レイモンド・カーヴァーの名作短編を現代的に蘇らせる長編アニメーション作品。
カナダの新鋭が、1995年のケベック州独立運動を背景に、ある(元)夫婦の過去・現在・未来の物語を詩的に描いた長編アニメーション映画『Ville Neuve』。
このたび、ヴェネチア映画祭にて世界プレミア、その後アヌシー、ザグレブ、オタワなど名だたる映画祭にてコンペティション上映されたカナダの長編アニメーション映画『Ville Neuve』の邦題が『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』に決定し、2020年9月12日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開します。
合わせまして、予告編とポスタービジュアルも同時に解禁されました。
映画『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』について
本作のインスピレーションとなっているのは、日本では村上春樹の翻訳で知られている短編の名手レイモンド・カーヴァーによる隠れた傑作小説「シェフの家」。
離婚した元カップル・過去に引きずられる男と未来へと目を向ける女の再会と再度の別れを淡々と描き出す20ページほどの短編が、本作においては、1995年カナダからの独立を目指し住民投票を行ったケベック州(フランス語圏)におけるカップルの物語へと移し替えられています。
その大胆な移植によって、カーヴァーの原作は本作において壊れた愛を再生しようとしてすれちがうカップルの普遍的でロマンティックな物語でありつつ、世界中で高まる独立運動やそれへの弾圧といった現代の社会的な問題ともリンクする寓話へと変貌を遂げることになりました。
監督は本作が初めての長編アニメーション作品となる新鋭のアニメーション作家フェリックス・デュフール=ラペリエール。
全編が墨絵の手描きによって生み出されるシンプルで奥深い映像美、随所に詩の朗読が挟まれる芸術的な構成が、これまでのアニメーションではあまり見られなかった成熟したテーマと物語を贅沢に語りあげます。
本作は、ベネチア映画祭の「ヴェニス・デイズ」部門でプレミア上映、アヌシー、ザグレブといった世界的なアニメーション映画祭でのコンペティション上映など、アニメーションのみならず映画界でも高い評価を受ける必見作となっています。
映画『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』の予告編
このたび解禁された予告編では、全編にわたり墨絵の手書きによって生み出された奥深い映像美が切り取られています。
ポエティックなセリフと手書きの墨絵で描かれた世界は、別れた夫婦のすれ違う繊細なニュアンスまでを映し出そうとしているかのよう。
最後に流れる、映画評論家/秦早穂子の「分かりやすさばかりが求められる時代に息苦しさを感じるあなたの死んでしまった心を掻き起す映画」というコメントにますます興味を引きつけます。
映画『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』の作品情報
【日本公開】
2020年(カナダ・フランス合作映画)
【原題】
Ville Neuve
【英題】
New Town
【監督】
フェリックス・デュフール=ラペリエール
【キャスト】
ロバート・ラロンド、ジョアンヌ=マリー・トランブレ、テオドール・ペルラン
映画『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』のあらすじ
アル中の詩人ジョゼフは、思い出の地「ヴィル・ヌーヴ(新しい街)」に別れた妻エマを呼び出します。
うまくいきそうに思えた二人でしたが、独立運動の高まりとともに、その関係に新たな波乱が巻き起こり…。
まとめ
アニメーション作家の山村浩二は、本作のコメントを以下のように寄せています。
“変革の鐘は鳴ったのか。未練、歯がゆさ、残り火、残光、取り戻せないものと、新しい光、希望との板挟み。前進しているようでゆっくりと後退していく感覚。モノクロームのミニマムな画面に、ケベックの黄昏の淡い色の変化を見た気がした。”
モノクロでありながらも、男と女の繊細で移ろう情緒が映し出されいていることが伺えます。
そして、レイモンド・カーヴァーによる短編小説「シェフの家」がどのようにアニメーションとして生まれ変わったのか、期待が膨らみますね。
長編アニメーション映画『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』は、2020年9月12日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラム他にて全国順次ロードショーです。