Netflix映画『バーン・アウト』
その身を外気に晒し、命を懸け、より速いスピードを求めるバイクレーサー。
今回は、そんな常に死と隣り合わせなスリル満点の世界に生きる男が闇社会に飲み込まれていく様子を描いた映画『バーン・アウト』(2018)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
映画『バーン・アウト』の作品情報
【原題】
Burn Out
【配信】
2018年(Netflix限定配信)
【監督】
ヤン・ゴズラン
【キャスト】
フランソワ・シヴィル、オリヴィエ・ラブルダン、マノン・アゼム、サミュエル・ジュイ、ナルシス・マメ
【作品概要】
フランスで様々な映画の監督を務めるヤン・ゴズランが製作したクライムサスペンス映画。
主演を務めたのは主演作『ウルフズ・コール』(2019)で『最強のふたり』(2012)オマール・シーと共演したことでも知られるフランソワ・シヴィル。
映画『バーン・アウト』のあらすじとネタバレ
倉庫で働きつつプロのバイクレーサーを目指すトニーは、あるレースでの運転を評価されマイクの率いるプロチームの選考を受けることになります。
1次選考で実力を見せ確かな手ごたえがあり、トニーは夢であるプロ契約も近づいていることを実感します。
ある日、離婚した元妻レイラの就職活動の補助のため息子を預かりに彼女の自宅を訪れたトニーは暴力を受けたレイラの姿を発見します。
レイラは次の仕事が決まるまでの間、マフィアのドラッグを保管する裏の仕事を請け負っていましたが、そのドラッグを全て交際相手に盗まれてしまい多額の借金を背負わされることになっていました。
バイクに没頭するあまりレイラを見捨てることになった自身にも責任があることを痛感するトニーはレイラの現状を打開しようと考え始めます。
幼馴染でありストリートギャングのリーダーであるムッサに地元を仕切るマフィアのミグエルとの会合を求めるトニーは、ムッサに忠告を受けながらもレイラにドラッグを預けていたミグエルの配下ヨルダンのバーへと向かいます。
バーの中でヨルダンと接触したトニーでしたが、レイラの借金の件について譲歩するつもりのないヨルダンはトニーの話しに聞く耳を持たず追い返されます。
しかし、ヨルダンのバーを出る際にバイクのレーサーであることがミグエルの目に留まり、夜にトニーは彼らのシマであるタトゥー屋に呼び出されます。
外の様子の見えないトラックに乗せられ知らない場所へと連れてこられたトニーは荷物を渡され、有料道路を金を払わずに突破し警察に捕まらずにタトゥー屋に行くようにと命令されます。
断ったらレイラの命が無いと脅されたトニーはハイウェイを疾走し、タトゥー屋へと到着。
今回のはテストであり、テストを達成したトニーはミグエルの手先として2ヶ月間麻薬の運び屋をすることでレイラの借金をチャラにすると言われます。
期間の長さに抗議するトニーでしたが、聞き入れられることはなくヨルダンに連絡用の携帯電話を渡され、毎週木曜日にドラッグを運ぶようにと厳命されます。
ドラッグの運び屋と倉庫での仕事、そしてプロレーサーの選別を両立することは難しく、徐々にトニーは全ての業務に遅刻するようになります。
レイラには借金は全て返済したと言うトニーでしたが睡眠不足は深刻になり、ミグエルから渡された目の覚めるドラッグを常飲し始めます。
倉庫作業で事故を起こし、プロレーサーの選別でもマイクに見放され始めたトニー。
ミグエルからの呼び出しを受けたトニーはミグエルの事務所へと行きます。
パリで発生する暴動によってドラッグの売上が減少しており、ミグエルは大きな仕事を計画していました。
アラブ人のファリードを手を組みトニーを配達人とした計画は実行に移されます。
夜、ヨルダンとの待合場所にムッサが現れ、トニーを巻き込んだヨルダンに対しムッサは一触即発の状況になりますが、トニーがムッサを抑え計画を進めます。
ファリードやミグエルとも合流しバイクと5万の大金を荷物として渡されたトニーは、バイクを走らせます。
しかし、一番の近道である橋が警官隊によって封鎖されていたことから、暴動の起きる街中を通らざるを得なくなります。
目印である赤街灯のそばに着いたトニーはショットガンを持った暴漢に襲われバイクを破壊されます。
明らかにトニーの荷物を狙っている男たちから逃げつつヨルダンに助けを求めたトニーは、間一髪のところでヨルダンに救われます。
ファリード側の裏切りによって最初からミグエルの金を狙った強奪計画だと考えるミグエルは激怒しますが、金を無事に守り抜いたトニーのことを信頼し正式に配達人になるようにと勧誘しますが、トニーは次で最後にしたいと言います。
翌日、トニーはプロレーサーの選別試験が行われますが、精神的・肉体的な負担は限界に達し事故を起こしてしまいます。
トニーの異常さに気づいたレイラはムッサから事実を聞き、もうミグエルの手下になることを辞めて欲しいと懇願。
トニーは次の配達で全てが清算されると言い、最後の配達に挑むことにします。
映画『バーン・アウト』の感想と評価
夢を掴みかけている男が闇社会と関わったことで転落していく様子を描いた映画『バーン・アウト』。
本作の見どころはスリル満点のバイクチェイスのシーンはもちろんですが、主人公トニーの繊細な心理描写にもあります。
トニーは別れた前妻のレイラに「バイク以外のことに興味がない」と言われるほどにバイクにのめり込み、夢でもあるプロのバイクレーサーになるため日々奮闘しています。
しかし、一方で自身のその性格が夫婦生活を破綻に追いやったことも理解しており、レイラや息子に対して負い目を感じてもいます。
「目の前のことをまず解決する」と言うトニーの性格が場当たり的な行動に走らせ、物語は独特の最後を迎えることになります。
燃え尽き症候群
本作のタイトルである「バーン・アウト」は日本では「燃え尽き症候群」とも呼ばれます。
過度なストレスを受け続けた人間がそのストレスから解放された時に感じることになる虚無感や脱力感。
「燃え尽き症候群」は誰にでもあり得ることながら、深い虚無感は依存症や自殺の起因にすらなると言われています。
本作のトニーは前妻のレイラを救うためにドラッグの運び屋として自身もドラッグを服用しながら、警察に追われたり暴漢に襲われたりと言うハプニングを乗り越え生き延びます。
さらにマフィアとの対立と抗争の中心人物ともなったトニーは、物語のラストに闇社会から解放され平和な日常を取り戻します。
しかし、エンディングは決してハッピーエンドではなく、運び屋をしている時の感覚を忘れることの出来ないトニーは夜な夜な犯罪行為に身を沈めていると言うビターな終わり方。
この終わり方はトニーの未来を決して幸せなものとして描いておらず、むしろ来るべき破滅を暗示しています。
善良な人間であっても一度犯罪行為に身を染めるとどうなってしまうのか、を深く描いたラストと言えます。
まとめ
バイクレースシーンの高揚感や警察とのチェイスの緊張感が、トニーとマフィアとの緊迫したやり取りをエンジンのふかしのように際立たせている本作。
2018年当時のフランスにおいて決して避けて通ることの出来ない暴動なども作品に落とし込んでおり、シングルマザーが犯罪に手を貸してしまうひっ迫した貧困問題も真正面から描いています。
スタントマンと逃がし屋の二重生活を描いた映画『ドライヴ』(2012)と似た物語でありながら、主人公の出自や性格に対称的な感覚を覚える映画『バーン・アウト』。
バイク好きやクライムサスペンス映画が好きな方にオススメしたい本作は、映像配信サービス「Netflix」で独占配信中です。