ヒロイン・アリータの魅力に迫る!
木城ゆきとの伝説的コミック『銃夢』があのジェームス・キャメロンとロバート・ロドリゲスの手で完全映画化。
圧倒的なビジュアルイメージと強く美しいヒロイン・アリータにあなたも夢中になること間違いなしです!
映画『アリータ:バトルエンジェル』は2019年2月22日(金)よりロードショー。
CONTENTS
映画『アリータ:バトルエンジェル』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
ALITA:Battle Angel
【原作】
木城ゆきと『銃夢』
【監督】
ロバート・ロドリゲス
【脚本】
ジェームス・キャメロン
【キャスト】
ローサ・サラザール、クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリ、ジャッキー・アール・ヘイリー、キーアン・ジョンソン、エド・スクレイン
【音楽】
トム・ホーケンバーグ
【作品概要】
大人気SFコミック『銃夢』に惚れ込んだジェームス・キャメロンの脚本を、『シン・シティ』(2005)でもコミックの完全再現をしてみせたロバート・ロドリゲスが監督しました。
ヒロインのアリータに抜擢されたのは「メイズ・ランナー」シリーズやNetflix映画『バード・ボックス』(2018)でも注目された女優ローサ・サラザール。
父親的存在のイド役には二度のアカデミー賞に輝く名優クリストフ・ヴァルツ。
その他、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリ、ジャッキー・アール・ヘイリーなど実力派が集まりました。
映画『アリータ:バトル・エンジェル』のあらすじとネタバレ
未来世界、富裕層や支配者たちが暮らす技術の粋が集まった空中都市ザレムの下には、くず鉄と貧民と犯罪者に溢れたスラム街アイアンシティが広がっていました。
かつてはザレム以外にもたくさんの空中都市が存在しましたが、”没落戦争”が起きて他都市は壊滅。
アイアンシティでは機械を自分の体に組み込んでサイボーグ化している者が多く、そのテクノロジーを悪用した犯罪者も増えていました。
サイボーグ専門の医師・イドはある日、ザレムのゴミが落ちてくるクズ鉄山で、上半身だけになった少女のサイボーグを発見します。
彼は少女を自分のラボに連れ帰り、そこで彼女の体を修理し、五体満足なパーツを装備させました。
調べると彼女は300年前の型のサイボーグで、休眠状態になっていました。
目が覚めた少女は記憶を一切失っており、イドは彼女を引き取って育てることにします。
彼は少女を連れてアイアンシティの繁華街を歩きながら、様々なことを教えます。
ザレムのことすら記憶から消えており、空中に浮かぶ巨大都市を見て驚く少女。
イドは彼女に“アリータ”という名を付け、彼女も自分の本当の名前を思い出すまではその名を名乗ると言いました。
イドが店に入っている間、アリータは可愛らしい子犬を見つけます。
可愛がっているとそこにヒューゴと名乗る青年が現れ、話しかけてきます。
彼はイドと知り合いのようでアリータとも打ち解けました。
そこに“センチュリアン”と呼ばれる巨大な警備ロボットが現れ、子犬を踏みつけそうになりますが、アリータが機敏な動きで子犬を救い出します。
ユーゴは彼女の身のこなしと勇敢さに驚きますが、2人はどんどん仲良くなっていきました。
ある日アリータは家を出てユーゴに会いに行く途中で、額に赤いマークのある美女とぶつかります。
美女はイドのラボにやってきます。
彼女の名はチレン、かつてはイドの妻で2人はザレムで暮らしていました。
しかし2人の娘が病気にかかり、家族はザレムから追放。
娘を治療しながらサイボーグ用の医師として働いていたイドたちですが、恨みを買った患者にイドが襲われ、それに巻き込まれた娘が殺されてしまったんです。
チレンは娘の死が受け入れられず、イドの元を離れました。
亡くなった娘の名前は“アリータ”、イドは拾ったサイボーグに自分の娘を投影していたのです。
チレンは娘を生き返らせる方法があるはずだと再びザレムに戻ることを画策。
イドは無理だと諭しますが、彼女は聞かずに出て行ってしまいます。
アリータはヒューゴや仲間たちとアイアンシティの住人の最大の娯楽、“モーターボール”に夢中になり、広場に簡易的なモーターボールのコースを作って日々練習をしていました。
ある日、ヒューゴにとある雑居ビルの屋上へ連れて行ってもらったアリータ。
そこからはザレムとアイアンシティをつなぐパイプが間近に見え、輸送物が通る音がよく聞こえました。
「いつかザレムに行く」と夢を語るヒューゴ。
アリータはかつてザレムにいたはずなのに何も思い出せません。
それでも彼女はヒューゴの夢をサポートすると誓いました。
しかし、実はヒューゴは仲間たちと夜な夜なサイボーグを襲っては部品を奪って金を稼ぐ裏稼業をしていました。
その金を貢ぐ先はプロのモータボールの大会を仕切っているベクターという男。
彼は裏社会を牛耳っており、ザレムに人を送る権限を持っていました。
ベクターは目標金額を貢ぎ終わればヒューゴをザレムに送ると約束していたんです。
またチレンもいずれザレムに送ってもらうため、ベクターに仕えていました。
その頃、アイアンシティでは夜間に女性が殺され機械パーツを盗まれる事件が多発しており、イドはアリータに門限を守るよう厳しくいいます。
しかし、アリータはある夜、イドが手から血を流して家に帰ってきたのを目撃します。
別の夜に家を出て行ったイドをアリータはこっそりと追跡。
イドは武器を持って、ある女性を尾行していました。
そして彼は先回りして物陰に隠れ、女性に武器を振り下ろそうとしていたのです。
アリータはイドの武器を掴んで止めようとします。
ですが、イドが追っていたのは、女性に変装していた一連の事件の真犯人。
イドは賞金首を仕留めて金を稼ぐ“ハンターウォーリアー”の仕事もしていたのです。
尾行に気づいた犯人が襲いかかってきます。
イドはアリータを逃がそうとしますが、もう2組のサイボーグがやってきて挟み込まれてしまいました。
絶体絶命の中、アリータの脳内にかつての記憶がよぎります。
99番という呼び名で戦士として戦っていた時の記憶を。
彼女は覚醒し、武術で犯人たちを圧倒。
2人を仕留めますが、グリュシュカという巨大なサイボーグ男は逃げて行きます。
アリータの強さにイドは驚愕。
グリュシュカもベクターのもとに仕えており、逃げ帰ってアリータのことを報告します。
ベクターとチレンは、アリータはかつて存在した火星連邦共和国(URM)の兵士で、機甲術という武術の達人だと解明しました。
300年前の“没落戦争”でURMとザレムを含む多くの空中都市が衝突し、ザレム以外の都市は滅亡したのです。
そんなことを話しているうち、突然ベクターの目が青く光り、別の口調で話し出します。
アイアンシティの裏社会を支配している男“ノヴァ”。
彼がザレムから思念を送り、ベクターの体を借りて喋りだしたのです。
ノヴァはアリータを殺害し、彼女に使われているテクノロジーを持ってくるよう指示します。
チレンはこの計画が成功すればザレムに送ってやると約束をされました。
より強い武器が必要と考えたベクターはヒューゴたちに命令し、モーターボールで優勝した男の、伸縮自在な機械の爪を奪い取ります。
グリュシュカは爪を装備し、アリータのもとへ向かいます。
アリータもイドからURMや機甲術のことを教わり、自分のアイデンティティを探りたくなっていました。
彼女はヒューゴたちと一緒にURMの残骸があるという湖にいきます。
水中にURMの宇宙船があると聞き、躊躇なく湖に飛び込んで、船を見つけたアリータ。
その中には女性型の機械のボディがあり、彼女はそれを持ち帰りました。
イドの解析によると、そのボディは狂戦士(バーサーカー)と呼ばれる装備。
自分の体を付け替えて欲しいというアリータにイドは反対します。
アリータは諦めますが、今度はハンターキラーになりたいと言い出しました。
それも反対されましたが、アリータはこっそりとハンターキラーの協会に登録をしてしまいます。
その後ヒューゴと合流したアリータは、歴戦の賞金稼ぎが集まる酒場にやってきました。
そのうちのザパンという男がアリータに絡んできます。
彼は歴戦のハンターキラーで、URMの冶金技術で作られた切れ味抜群の“ダマスカス・ブレード”という刀を見せつけてきます。
お前にハンターなんて無理だというザパンの鼻にパンチを食らわせるアリータ。
ほかのハンター達も巻き込んだ大乱闘になろうとしたところに、イドがやってきて場を納めます。
そこで店の扉を破ってグリュシュカが入ってきます。
グリュシュカは凶暴化しており。目に付いたハンター数人を殺害。
目当ては自分だと気づいたアリータが前に出ようとした時、拾って以来ずっと可愛がっていた子犬が彼女の前に飛び出します。
次の瞬間、グリュシュカの鉤爪が子犬を切り裂きました。
怒りに震えるアリータは子犬の血を目の下に塗り、グリュシュカに立ち向かいます。
グリュシュカは鉤爪で店の床に大きな穴を開け、彼が得意とする地下世界へと飛び込んで行きました。
アリータは彼を追いかけて穴に飛び込み、イドとヒューゴもそれに続きます。
地下でグリュシュカと互角に戦うアリータでしたが、次々と繰り出される爪の攻撃を避けきれず、頭部と片手だけの状態にされてしまいます。
しかしアリータは片手だけで飛び上がり、グリュシュカの片目に、残った腕を叩き込んで重傷を負わせます。
そこにイドとヒューゴも駆けつけて攻撃し、グリュシュカは逃げて行きました。
イドはアリータの頭部とバーサーカーのボディをつなぎ合わせます。
アリータはより大人の体型になり、人差し指だけで逆立ちできるほどの身体能力を手に入れます。
イドは彼女に「体は狂戦士でもそれを生かすか殺すかは君次第だ」と諭しました。
無事に回復したアリータをヒューゴは抱きしめます。
自分の体が気にならないか聞く彼女にヒューゴは「君は今まであった誰よりも人間らしいよ」とキスをしました。
ヒューゴはアリータを自分の家に連れてきて、あと少しの金額でザレムに行けると話します。
金額を聞いたアリータはなんの躊躇もなく自分の胸から機械の心臓を取り出し「これを売ればかなりのお金になるはず」と言ってきました。
驚いたヒューゴでしたが、それは受け取れないと断ります。
アリータはモーターボールで優勝すれば賞金が手に入ると同時に自分もザレムに行ける権利が手に入ると考え、競技に挑戦することを決めます。
映画『アリータ:バトル・エンジェル』の感想と評価
キャメロンの長年の夢が現実に
1991年に連載が始まった木城ゆきとの『銃夢』は、フランスのバンド・デ・シネのような斬新なSFビジュアルとアクション描写、そして主人公アリータ(原作ではガリィとも呼ばれています)の魅力で絶大な人気を得ました。
この映画のプロデューサー兼脚本家のジェームス・キャメロンは1994年に後輩のギレルモ・デル・トロに勧められて原作を読みすぐに夢中になったといいます。
彼は本作の映画化を夢見るようになりました。
それもそのはず、『銃夢』は一切男に媚びない強く美しいヒロイン、圧倒的SFビジュアル、派手なアクションに細かいメカや武器の設定など彼が『ターミネーター』シリーズや『エイリアン2』でも描いてきた好みの要素が全て入っている、まるでキャメロンのために描かれたかのような漫画だったからです。
しかしキャメロンはハリウッドでも屈指の完璧主義者でとにかく制作に時間をかけるタイプの作家です。
『タイタニック』を1997年に大成功させた後に本作の脚本を執筆し始めたのですが、同時に『アバター』(2009)の制作も進行していたため、完成は延びに延びました。
キャメロンが『銃夢』を愛するがあまり、様々な要素を盛り込んで脚本が長くなりすぎたのも関係したようです。
『アバター』を記録的成功に導いた後も、その続編と本作の制作を同時に進めていた彼のもとに現れたのがロバート・ロドリゲス。
残りのキャリアを「アバター」シリーズに費やすことになるというキャメロンに彼は「『アリータ』はどうなるんですか?」と質問。
キャメロンは180ページもある脚本をロドリゲスに見せ「これを上手くリライトしてくれたら君に監督を任せるよ」と言いました。
ロドリゲスは脚本を2時間用にまとめ上げ監督に抜擢されたのですが、これが功を奏しました。
元々キャメロンが長年準備をしていたためセットはたった3ヶ月半で完成。
そしてその間に主人公アリータのオーディションをしたのですが、そこで彗星のごとく現れたのがローサ・サラザールでした。
ロドリゲスはオーディション中に彼女の演技を見て声が出なくなるほど感動したといいます。
すぐにオーディションを終了してサラザールがヒロインに抜擢されました。
彼女もオーディション前に脚本を読んで「これは私のための役だ」と運命のようなものを感じていたといいます。
またキャメロンはアリータのビジュアルを原作と同じくとても大きな目にしようと構想しており、ここ十数年で飛躍的に進歩したモーション・キャプチャーの技術によってそれも完璧に違和感なく再現できるようになりました。
普通の人間と同じ画面にいて、キスまでしても全く違和感が生じないレベルです。
彼女の目だけで心情表現がさらに豊かになり、感情移入もしやすくなっています。
そして何よりもロドリゲスはキャメロンとはタイプは違うながらも、『シン・シティ』(2005)を見ればわかるように、コミックをそのまま再現することに異常なこだわりを見せる監督でした。
キャメロンは原作の好きなディテールを脚本に盛り込んでいたのですが、それも見事に再現。
ハリウッドが日本漫画原作の映画を作ると覚える違和感は本作にはほとんどありません。
もちろん映画用に変えている部分もありますが、原作ファンの方が観ても「ああこれは間違いなく『銃夢』だ」と感動できるでしょう。
キャメロンの分身
キャメロンは本作を作り上げるまでに20数年を費やしましたが、結果として監督、主演女優、映像技術と全て完璧に条件がそろって映画を撮ることができた事を考えると運命的なものを感じます。
もしかするとキャメロンは原作を再現できる技術が出来るまで待っていたのかもしれません。
ここからは仮説ですが、原作と大きく違う点として父親的存在に当たるイドの年齢設定があります。
原作だと30半ばほどのイドですが、本作で彼を演じたクリストフ・ヴァルツは現在62歳。
もちろんヴァルツは高い演技力で素晴らしい仕事をしているのですが、イドもアクションをする場面があることなどを考えるとなぜ老人設定にしたのか少し不思議です。
おそらくこのイドのキャラクター設定は現在64歳のキャメロン本人が投影されているのではないでしょうか。
原作と出会った時のキャメロンには13歳の娘がおり、彼はイドとアリータの父娘の物語、ティーンエイジャーの成長譚という点に大きく着目したと語っています。
アリータの体を作るエンジニアであり父親でもあるイドは、映画作家であり父親のキャメロンの分身なのです。
イドにかつて死んだ娘がいてアリータにそれを投影するというのは映画オリジナルの設定です。
それもかつて自分で監督しようとした『銃夢』を諦め、ロドリゲスに全幅の信頼をおいて本作『アリータ:バトルエンジェル』を見守るキャメロンの姿に重なります。
そう考えるとアリータを教え導くイドがキャメロンとロドリゲスの師弟関係にも見えて感動的です。
まとめ
木城ゆきととジェームス・キャメロンが構想した重厚なSF世界を、エンタメの名手ロバート・ロドリゲスが監督した本作。
圧倒的スケールを見せながらも120分でさくっと観られる快作です。
ラストは少年漫画的にこれからの戦いを予告するようなケレンに満ち溢れており、続編が待ちきれません。
また本作を見る前でも後でもいいので原作『銃夢』を読むことをおすすめします。
「こんなところまで再現したのか!」と驚くくらいの原作愛に満ち溢れたディテールに嬉しくなること間違いなしです。