・ナイト・シャマランです。
インド出身のシャマラン監督のデビューとなったのは、大学時代に家族や友人から資金を借りて製作したという半自伝的ドラマ作品『Praying with Anger』。
1992年にトロント国際映画祭で上映され、1週間限定ではあるものの劇場で商業上映もされたのだそう。
1995年には『翼のない天使』を製作するも、公開されたのは1998年になってからとキャリアの初期はあまり上手く事が運んでいなかったシャマラン監督。
そんな彼にとって最も大きな転機となったのは1999年『シックス・センス』でしょう!
ブルース・ウィリスを主演に迎え、ハーレイ・ジョエル・オスメントを一躍人気者にしたこの作品で、アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、助演男優賞、助演女優賞にノミネートされるのなど、最高の評価を得ることに。
興行収入的にも大ヒットを記録し、もちろん日本でも一躍『シックス・センス』旋風が巻き起こりました。
この成功でM・ナイト・シャマランの名も世界的に知られるものとなり、続く『アンブレイカブル』(2000)、『サイン』(2002)と次々にヒットを飛ばします。
と、ここまでは順調に来ていたシャマラン監督でしたが、2004年の『ヴィレッジ』を境に雲行きが怪しくなっていくことに。
続く『レディ・イン・ザ・ウォーター』(2006)も発想としては面白かったものの、興行的に失敗、内容的にも酷評されてしまいます。
2008年、マーク・ウォルバーグを主演に据え、衝撃的な冒頭で始まる『ハプニング』で少々持ち直したものの、結末の弱さが指摘され、あまりいい結果とは言えませんでしたね。
その後『エア・ベンダー』(2010)やウィル・スミス親子の共演が話題となった『アフター・アース』(2013)と、なぜか急激に方向を転換を図った(どちらもSF・ファンタジー系作品)シャマラン監督。
興行的にはここ最近の作品よりマシではあったものの、全体としては失敗作としてみなされます。
しかし、2015年に発表した『ヴィジット』では低予算に抑え、なおかつ原点回帰したような作風が復活し、明るい兆しが見えてきました。
そして本作『スプリット』の発表に至るという訳です。『ヴィジット』のスタッフを再集結させ、アメリカではオープニングの17日間でナンバーワンとなるヒットを記録し、『シックス・センス』の頃のキレを取り戻したと言われるM・ナイト・シャマラン。
“Don’t even try guessing the ending.(結末を予想してもムダだよ)”と語っているシャマラン監督は、本作で一体どんなラストを用意しているのか?!非常に楽しみですね!
映画『スプリット』のあらすじ
高校生のケイシーは、クラスメイトのクレアの誕生日会に参加していました。
しかし、彼女は浮かぬ顔。そんなケイシーを観て、クレアとマルシアは「ほらやっぱりあの調子」とクレアの父に話していました。ケイシーは問題児で、誰とも仲良くなろうとしないのです。それでも彼女を招待した理由は、招待しなければ、クラスメイトたちにSNSでいじめらることがわかっているからです。
誰かと電話をしていたケイシーはこちらにやってきました。保護者が迎えに来られないらしく、タクシーで帰るというケイシーをクレアの父は一緒に送ってあげるよ、と誘います。
トランクにたくさんのプレゼントを積めるのを父に任せて、少女たちは、車に乗り込みました。ケイシーは助手席に。仲良しのクレアとマルシアは後部座席でおしゃべりに夢中です。
後方でドスンと音がしたので、ケイシーはサイドミラーをみますが、特に何事もありません。しかし、次にトランクを閉める音に反応して振り向いたときは、持ち帰る予定だったものが地べたに散乱しているのが見えました。
何か変、何かがおかしい…。その時、運転席にクレアの父ではない別の男が乗り込んできました!
「あなた車を間違ってない!?」とクレアが叫んだ瞬間、男はマスクをつけ、後部座席の2人に催涙スプレーをかけました!
そのまま男は運転席にちらばっているゴミをハンカチで取り除き始めました。恐怖にひきつったケイシーは、恐る恐る、ドアノブに手をかけ、脱出しようと試みますが、男がエンジンをかけると、ドアが開いているため音が鳴ってしまいます。
男は厳しい目つきでケイシーを睨みつけると、マスクをつけ、催涙スプレーを向けました…!
何やら細い通路を運ばれていく少女たち。気が付くと、ケイシーたち3人はどこか見知らぬ部屋に閉じ込められていました。
さきほどの男に拉致されたのです。三人の前に男が現れ、「まずお前だ」とマルシアを指名します。部屋を連れ出されたマルシア。マルシアの悲鳴が上がり、心配したクレアは激しくドアを叩きます。すぐに男がドアを開け、マルシアは戻されました。
「あいつ、私に踊れっていうの!」とマルシア。クレアとマルシアは三人で力を合わせてなんとか脱出しようと話し合いますが、ケイシーは、へたな抵抗をしてもやられるだけだ、もっと具体的な話をきかせてちょうだいと冷静です。
テレビのニュース番組は、女子高生3人が誘拐されたことを報じていました。一人の老女がそれを観ていると、パソコンにメールが届いた音が響きます。バリーという差出人からの「至急会いたい」というメールでした。
老婦人はフレッチャーというカウンセラーでした。
ケイシーは幼いころ、父に狩りを教わった時のことを思い浮かべていました。「メスはオスよりもかしこい。常に身の安全に気を付けている」と鹿について語っていた父…。
螺旋階段をあがっていく人の姿がありました。フレッチャーを訪ねてきた男は、なんとあの女子高生たちを監禁した男ではありませんか!? しかし彼はお姐言葉で喋り、ファッションイラストを得意そうに先生に見せています。まるで別人です。
フレッチャー先生は、至急会いたいと昨晩メールしてきたこの男がまったく切羽詰った様子がないのを不思議に思っていました。そして、なにやらいつもと様子が違うことも感じていました。
隣人とおしゃべりしながら、フレッチャー先生は、「私たちは心に傷を追っている人を劣っていると思いがちだけれど、もし優れていたら?」と呟きます。
少女たちのもとに男が戻ってきました。鍵穴から外の様子を探るクレアたち。女の人が来ているようで、二人の会話が聞こえてきます。
ドアが開き、女が入ってきました…。と思いきや、それは女装したあの男ではないですか!
男は女口調で、「あなたたちの役割は彼も知っているし、手を出さないわ」と告げるのでした。
何かがおかしいと感じる3人…。
次に男が顔を出した時は、子供のような言葉で話だし、なんと自分はヘドウィグという名で、年齢は9歳だと3人に告げたのです。
どうやら多重人格者であるらしいことが分かった3人は、一体この危機をどう乗り越えるのか?!
彼女たちは無事逃げ切れることが出来るのか?!
映画『スプリット』感想と評価
(注)本稿もネタバレしております。是非映画を観てからご高覧ください。
多重人格者が少女を拉致監禁という展開で幕をあけるこの物語。一見、よくあるサイコホラーかと思いきや、DID(解離性同一性人格障害)の研究者が、学会の報告で「予知能力」に踏み込んでいるシーンで紛れもないシャマラン映画と確信しました。
本作は、ずばり、怪物の誕生を描いた作品です。そして、「ありえなさ」と「リアリティ」が両立している稀有な作品なのです。
23の人格の中には、良心を持った真っ当な人格もあるわけですが、「悪」に傾倒した人格が次第に主導的立場になっていき、目的を実行するためのもうひとつの人格を欲し始めます。
その人格は、もはや人間ではない、獣の如きもの。生まれるまであと一歩のところまで来ているのですが、まだ何かが足りない。しかしそれがもたらされた時、願っていたものが生まれます。それとは何か?
それとは、「肯定」を受けたことです。
フレッチャー先生によってデニスという人格が初めて、「あなたは正しい」「あなたは必要」と励まされ、「肯定」されたことで、ありえなかった力が実際に生まれてしまう。
この理屈のあるようでない、しかし断固とした説得力が、シャマラン作品の最大の魅力ではないでしょうか。
主演のジェームズ・マカヴォイの熱演によるところも大きいでしょう。何人もの人格を瞬時に演じ分け、圧巻です。
中には「別の人格を装っている人格」までが含まれているのですから、お見事というしかありません。
そしてもうひとりの主役が、アニャ・テイラー=ジョイ扮するケイシーです。
彼女の幼いころの出来事が、時折、フラッシュバックされるのですが、初めは、娘に狩りを教える父の言葉が、この状況を打破するヒントになっていくのかと想像していました。しかし次第に、彼女を取り巻き、覆っている「忌まわしいもの」が、暗示されるシーンへと変化していきます。それがラストへと絶妙につながっていくのです。
また、服が汚れると、一枚、一枚脱がせていくという設定も、別のものを暗示するように仕向けておいて、ラストに大きくつながってくる。実に緻密に錬られた脚本だと、感心せずにはいられません。
そして、何より、この作品を語るのにはずせないことがあります。
助けてほしいときに、誰も助けになんて来てくれない、正義の見方なんて現れない。本作はそういう映画だということ。
外とつながるトランシーバーは、何の役にも立ちませんし、普通の少女が突如巧みに銃を操り、ヒロインとして覚醒するわけもない。ケイシーが助かったのは、怪物が彼女を「同類」として同情したからにほかなりません。
これはある意味非常に皮肉なことです。犠牲になってしまった少女たちの救われなさといい、実にリアリティを感じさせる世界ではないでしょうか。
怪物の誕生を描き、「正義のヒーローなんていやしない」と終わった本編に対して、エピローグとして現れた『アンブレイカブル』を示唆する(というかそのものですが)サプライズシーンは何を意味しているのか?
いや、そんなことはないんだという一つの答えなのか?
はたまた現実的でありすぎた、と感じたための単なる埋め合わせなのか?
つべこべ言わず、次回作を期待して待てというメッセージなのか?
果たして…?!
エンドタイトルの特報で報じられた作品が実に待ち遠しいです。
そして本作で圧倒的な存在感を見せたアニャ・テイラー=ジョイの出世作『The Witch』の日本公開の噂もあります。
楽しみに待ちたいと思います。
まとめ
M・ナイト・シャマラン監督の復活をにおわせる本作ですが、もうひとつの注目ポイントはやはり主演のジェームズ・マカヴォイですよね!
『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士や『ダークナイト』のジョーカーにも匹敵すると言われるケヴィンのような悪役を、これまで割と清廉なイメージの強かったジェームズ・マカヴォイが一体どう演じているのか…非常に興味深いところ。
さらにアニャ・テイラー=ジョイをはじめとした女子高生3人の中からも新たなスターが生まれる予感もありますので、様々な面で注目すべきポイントが多い作品だといえるでしょう!
注目の劇場公開は2017年5月12日(金)より始まります!果たしてシャマラン監督の仕掛けた罠にあなたは気付けるか?!乞うご期待です!