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Entry 2019/04/02
Update

映画『アス』あらすじネタバレと感想。ジョーダン・ピール監督の新作の内容とは⁈

  • Writer :
  • Cinemarche編集部

ジョーダン・ピール監督の最新作『Us』

2017年に大ヒットしたホラー映画『ゲット・アウト』。

監督を務めたジョーダン・ピールが、新たな恐怖の物語を生み出しました。

今回は2019年9月6日に日本で公開されるピール監督の最新作『Us』についてたっぷりとご紹介します。

映画『Us』の作品情報

【公開】
2019年(アメリカ映画)

【原題】
Us

【監督】
ジョーダン・ピール

【キャスト】
ルピタ・ニョンゴ 、マディソン・カリー 、ウィンストン・デューク、エヴァン・アレックス 、シャハディ・ライト=ジョセフ、エリザベス・モス、ティム・ハイデッカー、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世 、アナ・ディオプ 、カリー・シェルドン、ノエル・シェルドン 、デューク・ニコルソン 、カーラ・ヘイワード 、ネイサン・ハリントン

【作品概要】
監督はコメディアンや俳優としても活躍、自身が制作と脚本も務めた『ゲット・アウト』(2017)でアカデミー賞脚本賞を獲得したジョーダン・ピール。

主人公でメインキャラクターである家族の母親を演じるのは『それでも夜は明ける』(2013)で第86回アカデミー賞助演女優賞をはじめ数々の賞を受賞し、「スター・ウォーズ」シリーズや『ブラックパンサー』(2018)にも出演する女優ルピタ・ニョンゴ。

家族の父親を演じるのは『ブラックパンサー』、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)のエムバク役マディソン・カリー。

また『17歳のカルテ』(1999)『ハイ・ライズ』(2015)、TVドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』(2017-)でエミー賞主演女優賞とゴールデングローブ賞女優賞のドラマ部門を受賞したエリザベス・モスも出演しています。

映画『Us』のあらすじとネタバレ

1986年。テレビでは何百万人もの人々がカリフォルニアからニューヨークに渡って手を繋ぎ巨大な一本の線を作り出している様子が放映されていました。

それは飢餓に苦しむ人々、ホームレスの人々への支援基金を集めるための“ Hands Across America ”という試みです。

その頃、少女アデレードは両親とともにサンタクルーズに位置するビーチの上の遊園地を訪れていました。

母親がトイレに行き、父親がシューティングゲームに夢中になっている最中一人で砂浜のミラーハウスに入ったアデレード。

不気味な館の中で彼女は自分にそっくりな少女と出会いました。

ミラーハウスを出て両親の元に帰ったアデレードはショックのあまり失語症となってしまいました。

現在、大人に成長したアデレードは失語症も克服、夫のガブリエルとゾーラ、ジェイソンの2人の子供と暮らす母親になっています。

ガブリエルは陽気な性格、ゾーラはスマートフォンに夢中なティーンエイジャー、ジェイソンはチューバッカのお面がお気に入りの少し変わり者の少年です。

夏、一家はアデレードが幼少期を過ごしたサンタクルーズにある家を訪れました。

ガブリエルはビーチに出かけようとはしゃぎ、アデレードは幼少期の記憶から嫌がりますが渋々ながら家族と共に出かけます。

一家はそこで友人のタイラー一家と落ち合いました。

ジェイソンはビーチで遊んでいる最中、浜辺に不釣り合いな大きなコートを着て腕を大きく広げて立つ男を見ます。

男の手からは血が滴り落ちていました。

夜、アデレードは夫ガブリエルに、昔のミラーハウスでの出来事とトラウマを負ったことを打ち明けます。

ガブリエルは彼女をなだめながらも、あまり真面目に取り合おうとしません。

そこで停電が起こり、ジェイソンは玄関先に4人の不審者が立っていることに気がつきます。

ガブリエルは何度か不審者4人組を追い払おうとしますが、警察を呼ぶといった瞬間に彼らは部屋の中へ押し入ってきます。

侵入者たちは一家とそっくりな人間たちだったのです。

アデレードのドッペルゲンガー、“レッド”を名乗る女性はしゃがれた声で一家について語り始め、「私たちもアメリカ人」と言います。

レッドはアデレードを手錠でテーブルに拘束し、長女ゾーラに走って逃げるように命令、ゾーラのドッペルゲンガー“アンブラ”に後を追わせます。

ガブリエルのドッペルゲンガー“アブラハム”はガブリエルを殴って気絶させ、外へ引きずり出しました。

ジェイソンは彼のドッペルゲンガーで猿のような動きをする“プルート”と一緒に物置部屋に入りますが、隙を見て彼を閉じ込め逃げ出しました。

レッドはアデレードを殺害しようとしますがジェイソンが逃げ出しプルートが閉じ込められていることに気がつき、アデレードは間一髪逃れます。

ビニール袋に入れられガブリエルは、ボートから落とされようとしていましたがアブラハムと戦い、彼をボートのスクリューに巻き込んで殺害します。

以下、『Us』ネタバレ・結末の記載がございます。『Us』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
テーブルを壊して拘束から逃れたアデレードはジェイソン、ゾーラ、ガブリエルと合流しボートで逃げました。

その頃タイラーー家の家にも巨大なハサミを持ったドッペルゲンガーたちが現れ、家族全員を殺害していました。

そこへちょうどアデレードたちが到着、アデレードはドッペルゲンガーたちに家に引きずり込まれ、ガブリエルはタイラー家の主人のドッペルゲンガーと対決し、ジェイソンとゾーラは母を救うため武器を持って侵入します。

ゾーラはドッペルゲンガーの姉妹を殺害しまたも拘束されていたアデレードを解放、ドッペルゲンガー全員を殺すことに成功します。

家族がニュースをつけるとアメリカ全土でドッペルゲンガーたちが出現し、大殺戮が行われていることが報じられていました。

ドッペルゲンガーたちはまた手を握りあい、海辺から巨大な人間チェーンを形成しようとしています。

ウィルソン一家は、タイラー家の車を使って逃げることを決めますが、そこにアンブラが現れて家族を追ってきます。

運転していたゾーラは屋根に張り付いたアンブラを振り落し、自分のドッペルゲンガーを殺すことに成功します。

朝になりビーチにたどり着いた一家を待ち構えていたのは、ジェイソンのドッペルゲンガー、プルート。

プルートは一家の車を爆発させようと試みますが一家は窮地を逃れます。

しかし、そこにレッドが現れてジェイソンは誘拐されてしまいました。

レッドを追跡したアデレードはミラーハウスの中に入り、地下へ続く謎のトンネルを発見。

そこに広がるのは白いタイルで覆われた居住区で、大量のウサギが放し飼いにされていました。

アデレードはそこで黒板に手を握り合う人々の絵を描くレッドと対峙します。

彼女はこのドッペルゲンガーたちの正体は、アメリカ政府によってつくられたクローン人間で、地上のオリジナルの人間たちと魂はつながっており、行動も同調してしまうのだと言います。

彼らは地下での生活を強いられていましたが、この反乱を何年も計画していたのだと言います。

アデレードはレッドとの戦いの末彼女を殺し、ジェイソンを見つけて脱出します。

一家は街から逃げますが、そこで1986年のフラッシュバックが。アデレードがミラーハウスに入った瞬間、地下のレッドも地上に出ようとしていました。

出くわしてしまった二人、レッドはアデレードの首を絞めて気絶させ、自分はアデレードの服を、アデレードには自分の服を着せて地上に出ます。

アデレードはクローン人間だったのです。ジェイソンはそんな母親を見てまた深くお面をかぶりました。

その頃、アメリカ全土に渡ってクローン人間たちは手を繋ぎ列を作っていました…。

映画『Us』感想

2017年公開の『ゲット・アウト』では、現代にも根強く蔓延る人種差別を斬新な切り口で描き、現実は違くとも映画の力を借りてハッピーエンドをもたらしたジョーダン・ピール監督。

そして2019年に公開した『Us』。“私たち”それに“U.S”=アメリカ合衆国の意味を持つ本作はアメリカの“表に出ること無き虐げられた人々”の姿、表向きの国の姿と真実の国の姿の現状を描いています。

クローン人間達が住んでいるのは地下のトンネルのようなところ。

映画序盤に“Hands Across America”というホームレスや飢餓に苦しむ人々を支援するためのイベントが登場しますが、トンネルに住む人々=“Mole People”というのは元々地下鉄や下水道トンネルなどに住むホームレスの人々を示す言葉なのです。

筆者はアメリカ在住なのですが、住んでいる地域では、地下鉄のホームや出入り口、道端には多くのホームレスが住んでおり、また通っているカレッジでも家が無く学校の駐車場で寝泊まりしている生徒が少なくありません。

貧困は現代のアメリカの最も大きな問題の一つです。

主人公アデレードは最後に実は地下施設で育ったクローン人間だったことが明らかになります。

彼女はある偶然の出来事をきっかけに地上での“普通の”生活を手に入れた、虐げられた人々の一人なのです。

“Hands Across America”は1986年5月25日に起こった実際の出来事です。

ニューヨークからカリフォルニアまで何百万人もの人々が手を取り合い列を作って、飢餓への支援基金を募りました。

イベントは3400万ドルを達成したものの、しかし運用資金などを差し引くと残った支援金は1500万ドルだったと言います。

劇中で真っ赤な服を着たクローン人間達が直立し、手を取り合い、どこまでも列を伸ばしてゆく画には、ぞくりとさせられます。

本作にはその意味を問いたくなるシンボルが幾つか登場します。

その一つが、少女時代のアデレードがミラーハウスに迷い込む前に見かけた怪しい男が持つプラカードに書かれた“11:11”の数字。

この男は一家がビーチにたどり着く時同じプラカードを持ったまま死体姿で発見され、またクローン人間四人組がやってくる前も時計は“11:11”を指しています。

クローン人間たちには暗黒部/招かれざる客=アンブラや冥府=プルートと名前が付いており、父ガブリエルのクローンの名前は聖書に登場する人物アブラハム。

エレミヤ書第11章11節には、「見よ、わたしは災を彼らの上に下す。彼らはそれを免れることはできない。彼らがわたしを呼んでも、わたしは聞かない」と言う不穏な文句があります。

左右対称の11:11は自分にそっくりなクローン人間の出現を暗示するものでもあり、“目を向けたくない物事を無視して間違ったことを信奉すると災いが起こる”という社会に向けての強烈なメッセージであるかのように思われます。

「上辺を取り繕い、自分より酷い状況にいる人々を認識しながらもそれを無かったことにする時、悲劇は起こる」そんなメッセージを描く『Us』ですが、コメディアンのピール監督ならではのジョークも炸裂。

多様な音楽を使用しおどろおどろしくシュールに、時には底抜けに陽気に映画を盛り上げます。

本当は“私たち”がその立場であったかもしれない“私たち”が存在する…。このテーマは日本にも投げかけられるものではないでしょうか。

まとめ

自分とそっくりな顔をしたドッペルゲンガーを3人見たら死ぬ…。

そんていう都市伝説がありますが、もしかしたら今もどこかで私たち自身の影がこちらを伺っているかもしれません。

社会の盲点を突き刺した独特のストーリーと、ユーモアでホラー映画界に新風を吹かせるジョーダン・ピール監督の最新作『Us』。

公開された際には、ぜひ劇場でご覧下さい!

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