「おっさん×柴犬×会話劇」による脱力系人気ドラマの続編となる映画『柴公園』が2019年6月14日(金)より全国ロードショー!
いつもの公園で、飼い犬とともに集まるおっさん三人の物語を描いた人気テレビドラマ『柴公園』が、『人狼ゲーム』シリーズ、『ゼニガタ』『ピア~まちをつなぐもの~』などを手掛けてきた綾部真弥監督によって映画化。
その中でも、少々神経質な性格のじっちゃんパパを演じたのが、俳優の大西信満さんです。
今回、演技派俳優として注目を集める大西信満さんにインタビューを行い、ご自身が演じたじっちゃんパパの役柄を構築していった過程や、柴犬たちと共演した撮影現場でのエピソードなど、様々なお話を伺いました。
CONTENTS
現場で構築していった役柄
──テレビドラマ版に引き続き、本作でも「登場人物のバックグラウンドは敢えて描かず、名前すらも明かされない」という、難しい役柄をどのようにして演技プランを組み立てましたか?
大西信満(以下、大西):じっちゃんパパを演じるにあたって、事前にどうやろうといった「決まり」は敢えて決めずに挑みました。
脚本に明記されていない部分は、自分の中で納得できる裏設定を決めておくことが多いですが、『柴公園』に関しては、「わからないならわからないまま、フワッとした感じで演じてもいいんじゃないか」と思って撮影に臨むことにしました。
今作はおじさん三人の関係性が肝だと思ったので、自分で事前にあれこれ決めるよりも「渋川さんはどんな感じでくるのかな?石本さんはどんな感じなのかな?」と相手の出方をうかがいながら、自分の在り様を探っていきました。
綾部監督は初めから色々と演出を決めるのではなく、俳優三人の芝居のかけ合いをまずじっくり見て、それを受けて面白がりながら演出をされていました。
また人間との芝居だけでなく、犬たちも芝居に深く関わってくるので、そこは最初少し手を焼きましたね。今回じっちゃん役を務めた犬のくうちゃんとは徐々に、自然に芝居をすることができるようになっていきました。
そうやって、人も犬も徐々に慣れながら撮影を進めていったこともあって、よく見ていただくと最初と中盤以降のシーンでは、自分たちと犬たちとの距離感がだいぶ違っていることに気づくかもしれません。
じっちゃんパパの変化
──本作では、お馴染みの三人組に、桜井ユキさん演じるポチママが加わってきますが、じっちゃんパパ役にも何か変化が生じました?
大西:映画版では、あたるパパとポチママの恋愛模様を描いているんですが、二人の関係に一番ちょっかいを出すのが、じっちゃんパパなんです。
さちこパパの方はどちらかといえば「放っておけばいいじゃないですか」というスタンスですが、じっちゃんパパはとにかくお節介で。
大西:じっちゃんパパは、基本的にあたるパパのことがすごく好きなんです。もちろん変な意味ではなくて、歪んでいるけど友情に近い意味で(笑)。
だからこそ、うまく立ち回れない“あたるパパ”の姿に歯痒さを感じてしまい、「ああやればいいのに」「こうやればいいのに」と、ついお節介を焼いてしまうんです。
劇中、じっちゃんパパはポチママのことについて色々とツッコミを入れますが、それは男女関係への興味というよりは、パパ三人組の関係が崩れてしまうことへの焦りがそうさせている部分があります。
だから映画版では、ポチママが深く関わってくることによって、じっちゃんパパの中で「三人の関係性って何なの?」という部分が大きく揺れ動きます。
柴犬たちと臨んだ撮影
──人間のキャストのみならず、柴犬たちとも現場を共にしましたが、何かエピソードなどはありますか。
大西:これまでに出演した作品でも動物が出てくることはありましたが、本作ほど深くお芝居に関わる作品は初めてだったので、その点ではすごく新鮮でした(笑)。
子供の頃から何かしら動物は飼っていたこともあり、生き物に対しての「慣れ」のようなものは自然と身に付いていたので、動物と接することに対しての心配は全然なかったです。
でも今回は、犬だったから何とか無事撮影を終えられたようにも思います。もし猫が相手だったら、まず言うことを聞いてくれないので(笑)。
また、テレビドラマ版から続けて本作を観られた方の中には、「じっちゃんパパは、何であんなに怒りっぽいの?」と思われる方もたくさんいると思います。そこには、本作でじっちゃんを演じたくうちゃんの状況が関係している部分もあります。
実は、くうちゃんは本作が初めての仕事で、まだ撮影に慣れていない子だったんです。本番中に大事なセリフの瞬間に突然吠えちゃったり、散歩シーンの撮影中、カメラの背後に大勢のスタッフがいるのに気づいて、緊張で固まっちゃったり。
そういったハプニングとそれへの対応が、撮影中は本当に大変で(笑)。だからそういったハプニングを誤魔化したり、乗り越えるための苦肉の策で、急にキレたり強引に物事を推し進めるキャラクターになっていきました。
『柴公園』という作品を象徴するもの
──大西さんはテレビドラマ版も含め、『柴公園』という作品をどのように捉えていますか?
大西:テレビドラマ版の脚本を最初に読ませていただいた時、とにかく面白かったんです。
脚本そのものの完成度が非常に高くて、それを演じる側である自分は、脚本から伝わってくる世界観をなるべく壊さない中で、そこに何かプラスできるようにと思って演じました。
それから撮影がスタートして、撮影回数を重ねていくごとにキャラクターがだんだん立っていくことを実感できました。
芝居のかけ合いを通じて、各々の色合いが濃くなり、どんどんキャラクターが立ってゆく。それが『柴公園』の面白さではないかと思います。
俳優としての自信
──撮影を終えた現在、本作への出演についてどのような感想を抱きますか?
大西:正直いうと、クランクイン前は、あまりにも多いセリフの量と準備期間の短さに「果たして大丈夫かな?」という不安はありました。
テレビドラマ同様に映画版でも会話劇だったので、とにかくセリフの量が多い。これまで出演してきた作品と比べても、ケタ違いに多かったんです。
しかも、普通の作品はだいたいセリフに流れというものがあるんですが、今回は急に誰かが突拍子もないことを言い始めたせいで話題が急に変わり、何の話をしていたのかが分からなくなってしまうようなシーンばかりで(笑)。
そんな難しい脚本と格闘しながら、あれほど多かったセリフの分量を短期間で覚え、演じ切ることができたのは、やはり俳優としての自信になりました。
ただ、もし「もう一回同じことをしてくれ」と言われたら、「もうちょっと準備期間をください」と言いますけど(笑)。
大西信満(おおにししま)のプロフィール
1975年生まれ、神奈川県出身。
2003年に『赤目四十八瀧心中未遂』で映画初出演・初主演を果たし、第58回毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞、第13回日本映画批評家大賞・新人賞を受賞。
近年では『キャタピラー』『さよなら渓谷』『祖谷物語 おくのひと』『64 -ロクヨン- 前編/後編』『ろくでなし』『止められるか、俺たちを』『泣き虫しょったんの奇跡』『菊とギロチン』などに出演し、映画・ドラマを中心に精力的に俳優活動を展開しています。
インタビュー・撮影/桂伸也
記事構成/加賀谷健
映画『柴公園』の作品情報
【公開】
2019年6月14日(日本映画)
【監督】
綾部真弥
【キャスト】
渋川清彦、大西信満、ドロンズ石本、桜井ユキ、水野勝
【作品概要】
柴犬連れの中年男三人が公園で話す様をユーモラスに描いたテレビドラマ『柴公園』の劇場版。本作では平凡な日常を送っていた三人組の日常の中に、とある事件が巻き起こります。
テレビドラマ版から引き続き主要キャストを務める渋川清彦、大西信満、ドロンズ石本を中心に、桜井ユキ、山下真司、佐藤二朗、BOYS AND MENの水野勝らが出演しています。
そして、テレビドラマ版では共同監督を務めた綾部真弥が監督を務めました。
映画『柴公園』のあらすじ
いつものように朝・夕と公園に集まっては、おっさんならではの胸の内を、のんべんだらりと語り合うあたるパパ(渋川清彦)、じっちゃんパパ(大西信満)、さちこパパ(ドロンズ石本)の三人。
ある日、公園での駄弁りの中であたるパパは、じっちゃんパパ、さちこパパから女性との出会いについての追及をうけます。さらにタイミングを合わせたかのように、実の父からも結婚の催促が。
そしてその後、あたるパパは以前、自分のスマートフォンを拾ってくれたことで知り合ったポチママと、とあるきっかけで急接近。さらにあたるパパは、通勤で乗車しているバスにいつもポチママも乗っていることを知ります。
すっかり舞い上がってしまうあたるパパ。しかし公園では何も明かそうとしないあたるパパの態度に業を煮やし、じっちゃんパパとさちこパパは密かにあたるパパを尾行することに。しかし、そこで二人が見つけたのは、あたるパパと謎のイケメン(水野勝)が対面している光景でした…。