台湾映画『目撃者 闇の中の瞳』は、2018年1月13日(土)より新宿シネマカリテほか、全国順次公開!
いよいよ台湾映画界の新星チェン・ウェイハオ監督の作品が日本上陸されます。
この戦慄の体感型サスペンス・スリラーは、9年前の死亡事故を発端に、当事者は7人。その事件の真相とは?
1.映画『目撃者 闇の中の瞳』の作品情報
【公開】
2018年(台湾映画)
【原題】
目撃者 (英語題:WHO KILLED COCK ROBIN)
【脚本・監督】
チェン・ウェイハオ
【キャスト】
カイザー・チュアン、ティファニー・シュー、アリス・クー、クリストファー・リー、メイソン・リー
【作品概要】
台湾のアカデミー賞「2017年第54回金馬奨」の主演男優賞、助演男優賞、視覚効果賞、編集賞、音響効果賞と5部門ノミネートの快挙を果たした犯罪スリラー。
ある日の事故をきっかけに、過去に偶然目撃した自動車の当て逃げ事故との接点を告げられ、その事件の闇に落ちていく男の行方を描いた作品。
監督はホラー映画『紅衣小女孩』で長編デビューを果たしたチェン・ウェイハオ監督です。
2.チェン・ウェイハオ監督のプロフィール
参考映像:台湾で記録的なヒットを飛ばした
長編デビュー作品『紅衣小女孩』予告編
チェン・ウェイハオ(CHENG WEI-HAO 程偉豪)監督は、1984年5月16日生まれ。
輔仁大学広告コミュニケーション学科にて修士号、国立台湾芸術大学映画学科にて修士号取得しています。
2008年に初監督した短編『You Are not Alone(原題。中国語題:搞什麼鬼)』が、北京電影学院の国際学生映画&ビデオフェスティバルにてアジア優秀学生作品賞、南方映画祭にて最優秀新人監督賞を受賞。
その後、第31回金穂賞のDVDカテゴリー最優秀賞、および第16回北京大学学生映画祭の最優秀短編賞にノミネートされています。
2009年の第2作短編映画『Real Sniper(原題。中国語題:狙撃手)』は、台北金馬映画祭グローバル・チャイニーズ・ビジョン部門に選出、さらにアジア太平洋映画祭や南方映画祭にて出品した後、2010年に台北映画祭で映画産業賞を受賞を果たします。
第3作目は疑似ドキュメンタリーの『The Death of a Security Guard(原題。中国語題:保全員之死)』。この作品は2015年に台北電影賞奨の最優秀短編賞を受賞。 さらに高雄国際映画祭の国際短編映画コンペティション台湾賞、金穂賞の優秀賞など、ほかにも数多くの映画賞も獲得しました。
2015年に劇場公開された長編映画デビュー作の『The Tag-Along(原題。中国語:紅衣小女孩)』は、台北金馬映画祭のクロージング作品に選ばれ、日本未公開ながらも、台湾での興行収入は8,500万台湾ドル(約3億1,000万円)にものぼり、ホラー映画の最高興行収入記録を塗り替えました。
その続編となる『The Tag-Along 2(紅衣小女孩 2)』も台湾で2017年に公開され、1作目を超える大ヒットになっています。
【フィルモグラフィー】
2008年『You Are not Alone(搞什麼鬼)』(短編)
2009年『Real Sniper( 狙撃手)』(短編)
2014年『The Death of a Security Guard(保全員之死)』(短編)
2015年『The Tag-Along(紅衣小女孩)』
2017年『目撃者 闇の中の瞳』
2017年『The Tag-Along 2(紅衣小女孩2)』
『目撃者 闇の中の瞳』の主役シャオチー役のカイザー・チュアン
台湾映画といえば青春ものが日本公開されることが多いですが、新星のように現れたチェン・ウェイハオ監督は、台湾映画界では珍しいサスペンスやホラー、またファンタジー的な要素を取り込みながら、興行的に成功を収めています。
もちろんポテンシャルはそれだけに留まらず、本作『目撃者 闇の中の瞳』をご覧いただければすぐにお分かりいただけますが、芸術的な要素もある映像作家です。
3.映画『目撃者 闇の中の瞳』のあらすじ
2007年。新聞社で実習生として働くワン・イーチー、通称シャオチー。
彼は激しい嵐の夜に、台湾郊外の新店での山道で車両同士の当て逃げ事件を目撃します。
被害者の車は無残にも潰れ、運転席の男性は命を落としており、助手席の女性も瀕死の状態でした。
シャオチーはとっさに現場から逃走車の写真を撮影し、大学院時代の恩師である上司のチウ編集局長に見せますが、ナンバープレートの数字が判読不可能であったために記事には成らず、また犯人が捕まることもありませんでした。
それから9年後…。
スクープを連発する敏腕記者となったシャオチーは、国会議員の不倫疑惑の現場を目撃した帰り道、1ヵ月前に中古で買ったばかりの愛車をぶつけてしまいます。
破損した車を馴染みの自動車修理工場のジーに見せると、その愛車は過去にも事故に遭っていると指摘されました。
そこでシャオチーは事件記者としてコネのある警察で、車両番号の照会を無理を押して頼んだところ、なんと以前の持ち主は9年前の当て逃げ事故の被害者でした。
時同じくして、順風満帆だったシャオチーのキャリアに危機が訪れてしまいます。
彼が不倫疑惑を報じた国会議員カップルが実は夫婦であり、名誉棄損で新聞社を訴えると言い出したのです。
解雇されたシャオチーは先輩記者マギーの協力を得て、独自に9年前の事故の真相を調べ始めます。
家族との縁も断ち切り世間から身を隠して暮らす被害者女性シュー・アイティン、彼女に付きまとう影、同じ日に起きていた富豪の娘の誘拐事件、そして逃走者の所有者として浮かび上がる意外な人物…。
関係者たちの事故に関する証言がことごとく食い違う中、シャオチーはある結論を導き出しますが…。
3.映画『目撃者 闇の中の瞳』の感想と評価
『目撃者 闇の中の瞳』のマギー役のティファニー・シュ
本作の演出を務めるチェン・ウェイハオ監督は、自身の短編第2作『Real Sniper(原題。中国語題:狙撃手)』を観た映画祭審査員から、次のように評価を受けました。
「どこから危険が来るのか、誰が次の標的になるのか誰にも分からないという現代都市の危うい空気を的確に描いている。オタクの視点からエリート警察官の視点へと見事に切り替わり、巧妙なエンディングで2人の主人公が結びつけられる。その冷静さと緻密さから、“チェン・ウェイハオが第2のエドワード・ヤンとなる可能性も感じられる”」
この絶賛と受け取れる“先の読めない展開”という評価は、何もこの作品のみのことではありません。
長編デビュー作品『紅衣小女孩』や本作『目撃者 闇の中の瞳』でも、それは同様です。
それこそがウェイハオ監督の得意とする冴えた演出といえる、サスペンスの手法とホラー的な要素なのです。
本作と類似する作品を近作で挙げるとするならば、是枝裕和監督の2017年作品『三度目の殺人』と似たストーリーテリングを見せています。
つまりは、1950年に公開された黒澤明監督の『羅生門』と同様であり、芥川龍之介の短編小説「藪の中」を想起させます。
しかし、本作『目撃者 闇の中の瞳』は、そのどれよりも現代社会としての問題を表出させたうえに、“ホラー映画のエグさ”を感じさせてくれます。
本作のタイトルにある“目撃者”とは、物語としては主人公の新聞記者シャオチーが見る目撃を指しています。
しかし映画鑑賞から言えば、観客であるあなたが“最大の目撃者”としての体感することになりますよ。
それはウェイハオ監督の特徴ともいえる“スタンダード(主流)ではないキワモノの真実”を、時空や視点を予測不能に展開させているからでしょう。
登場する当て逃げ犯、マスコミ、警察、政治家、修理工、被害者の中で一番罪深いのは誰なのか?
そしてラスト結末の瞬間まで、あなたの背中を逆撫でするはずです。
まとめ
本作の演出をするチェン・ウェイハオ監督の特徴を、“ラストまで先が読めない”、また“冴えたエグさ”のサスペンス手法やホラー的を評価をしました。
とはいえ、芸術的なセンスも持ち合わせ光っています。
例えば劇中の冒頭で、高速道路を見下ろすベランダの柵に鳴きながらコマドリが止まります。
これは一貫して登場する重要なキーワード。
そう!これはイギリス童謡として知られたマザーグースの「Who Killed Cock Robin」のメタファーなのです。
歌詞は長くなるので冒頭2節のみ、お教えすると…。
Who killed Cock Robin? 誰が殺した 駒鳥の雄を
I, said the Sparrow, それは私よ スズメがそう言った
with my bow and arrow, 私の弓で 私の矢羽で
I killed Cock Robin. 私が殺した 駒鳥の雄を
Who saw him die? 誰が見つけた 死んだのを見つけた
I, said the Fly, それは私よ ハエがそう言った
with my little eye, 私の眼で 小さな眼で
I saw him die. 私が見つけた その死骸見つけた
コワイですね…。単なるキワモノとは侮れないチェン・ウェイハオ監督の『目撃者 闇の中の瞳』は、2018年1月13日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開!
ぜひ、お見逃しなく!