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Entry 2019/08/05
Update

映画『パラダイスネクスト』ネタバレ解説。結末の選択とタイトルの意味を考察

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

映画『パラダイス・ネクスト』は2019年7月27日公開。

謎の多い男と、裏社会で生きてきた男。

2人の日本人の、台湾での逃避行を描いたノワール映画『パラダイス・ネクスト』。

「楽園」の存在を問いかける、本作の魅力をご紹介します。

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映画『パラダイス・ネクスト』の作品情報


(C)2019 JOINT PICTURES CO.,LTD. AND SHIMENSOKA CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED

【公開】
2019年(日本・台湾合作映画)

【監督・脚本】
半野喜弘

【プロデューサー】
小坂史子

【キャスト】
妻夫木聡、豊川悦司、ニッキー・シエ、カイザー・チュアン、マイケル・ホアン、大鷹明良

【作品概要】
全編台湾ロケで撮影された、妻夫木聡と豊川悦司ダブル主演によるノワール・サスペンス。

数多くのアジアを代表する映画監督の音楽を担当してきた、半野喜弘が監督と脚本を務め、何度も企画中止の危機を乗り越え完成させた渾身の作品です。

本作のテーマ曲は坂本龍一が担当しています。

映画『パラダイス・ネクスト』のあらすじとネタバレ


(C)2019 JOINT PICTURES CO.,LTD. AND SHIMENSOKA CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED
台湾で静かに暮らす、無口な男の島。

島は地元を仕切る裏社会の男、ガオにかくまわれながら、ひっそりと生きていました。

しかし、島の前に牧野という若者が現れます。

馴れ馴れしく軽いノリの牧野を警戒し、当初は無視していた島ですが、牧野の「あのパーティー会場にいた」という言葉が、島は気になります。

1年前、島はシンルーという女性の警護を担当していましたが、シンルーがパーティー会場で不審な死を遂げてしまいます。

シンルーを守れなかった過去は、島にとって簡単に振り払える事ではなく、台湾に来るキッカケを作った事件でもありました。

しばらく牧野の面倒を見ることにした島でしたが、島をガオに紹介したヤクザの加藤に、牧野を殺すよう指示を出されます。

島は牧野に暴行を加え、知っている事を聞き出そうとしますが、牧野は「あのパーティー会場にいただけ」と、真相を話しません。

迷った島はガオの提案で、牧野を連れて田園地帯の花蓮に身を隠す事にします。

武器は、ガオから受け取った拳銃のみ。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『パラダイス・ネクスト』ネタバレ・結末の記載がございます。『パラダイス・ネクスト』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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花蓮に向かう途中、島と牧野は、古びたバーに立ち寄ります。

そこで、店を手伝っている、日本語が話せる台湾人女性、シャオエンに出会います。

シャオエンが、死んだシンルーと瓜二つだった事から、島は明らかに戸惑った様子を見せます。

バーを後にし、ガオが用意してくれた隠れ家に到着した島と牧野。

ですが、そこには行く場所の無い家族が住み着いており、島と牧野は別の住処を探さなければならなくなりました。

シャオエンが働くバーの店員の提案で、島と牧野はシャオエンの家に住むことになります。

シャオエンの家は、1人で住むには大きすぎるぐらいの豪邸で、シャオエンは家族に問題があり、1人で住むしかない状況となっていました。

牧野はシャオエンと買い物に行くなど、親交を深めますが、島は対象的に遠くから見守っている様子でした。

共同生活を始めた事で、3人はそれぞれ、安らぎの時間を過ごすようになります。

しかし、牧野を狙う組織が雇った殺し屋346が静かに迫っており、加藤もガオも射殺されます。

ある日「楽園に行きたい」というシャオエンの希望で、3人は出かける事になりました。

しかし、346の魔の手はシャオエンにかかり、シャオエンは殺されてしまいます。

シャオエンの死を悲しむ牧野は、シンルーが不審な死を遂げたパーティー会場で、加藤の指示により、自分がシンルーに薬を飲ませた事を打ち明けます。

無言で牧野に暴行を加えた島は、牧野がいなくなった車内に現れた346に「何故、彼女まで殺した?」と問いかけ、車を下りて拳銃を発砲します。

燃える車を、静かに眺める島と牧野。

牧野は「楽園を目指す」と船に乗り海へ出ます。

島は、船上の牧野に無言で、何発も銃弾を撃ち続けました。

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映画『パラダイス・ネクスト』の感想と評価


(C)2019 JOINT PICTURES CO.,LTD. AND SHIMENSOKA CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED
『パラダイス・ネクスト』は台湾で静かな生活を送っていた男と、台湾へ逃げて来た男の逃避行を描いた作品です。

主要キャラクターとなる、2人の男のキャラクターや作品における役割が、はっきりと対照的である事が特徴となっています。

豊川悦司が演じる裏社会で生きてきた男、島は常に仏頂面の無口な男です。

そして、その島を頼って台湾に逃げてきた男、妻夫木聡が演じる牧野は、軽いノリでお喋りな性格。

ですが、牧野は「何故、島を頼ってきたのか?」「島が関わった事件の真相」など、本当に重要な事は何も語りません。

次第に観客は、牧野の明るさが不気味に感じてくる為、無口で仏頂面の島に感情移入するようになります。

そんな対象的な2人の男の逃避行は、シャオエンという女性に出会った事で新たな展開を迎えます。

シャオエンの住む、広大な屋敷に住むことになった2人ですが、積極的にシャオエンと交友し、親交を深める牧野と違い、島は相変わらず無口で、シャオエンとは必要以上に会話をしようとしません。

ですが、シャオエンがタバコを吸おうとした際に、島がタバコを取り上げて遠くに投げるなど、シャオエンの事を気遣っている部分も見せます。

シャオエンは、島が護衛できなかった女性、シンルーに似ており、島は戸惑いながら接していました。

また、牧野はシンルーの殺しに加担していた事が、ラストで明らかになります。

ここでも、1人の女性を巡る牧野と島の過去が、対照的である事が分かります。

牧野がシャオエンに優しく接していたのは、シンルーへの罪滅ぼしのように見えますし、シャオエンを陰ながら見守っていた島は、護衛できなかった過去を払拭しようとしている印象です。

牧野と島にとって、辛い過去であるシンルーに似た女性、シャオエンと出会ったのは楽園の入り口で、3人で過ごした時間は楽園での一時と言えます。

ただ、そんな楽園での時間は、346という死神のような男の出現で終わりを迎えます。

シャオエンを失い、牧野がシンルーの殺しに加担した事を知った島の絶望。

ラストに、島が牧野に撃った銃弾は決別の意味が込められているのではないでしょうか?

楽園での夢のような時間の後の、絶望と孤独を抱え込んだ島の姿から、『パラダイス・ネクスト』という本作のタイトルの深さを感じます。

まとめ


(C)2019 JOINT PICTURES CO.,LTD. AND SHIMENSOKA CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED

本作は、物語や人物の説明的な部分は語られていない点が多く、抽象的な空気を感じる作品となっています。

島や牧野、シャオエンが過ごす、ゆったりと流れる時間が作品の大半で描かれており、鑑賞時は正直「ここの場面、長いな」と感じました。

ですが、シャオエンが亡くなり、牧野の過去が明らかになった後半の展開で、ゆったりと流れていた3人の時間の大切さ、二度と戻らないという非常さが浮き彫りになり「楽園の存在と、その後」を感じる構成であると感じました。

本作は鑑賞した人によって、印象の変わる作品となっています。

「楽園での時間」を体感し「楽園の存在」の意味を、皆さんも考えてみてはいかがでしょうか?



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