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Entry 2019/11/20
Update

【宇野愛海インタビュー】映画『歩けない僕らは』理学療法士役を演じたことで見えた“女優人生”としての立ち方

  • Writer :
  • 大窪晶

映画『歩けない僕らは』は2019年11月23日(土)より新宿K’s cinema他、順次公開!

映画『歩けない僕らは』は、回復期リハビリテーション病院で働く、ひとりの新人理学療法士が、人生の苦しみや喜びの中、葛藤し、生きる理由を模索する姿を描きます。

監督は、初の長編監督作品『ガンバレとかうるせぇ』が、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)でPFFアワード2014映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)&観客賞を受賞し、アジア最大の映画祭である釜山国際映画祭に正式出品されるなど、国内外の様々な映画祭で高く評価された佐藤快磨が務めます。


(C)Cinemarche

公開に先駆け、主人公の新人理学療法士・宮下遥を等身大で演じる宇野愛海さんにインタビューを行いました。

理学療法士役に挑戦し見えてきた、女優・宇野愛海さんの素顔に迫ります。

理学療法士の魅力


(C)映画『歩けない僕らは』

──本作に出演されたきっかけは?

宇野愛海(以下、宇野):プロデューサーの登山里紗さんから声をかけて頂いたのがきっかけです。登山さんには私が15歳の頃から目をかけて頂いていて、当時は理学療法士のことは何も知らなかったのですが、信頼している登山さんがプロデュースする映画ならと、なんの躊躇もなく出演させて頂きました。

その後、佐藤快磨監督と映画の舞台になった栃木県最南端の野木町にある「リハビリテーション花の舎(いえ)病院」に取材へ行き、そこで改めて大変な役だなと難しさを覚えました。

──どのような取材をされたのでしょう。

宇野:実際のリハビリテーションの臨床現場の見学や、私が演じる遥と同じ立場の1年目の理学療法士の方からお話を伺いました。

特に、患者さんとの距離感が大事だと仰っていたことが印象的でした。でもその距離感も正解があるわけではなく、患者さんひとりひとり、対応を変えなくてはいけない。お話を伺っていく中で、辛いことや追い詰められる事もあるけれど、この仕事を続けていきたいと思えるような魅力がある職業なのだなと感じました。

──理学療法士の仕事の魅力とは、具体的にどのようなものですか?

宇野:どこにやり甲斐を感じるかは実際には分からないですし、言葉にするのは難しいのですが、人対人の職業で、患者さんは千差万別ですから、対応の仕方にも正解がない。だからこそ苦労するし、悩む。でもそこにやり甲斐があるのではないかと思いました。技術だけではなく、しっかり人と向き合わなきゃいけない職業だなと。

いちばん魅力を感じたのは、理学療法士さんも患者さんも皆さんが凄くポジティブに明るく見えたことです。私の見方があっているかは分かりませんが、何かをするために歩きたい、そのために頑張っている、リハビリしている、その姿勢がキラキラして見えました。

──取材後は佐藤監督と撮影にあたって役についてのお話もされたのでしょうか。

宇野:仕事面での話は監修の理学療法士さんに教わったので、役の性格や遥の周りにいる人たちが遥にとってどのような存在でどれだけ大切かというようなドラマの部分でのお話をしました。

不器用ゆえに真っ直ぐ生きる


(C)映画『歩けない僕らは』

──私生活での遥の姿と、理学療法士としての姿、両面が描かれていることで、遥という人間が何故そこまで理学療法士として患者さんと向き合うのかが浮き彫りにされたと感じます。演じる上で大切にされたことは何かありますか?

宇野:遥は自分の人生より患者さんのことを考えて、不器用ながらに真っ直ぐ、やらなきゃいけないことに向き合っている姿勢などは、演じている上で忘れないで大切にしようと心がけました。

どれだけ追い詰められても絶対に逃げない性格だと思っていたので、弱さをあまり見せないようにもしていました。でも見せないようにしていても、しっかり弱さが露呈しちゃっていますけど(笑)。

それと理学療法士1年目は、学校で習っていたとしても、患者さんと1対1になるといっぱいいっぱいになってしまって上手く接することが出来ないと仰っていたので、仕事としての所作だとか、遥の感情だとかを整理し過ぎないようにしようとは思っていました。

即興的に感じたまま「演じる」


(C)映画『歩けない僕らは』

──感情を吐露する場面が多くありましたが、そういう意味では感情をコントロールせずにその場でやっていこうと思われたのですか。

宇野:そうです。私は考え過ぎると出来なくなるタイプなので、動きや形を決めずにやって、嘘をつかないで、その時思ったトーン、声量、動きで演じていきました。

──佐藤監督も即興的な面で撮りたい思惑もあったのでしょうか。

宇野:そういったところもあったと思います。遥の担当した患者・柘植篤志を演じる落合モトキさんに演出を付けたい時は、私に聞こえないように言うんです。だから落合さんが次にどんな演技をしてくるかわからない状態で反応していました。そういう面では本当の反応が撮りたかったのかなと思います。

──逆に即興的なところで対応しきれないような場面では、監督に役のことで相談、質問をすることはありましたか?

宇野:私が想像した遥のトーンでやった時にNGが出て、どうしたら良いか分からなくなってしまった場面では、監督に役の心情を質問した事がありました。

その時は前後のシーンを、一緒にひとつひとつ感情を辿っていってくださって「こうなるから今のはちょっと違うんじゃないかなぁ」と、正解を言うわけではなく、ヒントを出して導いてくださいました。


(C)映画『歩けない僕らは』

──本作が遺作となった大女優の佐々木すみ江さんとの共演は印象的でした。特に佐々木さん演じるタエと一緒に遥がお墓参りに行き、高い丘から眼前に広がる景色を眺めたショットは心に残っています。

宇野:あのシーンが唯一世界が広く見えた瞬間でした。景色を見て、今までの自身で抱えていたわだかまりが、吹っ切れたわけではありませんが、スッキリと腑に落ちたような気持ちになりました。

また、高齢の患者さんが歩けるようになって一生懸命に生きていく。そんな佐々木さん演じるタエさんから感謝の言葉を頂いたことも大きかったようにも思います。

「役者」宇野愛海


(C)Cinemarche

──宇野さんは演じる役に没頭される印象を受けましたが、いかがですか?

宇野:そうですね。私は普段から役を引きずってしまうタイプで、今回もかなり役を引きずっていました。なかなか切り替えが上手く出来ないところがあります。

でも、今回の映画で、いい意味で周りを意識するようになりました。遥も一生懸命になっている時にリセットでき、違う見方をすれば、また前に進めたように、自分を客観的に見ようって思う心がうまれました。

──宇野さんはなぜ役者をされているのでしょう。

宇野:やりたいから!(笑)。でもなんでやりたいのか、漠然としています。

人見知りで、人とコミュニケーションを取りたいのに上手く取れないんです。でも演技をしている時は、素直に人に向かえるし、生きている実感が湧いてきます。演技って正解がないですし、そういうところも凄く好きです。

演技や女優という仕事は謎が多くて、正解がないものを追う楽しさを感じたりもします。

でも、もっと問い詰めて、じゃあ、なぜ役者を続けているのかは、正直まだ分かりません。私は小さい頃から芸能活動をしているのが当たり前だったので、自分にとってのお芝居は、“私の人生そのもの”そんな感じがします。

──それがきっと宇野さんにとっての正解で、それがあるから演技に説得力があるのだと感じます。今後の人生、どんな人生を歩みたいですか?

宇野:一生楽しんでいきたいです。苦しいことも多いですけど、でも役者をやめたくない。どんな状況でも一生演技はしていきたいですね。

──役者として演じる役や共演者に向きあっている姿と、理学療法士として患者さんと向きあっている姿は、どこか似たものがあるのですね。

宇野:自分でも思いました、役者も正解はないです。ずっと人対人ですし、どう伝えるか悩み続けなきゃいけない職業です。今回の取材を通してお話しさせていただいた中で、私もいろんなことが繋がりました(笑)。

この映画は自分に近い部分が遥にあったので、思い入れもあります。公開されることがとても嬉しいです。

インタビュー・写真/大窪晶

宇野愛海(うのなるみ)プロフィール


(C)Cinemarche

1998年生まれ。スターダストプロモーション芸能3 部所属。

12歳で女優活動を開始し、岩井俊二プロデュースの連続ドラマ「 なぞの転校生」(演出:長澤雅彦)、映画『罪の余白』 出演を経て、『デスフォレスト恐怖の森3』(2015) で映画初主演。

近年の出演作には2017年公開の『斉木楠生のψ難』、『先に生まれただけの僕』など。

映画『歩けない僕らは』の作品情報

【日本公開】
2019年(日本映画)

【監督・脚本・編集】
佐藤快磨

【キャスト】
宇野愛海、落合モトキ、板橋駿谷、堀春菜、細川岳、門田宗大、山中聡、佐々木すみ江

【作品概要】
回復期リハビリテーション病院を舞台に、新人理学療法士の主人公・遥と、彼女を取り巻く人びとを描いた短編映画。

主人公の遥役を岩井俊二プロデュースの連続ドラマ『なぞの転校生』(2014)、 映画『罪の余白』(2015)の宇野愛海、患者の柘植役を『桐島、部活やめるってよ』(2012)、「おっさんずラブ 単発版」(2016)、『笑う招き猫』(2017)の落合モトキが演じます。

監督・脚本は、初長編作『ガンバレとかうるせぇ』が、ぴあフィルムフェスティバル・PFFアワード2014で映画ファン賞と観客賞を受賞した佐藤快磨が務めます。

映画『歩けない僕らは』のあらすじ


(C)映画『歩けない僕らは』

宮下遥(宇野愛海)は、回復期リハビリテーション病院1年目の理学療法士。

まだ慣れない仕事に戸惑いつつも、同期の幸子(堀春菜)に、彼氏・翔(細川岳)の愚痴などを聞いてもらっては、共に励まし合い頑張っています。

担当していたタエ(佐々木すみ江)が退院し、新しい患者が入院してきました。

仕事からの帰宅途中に脳卒中を発症し、左半身が不随になった柘植(落合モトキ)。

遥は初めて入院から退院までを担当することになりました。

「元の人生には戻れますかね?」と聞く柘植に、何も答えられない遥。

日野課長(山中聡)と田口リーダー(板橋駿谷)の指導の元、現実と向き合う日々が始まり…。

【トークイベント開催決定!!】

映画『歩けない僕らは』、併映作品『ガンバレとかうるせぇ』の新宿K’s cinemaでの初日舞台挨拶・トークイベントが決まりました。

11/23(土)10:00の回上映前
【ゲスト】
宇野愛海、落合モトキ、堀春菜、細川岳、山中聡、佐藤快磨監督

11/24(日)10:00の回上映前
【ゲスト】
宇野愛海、落合モトキ、佐藤快磨監督
※お客様からのQ&Aの時間あり

11/27(水)10:00の回上映前
【ゲスト】
落合モトキ、板橋駿谷、佐藤快磨監督
※お客様からのQ&Aの時間あり

11/28(木)10:00の回上映後
【ゲスト】
門田宗大、佐藤快磨監督
※お客様からのQ&Aの時間あり

11/29(金)10:00の回上映後
【ゲスト】
堀春菜
※お客様からのQ&Aの時間あり

※追加の登壇者・日程など詳細につきましては、映画『歩けない僕らは』公式サイト公式SNSK’s cinema公式サイトにてご確認ください。
※登壇者、トークイベントは急遽変更や中止になる場合もございます。
※各回、フォトセッションの時間のみ、お客様も写真撮影が可能です。

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