第25回レインダンス映画祭作品賞、脚本賞ノミネートされた、新鋭の瀬川浩志監督、牛尾千聖主演の映画『たまゆらのマリ子』。
現代人の赤裸々な実態をスリリングに描いた衝撃の人間ドラマです。
映画『たまゆらのマリ子』は12月1日(土)より池袋シネマ・ロサで劇場公開決定!
CONTENTS
映画『たまゆらのマリ子』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【監督・脚本・編集】
瀬川浩志
【キャスト】
牛尾千聖、山科圭太、三浦英、後藤ひかり、加藤智子、福原舞弓、根岸絵美、西尾佳織、高橋瞳天、柳谷一成、松浦慎一郎、佐々木幸子、細川佳央、高木公佑、三浦圭祐、真柳美苗、本庄司、松岡眞吾、太田正一
【作品概要】
都市生活に摩耗しながらも懸命に生きる人々の孤独、苦悩、欲望を、卓越した洞察力とブラックユーモアで描いた本作は、国内では第12回大阪アジアン映画祭、第26回TAMA CINEMA FORUMで上映され大きな話題を集めました。
さらにヨーロッパ最大級のインディペンデント映画祭である、イギリスのレインダンス映画祭コンペティション部門に応募総数7500作品の中から見事選出。
ドイツ、アメリカなど数々の海外映画祭での招待上映を経て、待望の国内公開を迎えます。
誰もが身に覚えのある日常的な感情を、奇妙で幻惑的なフィクションの世界に変換する大胆な作風により、映画ファンのみならず、広く現代人の心を捉える娯楽作品に仕上がっています。
監督は『焦げ女、嗤う』の新鋭・瀬川浩志、主演は宮沢章夫率いる遊園地再生事業団の牛尾千聖、音楽はJYOCHOのギタリスト、中川だいじろー(ex.宇宙コンビニ)が担当してしました。
映画『たまゆらのマリ子』のあらすじ
結婚6年目の主婦、マリ子(牛尾千聖)は日々不満を募らせていました。
夫、智晴(山科圭太)とは諍いが絶えず家庭内別居状態。
職場のバッティングセンターでは店長、鱈目(三浦英)の横暴や後輩みはる(後藤ひかり)の奔放な言動に振り回される毎日。
家に帰りたくないマリ子は、OL時代の友人、まどか(根岸絵美)を頼りますが、そのまどかからも見放され逃げ場を失っていきます。
追い詰められたマリ子は、ある妄執に支配されるようになり次第に現実でも常軌を逸した行動を取り始めるようになって…。
映画『たまゆらのマリ子』のみどころ
ユーモアと熱演が奏でる浮遊感
“たまゆら”とは、玉響と書き、玉のふれあう音のこと。その音がかすかなことから、転じて時間の経過のごくわずかな様を指す言葉になりました。
マリ子は冒頭から絶えず心の中で毒づいています。
始めはかすかな響きだったそれは、マリ子の心を次第に大きく揺らしはじめます。
マリ子の不満は長いあいだ彼女の中にため込まれていました。
少しずつガス抜きが出来れば楽なんでしょうが、彼女はそれが出来ず、心の中でブツブツとつぶやくだけ。
同僚の若い女の子のどうでも良い話にも耳を傾けて、店長のパワハラ・セクハラにも大きな声を上げることはありません。
夫には不満の根本を話せず、相談したいからと元同僚に異常なほどつきまとい、職場での淫行、いやがらせ、夫の疑惑にも表面上は黙って、ただねっとりとした視線で見つめます。
心の中のつぶやきは京言葉なのも、マリ子の湿度の高い“念”を感じ興味深い表現です。
マリ子が自分の妄執に囚われて現実との境界があいまいになって行く様は、瀬川浩志監督のユーモアと、牛尾千聖の鬼気迫る演技により、不思議な浮遊感が漂っています。
牛尾千聖の色気と狂気
マリ子の問題は、コミュニケーション不足です。
若くもなく、かと言って老け込むには早すぎる。マリ子の中の“女”という、愛欲と嫉妬まみれの魔物。
その魔物は次第にマリ子を取り込んで行きます。
愛ゆえの嫉妬は歪んだ欲望に変わり、狂気と色気のはざまをたゆたうように歩みを始めるマリ子。
その姿は滑稽ですが、“他人事ではいられない”不安と恐怖に煽られます。
アンバランスなマリ子を絶妙なリアリティをもって演じる牛尾千聖。
最後に訪れる彼女の“笑顔”をご注目下さい。
映画『たまゆらのマリ子』監督の瀬川浩志プロフィール
1979年、京都府出身。
2007年映画美学校フィクション高等科を修了。
在学中に制作した4作目『蛾意虫』が第12回水戸短編映像祭などいくつかの国内の映画祭で入選。
2010年『焦げ女、嗤う』が第11回TAMA NEWWAVE入選、その後渋谷UPLINK Xでレイトショー公開されます。
2年の月日を費やして完成させた最新作『たまゆらのマリ子』が、第12回大阪アジアン映画祭、第26回TAMA CINEMA FORUMでの上映を経て、イギリスで行われる第25回レインダンス映画祭コンペティション部門に選出されました。
映画『たまゆらのマリ子』主演の牛尾千聖プロフィール
参考映像:『ハロー、スーパーノヴァ』(2014)
1981年、京都府出身。
2004年から京都にて「マレビトの会」(主宰:松田正隆)の作品に出演し俳優を始めます。
太田省吾、松田正隆、宮沢章夫らの作品に出演した後、2012年より遊園地再生事業団(主宰:宮沢章夫)のメンバーとなりました。
主な出演作は『探偵事務所5 2ndシーズン 送り火・右左』(2008年 監督:林海象)、『貧血』(2013年 監督:加藤麻矢)、『ハロー、スーパーノヴァ』(2014年 監督:今野裕一郎)そして本作『たまゆらのマリ子』です。
まとめ
夫との問題を抱えた主婦、マリ子。
誰にも言えない歪んだ妄執に取り込まれていく様を、シニカルなユーモアを交えて描いています。
どこに着地するのか全く読めない展開に、マリ子と同じ“不安”を抱くはず。
不安定で不思議な浮遊感を、ぜひお楽しみください。
映画『たまゆらのマリ子』は12月1日(土)より池袋シネマ・ロサにてレイトショー上映です。