第17回「このミス」大賞受賞作の『怪物の木こり』が映画化決定!
2019年に「このミステリーがすごい! 」大賞を受賞した倉井眉介の『怪物の木こり』。
サイコパスの主人公が猟奇的な殺人鬼に狙われるサスペンス小説が、バイオレンスの巨匠と謳われている三池崇史監督によって映画化されます。
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』『土竜の唄 FINAL』(2021)や『ラプラスの魔女』(2018)など、多くの作品生み出した三池崇史監督が主役のサイコパスに抜擢したのは、『事故物件 恐い間取り』(2020)などの作品に出演している亀梨和也!
歌やドラマを始め、俳優としての活躍の幅も広くなっている亀梨和也がどんな冷酷非情なサイコパスになるのか、今から楽しみです。
映画『怪物の木こり』は2023年12月1日(金)公開予定。映画公開に先駆けて、原作小説をネタバレありでご紹介します。
小説『怪物の木こり』の主な登場人物
【二宮彰】
優秀だが冷酷なサイコパスの弁護士。「東間事件」の生存者。
【剣持武士】
「東間事件」の生存者。妻の殺害をする。
【杉谷九朗】
脳外科医。二宮の唯一の仲間。
【戸城嵐子】
捜査一課の刑事。
【荷見映美】
二宮の婚約者。
小説『怪物の木こり』のあらすじとネタバレ
敏腕弁護士の二宮彰は、弁護士業に勤しむ傍ら、自分の意見とあわない人間を冷酷に処分するサイコパスです。
ある日、裏仕事を終えた二宮は、マンションの地下駐車場で「怪物マスク」を被った男に襲撃されました。手斧で頭をかち割られそうになりましたが、寸前のところで人が来たために犯人は逃走しました。
頭部に損傷を受けつつも九死に一生を得た二宮は、必ず「怪物マスク」の男を探し出し復讐しようと決心します。
その頃世間では殺害後に頭部を損壊して脳を持ち去るという「脳泥棒」による猟奇的事件が連続して発生していました。
警察は捜査をすすめ、捜査一課の戸城嵐子たちは、日本の歴史上最低最悪と称される「東間事件」が関係していることを突き止めます。
「東間事件」とは、26年前に起った、日本の歴史上最低最悪と称される児童連続誘拐殺人事件です。犯人は脳神経医師だった東間翠で、彼女は誘拐した子どもたちに脳チップを埋め込むという人体実験を行っていました。
彼女の屋敷からは、手術に耐えることが出来なかった幼児15人の遺体と4人の生存者が発見されました。
東間は、脳にチップを埋め込むことでサイコパスの神経回路を持った子どもを生み出し、児童養護施設に送り込んで、大人になるまで観察するという恐ろしい計画を実行していたのです。
一方頭の傷で入院していた二宮は、退院してしばらくすると、自分のなかである変化が起きていることに気づきました。
これまで、人の命を奪うことに何の抵抗も感じなかったのを始め、周囲の人々のすることに関心がなかったのに、最近は虐待される子どもを見ては動揺したり、創りものの映画を観ては感動すら覚えるようになったのです。
二宮には、愛しているかどうかもわからず形だけの交際をしている荷見映美がいました。ある日、映美が映画のDVDをいっぱい持って見舞いに来ました。
映画など観る気は無かった二宮ですが、その中の1枚を手に取って驚きます。そのDVDのカバーに描かれていた怪物の姿が、自分を襲った犯人が被っていたマスクと同じだったからです。
そのDVDのタイトルは『怪物の木こり』。二宮はそのDVDをすぐに観て原作である絵本を求めました。
そんな二宮の変わりように驚く映美に対しても、温かい気持ちが芽生え始めているのを感じる二宮。ほんとに不思議です。
二宮のサイコパス仲間である脳神経外科医・杉谷九朗が彼の脳のCTを撮影したところ、性格の変化の原因は二宮の頭に埋め込まれた脳チップの故障であることが判明します。
実は二宮は「東間事件」の被害者であり、4人の生存者の一人でした。彼のサイコパスな思考は脳チップによって人工的に作られたものだったのです。
二宮が頭に損傷を受け、彼の脳チップが機能しなくなったことで、彼は本来持つべきはずだった‟人間の心”を取り戻しつつあります。
また、どうしても思い出せなかった彼の幼少期の記憶も、断片的に少しずつ蘇って来るようになりました。
その中でも、二宮が最も気になったのは、ある場所で見知らぬ少年が持っていた『怪物の木こり』という絵本でした。
小説『怪物の木こり』の感想と評価
本作の主人公二宮は、表向きは優秀な敏腕弁護士ですが、裏では平気で人を殺す殺人鬼です。
人との共存はおろか、誰かのために何かしたいとか、誰かを大切にしたい、または人を可哀想に思ったり、人に同調したりする優しい気持ちに欠けていました。
そんな気持ちがないから、平気で残酷な殺人もできます。そういう人物はサイコパスと呼ばれ、二宮もその類でした。
サイコパスの二宮が秘かに殺人を犯しているのと同じ頃、死体の脳が盗まれるという不可解な連続殺人事件が起こります。
全ては26年前に起った幼児誘拐事件が発端でした。誘拐されて頭に脳チップを埋められた子どもたちは成長し、人格を破壊されたサイコパスとして現在社会に生存しています。
直接的には大きな事件とならないものの、小さな犯罪や殺人を起こす者もいました。そんな時に、誘拐事件でサイコパスにされた生存者たちが次々と殺害されて脳を盗まれるという殺人事件がおこったのです。
人格を操作して心の痛みを感じないサイコパスにするなど、人間のすることではありません。いったいなぜこんなことがおこったのでしょうか。
幼児誘拐事件の犯人である医師の東間翠は、もともとは苦痛を伴う病気の子どもを救うために脳チップを埋め込むことにしたのですが、次第にそれがエスカレートします。
脳チップは埋める場所によって、人間の心の破戒部分は微妙に異なるようです。脳チップの影響でどんな大人に育つのかと、悪魔のような人体実験に発展していったのです。東間翠が逮捕されて事件は解決したと言われているのですが・・・。
事件の被害者である生存者が自分の頭の中に埋められたチップのことを知らずに成長し、社会になじめない非情な性格の人として生きていたのが哀れです。
彼らは自分のせいではないにしろ社会の中で怪物とされ、脳チップが壊れて人間の心を取り戻した剣持によって殺されます。
温かい人の心を知らない人間が幸せなのか、不幸なのか。
結果的に、タイトルの『怪物の木こり』という物語になぞらえた究極の選択を二宮は突きつけられました。
サイコパスに戻るか、このままでいるかと考えて、二宮が出した結論にほっと胸をなでおろします。
映画『怪物の木こり』の見どころ
映画『怪物の木こり』のテーマは、「連続猟奇殺人事件の次の標的が、犯人をも凌駕する冷血非情なサイコパスだったら……」というものです。
予告編では、悲鳴とともにサイコパスVS連続殺人鬼の壮絶な戦いが幕を開けます。
連続殺人鬼に狙われるサイコパス・二宮彰は、『事故物件 恐い間取り』(2020)でその存在感をアピールした亀梨和也。目的のためには手段を選ばず、殺人すらいとわない狂気のサイコパスを演じます。
三池監督は、撮影前の亀梨に「自分の感性の赴くままに自由に演じてほしい」と伝えたそうです。
監督の言葉に従って、自由に冷血鬼を演じた亀梨和也。ポスターには、亀梨演じる冷たく光る眼光の二宮が映っています。まさに、非情冷酷なサイコパスの顔でした。
三池監督が期待する「無垢で繊細な剥き出しの亀梨和也」が「感情の赴くままの殺人」を繰り返すさまに期待は高まります。
映画『怪物の木こり』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【原作】
倉井眉介:『怪物の木こり』(宝島社文庫刊)
【監督】
三池崇史
【脚本】
小岩井宏悦
【音楽】
遠藤浩二
【キャスト】
亀梨和也、菜々緒、吉岡里帆、柚希礼音、みのすけ、堀部圭亮、渋川清彦、染谷将太、中村獅童
まとめ
倉井眉介による第17回「このミス」大賞受賞作の『怪物の木こり』が、三池崇史監督×亀梨和也主演で映画化されます。
能にチップを入れることで、人間的な感情の欠落した恐ろしい怪物のサイコパスになるという人体実験が行われました。実験から生まれたサイコパスと猟奇的な殺人鬼の壮絶な殺し合いが描きだされます。
小説は、冷酷極まりない殺し合いの中で、誰かを愛する人の温かな心がいかに生きていく上で大切なのかと、切実に訴える作品でした。
映画ではどのような戦いが繰り広げられるのか。亀梨和也を主役にした映画『怪物の木こり』は、2023年12月1日(金)公開予定。今までみたことのない、‟恐い亀梨”が登場することでしょう。