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【ネタバレ】ヒンド・ラジャブの声|あらすじ感想と結末の評価考察。実話からガザの少女の音声を用いて戦争の悲惨さを描いた衝撃作

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

2024年1月29日、世界が傍観したガザの6歳の少女の叫びを圧倒的な緊迫感を共に描き出した衝撃作『ヒンド・ラジャブの声』

ヨルダン川西岸地区にある人道支援組織「赤新月社」のスタッフが受けた緊急電話。

その声の主はガザ地区にいる6歳の少女ヒンド・ラジャブでした。スタッフは手を尽くしてヒンドを救おうとしますが……。

2024年1月29日、SNSによって拡散された“ヒンドの声”を聞いたウテール・ベン・ハニア監督は、映画化を決意。

実際の音声を使って実際の出来事とフィクションを織り交ぜ、リアリティーを追求した映画を作り上げました。

第82回ヴェネチア映画祭では銀獅子賞を含む8冠を達成し、アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネート。

また、ブラッド・ピット、ホアキン・フェニックス、ルーニー・マーラなどの多くの映画人たちが監督の想いに賛同し、プロデューサーに名乗りを挙げました。

映画『ヒンド・ラジャブの声』の作品情報


(C)MIME FILMS — TANIT FILMS

【公開】
2026年(チュニジア・フランス合作映画)

【監督・脚本】
カウテール・ベン・ハニア

【制作】
ナディム・シェイクルーハ、ジェームズ・ウィルソン、オデッサ・レイ

【制作総指揮】
ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、ホアキン・フェニックス、ルーニー・マーラ、ジョナサン・グレイザー、アルフォンソ・キュアロン、エリザベス・ウッドワード、ジェマイマ・カーン、ジェラリン・ホワイト・ドレイファウス、モハナド・マラス、フランク・ギストラ、ファルハナ・ブーラ、アリ・ジャーファー、ハムザ・アリ、ベイディー・アリ、フランチェスコ・メルツィ・デリル、グレース・レイ

【キャスト】
サジャ・キラニ、モタズ・マルヒース、クララ・フーリ、アメル・レヘル

【作品概要】
監督を務めたのは、『皮膚を売った男』(2021)、『Four Daughters フォー・ドーターズ』(2025)のカウテール・ベン・ハニア。2024年1月29日、SNS等で拡散されたヒンドの声を知り、映画化を決意したと言います。

劇中の通話音声は実際の音声を用いて制作されました。第82回ヴェネチア映画祭では、銀獅子賞を含む8冠を達成し、アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートをされ、ブラッド・ピット、ホアキン・フェニックス、ルーニー・マーラなどの多くの映画人たちが、プロデューサーに名乗りを挙げました。

映画『ヒンド・ラジャブの声』のあらすじとネタバレ


(C)MIME FILMS — TANIT FILMS

2023年10月から始まったイスラエルのガザへの攻撃。以降、緊急連絡はヨルダン川西岸地区にある「赤新月社」で受けることに。

いつものように働いていたオマールが1本の電話を受けました。電話はガザ地区の制限エリアでした。

「撃たれている!」少女の悲痛な叫びが響き渡り、反応がなくなりました。声の主は亡くなったと思われます。

オマールの上司のラナは、オマールにカウンセリングを受ける必要があれば受けるように伝えます。

名前を聞く暇もなかったというオマールにラナは、子供のシルエットがコピーされた紙を渡します。名前が分かったら追悼しようと言います。

再び、ドイツにいる電話の主の親戚から、6歳の姪が一人でいると連絡を受け、オマールは電話をかけます。

電話に出た少女の名前は「ヒンド・ラジャブ」。おじとおばと4人のいとこと共に車で逃げていたというヒンドは、イスラエル軍の戦車に攻撃され、ヒンド以外は亡くなってしまったと言います。

最初にオマールの電話に出たのはヒンドのいとこのサラだったのです。オマールは、6歳の少女が遺体と共に一人でいる、今すぐ助けに行かなくてはと調整役のマフディに詰め寄りますが、マフディは自分の仕事をするように言います。

救助チームが向かうにも安全なルートを確保し、保健省などを通じてイスラエル軍に攻撃をしないよう通達する必要があるからです。

8分で迎えに行ける場所にいるのに、どうすることもできないもどかしさから、苛立ちを隠せないオマール。そんなオマールに代わってラナがヒンドと電話を繋ぎます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ヒンド・ラジャブの声』ネタバレ・結末の記載がございます。『ヒンド・ラジャブの声』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)MIME FILMS — TANIT FILMS

オマールは、マフディに代わってガザにいる救助隊に連絡したり、大臣との電話に割って入ったりしますが、許可はなかなかおりません。

マフディは亡くなった救助隊員の写真をさし、「これ以上隊員を失ったらこの仕事を辞めると決めた」と言い、許可が降りなければ救助隊員の出動はしないと言います。

「ひとりにしないで」

その間にも何度もヒンドはイスラエル軍の銃撃にさらされています。ヒンドの悲痛な叫びに対して何もできないことに、オマールやラナをはじめスタッフは胸が張り裂けそうな思いでいます。

家にいるというヒンドの母からも状況を尋ねる電話が鳴っています。

そんななかヒンドが負傷したのか、動揺したヒンドの声が聞こえ、ラナも動揺しながらも必死でヒンドをなだめ、状況を聞き出そうとします。

時間だけが過ぎていき、やっと許可が降りますが、ヒンドからの応答がありません。うなだれ諦めかけていましたが、ヒンドからの応答があり、再び調整をしようとすると、今度は調整できないと言われてしまいます。

他の方法を探して何とか調整し、やっと救助隊がヒンドの元に向かいます。ヒンドの電話に母親の電話を繋ぎ、母親がヒンドを励まします。

あと一歩というところで銃撃音が鳴り、救助隊の応答が途絶えます。誰もが言葉をなくし呆然とします。信じたくないことですが、救助隊員の2人はイスラエル軍の攻撃により亡くなったのです。

ヒンドからの応答もその後、途絶えました。ヒンドの消息は、イスラエル軍が撤退するまで分からない状態でした。

撤退後、銃撃されたレスキュー車と、数百弾の銃撃を受けた車からヒンドと親戚らの遺体が見つかったのでした。

映画『ヒンド・ラジャブの声』の感想と評価


(C)MIME FILMS — TANIT FILMS

2023年10月から続くイスラエルのガザへの攻撃。2025年10月に停戦が締結されてもなお、その攻撃は止まっていません。

本作は、2024年1月29日、ヨルダン川西岸地区にある「赤新月社」に届いた1本の緊急電話をもとに制作されました。

6歳の少女ヒンド・ラジャブは、親戚と共に車で避難していたところ、イスラエル軍によって攻撃され、ヒンド以外の親戚は亡くなってしまいました。

銃撃にさらされ、亡くなった人々に囲まれてたった一人のヒンド。その恐怖は私たちの想像を超えるものでしょう。

一方で、イスラエル軍は赤外線でヒンドが生きていることや、ヒンドや親戚たちが武装もしていない市民だということは分かっていたはずです。

なぜ無抵抗の彼らが殺されなければならなかったのか。

ヒンドの悲痛な叫びに対し、何もできず絶望し、憤る赤新月社のスタッフたち。その怒りは、イスラエルのガザへの攻撃に対するカウテール・ベン・ハニア監督の怒りであり、何もできない世界、そして自分自身の怒りでもあるでしょう。また、当然私たち観客にも向けられています。

世界も私たちも当たり前のように傍観し、日々多くの命が不当に奪われています。SNSやニュースで流れる凄惨な現実に、現代社会は麻痺し、流れていく出来事になってしまっている部分は否めません。

確かに、一人一人ができることは限られています。全てを救うこともできないでしょう。だからこそ、一つでも多くの命を救おうと私たちは足掻き続けるしかなく、理不尽な攻撃、凄惨な現状に声を上げ続けなければならないのです。

そんな監督の思いが映画になり、その思いに賛同した多くの映画人がプロデューサーに名を連ねました。

一方で、実際の音声を使うことの危険性も忘れてはいけません。本作を再現ドラマにすることも、ドキュメンタリーにすることもできたはずです。

しかし、監督は実際の声を用いて、赤新月社のスタッフは俳優が演じるという手法を用いました。緊迫感のあるドラマは私たちの胸に訴えかけてくるものですが、実際の声をサスペンスとして利用している側面は否めないのです。

そのような危うさに対して本作はきちんと向き合い、消費にならないドラマ作りを意識している印象を受けました。

一方で、どうしても実際の音声に沿ったドラマという制約を感じせざるを得ない作りになっていたとも言えます。

まとめ


(C)MIME FILMS — TANIT FILMS

2024年1月29日、世界が傍観したガザの6歳の少女の叫びを圧倒的な緊迫感を共に描き出した衝撃作『ヒンド・ラジャブの声』。

本作はベネチア映画祭で23分のスタンディングオベーションで迎えられたと言います。確かに、ヒンドの声を世界に届ける意義は感じられ、映画という形で現実に向き合った作品と言えますが、この映画に賞賛をおくるべきなのでしょうか。

今もなお多くの人が命を奪われ、住む土地や家族を失い、配給も行き届いていない、「天井のない監獄」と呼ばれるガザ地区。

ガザ地区に必要なのは、命の危険にさらされない自由、そして仕事や食事など満足な生活が送れることです。外野の人間から送られる賞賛ではないでしょう。

映画祭というある種、権威のある場所で上映されることで、多くの世界にこの映画を届けることができ、多くの映画人がプロデューサーとして名を連ねることで資金も得られ、映画を届けることに貢献するでしょう。

確かに、資金は映画を届けるために必要なものです。ガザの支援にも資金が必要です。一方で、そのような外野の権威たちによる資本主義的な側面はヒンドの叫びを利用したという印象を裏付けてしまうものかもしれません。

しかし、多くの切実な叫びを傍観してしまう現代社会だからこそ、本作はやはり作られるべき、届けられるべき映画といえるでしょう。


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