惑星へ移住計画をするための冬眠ポットから到着をする90年も前に目覚めた男女。待ち受けていた真実と壮絶な運命を描いたスペース・スペクタクル・ロマン…。
『マグニフィセント・セブン』などで大人気のクリス・プラットと、オスカー女優ジェニファー・ローレンスを主演に迎えた『パッセンジャー』をご紹介します!
CONTENTS
映画『パッセンジャー』の作品情報
【公開】
2016年(アメリカ)
【原題】
Passengers
【監督】
モルテン・ティルドゥム
【キャスト】
クリス・プラット、ジェニファー・ローレンス、マイケル・シーン、ローレンス・フィッシュバーン、アンディ・ガルシア
【作品概要】
前作『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』が大好評を博したノルウェー出身のモルテン・ティルドゥム監督の通算5作目となる作品。
主演にクリス・プラット、ジェニファー・ローレンス、共演にはマイケル・シーン、ローレンス・フィッシュバーン、アンディ・ガルシアなど豪華キャスト陣が揃い踏み。
脚本・製作総指揮はジョン・スペイツ(『プロメテウス』)、撮影監督にロドリゴ・プリエト(『21グラム』、『バベル』)を迎えるなど最高のスタッフが集結している。
映画『パッセンジャー』のキャスト一覧
ジム・プレストン / クリス・プラット
今、最も勢いのあるハリウッド俳優と称されるクリス・プラットですが、キャリアの初期はコメディ映画への出演が多かったように思います。
2011年の『マネーボール』あたりからその流れに変化が起き始め、キャスリン・ビグロー監督の『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)やスパイク・ジョーンズ監督の『her/世界でひとつの彼女』(2013)などの話題作へ出演し、その地位を確立していきました。
最も大きな転機となったのは、ジェームズ・ガン監督作の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)、さらに翌年の『ジュラシック・ワールド』(2015)の超大作2本で立て続けに主演を飾ったことでしょう。
ギャンブラーのジョシュ役が光った『マグニフィセント・セブン』(2017)
これを機に爆発的な人気を誇るようになり、2016年には『荒野の七人』のリメイクである『マグニフィセント・セブン』で主要キャラクターとして出演しました。
2017年5月には『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の続編『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス』(2017年5月12日、日本公開予定)が公開予定と、その勢いは止まることを知りません。
そんなクリス・プラットが『パッセンジャー』で演じるのは、宇宙移民船アヴァロン号で人工冬眠中だったが、なぜか1人だけ目覚めてしまった男ジム・プレストン(職業:エンジニア)。
目的地への到着までの時間は90年もかかり、その間当然ながら孤独に過ごさなくてはならなくなったジムを待っているのは、ただただ死のみという状況でした。
そんな絶望的な状況下に陥ったジムの姿をクリス・プラットがどのように演じ、また新たに目覚めた女性オーロラ(ジェニファー・ローレンス)と出会った時にどういった反応を見せるのかに注目ですね!
オーロラ・レーン / ジェニファー・ローレンス
監督・脚本を務めたロリ・ペティの実体験を基にした壮絶な人間ドラマ映画『早熟のアイオワ』(2008)で映画デビューを飾ったジェニファー・ローレンス。(ちなみにまだ幼いクロエ・グレース・モレッツの可愛らしい姿もこの作品で観られます)
幼い兄弟の面倒を見るマリアーナ役を熱演!『あの日、欲望の大地で』(2008)
同年公開の『あの日、欲望の大地で』(ギジェルモ・アリアガ監督作)では、ヴェネツィア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を獲得するなど、若くして(撮影時17歳)その才能を高く評価されました。
さらに2010年の『ウィンターズ・ボーン』でも様々な賞レースを総なめにするなど(アカデミー賞ノミネート含む)、若手ナンバーワンの実力を誇る女優と言えますね。
どちらかというとこの時点まで貧乏で幸が薄いといった感じの役を演じて来たジェニファー・ローレンスですが、『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』(以降のシリーズ含む)に出演するなど、役者としての幅も広げることに。
夫を亡くして心の病んだ未亡人役で、米アカデミー主演女優賞獲得した作品
『世界にひとつのプレイバック』(2012)
2012年にはメガヒットを記録した『ハンガー・ゲーム』、さらにはデヴィッド・O・ラッセル監督の『世界にひとつのプレイバック』で主演を務め、見事アカデミー主演女優賞を受賞します。
その後もデヴィッド・O・ラッセル作品の『アメリカン・ハッスル』(2013)、『ジョイ』(2015)には欠かせない存在となったジェニファー・ローレンス。
今回『パッセンジャーズ』で演じるのは、ジムと同じくなぜか?冬眠ポットから目覚めてしまった女性オーロラ・レーン(職業:作家)です。
すでに目覚めてしまっていたジムと出会うことになる訳ですが、彼女がどうして目覚め、恋愛関係に発展して困難を乗り越えること出来るのか?!その辺りが注目ポイントでしょう!
アーサー / マイケル・シーン
イギリス人俳優マイケル・シーンは、舞台『アマデウス』でモーツァルトを演じてローレンス・オリヴィエ賞にノミネート(1999)されるなど、舞台俳優としてその名を知られる存在でした。
トニー・ブレア首相役を演じた!『クィーン』(2006)
その名声が映画界でも聞こえるようになったのは、スティーブン・フリアーズ監督の『クィーン』(2006)。
この作品で当時の英国首相トニー・ブレアを演じ、ロサンゼルス映画批評家協会賞を受賞、英国アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされるなど、高い評価を受けることに。
2008年には『フロスト×ニクソン』では再び実在の人物を演じ(人気司会者のデヴィッド・フロスト)、さらにその注目度が高まります。
他にも『アンダー・ワールド』シリーズや『トワイライト・サーガ』シリーズなどの人気作や、ウディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』にも出演するなど、SFから人間ドラマまで幅広く演じ分ける名バイプレイヤーとしてその地位を確かなものとしました。
『パッセンジャー』でのマイケル・シーンの役どころはアンドロイドのバーテンであるアーサー。人間味があるようでないという微妙なキャラクターですが、マイケル・シーンなら完璧に演じてくれることは間違いありません。
彼がジムの唯一の話し相手になるなど、物語の何らかの鍵を握っているのか?!その辺りに注目して見ていきたいところですね!
ガス / ローレンス・フィッシュバーン
そのいかついフェイスは一度見たら決して忘れらないのが、ローレンス・フィッシュバーン。
10代前半の頃から舞台に出演していたローレンス・フィッシュバーンがスクリーンの世界へと転身したのは、18歳の時にフランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』に出演したことがきっかけだったようですね。
その後様々な作品に顔を出し、『TINA ティナ』(1993)や『理由』(1995)、カルト映画『イベント・ホライズン』(1997)でその持ち味を如何なく発揮しますが、彼の最も大きな転機は1999年でしょう。
『マトリックス』(1999)のあのモーフィアスを演じた‼︎
そう、かの有名なウォシャウスキー兄弟(今は姉妹なんですが…その辺の事情は今は置いておきます)による『マトリックス』シリーズです。
この作品でローレンス・フィッシュバーンが演じたモーフィアスはあまりにも強烈なインパクトを世間に残し、代名詞的役柄となったことは言うまでもありません。
その後もクリント・イーストウッド監督の『ミスティック・リバー』(2003)や、『コンテイジョン』(2011)、『マン・オブ・スティール』(2013)など話題作でその存在感を見せつけていますね。
そんなローレンス・フィッシュバーンが今回演じるのは、宇宙移民船アヴァロン号の乗組員のチーフであるガス。
どうやら宇宙船の故障が悪化した時点で起こされるとのことですが、詳細がまだ明らかになっていないため、どの時点で登場するのかなどはまだ判明していません。
しかし、彼が出演すれば出て来た瞬間に画面を埋めつくような存在感を発揮してくれることは間違いありませんので、その出演シーンに要注目です!
ノリス船長 / アンディ・ガルシア
言わずと知れた名優のアンディ・ガルシアは、キャリアの初期からその力を見せつけることになりました。
ハル・アシュビー監督の『800万の死にざま』(1986)のエンジェル役で出演し、デビューから間もないにも関わらず、狂気が入り交じったような演技でその実力を見せつけました。
警察学校出身の新米警官ジョージ役で人気に!『アンタッチャブル』(1987)
続くブライアン・デ・パルマ監督の『アンタッチャブル』(1987)新米警官を熱演し、一躍注目を浴びることに。
そして極め付けは『ゴッド・ファーザー PART III』でのヴィンセント・マンシーニ役でしょう。この作品ではアカデミー助演男優賞にノミネートされ、その地位を完全に確立しました。
その後も『靴をなくした天使』(1992)や『絶対×絶命』(1998)、『オーシャンズ』シリーズなど、数々の話題作に出演し続けていていますね。
『パッセンジャー』でのアンディ・ガルシアの役どころは、アヴァロン号の船長ノリス。
ローレンス・フィッシュバーン同様にこちらも詳細が明らかになっていないので、彼が物語の鍵を握る存在なのかもしれませんので、どこに出てくるのか注目して見ていきましょう!
映画『パッセンジャー』の監督紹介
映画『パッセンジャー』の監督を務めるのはモルテン・ティルドゥムです。
モルテン・ティルドゥム監督作品1:『ヘッドハンター』(2011)
1967年生まれでノルウェー出身の映画監督モルテン・ティルドゥムは、元々テレビやコマーシャルの仕事をしていたのだそう。
そこから映画の世界に飛び込み、2003年にデビュー作『Buddy』を発表。この作品でノルウェー映画祭とワルシャワ映画祭で観客賞を受賞し、アマンダ賞(ノルウェー)の作品賞にも輝くなど、デビューからいきなりを高評価を獲得することになりました。
続く2作目の『堕天使』は私立探偵ヴァルグ・ヴェウムを主人公としたシリーズものの第2話目に当たるもので(日本ではWOWOWプレミアでテレビドラマシリーズとして放送された)、この作品ではアマンダ賞の監督賞にノミネートされたことからも、その評価の高さが窺われますね。
2011年にはノルウェー映画史上最高のヒット作となった『ヘッドハンター』は、英国アカデミー賞の外国映画賞の候補となるなど、本国ノルウェーに限らずモルテン・ティルドゥムの名を世に知らしめることに。
モルテン・ティルドゥム監督作品2:
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2011)
さらに彼の地位を確かなもとしたのは、数学者のアラン・チューリングをテーマにした『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014)でしょう。
ノルウェーを飛び出し、イギリス・アメリカ資本での制作となった『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』では主演にベネディクト・カンバーバッチ、共演にキーラ・ナイトレイらを迎えるなど、豪華キャストが集結。
第87回アカデミー賞では作品賞、監督賞(ティルドゥム)、主演男優賞(カンバーバッチ)、助演女優賞(キーラ・ナイトレイ)を含めた8部門で候補に上がり、グレアム・ムーアが見事に脚本賞に輝くなど、最高の評価を獲得しました。
こうしてその知名度は世界的なものとなり、本作『パッセンジャー』に至るという訳です。初めてのSF作品に挑むモルテン・ティルドゥムがどういった世界観を紡ぎ出すのか、世界中が注目しています!
最後に『パッセンジャー』の脚本と撮影監督について少しご紹介いたします。
本作の脚本を務めるのは、ジョン・スペイツ(製作総指揮も兼任)。エミール・ハーシュ主演の『ダーケストアワー 消滅』やリドリー・スコット監督の『プロメテウス』、最近では『ドクター・ストレンジ』(共同脚本)も担当するなど、SF作品で非常に定評がある脚本家ですね。
そして撮影を担当するのは、メキシコ出身のロドリゴ・プリエト。
ロドリゴ・プリエトと言えばアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ作品には欠かせない存在です。(『アモーレス・ペロス』から『BIUTIFUL ビューティフル』まで)
ロドリゴ・プリエトの撮影賞受賞作!
『ラスト・コーション』(第64回ヴェネツィア国際映画祭オゼッラ賞受賞)
他にもアン・リー監督の『ブロークバック・マウンテン』と『ラスト・コーション』(第64回ヴェネツィア国際映画祭オゼッラ賞受賞)、ベン・アフレック監督の『アルゴ』、マーティン・スコセッシの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』など、超話題作で撮影を担当している大物といえる存在。
SF経験はほぼないと思われますが、どの作品にも共通する圧倒的なまでの映像美を本作『パッセンジャー』でも存分に発揮してくれることは間違いないでしょう!
映画『パッセンジャー』のあらすじ
20XX年…
新たなる居住地を目指して、5000人の乗客と260人の乗組員を乗せた宇宙移民船アヴァロン号が地球を出発しました。
目的地の惑星“ホームステッド2”へ到着するまでに要する期間は120年間。
人々は人工冬眠カプセルに入り、目覚めの時を待っていました。
するとある時、自動航行中のアヴァロンに隕石がぶつかってしまいます。
その衝撃により、船に深刻な故障が発生。なぜかジム・プレストンただ一人が人工冬眠から目覚めてしまうことに。
地球から出発してすでに30年という年月が経過していましたが、目的地“ホームステッド2”到着まではおよそ90年も残されています。
なぜ自分だけがと戸惑うジムは、再び冬眠状態に入る方法を探るなど様々な方法を試みますが、どれも上手くいきませんでした。
船内を彷徨っていると、ようやく生身の人間であるバーテンを見つけますが、実はアンドロイドだと分かりうなだれるジム。
その後は一人の暮らしをしばらく謳歌するものの、次第に飽きが訪れ、精神的に弱り始めていくのでした。
そのまま1年の月日が流れたある日。船内の5000台の睡眠ポットの中から、美しい女性オーロラに好奇心を抱いたジムは、彼女の運命を変えて冬眠ポットを開けてしまいます。
孤独であったジムは彼女へ興味から禁断の行為を犯しまったのです。そうとは知らないオーロラは、ジムとの出会いに運命を感じて2人は熱い恋愛関係へと落ちていきます。
一方で罪悪感を感じながらも真実の言い出せないジム…。
やがて、2人はデートを重ねたある日、ジムは自作の婚約指輪を渡そうとしましたが、バーテンダーのアーサーの言葉によって、あまりにも残酷な事実を知ってしまうのです。
オーロラの冬眠ポットは故障で開いたのではなく、孤独に耐えかねたジムの強制的な行為で開けられたものでした。2人はこれまでの恋愛が嘘のように嫌悪な関係へとなってしまいます。
しかし、そんな折に5000人の冬眠ポットを乗せた惑星移住計画を旅するアヴァロン号の機械システムが異常を起こします。
果たしてジムとオーロラの2人の運命は一体どうなってしまうのでしょうか…?!
映画『パッセンジャー』感想と評価
この作品を観ながら、あなたはどのような映画と似ているな〜と、感じられたでしょうか?
沈みゆく豪華客船の男女の愛を描いた名作『タイタニック』(1997)でしょうか?
それとも火星に置き去りにされた孤独の宇宙飛行士の姿を描いた『オデッセイ』(2015)でしょうか?
何と言っても個人的には、主人公ジムが冬眠ポットで睡眠中のオーロラを強制的に蘇生させた行為に注目。
今回は『パッセンジャー』の“美しいオーロラの眠りを覚ました”シチュエーションに注目をして、大きく分けて2つのポイントを考察しましょう。
1つ目のポイントは2人の隠された設定をふまえつつ、2恋愛に落ちたきっかけ(目覚ます)についての解説。
2つ目のポイントはオーロラという女性の行動について、他の映画『眠れる森の美女』と対比させながら考えてみましょう。
ポイント1:ジムとオーロラに隠された設定と、「目覚ます」こととは?
あなたは『パッセンジャー』が「旧約聖書」のモチーフで語られたことを気づかれていましたでしょうか。
「アダムとイブ」(1526年のルーカス・クラナッハ作画)
物語の中心でジム・プレストンとオーロラ・レーンが2人きりで過ごす恋愛の仲にあった様子に、アダムとイヴを思い浮かべた方も多かったのではないでしょうか。
禁断の果実をはじめに食べた男女の違いはありましたが、2人だけの世界で何もかもが手に入るアヴァロン号は、まるで楽園(エデン)そのもの。
やがて、2人がエデンの園から追放されてしまう「旧約聖書」を知っていれば物語の終焉は想像し易いですよね。
つまり、今作でいえばアヴァロン号の船内に残された樹木の傍らには彼ら2人の姿はなく、新たなる人類の移住地の惑星にはたどり着くことができない存在と予測がつきます。
また、他に「旧約聖書」との類似点では、「ノアの箱舟」も見てとれます。
5000人を乗せた豪華客船アヴァロン号には、人間の他にも多くの動物や植物も冬眠ポットに保管されていました。
キリスト教文化圏の映画スタッフが制作を手掛けた作品ですから、自ずとそのような傾向が見られるのは当たり前のことなのでしょうね。
さて、注目のオーロラが「目を覚ます」ことについて深読みをしていきましょう。
孤独であったジムはオーロラの美貌とデータファイルにあったメッセージに好奇心を興味を持津ようになりました。
その恋に惹かれた感情を抑えることが出来ず、ジムはオーロラの運命に踏み込み彼女の人生を変えてしまいます。
あなたは映画を観ながらどのように感じましたか?
冬眠ポットを開けたジムの行動に嫌悪感?それともジムの恋する思いから生じた罪悪感を共有しましたか。
またはオーロラを通して、運命を変えられた被害者の気持ちに強い共感を覚えたかもしれませんね。
確かにジムの行動はオーロラの生きる人生を取り返しのつかないほど、大きく変えてしまいました。しかし、それは罪だけなのでしょうか。
少し視点を変えてみれば、恋愛や結婚という関係は、誰もがパートナーの人生に踏み込んでいき、変化を与えてしまうものではないでしょうか。
出会いとは理想的に“白馬の王子様がいつかやってくる”というような理想はあるとは思いますが、現実の幸せとはそれだけではないような気もします…。
今作の中でも、地球に住むオーロラの友人が彼女に宛てた映像メッセージにあったように、「理想より目の前の現実を受け入れる」といったアドバイス。
他人の人生に踏み込んでいく恋愛関係のきっかけという出会いの形は、どちらかが一方的に惚れてしまう(愛されてしまう)ことも少なくはありません。
その“出会い”に理想を求めて固執することは重要ではなく、愛を育んでいく経過の方が大切ということではないでしょうか。
まあ、それでもオーロラがジムに対して冬眠ポットから起こした行為を“殺人的な行為”と例えることもわからなくはないですが…。
昔から恋愛映画に登場する主人公たちは、基本的にジムと同じくストーカー的に片思いを抱いているという傾向があり、そこは物語(映画)として楽しむのも良いのかもしれません。
なぜなら、この作品の1番の見どころは、ジェニファー・ローレンスの魅力的存在感!
彼女に対して一方的に好意を抱くことは致し方ありませんよ、納得するしかないほどとてもチャーミングです!
そんな魅力的なオーロラ(ジェニファー・ローレンス)を目覚めさせたい!寝ている彼女を起こしたい!
例えば日常生活において、横で眠ている彼氏、彼女を眺めていてツマラナイ!起したい!というのと同じことかもしれませんね、(笑)
そのように冬眠ポットの眠りから覚ました点に注目をすると、『眠れる森の美女』を思い出したりはしませんか?
ジムはオーロラを起こした際にキスこそはしませんでしたが、美女であるオーロラを眠りから覚させたことは類似しています。
『眠れる森の美女』映画と女性であるオーロラ行動について
参考映画1:『眠れる森の美女』(1959)
はじめにご紹介するのは、原作はシャルル・ペローの同名の小説を映画化した、ディズニーの長編アニメーション映画『眠れる森の美女』です。
この物語は、ある国に待望の王女が誕生してオーロラと名付けられました。(『パッセンジャー』と同じ名前オーロラです!)
生まれたばかりの彼女に3人の妖精から贈り物が与えられ、1人目の妖精フローラからは美しさ、2人目の妖精フォーナからは歌の才能が贈られます。
しかし、そこに現れた魔女マレフィセントは自身が呼ばれないことに腹を立て、オーロラが16歳の誕生日の日没までに糸車で指を刺して亡くなってしまうという魔術をかけてしまうのです。
まだ贈り物を授けてなかった3人目の妖精メリーウェザーは、オーロラが亡くなるのではなく、眠るだけで、運命の相手からのキスにより目覚めるという魔法をかけましたが…。
次の作品は美女を起こしたのではなく、逆に眠らせたのですが、彼女の感覚にあるものを目覚めさせた点では同じと見ることも可能ではないでしょうか。
参考映画2:『スリーピング ビューティー/禁断の悦び』(2011)
この作品の原作は、川端康成のデカダンス文学の名作小説「眠れる美女」。国内外で3回映画化がされ、今作は2011年にはカンヌ映画祭コンペティション部門に出品され、ショッキングな内容で話題となりました。
この物語は、女子大生ルーシーは学費を稼ぐために、カフェ店員や人体実験、また企業事務など仕事に勤務していました。今よりも高い収入を求めた彼女は求人情報誌に掲載されたアルバイトに応募。
ルーシーが決めた応募先とは秘密クラブという一風変わった仕事でした。最初は下着姿で給仕のはずでしたが、要求がエスカレートすると睡眠薬を服用して、眠りにつくだけというのです…。
さらに、もう1本紹介する作品は、派手なアドベンチャーな眠り姫といきましょう!
参考映画3:『スリーピング・ビューティー 眠れる森の美女と呪われた城』(2014)
この作品はグリム童話の「眠れる森の美女」をモチーフにした作品ですが、光と闇の壮絶な戦いを描いたファンタジーアドベンチャー映画。
この物語は、オリベッタ王国の王女は生まれて間もなく魔女に呪いをかけられてしまいます。やがて、16歳の誕生日を迎えた彼女は魔女の魔術によって100年の眠りについてしまいます。
彼女を目覚めさせる唯一の手段は勇敢な王子のキス。その王子は仲間たちと共に恐ろしい魔物たちと戦っていく…。
このように『眠れる森の美女』をベースにした作品、また類似した作品を対比することで、その展開や見せ方の演出も色々あることに気が付かされます。
このことは『パッセンジャー』においても同じこと。単純に『眠れる森の美女』をモチーフにして描いてはいないことを示してみましたがいかがでしょうか。他の映画にも好奇心が湧きましたか?
さて、『パッセンジャー』の主人公ジムは、冬眠ポットに眠るオローラに目覚めさせはしましたが、自らキスをしては目覚めさせてはいませんでした。
この作品では、むしろ意識的に、積極性を持ってキスを求めていくのはオーロラの方として描かれていました、恋愛関係の優位性はオーロラが主導権をリードしていました。(搭乗者クラスの違いから、オーロラが食事をごちそうしますね)
キスといえば思わず笑ってしまう場面は、宇宙遊泳のランデブー後に宇宙服を着ていて思うようにキスの出来ない2人…。
食堂のテーブルに乗って女豹のようになってジムの肉体を求めるオーロラのキス…、など、彼女の方がむしろ強くジムに触れる(キス)ことを求めていました。
グリム童話の『眠れる森の美女』の描かれた時代とは異なり、今では女性が主導をとることにも現実味があり、また次の社会からも求められている姿なのではないでしょうか。
物語の終盤に勇敢なジムはアヴァロン号の絶体絶命な危機を救います。その直後に仮死状態で命を落とした彼を眠りを蘇生させて甦らせたのオーロラです。
むろん、キスしたのは言うまでもありません。今の時代は“眠れる森”にいるのは“男”の方なのかも知れません。
それを成功させたのも、ジェニファー・ローレンスの確かな演技の力の持つ説得があったからです。必見です!
まとめ
クリス・プラットとジェニファー・ローレンスという大注目の俳優同士の共演とあっては、否が応でも注目は増すばかりですね。
監督のモルテン・ティルドゥムも世界中から期待されている監督の1人ですので、彼が初めて手掛けるSF映画という世界観をどう表現しているのかという点でも期待が集まっています!
しかし、何と言ってもオスカー女優のジェニファー・ローレンスの演技力には脱帽です。彼女の白い肌が上気して真っ赤になるほど、“血で演技をしてる俳優”。
それだけでもこの映画は見るのことに値します。ジェニファー・ローレンスを堪能してください!
注目の劇場公開は2017年3月24日(金)より全国ロードショー!孤独な宇宙空間で紡がれる愛の物語をぜひ劇場でご覧ください!