映画『ナイブズ・アウト/ 名探偵と刃の館の秘密』は、犯人捜しの謎解きを楽しむミステリー作品。
資産家が死体で発見され、警察は遺産相続人である家族を事情聴取しますが、同行した名探偵は誰もが嘘をついていることに気が付きます。
主人公を務めるダニエル・クレイグの他に、クリス・エヴァンス、ジェイミー・リー・カーティス、ドン・ジョンソン、トニー・コレット、マイケル・シャノン、そしてクリストファー・プラマー等主演級の俳優が結集。
CONTENTS
映画『ナイブズ・アウト/ 名探偵と刃の館の秘密』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Knives Out
【監督】
ライアン・ジョンソン
【キャスト】
ダニエル・クレイグ、クリス・エヴァンス、アナ・デ・アルマス、ジェイミー・リー・カーティス、ドン・ジョンソン、トニー・コレット、マイケル・シャノン、ラキース・スタンフィールド、キャサリン・ラングフォールド、クリストファー・プラマー
【作品概要】
監督を務めるのは『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)や『ルーパー』のライアン・ジョンソンで、本作の脚本も執筆。10年前に自身が思いついたアイデアを基に練り上げたオリジナル作品です。
ジョンソンは、アガサ・クリスティの犯人捜しで物語を始めつつもそれだけに終始するのではなく、ヒッチコック調のスリラーでストーリーを展開する構想にしたかったと説明。
映画『ナイブズ・アウト/ 名探偵と刃の館の秘密』のあらすじネタバレ
著名なミステリー作家ハーラン・スロンビーが朝食を持って来た家政婦によって死体で発見されます。
エリオット警部補は事情聴取の為スロンビー家の屋敷を訪問。公には警察とは関係が無いとしながらも、凄腕探偵のブノワ・ブランも同席。
事件の前夜85才の誕生日を迎えたハーランを囲み、家族やハーランの看護師・マルタ等親しい人が集まりお祝いをしていました。
ハーランの長女リンダと夫・リチャードが先ず警部補の聴取に対応。
リチャードは、ハーランの長男・ウォルターが誕生日パーティで父親と口論していたと話します。
ハーランは自分の作品を脚色されるのを嫌っていましたが、父親の出版を担っていたウォルターは、ネットフリックスで映画化すれば大きな利益になると主張。
しかし、ハーランは、長年作家を目指していたウォルターの邪魔をしてしまったと言う表現で、やんわり解雇を伝えていました。
ウォルターはそのことを隠し、孫のランサムとハーランが口喧嘩をしていたと言います。
更にウォルターは、仕事もしないランサムをハーランが金銭援助しており、パーティの晩2人きりで何か揉めていたと続けます。
リンダは、夫がパーティのケータリング事業者の手伝いをする為、早めに屋敷へ来ていたと話しますが、事業者はリチャードが手を貸さなかったと証言し、代わりにハーランが誰かと口論するのを聞いたことを警察に報告。
「お前が言わないなら、私から伝える」そうハーランが怒鳴った声を事業者が耳にしていたとブランが口にすると、リチャードの顔が強張ります。
その日、ハーランは、リチャードの浮気を撮った写真を見せながら、リンダに白状しないなら、翌日自分から封筒に入れた証拠を娘に渡すとリチャードに最後通牒を突きつけたのでした。
しかし、リチャードは、「あぁそのことですね~」と作り笑いで誤魔化しながら、リンダが長年反対していたものの、ハーランは自分の母親を老人ホームへ入所させることを決め、リンダに直ぐ話すよう説得されたと嘘をつきます。
次に事情聴取を受けたのは、リチャードと同じように早めに屋敷へ訪れたジョニ・スロンビー。
ハーランの息子と結婚しスロンビー家に嫁いできたジョニは、夫の死後コスメの会社を運営。
ハーランは、孫・メグの学費を毎年支払っていました。学費が未払いになっていることを知ったジョニは、ハーランに事情を尋ねる為早めに屋敷を訪問。
ジョニが長年学費を二重に受け取っていたことを突き止めていたハーランは、これが最後の支払いだと告げてジョニに小切手を渡しました。
ジョニは、ブランやエリオットにそのことは伏せて、行き違いがあり話し合いの為に早く来ただけだと返答。
事情聴取を終えたエリオットは、明らかな自殺なのでこれ以上捜査の必要はないとの見解を示しますが、ブランは、喉を切って自殺するはずがないと疑問を呈します。
ブランは、リチャードの浮気とジョニの使い込みという疑念を、嘘がつけない体質のマルタにぶつけて彼女の反応から確信します。ウォルターも自分に嘘をついていると当たりを点けますが、どれも証拠がありません。
なぜこの事件に興味を持ったのかエリオットに訊かれたブランは、前日自分が住むアパートの玄関扉の前に現金の入った封筒とハーランの自殺を伝える新聞記事が入っていたと説明。
自殺を疑う何者かの行為であり、雇い主不明のまま事件の真相を究明するつもりだと話します。
ブランは、ハーランの死亡時、家族がそれぞれ何をしていたのかエリオットに質問。
誕生日パーティは夜11時半に散会。ハーランのプライベート・ナースのマルタは薬を投与する時間なので、ハーランを自室へ連れて行きます。
上階で物音を聞いたジョニは、屋根裏を書斎にしているハーランを訪問。その際、階段のきしむ音で就寝中のリンダも目覚めます。
毎晩囲碁を打っていたハーランは、囲碁盤を落としたとジョニに説明。ジョニは、床に散らばる碁石に視線を落とし、マルタがハーランと一緒に居るのを見て辞去。
10分後、また階段がきしむ音でリンダは目覚めます。帰宅しようとマルタがハーランの書斎から階段を下りた為で、玄関の外で葉巻を吸っていたウォルターの前を通り過ぎます。
時計を見たウォルターは、その時間が夜中の12時だったと記憶していました。更に、15分後小腹の空いたハーランが階下へ降りた時、リンダは再び目を覚まします。家族全員その後就寝。
その後、犬が吠えた声で目を覚ましたメグは、その時間が3時だったと覚えていました。検死官はこれらの証言から死亡時間は夜中12時15分から午前2時と推定。
ブランは、帰宅する12時までハーランと何をしていたのかマルタを事情聴取します。
碁の相手をしていたマルタですが、負けそうになったハーランは、地震だとふざけて囲碁盤をひっくり返して対戦終了。
いつもの様に薬を注射するマルタに、ハーランは、マルタの助言通り、ウォルター、ジョニ、そしてランサムの資金援助を中止し自立を促したと話します。
しかし、囲碁盤と一緒に薬瓶も落ちてしまい、薬を間違えたマルタは、モルヒネを大量に注射してしまったことに気が付きます。
ハーランは、自分の小説でそれを殺害方法に利用すると言ってマルタを咎めませんでした。
10分以内にモルヒネの効果を低減させる拮抗薬を注射しなければ、ハーランが命を落とすとマルタはパニック。
救急車を呼ぼうと走り出したマルタをハーランが止めようとして、マルタは転倒。
もう間に合わないと言ったハーランは、自分の母親のことを考えるようマルタを説得して落ち着かせようとします。
そこへ、階下で音を聞きつけたジョニが様子を見に部屋を訪れます。ハーランは、囲碁盤を落としたと説明。
ジョニを追い払ったハーランは、マルタの母親がアメリカに不法滞在している為、警察の捜査が入ればそのことが表沙汰になり国外追放処分を受けて家族がばらばらになってしまうと心配したのでした。
自分の言う通りことを運ぶよう、ハーランはマルタに約束させます。
敢えてきしむ音が大きくなるように階段を下り、玄関の外で葉巻を吸っているウォルターが時計の時間を確かめるよう、もう夜中だと言いながら通り過ぎて車で屋敷を辞去。
監視カメラから外れた所で車を止めて屋敷に戻り外付けの階段で窓から侵入し、ハーランのローブを着てウォルターが空かし窓を通して見えるように歩いた後ローブを戻してから帰宅。
この一連の行動により、マルタが帰宅した後にハーランの姿を目撃するウォルターの証言がマルタを容疑者リストから外すことになるとハーランは説明。
嘘をつくと吐いてしまう体質のマルタは無理だと拒みますが、ハーランは、真実の断面を切れ切れに話せば大丈夫だとマルタを励まします。
書斎を押し出されたマルタですが、やはり出来ないと扉を開けます。手にナイフを握りソファに体を横たえていたハーランは、自分の為にやって欲しいと言葉を残し、マルタの目の前で自ら喉を切り裂いたのでした。
映画『ナイブズ・アウト/ 名探偵と刃の館の秘密』の感想と評価
本作は、誕生日を迎えたばかりの富豪が翌日に死亡し、事件の捜査を始めた名探偵が遺産相続を巡る家族の愛憎劇を冷静な視線で眺めつつ真相と真犯人を突き止める物語です。
ミステリーの王道である謎解きを主軸に進行しますが、移民という現代のアメリカ社会を象徴する政治的な話題を盛り込み、且つコメディの要素もふんだんに含んでいます。
また、登場人物を多面的に描いており、良質な小説を読んだような映画と言えます。
本作の監督・脚本を務めたライアン・ジョンソンは、70年代の『オリエント急行殺人事件』(1975)や『ナイル殺人事件』(1978)を例に挙げ、出演した有名俳優陣の中で誰が犯人なのか推理する楽しみは外せない所だったと述べ、今回の豪華キャストにした理由を説明。
映画『キャプテン・アメリカ』で長くヒーローを演じて来た超イケメン俳優クリス・エヴァンスが最高にイヤな奴ランサム役で登場。
本作の脚本を読んだエヴァンスは出演を希望し、オフ・ブロードウェイ『Lobby Hero』(2001)で悪役を演じたエヴァンスを見ていたジョンソンは、彼をキャストしたとコメント。
注目は、主人公の探偵ブノワ・ブランを演じたダニエル・クレイグのキャラクター。
椅子に腰掛けて足を組む様子やコインを指で弾くシーンは、ジェームズ・ボンドを思わせる格好良さですが、アメリカ南部訛りで事件をドーナツに例えて熱く自分の推理を説明しようとする場面は意味不明すぎて逆に笑いを誘います。
レストランのウェイターとして働き長い下積み時代を過ごしたクレイグは、『007 カジノ・ロワイヤル』(2006)で一躍名声を得たものの、興味を持った監督へ直に連絡を取って次作の出演を交渉する等積極的な営業も厭わない俳優。
粗暴ながら正義感の強い売れない小説家を演じた『マイ・サンシャイン』(2018)など幅広い役柄をこなせる俳優であり、ジョンソンは、またタッグを組みたいとクレイグを絶賛しています。
スロンビー家の面々に扮する豪華なアンサンブルキャストが遺産を巡って言い争いながら自分勝手に振舞う場面で見せる個々の演技力は本作の特筆すべき点で、良質の脚本も加わり楽しいミステリー映画として完成しています。
まとめ
大成功を収めていた小説家ハーラン・スロンビーが死亡。明らかな自殺と見る警察に対し、異議を唱えた名探偵ブノワ・ブランは独自の推理で捜査を始めます。
全員が怪しく思える序盤から事件当夜の様子を程無く明かす異例の展開を見せつつ、最後に用意されたどんでん返しは予測不能。
映画『ナイブズ・アウト/ 名探偵と刃の館の秘密』は、監督を務めたライアン・ジョンソンの脚本とオールスターキャストが伝統的な犯人捜しの謎解きミステリーを高次元のエンターテイメンへ到達させた映画です。