河瀬直美監督の映画『Vision』は、6月8日より全国ロードショー。
今やフランスをはじめ海外から高い評価を受ける河瀨直美監督。彼女が故郷の奈良を舞台に、『イングリッシュ・ペイシェントで米アカデミー賞助演女優賞ほか、世界三大映画祭すべてで女優賞を獲得したフランスの名女優ジュリエット・ビノシュを主演に迎えた本作。
また、河瀬作品『あん』や『光』で2作に連続主演した日本を代表する俳優の永瀬正敏も主演に、ダブル主演とした河瀬直美監督の長編劇映画第10作目となる『Vision』とは?
CONTENTS
映画『Vision』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【脚本・監督】
河瀬直美
【キャスト】
ジュリエット・ビノシュジャンヌ、永瀬正敏、岩田剛典、美波、森山未來、白川和子、ジジ・ぶぅ、田中泯源、夏木マリ
【作品概要】
海外でも広く活躍する永瀬正敏と名女優ジュリエット・ビノシュを主演に、河瀬直美監督が生まれ故郷の奈良でオールロケを敢行したヒューマンドラマ。
ジャンヌ役をビノシュが演じ、山守の智役を永瀬正敏が演じており、その脇を岩田剛典、美波、森山未來、田中泯、夏木マリたちが出演しています。
映画『Vision』のあらすじ
樹木が青々と茂る、ある夏の日。フランス人の女性エッセイストのジャンヌは、紀行文の執筆のリサーチに、奈良・吉野にある山深い森に、通訳兼アシスタントの花とやって来ました。
その森にある家で、猟犬コウと静かに暮らす智は、木々を切り、森の自然を守っている山守でした。
智はある日、鋭い感覚を持つ女アキから、明日は森の守り神である春日神社へお参りに行くようにと告げられます。
翌朝になり、ジャンヌと花は春日神社で智と出会いました。
花は「この村に昔から伝わる薬狩りの話を聞いて、やってきました。“ビジョン”と呼ばれる薬草を探しています」と話し、ジャンヌは「人類のあらゆる精神的な苦痛を取り去ることができる」と説明をします。
しかし、智は「聞いたことがない」と返答します。
その後、ジャンヌは智の家にある離れに泊めてもらえることになりました。
それからほどなくして、ジャンヌは出会ったアキからは「あんただったんだね」と言われます。
アキはこの森に誰かがやってくることを前もって知っていたのです、さらに「最近、森がおかしい。1000年に1度の時が迫っている」と言い始めました。
アキは“ビジョン”についても、何かを知っている口ぶりでしたが…。
映画『Vision』の感想と評価
世界的な名女優ジュリエット・ビノシュ(右)と新鋭の岩田剛典(左)
カンヌと映画『光』が結んだ縁
関連映像:河瀬監督作品『光』
2017年5月に開催された第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に、河瀬直美監督の映画『光』は正式出品されました。
公式上映後は約10分にも及んだスタンディングオベーションが会場を包みます。
この映画祭で河瀬監督は、エキュメニカル審査員賞を獲得しました。
実は映画祭の期間中に、河瀨監督と『光』で主役を永瀬正敏は、本作『Vision』のプロデューサーのマリアン・スロットとディナーで同席しました。
その際に世界的な名女優ジュリエット・ビノシュと引き合わせてくれたのです。
名女優ジュリエットが河瀬組に集結!
参考映像:『トスカーナの贋作』(2010)
ジュリエットはオスカー女優に輝くだけでなく、世界三大映画祭のすべてで女優賞に輝いた映画界を代表する大物俳優です。
1993年に公開された『トリコロール/青の愛』でヴェネツィア国際映画祭の女優賞を受賞。
1996年に公開の『イングリッシュ・ペイシェント』でベルリン国際映画祭銀熊賞とアカデミー助演女優賞を受賞。
2010年に公開の『トスカーナの贋作』で第63回カンヌ国際映画祭の女優賞を受賞しました。
これでも知らないあなたは、2014年制作の『GODZILLA ゴジラ』で、日本の原子力発電所の働く技術者として最初に犠牲になったサンドラ・ブロディ役でも有名です。
そんなジュリエットを迎えて、河瀬監督や永瀬正敏は、クリエーターを越え、意気投合しました。
その際にジュリエットが河瀨監督の作品の出演を熱望したことから、本作『Vision』の制作が決定。
河瀨監督は帰国後、ジュリエットと永瀬正敏をキャラクターに当て書きした、オリジナル脚本を執筆に熱中します。
河瀨監督はその時の様子をこのように振り返ります。
「ジュリエットとともに、映画を創りたいと思った瞬間から、全ての準備がパズルのピースように次々と奇跡的にはまっていき、カンヌから帰国して3ヶ月ほどで、ゼロからの企画が立ち上がりました。ジュリエットの映画に対する姿勢とフレームの中の存在感は圧倒的です」
一方のジュリエットも河瀬監督についてこのように述べています。
「河瀨監督の作品は拝見していました。彼女はいつも自然に寄り添い、人のことを愛しています。フランスで河瀨監督の作品は非常にリスペクトされていて、彼女が紡ぐ表現方法などがとても独特で素晴らしいと感じていました」
この河瀬監督とジュリエットの出会いが大きく映画企画を動かし、その後、河瀬組に夏木マリ、岩田剛典、美波、森山未來、田中泯といった実力派俳優の出演が決まっていきました。
注目は鈴役のがんちゃんこと、岩田剛典
参考映像:『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(2012)
言うまでもなく、本作『Vision』でダブル主演のジュリエット・ピノッシュや永瀬正敏は、世界的に誰もが知る俳優です。
そこで今回、注目されるのは、がんちゃんこと岩田剛典の鈴役の大抜擢です!
本作の撮影は2017年の9月初旬にクランクインし、夏パートの前半、秋パートの後半に分け、12月初旬にクランクアップしました。
この期間に岩田剛典は、ドラマ『世にも奇妙な物語’17秋の特別編』の「運命探知機」に和泉涼平役で主演を務め、ドラマ『崖っぷちホテル』でも主演の宇海直哉役を演じています。
また、映画では「HiGH&LOW」シリーズの(2016〜17)のコブラ役が、2017年にも『THE MOVIE2/END OF SKY』と『HIGH&LOW THE MOVIE3/FINAL MISSION』の公開がされました。
2018年に入ってからも『去年の冬、きみと別れ』の主人公・耶雲恭介役で哀しさと印象深い演技を披露してくれました。
確かに河瀬作品『Vision』では、岩田剛典は主人公ではありません。しかし、岩田剛典が俳優として認められた大抜擢の青年鈴の役柄といっても良いでしょう。
彼が演技の実力と進化を見せるのに、申し分ないチャンスを河瀨作品で実現させました。
2016年に公開された映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』で、主人公の日下部樹役で岩田ファンになった方も多いとは思いますが、河瀬監督の『Vision』は世界が注目している作品です。
また、三代目J Soul Brothersの同じくEXILEメンバーの小林直己は、映画『アースクエイク・バード』のカメラマン役の出演で、ハリウッド映画デビューすることが最近話題になりました。
本作『Vision』の出演は、小林直己同様に、岩田剛典にとっては世界進出の足がかり的な作品になるでしょう。
今後も人気とともに実力派の俳優として、岩田剛典に注目です!
まとめ
冒頭に紹介した本作『Vision』の予告編は、歌手や俳優として異彩を放つ夏木マリが演じる謎の老女アキが、トンネルの中を歩いていく場面から始まります。
いつも世界的な映画祭で注目を集める永瀬正敏。彼が演じる智が「見るもの、聞くもの、触れるもの、感じるもの、それがすべてだ」と語りかけ、見る者の興味を掻き立てます。
そして、岩田剛典演じる青年鈴が、森で智と出会った後に、共同生活を送る場面も登場します。
ジュリエット演じるジャンヌや鈴の涙の意味とは…。
映画「Vision」は、6月8日より全国ロードショー。ぜひ、お見逃しなく!