映画『ライト/オフ』作品情報
【公開】
2016年(アメリカ)
【原題】
Lights Out
【監督】
デヴィッド・F・サンドバーグ
【キャスト】
テリーサ・パーマー(レベッカ)、ガブリエル・ベイトマン(マーティン)、ビリー・バーク(ポール)、アレクサンダー・ディベルシア(ブレット)、マリア・ペロ(ソフィー)
映画『ライト/オフ』あらすじとネタバレ
ダイアナ
ロサンゼルス。テキスタイル会社で深夜まで働くポールに、幼い娘レベッカから連絡が入ります。「ママがまた独りごと言ってる。パパ早く帰ってきて」。ポールの妻ソフィーは以前から心を病んでおり、ポールもそんな妻のことを気づかっていました。
仕事を終えたポールが社内の電気を消すと、暗い廊下の向こうに誰かがしゃがみこんでいます。ポールが目をこらすと、影は静かに立ち上がりこちらへ向かってきました。ポールは逃げ出しますが、またたく間に追いつかれその場にくずれ落ちました。
ポールの事件の犯人は見つからないまま、年月が過ぎます。レベッカはソフィーと義理の弟マーティンと別れ、独り暮らしをしていました。すっかり家族と疎遠になったレベッカに、ある日マーティンが学校に迎えに来てほしいと連絡をよこします。
マーティンは、母親ソフィーのことを案じていました。家には二人きりなのに、ソフィーはいつも「ダイアナがいる」と言うのです。レベッカはマーティンを実家まで送っていき、ソフィーにきちんと治療を受けてほしいと頼みます。
ソフィーは、薬を飲むことを断固拒否。自分はまともだと主張します。マーティンのことが心配なレベッカは、自分の家にマーティンを泊まらせることにしました。その夜、レベッカが目覚めると、隣に寝ていたはずのマーティンの姿がありません。
なぜか部屋の電気がつかず、暗闇の中でカリカリと奇妙な音がします。突然、目の前に人影が現れレベッカに襲いかかります。悲鳴を上げて逃げるレベッカ。影は消えます。マーティンは、バスタブの中ですやすやと眠っていました。
翌朝、ソフィーから連絡を受けたマーティンの教師が、強制的にマーティンをつれて帰ってしまいます。部屋に残されたレベッカがふと床を見ると、夕べ奇妙な音が聞こえた場所に、何か文字が彫られています。それは「ダイアナ」と綴られていました。
悪魔の子
翌日、ダイアナはボーイフレンドのブレットと一緒に実家へ行きます。ソフィーとマーティンは留守。レベッカはソフィーの部屋を探り、一枚の古い写真を発見します。そこには少女時代のソフィーと、ダイアナという少女が写っています。ソフィーは昔、ひどい鬱病で入院しており、そこで友達になった少女がダイアナでした。
ダイアナは、謎の皮膚病を患っていました。ソフィーとダイアナが入院していた病院の医師は、日光を極端に恐れるダイアナを、恐ろしい人体実験に利用していました。レベッカは、ソフィーが隠し持っていたテープを聞いて、その事実を知ります。レベッカの耳にダイアナの声が聞こえてきます。「二度とソフィーは渡さない」。
レベッカとブラットは、ソフィーの家に泊まり込みます。レベッカは、マーティンにダイアナの秘密を教えます。13才の時に地下室で発見されたダイアナ。珍しい病気のために「悪魔の子」と呼ばれた。ダイアナは、今でもママの心の中に住んでいる。だからママの心さえ強くなれば、ダイアナは消えるのよと。マーティンは頷きます。
レベッカは、ダイアナは存在しないとソフィーを説得します。しかしソフィーは聞き入れず、自分の部屋にこもってしまいます。暗闇の中にだけ現れるダイアナ。レベッカ達は家中の電気や明かりをチェックし、懐中電灯とろうそくも用意しました。
ソフィーの部屋をノックするレベッカ。穏やかになったソフィーは「明日からやり直したい」とい言います。ほっとしたレベッカに、ソフィーは小さな紙切れをそっと手渡して扉を閉じます。レベッカが見ると「助けて」と書かれてありました。
突然、家中の電気が消えます。レベッカはブレーカーを調べに地下室に降り、マーティンも後を追いますが、暗闇の中から現れたダイアナに扉を締められ閉じ込められます。ブレットは二人を助けようとしますがダイアナに襲われ、車で逃走します。
目覚めたソフィーはダイアナを止めようとします。「子ども達を傷つけないで」と言うソフィーをダイアナは投げ飛ばします。地下室の中、明かりを探すレベッカとマーティンは、ブラックライトを見つけます。これならダイアナの姿が見えるのです。
ダイアナがブラックライトで地下室を照らすと、不気味な文字が壁一面に浮き出します。「私からソフィーを取り上げようとする」と書かれた、ダイアナの悲しい叫びでした。茫然としていたレベッカにダイアナが襲いかかりますが、レベッカがライトを当てると悲鳴と共に闇に消えます。
ブラットが、警官を二人連れて戻って来ました。3人が真っ暗な家に入ると、地下室からレベッカとマーティンの声が聞こえます。警官達は家の中を調べますが、ダイアナは二人に襲いかかります。
レベッカはブラットにマーティンを預け、ソフィーを助けに二階へ上がります。そこへダイアナが襲いかかります。レベッカの耳にダイアナの声が響きました。「お前も父親のところに連れていってやろうか」。その時、ソフィーが銃を持って現れます。
ソフィーはダイアナに銃を発砲します。しかしダイアナには銃など効果がありません。ソフィーは微笑み「じゃあこれは?」と自分の頭に銃口を向けます。「あなたは私の幻なのよ」。驚いたレベッカは悲鳴を上げてソフィーを止めようとします。ソフィーは引き金を引きました。レベッカは泣き叫びます。ダイアナの姿は消えました。
『ライト/オフ』の感想と評価
『呪怨』(2003)が『THE JUON/呪怨』(2004)としてハリウッドリメイクされた際、清水崇監督が、日本とアメリカの恐怖の違いについて語っていたのを何かで呼んだ記憶があります。
監督によると、「姿が見えないのに怖い」というニュアンスを、欧米人に伝えるのが大変だったとか。日本のホラーが海外で成功したのは、この感覚が欧米人には新鮮だったことも要因の一つではないでしょうか。
この『ライト/オフ』も、ヒロインの家族を恐怖に陥れるダイアナの姿そのものより、ダイアナが潜んでいる暗闇のほうが実は何倍も怖かったりします(とはいえダイアナのルックスも十とんでもないのですが)。
部屋が明るいと見えないのに、電気を消して暗くなった途端、そこに「いる」。この怖さは、世界共通でわかる感覚だと思います。この映画を見た日の夜、すでに部屋の電気を消すのを躊躇する自分がいました。監督のドヤ顔が目に浮かびます。
さらに日本人が感情移入しやすいのは、この作品の根底にある「哀れさ」です。ダイアナは家に憑りついた悪霊でもなく、エクソシストばりの悪魔でもありません。残酷な運命に翻弄され、大人達のエゴの犠牲になってしまった無垢な13才の少女です。
ダイアナが敵視するのは、愛する親友から自分を引き離そうとする人間達です。
例えば『リング』シリーズの貞子など、現在は違う意味でキャラクター化されてもいますが、社会から排他された人間の哀しさや恨みから生まれた恐怖という点ではダイアナと同じ。根本的にはホラーではなく、悲劇の人間の物語であるといえます。
今作のDVDには、未公開シーンが入っています。その中の一つが、劇場版のラストの「その後」なのですが、なぜにこれをカット?と疑問を感じるほど秀逸の出来栄えなのです。劇場でモヤモヤした方は、ぜひDVDをご覧になることをお勧めします。
まとめ
動画サイトで公開されたショート・ムービーが大反響。SNSで世界中に拡散され、1億5000万回再生を記録して映画化が決定したという話題作。
製作者に名乗りを上げたのが『ソウ』シリーズのジェイムズ・ワンというのですから、いかにも今の時代のサクセス・ストーリー的な展開です。
元ネタのショート・ムービーですが、確かに怖いです。3分足らずの映像のためか、一瞬のインパクトはこちらの方が大きいかもしれません。ゴースト(怪物?)そのものより、環境(演出?)の怖さに重きを置くという手法は確かに斬新です。
「気配が怖い」という感覚は、どちらかといえば日本のお化けに近いような気がします。やたらめったら襲ってくるゾンビや悪霊ももちろんおっかないのですが、「見えないけどなんかいる」的な、背筋を這う寒気。これって全く日本人好みですね。
そんなグロすぎない怖さだからこそ、恐怖をスタイリッシュ化するのがお得意のジェイムス・ワンの目にとまったのでしょうか。より洗練された映像に生まれ変わっていて、非常に楽しめました。
レベッカを演じるテリーサ・パーマーは、よくあるホラー映画専門のヒロインではなく、『明日、君がいない』(2006)で注目を浴び、近年では『ウォーム・ボディーズ』(2013)や『きみがくれた物語』(2016)などに出演。夫のマーク・ウェバーと共に脚本・製作も手がけることもあるという才色兼備。現在、最も注目を集める若手女優の一人です。