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Entry 2019/12/04
Update

【岡山天音×最上もがインタビュー】『ヴィレヴァン!』濃いキャスト陣との撮影の中でお互いの個性を知る

  • Writer :
  • 河合のび

ドラマ『ヴィレヴァン!』DVD-BOXは2019年10月25日(金)より絶賛発売中!

全国で350以上の店舗数を誇る「本屋」にして、あらゆるサブカルを網羅し、自分の「好き」を突き進む人々に愛され続ける “名古屋が生んだ奇跡の本屋”こと「ヴィレッジヴァンガード」(通称「ヴィレヴァン」)。

そんなヴィレヴァンを舞台に繰り広げられる青春群像劇にして、店舗の全面タイアップのもと制作されたテレビドラマが『ヴィレヴァン!』です。


(C)Cinemarche

本作にて、ひょんなことからヴィレヴァンでアルバイトを始める主人公・杉下啓三を演じたのは、数々の人気作・話題作に出演し続ける俳優・岡山天音さん。

また杉下が出会う個性的なバイト仲間の一人・今中世津役を、映画・舞台・テレビドラマをはじめ様々なジャンルにてマルチに活躍する最上もがさんが演じました。

この度、2019年10月25日(金)からの『ヴィレヴァン!』DVD-BOX発売を記念して岡山天音さんと最上もがさんにインタビューを行いました。

自身が演じた役に対する思いや撮影の苦労話、お互いの役者としての「個性」など、貴重なお話を伺いました。

「ヴィレヴァン」との思い出


(C)2019メ〜テレ

──はじめに、お二人のヴィレヴァンへの印象や思い出についてお話しいただけますか。

岡山天音(以下、岡山):僕は小さいころから漫画、特に学校では話題に上がらないようなニッチな漫画が好きでした。だから、実家の近所にあったお店にたまたま行き着いた時はすごくうれしかったですね。「こんなに自分が好きなものが、まんま置いてあるお店があるんだ!」と。

やっぱり漫画を買うことが多かったですね。自分が探しているマニアックな作品も、地元の他の本屋などになくても、ヴィレヴァンに行けば置いてあるということは多々あったので、新刊や好きな漫画が出るたびに、そのお店に買いに行ってた記憶があります。

最上もが(以下、最上):学生の頃、新宿にあるヴィレヴァンへ行ったのが多分初めてなんですけど、当時は本屋さんだとあまり意識していなくて、雑貨がたくさん置いてあったこともあり「行ったら何か面白そうなお店」という印象でした。

ヴィレヴァンという空間を楽しんでいましたね。それに、漫画も結構買ってました。少年漫画、少女漫画と色んなジャンルの漫画が一緒になってたくさん置いてあるので、表紙買いなどもよくしてました。

また「でんぱ組.inc」で活動していた頃にもヴィレヴァンとコラボさせていただいたことがあり、その面でも非常にお世話になりました。

「真っ白」だから共感してもらえる

主人公・杉下啓三役を演じた岡山天音さん


(C)Cinemarche

──自称「空っぽ」の大学生にして、ヴィレヴァンで働き始める中で「奇跡の本屋」の魅力を知ってゆく主人公・杉下啓三を演じられるにあたって、岡山さんはどのようなことを意識されましたか。

岡山:僕が演じた杉下は、ヴィレヴァンという濃厚な個性にまみれた空間とはどこかアンバランスな存在といえます。彼は劇中でのセリフ通り「何もない」、というより「真っ白」なキャラクターです。だからこそヴィレヴァンに対して驚くことも、「面白い」と感じることもできるんです。

杉下が本来持ち合わせている体育会系としての勢いや情熱、その奥にある杉下の個性を大事につつも、本作を観る方が杉下の驚きや発見により共感していただけるように、彼のフラットさ、真っ白さをちゃんと表現したいとは考えていました。


(C)2019メ〜テレ

──杉下がヴィレヴァンで働き始める理由には、長年続けてきた野球をケガによって断念したという過去も関わっています。岡山さんはそんな杉下の過去をどのように捉えていますか。

岡山:僕は杉下を目の前にあるものや用意されているもの、言い換えれば習慣やルーティンというものを何の疑問もなくこなし続けてきた人間だなと思っていました。彼にとっての野球も、その一つといえます。

そしてヴィレヴァンという場所に放り込まれたことで、彼は初めて自分の意志を持って能動的に行動し始め、ポップ作りや棚のレイアウト作りなど、様々なことにトライしていく中で成長していく。それが杉下というキャラクターの一番大切なところだと感じています。

「最上もが」ではないキャラクターを演じる

今中世津役を演じた最上もがさん


(C)Cinemarche

──一方で最上さんは、かつて女子アルバイト解禁となった時期から働く古参バイトであり、サブカル全般にも通ずる杉下の個性的なバイト仲間・今中世津を演じられました。

最上:初期の段階では、今中さんは演じる僕にかなり沿ったキャラクターだったんです。それは僕自身のキャラクターを生かして、より演じやすいようにするためのことだったんですが、実は僕、「最上もが」を演じる方が苦手なんです。

むしろ、カッチリとした別のキャラクターを作ってほしい派で、当初の脚本では一人称も「僕」になっていたぐらいなんですが、「今中世津」と「最上もが」を切り離すためにも「私」にしてほしいと提案させていただきました。ただ今中さんには僕のようにオタク要素があって、そういった自分と似た部分も感じてはいました。

今中さんは多分、変化をあまり好まないんです。人付き合いも少し苦手で、それゆえに自分の居場所はどこにもないと思っていた。だけどヴィレヴァンで働き始めたことで、その居場所や仲間を見つけられた。ヴィレヴァンってお店は今中さんにとって大切で、守るべき居場所なんだと思いながら彼女を演じていました。

ハードだった撮影の中で


(C)2019メ〜テレ

──本作の撮影時での印象的な出来事、記憶に残っている出来事はありますか。

最上:寒かったです(笑)。

岡山:そう、寒かった(笑)。それにお店が閉店してから、翌日の開店時間までの間で撮影を進めていたので、ほぼ昼夜逆転での進行だったんです。「眠い」「寒い」「セリフが多い」な撮影でした(笑)。

ただその中でも、滝藤賢一さんはやはりすごいなと感じられました。撮影期間中は寝る時間もほとんどなかったはずなのに、「いつセリフを頭に入れてるんだろう?」と思えるぐらい、セリフ量が尋常でない場面も見事に演じられていました。

──特に撮影がハードだった場面はありますか。

最上:居酒屋での場面を撮影した日は、みんな充電切れてました(笑)。『ヴィレヴァン!』の撮影は夕方くらいに始まって、大抵は朝の6時ごろに終わったんですが、その日はお昼ごろまで撮影が続いたんです。

それまではお昼ごろまで撮ることはほとんどなかったので、撮影の終盤ではキャスト全員がすごく眠そうにしていました。

岡山:あの日は大変だったね(笑)。

最上:葵ちゃんとひなたが本当に限界がきてて(笑)。居酒屋のシーンは葵ちゃんの長セリフがあったんですけれど、休憩中は目を閉じて、ずっと静かにしていたんですけど、本番が始まるって瞬間にはパッと目覚めて、役に入ってて、「すご!」てなりました。

お互いの役者としての「個性」


(C)2019メ〜テレ

──最後に、岡山さんは最上さんの、最上さんは岡山さんの役者としての魅力を改めて教えていただけますでしょうか。

岡山:もがさんにはやっぱり強烈な個性があって、もがさんにしか任せられない役というのはいっぱいあると感じています。本作で演じられた今中さんについても、他の方ではやっぱり別な役になってしまうというか、いわゆる「代えが効かない」役といえます。

それにお芝居だけでなく様々な分野でお仕事をされているのは、やはりもがさんの個性が多くの人々に求められているからなんだと思います。

──そのもがさんの強烈な個性とは、具体的にどのようなところでしょう。

最上:どんなとこですか(笑)。

岡山:うーん…それを言語化するのはすごく難しくて、もがさんと会ったことのある方、話したことのある方だったらすぐ分かるはずです。

またご本人は「協調性がない」と仰っていますけど、現場ではキャストやスタッフの皆さんとずっとコミュニケーションを取られていました。僕は人との距離感のつめ方が非常にスロースターターなので、その点においても現場では助けられました。

演じられていた今中さんと同じように、もがさんはみんなをつなぐ架け橋となっていた。俳優として活動する中で、それは本当に大切な在り方だと思うので、そういうところも…リスペクトです(笑)。

最上:「リスペクト」って言いたかっただけでしょ(笑)。

──もがさんはいかがでしょう。

最上:全部リスペクトですね(笑)。ただ本人に伝えたこともあるんですが、初めて衝撃を感じたのは表情の豊かさなんですよね。

映像でのお芝居だと、特に表情が重要じゃないですか。彼の場合はセリフがなくても、表情で何を伝えているのかが分かると撮影中にいつもそう思っていたんです。

あと、一つ一つの言葉や意味をちゃんと汲んで、それを踏まえた上でどう表現するかを深く考えてる方だなと。それが第一印象でした。

『ヴィレヴァン!』DVD-BOX発売記念イベントにて
一番左は山本昌男役の本田力さん、一番右は後藤庸介監督


(C)Cinemarche

──個性的なヴィレヴァンの店員たちとの出会い、ヴィレヴァンでの仕事で体験する驚きや発見への“リアクション”を通じて成長してゆく杉下を演じるには、岡山さんの豊かな表情はまさに不可欠だったわけですね。

最上:そうですね、凄く良いリアクションなんです。だからこそ、キャストみんなの“キャラ立ち”もさらに良くなった。

岡山:確かに、キャスト全員が本当に濃かった。それも含めて、本当にいいキャスティングだったと感じています。

インタビュー/河合のび
撮影/出町光識

ドラマ『ヴィレヴァン!』の作品情報

【放送】
2019年5月14日〜2019年6月25日(日本)

【監督】
後藤庸介、船谷純矢

【脚本】
いながききよたか

【キャスト】
岡山天音、森川葵、最上もが、本多力、柏木ひなた、水橋研二、平田満、滝藤賢一

【作品概要】
“名古屋が生んだ奇跡の本屋”ヴィレッジヴァンガードを舞台にした青春群像劇。ヴィレッジヴァンガードが全面タイアップのもと制作された、ヴィレヴァン愛・サブカル愛満載のフルスイングドラマです。

ひょんなことからアルバイトすることとなった大学生である主人公・杉下を演じたのは、人気作・話題作に引っ張りだこの俳優・岡山天音。

また、森川葵、最上もが、本多力、柏木ひなた(私立恵比寿中学)と実力・人気ともに十分なキャストたちが杉下の個性的なバイト仲間たちを演じたほか、水橋研二、平田満、滝藤賢一という豪華俳優陣がさらに脇を固めています。

ドラマ『ヴィレヴァン!』のあらすじ


(C)2019メ〜テレ

全国で350を超える店舗数を誇る“本屋”ヴィレッジヴァンガード。

しかしそこには、ベストセラーも新刊もない。車・ジャズ・アウトドア・映画…。ビリヤード台に本を山積みにし、派手な外車が置いてある。

自称「空っぽ」の大学生・杉下啓三は、ヴィレッジヴァンガードで衝撃的な出会いを果たします。

儲け度外視でガラクタに溢れた店、常に行方不明の店長、常識からかけ離れた変人バイトたち。

でもそこには、彼の人生に必要な「全て」がありました…。

ドラマ『ヴィレヴァン!』DVD-BOXは2019年10月25日(金)より絶賛発売中!



編集長:河合のびプロフィール

1995年生まれ、静岡県出身の詩人。2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、2020年6月に映画情報Webサイト「Cinemarche」編集長へ就任。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける。

2021年にはポッドキャスト番組「こんじゅりのシネマストリーマー」にサブMCとして出演(@youzo_kawai)。


photo by 田中舘裕介

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