映画『ターミネーター ニュー・フェイト』のネタバレ解説。
未来から送り込まれて来た殺戮ロボットとの戦いを描く、「ターミネーター」シリーズの第6作目の映画『ターミネーター ニュー・フェイト』。
大ヒットした『ターミネーター2』の正当な続編に、シリーズ生みの親であるジェームズ・キャメロンが28年ぶりに参加。
シリーズではお馴染みのアーノルド・シュワルツェネッガーに加え、リンダ・ハミルトンも28年ぶりに復帰し展開される、新たな「ターミネーター」の世界を描いた、本作をご紹介します。
映画『ターミネーター ニュー・フェイト』の作品情報
【公開】
2019年公開(アメリカ映画)
【原題】
Terminator: Dark Fate
【監督】
ティム・ミラー
【製作】
ジェームズ・キャメロン、デビッド・エリソン
【脚本】
デビッド・ゴイヤー、ジャスティン・ローズ、ビリー・レイ
【キャスト】
リンダ・ハミルトン、アーノルド・シュワルツェネッガー、マッケンジー・デイビス、ナタリア・レイエス、ガブリエル・ルナ、ディエゴ・ボニータ、エドワード・ファーロング
【作品概要】
1984年に低予算で製作され、大ヒットした『ターミネーネーター』と、1991年に公開された『ターミネーネーター2』の正当な続編。
ジェームズ・キャメロンが製作に参加した他、監督は『デッドプール』のティム・ミラー。
主演のアーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトンに加え、2017年のSF大作『ブレードランナー2049』でアンドロイドの娼婦、マリエッティ役を演じたマッケンジー・デイビスや、人気TVシリーズ『エージェント・オブ・シールド』でゴースト・ライダー役を演じ、人気急上昇中のガブリエル・ルナが出演。
映画『ターミネーター ニュー・フェイト』あらすじとネタバレ
人類が滅亡を迎える「審判の日」を回避した2020年のメキシコ。
タイムマシンにより、女性戦士「グレイス」が送り込まれてきます。
グレイスは、騒ぎを聞いて駆け付けたメキシコの警察を瞬時に倒し、その場にいたカップルから服と車を奪い逃走します。
メキシコの工場に、弟のディエゴと勤務している女性ダニーは、父親と弟に朝食を作り工場へ出勤します。
ダニーが出勤した後、新型ターミネーター「REV-9」が時空を超えて現れます。
REV-9は、ダニーを探しているようでした。
ダニーとディエゴが勤務している工場に、2人の父親が訪ねてきます。
「ダニーに弁当を届けに来た」と言う父親を、ディエゴが怪しんでいると、ダニーを発見した父親がREV-9に姿を変えます。
明らかにダニー殺害を狙っているREV-9。
そこへ、工場に潜入していたグレイスが現れ、REV-9に応戦します。
全く状況が掴めないダニーですが、グレイスに促され、ディエゴと共に工場から車で逃げ出します。
ですが、REV-9も大型トラックに乗り込み追いかけてきた為、ハイウェイで激しいカーチェイスを繰り広げます。
REV-9は強力なパワーを持つ内骨格と、液体金属である外側を分離できる能力を持っており、戦いの中でディエゴは死亡しグレイスも負傷します。
REV-9に追い詰められ、絶体絶命の状況に陥るダニーとグレイスの前に、1台の車が現れます。
中から現れた女性は、REV-9に強力な武器を打ち込み、激しい爆発でREV-9を一時戦闘不能状態にします。
REV-9を完全に破壊する為、ダニーとグレイスに「待っていろ」と話すその女性は、「審判の日」以降、人類の指導者となるはずだった、ジョン・コナーの母親「サラ・コナー」でした。
映画『ターミネーター ニュー・フェイト』感想と評価
1984年に低予算で製作されながらも大ヒットしたSF作品『ターミネーター』。
アーノルド・シュワルツェネッガーの、出世作としても知れていますね。
その7年後の1991年に『ターミネーター』の15倍とも言われる製作費で、当時の最新技術を実験的に使用し、SF映画の新たな扉を開いた作品『ターミネーター2』。
「SF映画の金字塔」とも呼ばれる「ターミネーター」シリーズは、映画史に残る作品と言っても過言ではありません。
その後も、続編となる2003年の『ターミネーター3』、2009年の『ターミネーター4』、そして「ターミネーター」を新たな解釈で再構築した2015年の『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』とシリーズが制作され、テレビドラマでも『ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ』が放送されるなど、人気シリーズとなっていきました。
ですが、『ターミネーター』の生みの親であるジェームズ・キャメロンは、『ターミネーター』の権利を、当時の妻だったゲイル・アン・ハードに1ドルで売却したという話があり、『ターミネーター3』からはシリーズに関わっていませんでした。
ですが、米著作権法で2019年に『ターミネーター』の権利がジェームズ・キャメロンに戻った事で、『ターミネーター ニュー・フェイト』は、『ターミネーター2』の直結の続編として、ジェームズ・キャメロンが製作に携わり、『ターミネーター』『ターミネーター2』で主人公のサラ・コナーを演じた、リンダ・ハミルトンが復帰した事で話題になっている作品です。
『ターミネーター2』の直結の続編と聞くと、「審判の日」を回避したジョン・コナーのその後を描いた『ターミネーター3』や、人類とスカイネットの全面戦争が行われている、未来の世界を舞台にした『ターミネーター4』は無かった事になるのか?というと、そうではありません。
『ターミネーター ニュー・フェイト』は、これまでのシリーズで描かれてきた「スカイネットが未来を支配した世界」とは、別の時間軸の物語になっています。
その事を印象付ける要素として、これまで「ターミネーター」シリーズの最重要人物だった、未来の救世主ジョン・コナーは、映画上映開始40秒で、いなくなります。
これは、ジェームズ・キャメロンのアイデアで「シリーズで神格化されたジョン・コナーを退場させる事で、これまでのシリーズへの先入観を排除する」という目的があった事を語っています。
ジョン・コナーがいなくなった未来では「スカイネット」に代わり「リージョン」という機械軍団が、人類の破滅を目論んでおり、「リージョン」と未来で戦っている女戦士グレイスが送り込まれてくる事で始まる、新たな「ターミネーター」の物語となっています。
ですが作品の内容は、これまで同様、未来から送られて来た殺戮マシーンからの逃亡劇となっており、『ターミネーター4』や『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』と比較すると、原点回帰とも呼べる内容になっています。
作品前半で工場を舞台にした戦いを見せた後に、一転してハイウェイでのカーチェイスが展開される流れは、『ターミネーター』のクライマックスと、『ターミネーター2』の前半場面を彷彿とさせます。
本作の敵であるREV-9も『ターミネーター』の敵だった、T-800の骨格から『ターミネーター2』の敵である、T-1000型のような液体金属のコピーを生み出す、1作目と2作目の敵を融合させたような能力を持っており、合体と分離を繰り返す戦い方は、見ていて非常に面白いです。
シリーズ全作に登場している、アーノルド・シュワルツェネッガーもT-800役で登場。
28年ぶりのサラ・コナーを演じるリンダ・ハミルトンと共に、EV-9との激しい戦いを見せます。
このように、『ターミネーター ニュー・フェイト』は、1作目と2作目を受け継ぎながら、監督のティム・ミラーは新たな「ターミネーター」の世界を作り出しており、ジョン・コナー不在で「ターミネーター」の世界を描くというアイデアは、生みの親であるジェームズ・キャメロンが製作に関わったからこそ、生まれたアイデアと言えます。
ちなみに、本作に登場する強化人間、グレイスは『攻殻機動隊』の影響を受けている事を、監督のティム・ミラーは語っており、これも、これまでの「ターミネーター」の世界を破壊したからこそ、登場させる事ができたキャラクターです。
新たに生まれ変わった世界を見せる『ターミネーター ニュー・フェイト』。
その内容は殺戮マシーンがもたらす絶望に、人類の希望で対抗する「ターミネーター」シリーズならではの作品となっています。
まとめ
『ターミネーター ニュー・フェイト』で描かれているテーマは、人種差別への批判であり、現在のアメリカが抱えている問題でもあります。
メキシコから始まる本作の物語は、メキシコ国境の移民抑制を推し進める、トランプ政権への批判が込められています。
また、人間と機械、強化人間が、人類の希望を根絶やしにしようとする殺戮マシーンと戦う展開は、人種を超えて手を結び、真なる敵を見極めて戦う必要性を訴えており、作中でダニーが語る「私たちを争わせて滅ぼす事が、奴らの目的だ」というセリフにも、その想いは込められています。
「ターミネーター」シリーズには、強いメッセージが込められており、ただのSF作品では終わらない点が、人気シリーズとなった要素です。
『ターミネーター ニュー・フェイト』を楽しむ為には、最低限『ターミネーター』と『ターミネーター2』を鑑賞しておく必要がありますが、『ターミネーター』と『ターミネーター2』は本当に名作なので、まだ未鑑賞の映画ファンの方がいるならば、今すぐご覧になる事を強くおススメします。