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Entry 2019/02/04
Update

映画『ゴッズ・オウン・カントリー』あらすじネタバレと感想。ラストの主人公ジョニーたちの決断が清々しい余韻を与える

  • Writer :
  • 西川ちょり

“神の恵みの地“と呼ばれるイギリス・ヨークシャー地方を舞台に二人の孤独な青年の間に生まれる愛の行方を綴った映画『ゴッズ・オウン・カントリー』をご紹介します。

昨年7月に開催された「レインボーリール東京 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」での2度の上映が完売、さらに11月にシネマート新宿、シネマート心斎橋で開催された「のむコレ」での5回の上映もすべて完売、立ち見となるほどの盛況ぶりをみせ、ついに2月2日より全国拡大公開されることとなりました。

映画『ゴッズ・オウン・カントリー』の作品情報


(C)Dales Productions Limited/The British Film Institute 2017

【公開】
2019年(イギリス映画)

【原題】
God’s Own Country

【監督】
フランシス・リー

【キャスト】
ジョシュ・オコナー、アレック・セカレアヌ、ジェマ・ジョーンズ、イアン・ハート

【作品概要】
“神の恵みの地“と呼ばれるイギリス・ヨークシャー地方を舞台に、男性同士の愛情の行方を描いたフランシス・リー監督のデビュー作。

2017ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品テディ賞受賞、2017サンダンス映画祭ワールド・シネマドラマ・コンペティション監督賞受賞、2018英国アカデミー賞英国作品賞ノミネート、2017英国インディペンデント映画賞、作品賞、主演男優賞、音響賞、新人脚本家賞受賞など名だたる映画祭で圧倒的評価を受けました。

日本では「レインボーリール東京 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」や「のむコレ」での数回の上映が全て完売となる盛況ぶりで、2019年、配給会社が決定し、全国公開が実現。

映画『ゴッズ・オウン・カントリー』のあらすじとネタバレ


(C)Dales Productions Limited/The British Film Institute 2017

イギリス・ヨークシャー地方。

ジョニーは家族経営の寂れた牧場を一人で切り盛りする毎日を送っていました。

父は病で倒れ、杖をついて歩くのが精一杯の状態。母は、まだジョニーが幼い頃に家を出て行ったきりで、年老いた祖母が、ジョニーと父の世話をしていました。

孤独で過酷な毎日をジョニーは酒で紛らわし、遅く帰っては、吐くことを繰り返していました。

牛の競売に出かけたジョニーは現場にいた男性とゆきずりの関係を持ちます。男性が後を追ってきて「コーヒーでも一緒に」と誘いますが、ジョニーはそっけなく断り、トラクターに乗り込みました。

帰宅する前に牛の出産が始まってしまい、立ち会えなかったため死産となってしまいます。父は、自分は動けないから人を雇うことにしたとジョニーに告げます。

ジョニーは一人前として認めてもらえないことに腹をたてますが、実際、一人ではどうしようもないのでした。

短期労働者としてやってきたのはルーマニアから来たゲオルゲという男性でした。ジョニーは彼をジプシーと呼び、いらいらした感情をぶつけずにはいられません。

羊の出産の季節となり、二人は山に泊まり込むことになりました。いつものようにジョニーがゲオルゲをジプシーと呼ぶと、彼は「その呼び方はよせ」と激しく怒り、ジョニーを組み伏せました。

ゲオルゲは全てに手慣れていました。生まれたばかりの羊は息をしていませんでしたが、ゲオルゲが丁寧に体全体をさすってやると蘇生します。彼は羊を大切に扱い、優しく接するのでした。

崩れた石垣を修理していた時、ジョニーは手のひらに怪我をしてしまいます。心配したゲオルゲは彼の手を取り、傷の具合を見てくれました。

次第に彼に心惹かれていくジョニー。やがて二人の心は通じ、激しく抱き合います。

翌朝、ゲオルゲはジョニーに言うのでした。「ここは美しいが寂しい」。

山を降り、二人は家に戻りました。ジョニーは早くゲオルゲと抱き合いたくてたまらないのですが、ゲオルゲは自分の住居であるトレーラーを指定します。

ジョニーは家を抜け出して彼のもとへ、そそくさと向かうのでした。

そんな矢先、父が倒れ、病院に運ばれます。祖母の看病もあり、父は意識を取り戻しますが、言葉を発するのも以前より不自由になっていました。

ゲオルゲは少し滞在を延ばそうかと尋ね、ジョニーもそうしてくれと応えます。

二人は羊を山から下ろし、ゲオルゲは羊のミルクでチーズを作りました。

ある夜、ジョニーはゲオルゲに飲みに行こうと誘います。よそ者のゲオルゲに店主は露骨に差別的な目を向けました。

ジョニーはゲオルゲにもっと長くいてくれと頼みます。「牧場はどうするんだ? 今のやり方では続かない」とゲオルゲは問いかけます。「家族と話は? 君と俺はどうなる?」。

そこまでの決心が出来ていないジョニーは言葉を閉ざし、トイレに立ちます。ゲオルゲがひとりでカウンターに座っていると店主が悪態をついてきました。怒ってやり返したゲオルゲに店主が「出て行け!」と怒鳴りました。

トイレに駆け込んだゲオルゲは、個室でジョニーが別の男と関係を持っているのを見てしまいます。

彼は店を飛び出しました。トイレから戻ったジョニーはゲオルゲの姿がないのに気が付きあわてて追いかけますが、彼は車に乗ろうとしませんでした。

翌朝、ゲオルゲの姿はどこにもありませんでした。「出ていったよ。おまえのせいなんだろ?」と祖母は言うのでした。

牛舎を掃除していると、片隅にゲオルゲが忘れていった上着がかかっているのに気が付きました。ジョニーはまたひとりぼっちになってしまいました。

父が退院し、家に帰ってきました。以前よりも体が不自由になり、口もうまく回りません。彼の口から出てくるのは、仕事に関する命令ばかり。その場ではおとなしく頷くジョニーでしたが、無人のトレーラーに入って、感情を爆発させます。

ゲオルゲが忘れていったセーターが目にとまります。ジョニーはセーターに腕を通してみるのでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ゴッズ・オウン・カントリー』ネタバレ・結末の記載がございます。『ゴッズ・オウン・カントリー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
父を風呂に入れるために彼をかついで浴槽に入れたジョニーは、祖母に自分がするからと告げると、父と向き合いました。

丁寧に父の体を洗っていると、父の口から「ありがとう」という言葉が発せられました。

「あんたも早く休みなさい」と祖母から声をかけられ、「俺は耐えられる」と応えると、祖母は言うのでした。「父さんみたいに?」

ジョニーは意を決して父にゲオルゲを迎えに行くことを伝えます。「牧場は続けるけど、俺のやり方でしかできない。あいつを呼びに行く。やり方を変えたいんだ」

「それで幸せになれるのか?」と問う父に「幸せになれると思う」とジョニーは応えました。

出かけようとするジョニーに祖母はメモを渡しました。ゲオルゲが残していったもので、今の働き場所が書き付けてありました。

長距離バスに乗って、出かけた先の牧場で、ジョニーはゲオルゲと再会します。ゲオルゲはまだ怒っているようで、つれない態度です。

「なぜ来た?」と尋ねられ、「お前に会って何か変わるかと思ってきた」というジョニーに「もう会った」とゲオルゲは言いました。

「他に何か?」と聞かれ、首を振るジョニー。「じゃぁな」と去りかけるゲオルゲにジョニーは駆け寄りました。

「戻ってくれ! 離れたくない! 一緒にいたいんだ!」

ちょっとの間、ジョニーを見つめていたゲオルゲは「ヘンタイ」と呼びかけて微笑みました。「お前もな」とジョニーが返します。

二人は互いを「ホモ野郎」と呼びながら、近づくと、おでこをつけ、キスをし、固く抱き合いました。

長距離バスに揺られ家に戻るジョニーの隣には、ゲオルゲの姿がありました。

映画『ゴッズ・オウン・カントリー』の感想と評価


(C)Dales Productions Limited/The British Film Institute 2017

夜がしらじらと明け始める頃、石造りの家の一室に明かりが灯るところから映画は始まります。

継いで、主人公ジョニーが画面に裸の背中を向け、嘔吐しているシーンへと移ります。

イギリス・ヨークシャー州の牧場を彼は一人で切り盛りしていますが、過酷な労働とその重圧、父親に一人前にみてもらえない苛立ちで心はささくれだち、酒で気を紛らわす日々が続いているのです。

太陽光がほとんどない冷え冷えとした風景は、のちにゲオルゲが「この土地は美しい。でも寂しい」と評するように寂寥感に溢れ、ジョニーの心は暗然とするばかり。

大学から帰省している友人と会話していることから、ジョニーも同年代だと推測されます。もしかしたら、彼も大学に行きたいという夢があったのかもしれません。

先祖代々の地で家業を継ぐ意思はあっても、本格的に継ぐのはもう少し先になるだろうと思っていたら、父が倒れ、全てが予定していたよりも早く彼にのしかかってきたのではないでしょうか。

映画はそうしたことを暗示するだけですが、ジョニーが抱える複雑な事情は観るものに強く伝わってきます。若者が人生を選択していく上で起こる心の葛藤がリアルに迫ってきます。

そんな彼が季節労働者としてやって来たルーマニア人のゲオルゲと仕事をともにしていく中で、徐々に変化していくさまが、壮大な自然と動物の命を背景に、描かれていきます。

仕事に手慣れており、家畜への思いやりや、ジョニーの怪我を気遣う優しさなどから伺えるゲオルゲの人間性が、この映画の魅力の大きな要因の一つとなっています。

きつい顔つきをしていたジョニーが頬を赤らめて、柔和な顔になっていく様子が、画面から十分すぎるほど伝わってくると同時に、二人が恋に落ちたあと、陰々滅々としていたヨークシャーの風景が、美しく輝いて見えてくることにも驚かされます。

男性同士の恋とその行方を描く本作は、優しさに溢れたラブストーリーの傑作として、人々の心に深く刻まれていくことでしょう。

そんな同性愛のテーマとともに、忘れてならないのは、この映画には、外国人労働者に向けられる差別や、介護問題、現代の農業問題など多くの社会問題が含まれていることです。

差別主義者の存在に腹立たしさを覚えずにはいられませんが、英語もできるインテリでありながら、季節労働者としてイギリスに渡らざるをえない、ゲオルゲの祖国の事情も深刻です。

ヨーロッパ諸国が抱える難民問題ともつながっていく事柄でしょう。

一方、牧場の経営は古くからおこなわれてきたものを踏襲したもので、既に時代から取り残されつつあります。

ジョニーたちが決断するラストは、そうした問題にも目を向けたもので、それゆえに清々しい余韻を与えてくれます。

「幸せになれると思う」というジョニーの言葉に間違いはないでしょう。そう確信できる優しい映画に仕上がっており、観て良かったとしみじみ感じさせてくれるのです。

まとめ


(C)Dales Productions Limited/The British Film Institute 2017

ジョニーを演じたジョシュ・オコナーは『ライオット・クラブ』(2014/ロネ・シェルフィグ監督)、『疑惑のチャンピオン』(2015/スティーブン・フリアーズ監督)、『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(2016/スティーブン・フリアーズ監督)などの作品に出演しているイギリス・チェルトナム出身の俳優です。

ファッションブランドのアンバサダーに起用されるなど、シャープで洗練された雰囲気を持つ彼ですが、本作では、感情を押し殺して生活していた農家の青年が一人の男性と出会うことで変化していく様を全身で表現しています。

一方、ゲオルゲ役のアレック・セカレアヌは、ルーマニア・ブカレスト出身。6ヶ月に及ぶオーディションでゲオルゲ役に選ばれました。本作が彼にとって初の英語作品となります。

なんでもこなせて、優しく、間違ったことには毅然と向かっていく人物を魅力的に演じており、彼の虜になってしまった人も多いのではないでしょうか?!


(C)Dales Productions Limited/The British Film Institute 2017

二人は、撮影に入る前に牧場で数週間働き、酪農家として必要な事柄を学んだといいます。作品には羊の出産や、皮剥などのシーンがありますが、全て、彼らが実際に行っています。

監督のフランシス・リーもヨークシャー地方の農家の出身で、もし自分があの小さな町のコミュニティーに留まり、家業を継ぎ、好きな人ができたらどんなことが起きただろう?という発想から物語が生まれていったそうです。

エンディングにはイギリスの農業の風景を映した、古いホームムービーのような映像が流れます。農業に携わる人々への敬意がそこには込められているのでしょう。

ジョニーの祖母を『ブリジット・ジョーンズ』シリーズでお馴染みのジェマ・ジョーンズが、父親を名優イアン・ハートがそれぞれ演じ、厳しさの中に、子、孫を思いやる家族のあたたかさを表現し、作品を豊かなものに仕上げています。

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