2017年6月9日より劇場劇公開中の『パトリオット・デイ』。
マーク・ウォールバーグ、ケビン・ベーコン、ジョン・グッドマン、J・K・シモンズ、ミシェル・モナハンが出演!
2013年に発生したボストンマラソン爆弾テロ事件の裏側を圧倒的な映像で再現した作品をご紹介します。
1.映画『パトリオット・デイ』作品情報
【公開】
2017年(アメリカ)
【原題】
Patriots Day
【監督】
ピーター・バーグ
【キャスト】
マーク・ウォールバーグ、ケビン・ベーコン、ジョン・グッドマン、J・K・シモンズ、ミシェル・モナハン、アレックス・ウルフ、セモ・メリキッゼ、ジェイク・ピッキング、ジミー・O・ヤン、メリッサ・ブノワ
【作品概要】
2013年のボストンマラソン爆弾テロ事件を、マーク・ウォールバーグとピーター・バーグ監督コンビで映画化。捜査関係者、犯人、被害者の市民など事件に関わった多くの人々の動きを丹念に追い、102時間で犯人逮捕に至った顛末を描いた社会派アクション映画。
2.映画『パトリオット・デイ』あらすじとネタバレ
(C)2017 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
2013年4月14日夜。マサチューセッツ州ボストン。
「容疑者は?」「中です」。
トミー・サンダース巡査部長は先に到着していた警官二人に尋ねました。何度呼びかけても容疑者はドアを開けようとしません。
トミーは足でドアを蹴破りますが、その拍子に膝を痛めてしまいます。「お前たちが蹴破ればいいだろうが!」と怒鳴りながら、中に侵入すると、額が血まみれになった男が下着姿で部屋のすみで震えていました。
「何があったんだ?」と聞けば、「女房にスムージで殴られた」と応えます。スムージー?
そこにエド・ディヴィス警視総監がやってきました。「大事件か?」「たいしたことありません。スムージーで殴られたそうです」
よくよく話を聞けば、服をスムーズにする道具だと言い始めます。「アイロンだろう!」
トミーは捜査官を蹴ったことで定職処分をくらっていたのですが、復帰のための研修としてこの現場に呼ばれたのでした。マラソンまであと数時間前の出来事でした。
午後10時16分
ジェシカ・キンスキーはパトリック・ダウンズに今日あった出来事を報告していました。彼らはボストン・レッドソックスの「Sox」の発音がソークスかソックスかと議論しながら、仲睦まじく明日の予定を話し合っていました。
午後11時28分
マサチューセッツ工科大学(MIT)では学生がロボットの研究に勤しんでいました。警備担当の警官のショーン・コリアーは、部屋を覗いて、前から気になっていたアジア系の女子学生に声をかけ、ロックのコンサートに行く約束を取り付けました。
午前0時55分。
トミーは帰宅し、音をたてて妻のキャシーを起こしてしまいます。キャシーは「お願い、眠らせて」とまた眠りにはいっていきました。
2013年 4月15日。パトリオット・デイ(愛国者の日)
マラソンまで三時間。中国人留学生ダン・マンは最近購入したばかりの高級車の前に立ち、中国の両親とビデオチャットをしていました。
タメルラン・ツァルナエフと弟のジョハルはイスラム教徒のような人物が映っている映像をパソコンで熱心に眺めていました。タメルランの妻は幼い娘の世話に追われているようでした。
マサチューセッツ州中央部に位置するウオータータウンでは、警官のジェフ・ピュジリーズ巡査部長が朝食のマフィンを買いに車で出かけていきました。
午前8時42分。ゴール地点。
制服に着替えたトミーが痛い足をひきずりながら警備の配置につきました。このあたりはもっとも人が多く集まる場所です。
同じ頃、タメルランとジョハルの兄弟は、バッグに圧力鍋を詰め込んでいました。弟は仲間を巻き込まないか心配しますが、兄は気にもしていないようで「行くぞ」とカバンを担ぎました。
第117回ボストンマラソンがスタート! 一斉にランナーが走り始めます。
午前10時17分
ショーン・コリアーの部屋に仲間が集まり、テレビゲームを行っていました。ショーンは、女の子と話をしてコンサートに誘うことができたことを皆に嬉しそうに報告します。
午前11時8分
イースト・ケンブリッジ。ダン・マンは食べ物の宅配アプリの売り込みを行っていました。
同じころ、ジェシカ・キンスキーとパトリック・ダウンズは外出し、マラソンを観に歩を進めていました。
タメルランとジョハルは車に乗って街を移動。ボストン警察を通過していきました。
三人のデッドヒートの末、今年の優勝者が決定しました。招待選手たちが次々にゴールしていきます。そのあとを市民ランナーたちが続きます。
キャシーは沿道からトミーを見つけて声をかけます。トミーから膝のサポーターを持って来てくれと連絡を受けたのです。サポーターを手渡し、夫を励ますと、来た道を引き返していきました。
その時、彼女は犯人とすれ違いますが、それが爆弾犯だとは知るよしもありません。
ジェシカとパトリックはゴール付近にやってきました。彼女たちのすぐ横にタメルランが立っていました。
彼は人混みにまぎれてカバンを置くとその場を去りました。置かれたカバンを不信に思う人は誰もいません。
以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『パトリオット・デイ』ネタバレ・結末の記載がございます。『パトリオット・デイ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
激しい爆発が起きました。人々がなぎ倒され、トミーは慌てて駆けつけました。
血まみれの歩道、多くの人が負傷し、大惨事となっていました。ジェシカとパトリックは共に足にひどい怪我を負い、動くことが出来ません。
トミーは医療班を呼べ!と叫び、「負傷者多数」と現場の模様を本部に伝えました。リングロードを封鎖して救急車が通れるようにしろ!と指示を出し、救護にあたりました。
時間をおかず、二度目の爆発が起きます。また大勢の人々がなぎ倒されてしまいます。
まだ走っているランナーもおり、現場は大混乱。トミーは、ランナーを止めて、周囲の安全確認をするよう大声で指示を出しました。
キャシーが無事なのを確認し、「俺が来いと行ったからお前を危ない目に合わせた」と涙ながらに抱きしめます。
医療班が到着し、次々と救急車で運ばれていく負傷者。マサチューセッツ総合病院では「三才の子どもを探してくれ!」と男性が叫んでいました。
爆発の47分後。FBI特別捜査官リック・デローリエ、マサチューセッツ州知事らが現地に到着。9歳の子どもを含む、三人が亡くなっていました。
リックは現場の映像を集めろと指示し、街の6ブロックを封鎖。遺体に残った破片は証拠だから動かすなと命じます。
そのため、幼い少年の遺体は白い布をかけられたまま、その場に置かれたままです。一人の警官が悲しげに遺体につきそい、何時間もそのままの状態が続きました。
リックは、慎重に判断した後、テロと断定。捜査はFBIが仕切ることとなりました。
巨大なブラック・ファルコン・ターミナルを捜査本部とし、証拠品を陳列し、市民にマラソン大会の写真や動画の提出を呼びかけました。一分で一万二千通のメールがよせられます。
ジェシカとパトリックは別々の病院に送られ、二人とも意識を失い、生死をさ迷っていました。懸命な治療が行われますが、二人とも片脚の切断を余儀なくされます。
「負傷者の中に犯人がいるかもしれない。身元確認を怠るな」というリックの指導の元、警官たちは病院を廻って、被害者ひとりひとりを確認するのでした。
トミーは一旦帰宅しますが、心配して集まっていた友人たちの質問攻めにあい、彼らをおいだしてしまいます。
身体的な疲れとともに、悲惨な現場、負傷した人たちの痛ましい姿に彼はすっかり心を乱され、妻に「俺はどうしたら…」と真情を吐露するのでした。
その頃、捜査本部ではセキュリティーカメラの解析が行われていました。一人の捜査官が手を挙げました。「犯人がいました!」。
一人だけ周りの人々と逆方向に動いた白い帽子の男が容疑者として浮上してきました。
風呂に入ろうとしていたトミーのところに本部から連絡が入りました。すぐに来てくれとのこと。あわててやってきたトミーにリックは「君は現場付近に詳しいと聞いた」と言い、犯人の動きをたどるのに協力してくれと命じました。
「2時44分に、彼はどこにいただろう?」トミーは店の並びを思い出し頭を巡らせます。「家具店の前?」セキュリティーカメラを解析。「いました!」
このような連携でついに犯人2名を特定。しかし、顔認証するまでにはいたりません。
その頃、タメルランとジョハルは自宅に戻っており、テレビを睨んでいました。「FBIは容疑者を特定しつつある」とニュース番組は報道していました。
FBIは犯人の写真を公開するのはまだ早いと主張しますが、地元警察は市民に犯人を探してもらうべきだと主張し、真っ向から対立します。
その時、テレビ局から電話が入り、犯人の顔写真を入手したと伝えてきました。あと数十分で公開するとのこと。リックは情報を流したやつは決して許さないぞ!と罵りながら、記者会見の準備を指示しました。
写真が公開されましたが、有力な手がかりは寄せられません。ですが、マサチューセッツ・ダートマス大学の一部学生は、それが同級生のジョハルであることに気がついていました。
一人の学生がジョハルに「ニュースを見たか?」「現場にいたのか?」とメール。「俺にメールするとまずいぞ」と返信が返ってきます。
「誰とメールしているんだ」と兄に問われ、ジョハルはなんでもないと応えました。兄は圧力釜を再びバッグに詰め込んでいました。「出かけるぞ!」彼らはさらなる犯行を企んでいました。
ダートマスの学生は大麻が切れたので、大麻の売人だったジョハルの部屋にやってくると、彼のバッグをあさり始めました。しかし、出てきたのは花火など爆弾を作るための道具と覚しきものばかりでした。
事件から78時間後。めぼしい情報は寄せられず。
ダンは女ともだちと一緒にダイナーで食事していました。
ショーンはパトカーに乗って、MIT構内で待機していました。その様子を車からじっと見つめるタメルランとジョハルの姿がありました。夜もふけてきました。
二人はパトカーに近づくと、ショーンを襲い、彼の拳銃を奪おうとします。しかし、ショーンは拳銃を離しません。タメルランはショーンを撃ち殺し、二人はその場を去りました。
銃声を聞きつけて飛び出てきた管理人が警察に通報、「MITで警官が撃たれた。犯人は二人の白人男性」。
事件から80時間後。タメルランとジョハルはメルセデスに乗ったダンに近づくと、銃をつきつけ、車に乗り込みました。タメルランとジョハルは爆弾犯を名乗り、荷物を詰め込むと、ダンから財布を奪い、運転席を陣取ってニューヨークに向かいます。
車はウオータータウンに差し掛かりました。爆発犯はダンからキャッシュカードの暗証番号を聞き出すと、ガソリンスタンドに停止。食べ物も買えと兄は弟に命令し、ニューヨークへの地図を盛んに検索し始めました。
そのすきを見て、ダンは車を脱出。必死の思いで走り、コンビニに逃げ込みます。タメルランは弟を連れ戻すと車を発進しました。明らかに自分のせいなのに、全てを弟のせいにして弟が黙るまで罵倒を続けるのでした。
店主が警察に通報すると本人に変わるよう促されます。ダンは自分の車の車種を述べると、GPS機能が付いていることと、記憶していた追跡番号を伝えました。
犯人はウオータータウンにいる!
警察はただちに現場へと向かいました。そして、ウオータータウン署にも連絡が入りました。
静かな住宅街でメルセデスが停まっているのを警官が発見します。しかし、激しい抵抗を受け、大銃撃戦となりました。
犯人たちは、車に積んでいた爆弾を取り出して、火をつけて投げつけました。何度も爆発が起こり、警官の中には死者も出ました。
現場に到着したジェフ・ピュジリーズ巡査部長は、犯人の背後に周り、抵抗するタメルランを射殺します。
しかしその間に、弟の方は逃走し、見失ってしまいます。トミーたちも到着し、弟の行方を追いますが、行方をくらましてしまいました。
翌日、市、全域が封鎖されました。市民は全員屋内待機、商業活動は中止との通告がなされました。
タメルランの妻がただちに逮捕され、厳しい尋問を受けましたが、イスラム教徒の女は夫に従わなければ地獄に落ちるのだといって、爆弾の情報などの証言を一切拒みます。
ジョハルの着信履歴が明らかになり、警察はダートマスの寮に突入。彼の部屋にいたのは、ジョハルが犯人とわかっていながら通告もせず、ゲームに興じていた学生たちでした。
ジョハルはいないという報告に肩を落とす捜査本部。警察は市民のもとを一軒、一軒周り、行方を追いますが、発見どころが、情報一つ浮かび上がりません。
事件から100時間後。煙草を吸うために少しくらい外に出てもいいだろうと、ある老夫婦の家で夫が庭に出てみると、庭になにやら見慣れぬものが落ちているのに気付きます。
庭の片隅に置いているボートに近づき、誰かが中にいると確信を持ちました。落ちていたのは覆いのローラでした。
トミーたちが到着。老夫婦に地下室に入るよう告げると、ボートへ近づきます。しかし、ボートからは激しい発砲があり、FBIの人質救出班が出動することになりました。
威嚇射撃が行われ、ついに容疑者が動きました。ジョハルの身柄が拘束されました! 犯人逮捕の報を受けた捜査本部では歓声が沸き起こり、トミーら警官たちは事件を無事解決できた打ち上げに繰り出しました。
ボストン・レッドソックスは、試合前、テロ解決を祝うセレモニーを行いました。デビッド・オルティーズ選手が代表としてたち、今日のユニフォームはいつものレッドソックスではなくボストンになっていることを紹介。「ここは我々の街だ。誰にも邪魔させない」と力強く宣言しました。
(その後、字幕で、ジョハルが死刑判決を受けたこと、タメルランの妻は事件に関与したのか、今もまだ捜査中であることなどが示され、事件に関わった実在の人々の現在の姿が映し出されエンディングとなります)
3.映画『パトリオット・デイ』の感想と評価
(C)2017 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
2013年の「ボストンマラソン」でのテロ事件といえば、日本でも大きく報道されましたし、ご記憶の方も多いでしょう。102時間で犯人逮捕ということで、さすがアメリカだな、と感心したものでしたが、映画を観て、こんなに大変だったのか、と驚きました。
予告を観た段階では、優秀な捜査人が非常にスムーズに頭を使って劇的な事件解決を導いた話なのだろうと勝手に想像していたのですが、思っていた以上に市民を含む多くの人が関与し、とりわけ、中国人留学生の決死の脱出がなければどうなっていたのだろう、と考えさせられました。
事件の顛末をピーター・バーグ監督は、マラソンが行われる前日から丹念に描いていきます。
警備にあたる警官、爆弾テロの被害者となる人、後に殺害される警官、犯人に拉致される中国人留学生、後に銃撃戦に加わる巡査部長、そして犯人。彼らの日常を綴り、無関係だった人たちの人生が次第に一本の線となって繋がっていきます。
実際のニュース映像や、監視カメラのアーカイブ映像を利用しつつ、テロによる爆破シーンは、これ、どうやって撮ったのだろう?!と瞠目するくらい、リアルで迫力ある映像を作り上げています。
このテロシーンが最大の見せ場かと思いきや、そのあとの中国人留学生が拉致されるシーンの緊張感、閑静な住宅地でのまるで戦争のような銃撃戦と見どころたっぷり! 手に汗握るサスペンス&アクション映画に仕上がっています。
ピーター・バーグ監督作品の常連俳優、マーク・ウォールバーグは複数の人間のキャラクターを合わせたオリジナルキャラクターとのこと。
エド・ディヴィス警視総監を演じるのはジョン・グッドマン。彼の名前がクレジットに刻まれている映画は、今、どれも間違いなく傑作揃いといってもいいのではないでしょうか。
『セッション』のスパルタコーチ役が強烈だったJ・Kシモンズが、まるで西部劇のガンマンのような活躍をするのも見どころの一つです。
4.まとめ
ピーター・バーグ監督の前作『バーニング・オーシャン』(16)は、2010年のメキシコ湾原油流出事故を題材にしていました。
まるでドキュメンタリーのように、事故の過程を丁寧に追い、実際の事故をいかにリアルに再現出来るかに挑戦した作品といえます。
事故責任の追求、告発といった主張の類や思想は極力排除され、シンプルにただとてつもなく迫力のある映像を作り上げることに意味を置いた作品と言ってもよいでしょう。
『パトリオット・デイ』もまた、事件を忠実に再現し、実際に観ている自分たちもその現場にいるかのような臨場感を作り上げています。
映画のポリシーはほぼ前作と同じでしょう。
しかし、本作は、そこからさらに ボストン魂とも呼ぶべき、市民の誇りと強さを浮かび上がらせていきます。
何度も空撮シーンがあり、ボストン市内の光景が俯瞰でとらえられます。早朝、夕暮れ、夜、と様々な彩り、趣を見せるボストンの風景。
本作も、前作同様、決して声高く作り手の感情を露わにするものではありませんが、ボストンの街への慈愛に満ちた視点は、そこに住む人々の大切な日々の営みを抱きしめているかのようです。
そういう点で、本作はより深みを持った豊穣な作品に仕上がっています。