この愛は純情か、それとも異常か!?
松居大悟が監督・原作・脚本を担当した『君が君で君だ』は、7月7日(土)より、新宿バルト9ほか、全国で七夕ロードショーされます!!
映画『君が君で君だ』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【原作・監督】
松居大悟
【キャスト】
池松壮亮、キム・コッピ、満島真之介、大倉孝二、高杉真宙、中村映里子、山田真歩、光石研、向井理、YOU
【作品概要】
愛する女性が憧れる尾崎豊、ブラッド・ピット、坂本竜馬になりきり、自分の名前すら捨て去って10年間、彼女を見守り続けた3人の男たち。彼らの愛は純愛か、はたまた異常か⁈
「尾崎豊」に池松壮亮、「ブラピ」に満島真之介、「坂本龍馬」には大倉孝二が扮し、キム・コッピ扮する韓国人女性に想いを寄せる。そんな三人の前に現れたのは借金取りの女とその子分だった。彼らの恋が走り出す。
映画『君が君で君だ』のあらすじ
僕らが彼女と初めて会ったのはカラオケ屋でした。好きな人に振られてやけっぱちで歌っていた時、オーダーした飲み物を持ってきてくれたのが彼女だったのです。その話し方から韓国から来た女性とわかりました。
すっかり酔っ払って、道行くカップルに毒づいていた僕たちは、彼女が悪いやつらに無理やり誘われているところに出くわします。助けようと思って男たちに向かって行ったはいいものの、ボコボコにやられてしまいます。
その時、彼女は側にあったビール瓶を割って不良たちに立ち向かい、その姿を見た彼らは、あわてて逃げていきました。
彼女は、「HERO」とプリントされている僕のTシャツがツボにはまったらしく大笑いし、切れた口元にハンカチをあてて、血をぬぐってくれたのです。
十年後…。
僕たちは、自分の名前を捨て去り、「尾崎豊」、「ブラピ」、「坂本龍馬」になりきって生きていました。あの時出逢った、彼女、ソンの好きな三人の男になりきり、ひたすら彼女を守るために、この十年を費やしてきたのです。
彼女のマンションの向かいのボロアパートに住み、十年間、彼女の全てを見てきました。彼女の好みのカップ麺を彼女と同時に食べ、歓びを感じる三人。全てを「姫」のために費やしてきたのです。
「姫」は今、宗太という男と付き合っているのですが、この男が作った借金のせいで、借金取りが執拗に取り立てに来ていました。
ある日、三人で「尾崎」を大声で歌っていると、その借金取りが突然三人の部屋に現れました。
謝金取りは、三人の部屋中に貼られたソンの写真を見て、驚きます。「お前ら何やってるんだ!?」
そこに宗太まで現れ、混沌とする中、彼女の姿が見えなくなりました。こんなことは初めて。三人は姫を「守る」ことが出来るのか!?
この愛は純情か、それとも異常か。国境も常識も超えた愛の物語が、観る者の恋愛観を揺さぶります!
映画『君が君で君だ』の感想と評価
✨池松壮亮さんコメント✨
尾崎豊という人には会ったことはありませんが、物心ついてからいつも隣で歩むべき道を教えてもらっていたように思います。目眩すらするこの街の中で、愛するという事に何回やっても答えが出ないので、もう一度松居監督と共に挑んでみようと思いました。#君が君で君だ pic.twitter.com/r4I0iCHsuS
— 映画「君が君で君だ」公式 (@kimida_movie) 2017年12月27日
本作は松居大悟監督が原作・脚本も担当したオリジナル作品です。
これまで数多くの恋愛映画が作られ、ストーカーや、異常な恋愛関係を描いた作品も少なくないと思うのですが、かつて、本作のような恋愛映画があったでしょうか!?
今までに類を見ない、オリジナリティ溢れる、怪作、ならぬ快作といって良いのではないでしょうか!?
「尾崎豊」になりきる男を演じるのは、池松壮亮、ハリウッドの超人気俳優「ブラピ」を名乗る男に満島真之介、「坂本龍馬」には大倉孝二が扮しています。
さらに、恋人の宗太を高杉真宙が演じ、いつものクールなイメージとは違う、パンチパーマのバカ恋人になりきっています。
そんな男たちに愛される「姫」こと、ソンに扮するのは『息もできない』(2008/ヤン・イクチュン監督)での演技が今でも鮮明に思い出される韓国人女優キム・コッピです。
YOU演じる借金取りのボスが、彼らの振る舞いを見て、向井理扮する子分に「こんなに愛されたことってある?」と問いかけるシーンがありますが、このときの彼女の表情には一種の羨望のようなものが現れています。
しかし、映画は簡単に彼らの「純愛」を称賛したりはしません。彼らの行動を正当化することもありません。都合の良い擁護もせず、ただ、彼らが突っ走る様子をダイナミックに追うのです。
この一種、異様ともいえる彼らの行動に、「恋愛」「恋する」ことのエゴイズムをまざまざと見せられたように感じました。
ふとしたことで恋に落ち、相手の幸せを願い、相手のためと思っていても、それを主張すればするほど、自身の押し付けになっていくというパラドクス。
まさに恋愛観を揺さぶられてしまうのです。彼らの恋を皆さんはどのようにご覧になるでしょか?!
まとめ
関連映画:『私たちのハァハァ』(2015)
「感想と評価」において、“他に類を見ない”と述べましたが、実は一つ、この作品を見て思い出した作品があります。
それは、松居大悟監督の2015年の作品『私たちのハァハァ』です。
好きなバンドのツアーのラスト公演を観るために、九州を飛びだして、東京に発作的に向かう女子高生たちを描いた作品です。
彼女たちはあるバンドが大好きという共通項を持った仲間で、その「愛」故に東京へと突っ走るのですが、それぞれに、その対象へのアプローチの仕方、想いに違いがあり、その対象に近づくに連れ、その温度差が顕になっていくのです。
本作品『君が君で君だ』も、次第にそれぞれの違いが鮮明になっていき、そのあたりも是非、注目してみていただきたいです。
それぞれのキャラクターが個性豊かで圧倒されること請け合いですが、とりわけ、池松壮亮のキャラクターの爆発ぶりには凄まじいものがあります。
共感するか!? ドン引きするか!? あなたの恋愛観が試される!?